--------
生存者の情報によりますと、
隆山温泉のすぐ近くの集落を襲った謎の怪物は、
『二匹』
だったそうです。警察は・・・
--------
凛とした空気を身にまとい。
冷たい瞳をした、
女が、歩いている。
--------
我が社が独自に入手した目撃情報によりますと、
『怪物同士は、殺しあっているようだった。』
そうです。
また、他の目撃者の情報では・・・
--------
女の名は千鶴。
雨月山に住まう鬼。
--------
政府や、自衛隊は関与を否定。
しかし、依然、何らかの実験動物が逃亡したとの疑いは否定できません。
--------
全てを凍てつかせる瞳。
彼女に近づく者は、
皆、寒気を覚えた。
「僕達の背に羽根は無いから」
作:山田@失楽園
--------
へえ。『柳川』という女が囲われていたそうです。
はい、25年くらい前らしいですが。
え?今どうしてるか?
もちろん調べてますとも・・・と、言っても既に死んでますが。
--------
(生存者の話や、状況から・・・
耕一さんが集落を襲ったのは・・・多分、間違い無い・・・
でも・・・もう一匹の鬼は・・・誰?)
--------
ただ、息子がいたそうです。へへ。
息子の名は裕也。
今は、この街に・・・
--------
耕一が失踪する直前に来た刑事。
彼が自分に渡した名刺を確認する。
『柳川裕也』
彼女には、その文字が自分をあざ笑っているように思えた。
「あの時の刑事・・・何故、気がつかなかったの・・・」
耕一が居なくなって一週間。
千鶴は、耕一を探していた。
そして、『もう一匹の鬼』を。
耕一が見つからない以上、
『もう一匹の鬼』ぐらいしか手がかりを思いつかなかったせいかもしれない。
二匹の鬼が争った。
そして、耕一は帰って来ない。
千鶴は、悪い方向にしか考えることしかできなかった。
つまり、
「耕一は、とっくに死んでしまったのでは・・・」と。
彼女は、鶴来屋の会長という立場と、金の力にまかせて
大勢の探偵を雇い、
親、叔父、祖父の素行調査・・・つまり、愛人関係・・・を探らせた。
『もう一匹』が誰なのか。
柏木の血に連なる者か。
それとも、他の誰かなのか。
大量殺人事件から1週間。
千鶴は、見つけた。
『もう一匹』を。
柳川裕也。刑事。
名前と所属が判れば、居場所を突き止めるのにさして時間はかからなかった。
大量殺人事件当夜から、街の病院に入院している。
千鶴は、疑う余地は無いと思った。
凛とした空気を身にまとい。
冷たい瞳をした、
女が、歩いている。
千鶴は、鬼の気を押さえようとも思わなかった。
全てを凍てつかせる瞳。
彼女に近づく者は、
皆、寒気を覚えた。
千鶴は、病院へ向かった。
<続く>
素晴らしい作品を下さった作者の山田@失楽園さんに感想を是非。
戻る