箱庭世界。 そう思えるくらいに、浮いた存在だった。 周囲を拒絶しているのか、それともただ単に馴染めないだけなのか。 そのどちらなのか、こっちが判断を下すことすらおこがましい。 ただ、少なくとも、僕は全くの部外者という訳ではなくて。 巻き込まれたという形ではあるにせよ、僕もまた同じ箱庭世界の住人なのだ。 Lost magic ??Written by Eiji Takashima
2nd magic:"closed world" 朝と昼との間の時間。 ただ、チョークが黒板を叩く音のみが聴こえている。 「…………」 周囲の連中が心の中でどう思っているかはともかく、表面上は至って静かに、滞りなく授業が行われていた。 そんな中、頼に視線を向けてみる。 何を思うのか、いつも見通せない横顔は、ノートと教科書、そして黒板とを、行ったり来たりしていた。 「より……」 口の中で呟いてみる。 今の頼は、トレードマークとも呼べるあの黒づくめの格好ではなく、体操着にブルマという、どこにでもいるただの女子中学生だ。 とんがり帽子はともかく、黒マントの着用について、担任との冷たいバトルの末、結局授業中は不可ということになり、今現在に至っている。 そのおかげで、僕は授業中に頼を眺めることが増えた。 未練なのかもしれないが、普通のおんなのことしての頼を求めているんだろう。 でも、頼は気付いてくれない。 僕の視線に気付かずに、ただ黒板の文章をノートに書き写してゆく。 「より……」 頼は気付かない。 僕にも、周りにも。 まるで、箱庭世界の住人のように。 授業の終了を知らせるチャイムが鳴り、教師がチョークを置く。 それを合図に号令がかけられ、僕達は解放された。 「ふぅ……」 休み時間に入ると共に、めいめい散らばり、好きなことをし始める。 下らない雑談を始める者、そそくさと廊下へと出て行く者。 そして僕はと言うと―― 「おつかれ、より」 奇しくもクラスメイトという関係を繰り返し続けている、傍らの頼に声をかける。 「ああ」 ぶっきらぼうな返事。 顔もこちらを向いてはいない。 椅子の背もたれにかけてあったマントをまとい、とんがり帽子を手にする。 頼にとってはそのことが最も重要で、それ以外は瑣末事にしか過ぎない。 「え、えと……帽子、平気かな?」 今、取り立てて頼にかけるべき言葉などない。 でも、それはいつものことで、僕は何とかその場で作り上げていた。 「平気とは?」 帽子を頭の上に載せ、ようやく落ち着いた様子を見せる頼。 妙な緊張感を覗かせる僕とは対照的に、全てを見通しそうな目でこっちを見上げた。 「あ、ほら、汚れてたりとか、さ」 「問題ない」 頼は僕の言葉に即答する。 でも、返事を聞いた後、僕は自分の質問の意味に気付いた。 頼の帽子を汚すような要素はひとつしかない。 僕の、頼に放った精だ。 「そ、それはよかった、うん」 「話は、それだけか?」 如何にも煩わしそうに、じろりと視線を向ける頼。 いつの間にか、その手には分厚い革表紙の本が収まっている。 魔法の勉強の邪魔、ということなのだろう。 「お邪魔……かな?」 恐る恐る問う。 邪魔だ、と言われても仕方ないような気がしていた。 「話がないのであれば、な」 「えっ?」 「拓登と話をするのは嫌じゃない。中身のある話ならばな」 そう言うと、頼は本を机の上に置き、こっちに向き直った。 笑顔こそないものの、さっきの冷たい視線から一転、少し穏やかなものへと変わる。 そんな、頼の僅かな変化に心和まされて、僕は落ち着きを取り戻していた。 「ありがとう、より。少し、話がしたいと思って」 「そうか」 「うん、よりも魔法が大事だからって、人と話もしないと駄目だよ」 既に、クラスで頼は奇人扱いだった。 基本的には無害な頼だが、それでもクラスの一員として、必要なやり取りもある。 そのために僕が存在していて、ずっと頼とクラスが一緒なのも、周囲が僕に頼の相手を押し付けたいからなんだろう。 頼とセットにされることは嫌じゃなかったけれど、そういう風に頼が扱われていることについては、ただ不愉快だった。 「必要があれば、する」 「そうじゃなくてさ、クラスのみんなとも……」 打ち解けて欲しい。 普通に、学校生活を送って欲しかったんだ。 「うるさい」 しかし、頼は僕が言おうとしていたことを察知して、ぞんざいに遮った。 「よ、より」 「お説教は、いらない」 頼はそう言っていきなり立ち上がる。 普通に戻って欲しいと願う僕の努力は、頼にとってはうるさいお説教でしかないんだろう。 「ちょ、ちょっと待って!」 マントの裾を華麗に翻し、僕に背を向ける頼。 そのまますたすたと歩いて、教室を後にしようとする。 僕は反射的に、その後を追いかけていた。 「やっぱりここにいたのか、より……」 頼が辿り着いた場所。 そこは、頼が目指す魔女の小昏さとは程遠い、光差す校舎の屋上だった。 「…………」 頼は、手すりにもたれるように、彼方を見つめていた。 僕が追い駆けてきても、真後ろにいても、何も言っては来ない。 「さっきはごめん、より。でもね……」 「でも、なんだ?」 頼はそのままの姿勢で聞き返してくる。 その背中は、僕に何も伝えない。 黒い、びろうどに包まれた背中。 昼に差しかかろうという、この明るい空の下ではあまりに不似合いで、それが僕を寂しくさせた。 「……横、いいかな?」 お説教の代わりに、僕はそう言っていた。 何となく、今の頼にはその方がいいように思えた。 「……拓登なら、いい」 「うん、ありがと」 少し笑って、頼の左隣につく。 元々言葉の少ない頼。 それならば、口で言うよりも、こうして傍にいてあげた方がいい。 人と触れ合うには、何も言葉だけじゃないはずだから。 「…………」 夏を忘れさせる風が吹く。 頼の髪を、マントを、そして帽子のつばを揺らす。 頼は帽子を手で押さえることもなく、ただ空を見つめていた。 「より、帽子……」 「平気だ」 頼の小さな頭より、ずっと大きなとんがり帽子。 それは風に飛んでいってしまいそうで、危ういものを感じさせる。 「でも、風が……」 「へいき」 重ねて言う。 頼がそこまで言うからには、根拠があるのだろう。 と、そこでふと、僕は今朝のことを思い出した。 「……もしかして、魔法?」 確かに、頼は魔法のようなもので、飛んで行きそうな帽子を自らの頭に呼び戻していた。 同じことが可能ならば、帽子が風に飛ばされても、確かに平気なはずだ。 「拓登は、そう思うのか?」 頼が、こちらを見た。 珍しく、僕の目を覗き込むように。 「それは……うん、やっぱり、今日のを見たから」 今朝、初めて魔法を見せられて。 でも、それは頼じゃなかったら、単なる偶然だと信じていたと思う。 反対に、もしそれが偶然だったとしても、僕はそこに頼がいたら、魔法だと信じただろう。 「目には見えなくても?」 「魔法って、見えるものなの?」 「それは、魔法によりけりだ」 「どっちにしても、僕には魔法に見えたよ、より」 僕が魔法だと信じる。 それで、頼の魔法が存在できるかのような。 何となく、今、そんな考えが頭の中をよぎった。 「そうか、拓登はそう思うのか……」 呟くように言い、そっと目を伏せる頼。 その僅かな時の想念は、僕には量り知れない。 だが、再びまぶたを開いた頼の瞳には、決意のようなものが見えたような気がした。 「拓登」 頼が、僕の名を呼ぶ。 そして、左腕を大きく払い、マントの半分を後ろに跳ね除ける。 「少し、そばへ」 頼の左半分は、いつもの魔女ではなく、普通の体操着姿のおんなのこになった。 それが果たして意味あるものなのか、僕にはわからない。 だが、僕は引き寄せられるように、そんな頼に歩み寄った。 「あ、あの……」 言葉にならない僕。 瞬間、休み時間の終わりを告げる、チャイムが鳴った。 しかし、頼は意に介した様子もなく、更に口を開く。 「もう少し」 「より、チャイム鳴ったけど……」 「拓登」 まるで僕をたしなめるように。 でも、その言葉には強さがあって、僕はまた一歩、頼に近付いた。 その距離は、頼に触れるか触れないかという僅かなものだ。 「くっついて、いいから」 「え、でも……」 「マントの中に、拓登を入れてあげる」 そう言って、頼はぴとっと僕に身体を寄せる。 そして、正面から抱き合うように、そっと両腕を僕の後ろに回した。 「あの、より、これって……」 「拓登、マント」 頼はそれだけ言う。 視線は、見上げるでもなく、僕の首筋に。 頼の背の高さに合わせた、ごく自然な位置だ。 でも、それが頼の瞳を見えないようにして、言葉の意図をつかめなくさせる。 「マント、下ろして」 繰り返し、頼が求めた。 下ろすべきマント。 つまり、後ろに跳ね除けられた、左側のマントだ。 その黒い布切れを手前に引き戻せば、確かに僕は頼のマントに包まれることになる。 「より?」 「拓登は、見られるの、いやみたいだから」 「それって……」 「はやく」 意味はよくわからない。 でも、僕は言われるがままに、頼の左肩に手を伸ばし、マントを自分の背中にかけた。 すると、頼も満足したのか、ようやく顔を上げてこっちを見た。 「これで、拓登は半分だけ、私の世界に入ったことになる」 「えっ?」 「いやだったら、出て」 頼の世界。 それは、僕が形容した箱庭世界。 漆黒のマントに包まれた狭いその世界は、確かに閉ざされていて、孤独にも感じた。 「今までは、拓登から、もらうだけだった。でも、これからは……」 「頼が、僕にくれるの?」 「そうじゃない。拓登が私に、与えるんだ」 もらうと与える。 それは同じことなんじゃないだろうか? でも、頼は違うと言う。 その意味は、僕にはわからないけれど、少なくとも頼はそれを重いものとして受け止めているようだった。 「まだ……」 「ん?」 「まだ、今なら間に合うよ、拓登」 その時、頼の口調が変わったことに、僕は気付いた。 あの、懐かしい、昔のままの頼。 普通の喋り方だった、あの頃の頼だ。 「より、どうして……?」 「戻りたければ、戻って。これが、最後のお願いだよ、拓登」 それが何を意味するのか、僕は何となく理解できた。 これ以上は、頼の選んだ道を進むことになるのだ。 そして、選んでしまえば、もう戻れない。 あの、あたたかで楽しかった日々には。 「ぼくは……」 「もう、無理なんだ。私が魔女を志した日から」 そして、また頼はいつもの頼に戻る。 さっきの一瞬は幻のようで、儚く消えゆくからこそ、今のこの現実を色濃くこの僕に示す。 頼の色は、マントと帽子の黒、いや、それよりももっと深い黒なのだ。 「より……」 「選んでくれ、頼む」 頼に触れ、包まれたままの僕。 きっとここで振りほどいたとしても、頼は何も変わらないだろう。 でも、もう戻れなくなる。 頼と共に歩む、これからの道には。 「もし、拓登が戻るのなら、マントから出て」 促すように、風がマントの裾を揺らす。 でも、頼は僕を離さない。 まだ、僕が選ぶその瞬間までは。 「そして、拓登が進むのなら……」 そっと頼が僕の腰を引き寄せる。 頼のやわらかい部分が押し付けられて、僕はまた惑う。 「進むなら……その、私のブルマを下ろして」 「ええっ!?」 「声が高い、拓登。見られたくないのだろう?」 「そそ、それはそうだけど……」 その、頼と運命を共にすることと、今ここで頼のブルマを下ろすこと、その繋がりがさっぱり理解できなかった。 そんな中、頼のやわらかさに触れて、すぐそばで甘い匂いをさせるその身体を欲するかのように、僕自身が意地汚く膨れ上がる。 頼はその変化には触れずに、ただ僕のおしりを軽く撫でた。 「お願い、拓登……」 そう呼ばれ、僕は頼の腰に手をかけた。 命令されても何を説かれても、何をされても僕は選べなかっただろう。 ただ、頼に求められる以外は。 「選んだよ、より……」 そして、僕に求められたように、頼のブルマを両手でそっと、下に降ろした。 「……わかった」 太腿の真ん中まで。 そこまで降ろしてから頼に確認を取るように、視線を向ける。 すると、流石に頼も恥ずかしいのか、表情こそ普通にしながらも、顔を赤らめて小さくこくりとひとつ頷いてくれた。 「それと、あと……」 「なに、より?」 「あと、ぱんつも……」 「同じところまででいいの?」 「……うん、それでいい」 もう、敢えて訊き返すこともなく、僕は頼の下着のゴムに手をかける。 そっと左右に引いて、そのままゆっくり下に降ろしていく。 包まれ隠されていた頼の全てが解放されて、マントの中で甘やかな芳香を放つ。 それはまるで、花が開くかのようだった。 「次の、満月の夜……」 頼は赤くしている頬を見られるのが嫌なのか、俯いたまま語り始める。 「その夜、儀式をするから……」 「儀式?」 「これからしばらくは、その練習」 頼は、言いにくそうにしてはっきり説明してくれない。 しかし、この頼の状態を見て、そして今まで繰り返されてきた『儀式』がどんなものだったのかを考え、僕はなんとなく、それがとても恥ずかしいものなんだと察した。 「今まで拓登には、がんばってもらったけど……」 そう言いながら、頼が僕の腰、ベルトの金具に手をかける。 「口からだけじゃ、その、だめ、みたいで……」 覚束ない手つき。 それでも器用な頼は、なんとか金具を外し、引っ張ってベルトを抜き取った。 「だから、私の……なかに……」 「うん、わかったから。もう、わかったから、それ以上言わなくてもいいよ……」 頼が伝えたいことはわかった。 だから、もう口に出さなくてもいい。 少なくとも、頼みたいなおんなのこが求める内容ではないはずだった。 「済まない、拓登……」 「いいから。気にしないでいいから、より」 「ああ……」 そして、いきなり両腕でぎゅうっと抱き締められた。 いつも冷静な頼が感極まったのか、僕の胸に顔を埋めて、力いっぱいに抱き締めていた。 「より……」 すぐ真下にある、頼の小さな頭に呼びかけてあげる。 いつのまにか、頼の大切にしていたとんがり帽子は、下に落ちて転がっていた。 だが、頼はそんなことにも気付かない。 それよりも、自分がいつもの自分らしくないことに気付いたのか、すぐに腕の力を緩めた。 「…………済まない、拓登」 「いや……」 謝ってもらうことじゃない。 むしろ、僕は嬉しかった。 そんな僕の想いが届いたのか、頼がぱっと顔を上げる。 そして、ついと背伸びをすると、不意打ちのように僕に唇を寄せた。 「あ、あの、よ、より……?」 一瞬だけ、触れ合った唇と唇。 思えば、これが頼とのファーストキスだ。 「関係ないから」 「え?」 「儀式とは、べつ」 「それって……」 「拓登は、気にしなくていい。これは、私の問題」 誤魔化すように視線を逸らすと、また僕の腰に手をやる。 「より……」 「儀式の練習……続き、するから」 「…………うん」 ボタンを外し、ジッパーを下ろし、そのまま僕のズボンが下に落ちる。 頼は少しだけ手馴れた様子で、僕自身を下着から取り出すと、そっとやわらかい何かに触れさせた。 「……っ」 恐らくそれは太腿。 そして、僕のものを確認するように軽くなぞると、膨らみの間に挟みこんだ。 すぐに感じる熱い何かがそこにあった。 今まで、触れることはおろか見たことすらない、頼の部分。 頼は顔を伏せたまま、また僕の後ろに両腕を回し、ほんの少しだけ引き寄せる。 するとまるで頼の中へと入っていくように、太腿の奥へと押し込まれた。 「くあぁっ!」 密着した腰と腰。 頼の太腿で僕の皮は無造作にめくられ、敏感な部分を露出させる。 「……んっ」 だが、それは僕だけのことではなかったらしい。 頼は小さく鼻を鳴らすと、いつもの儀式とは全く違う反応を示す。 「今日は、まだ……」 「うん?」 「済まない、拓登。なかは、もう少し、なれてから」 「……わかった」 頼は顔を伏せたまま、ぎゅっと僕を抱き締める。 遠慮も余裕もなく、ただ全てを隠すように。 抱き締め、腰をすり寄せられ、太腿が不安定によじられる度に、むき出しになった僕がやわらかいものに擦られた。 「より、あの……」 でも、それだけじゃない。 僕が感じているのは、熱と香りと、それからやわらかさだけじゃなかった。 「より、濡れてる……よ……」 「……言うな」 頼は顔を上げない。 でも、ぎゅっと太腿を締める。 その度に行き場をなくした頼の出したぬるぬるが、僕全体を包んでいた。 「より……好きだよ……」 「……言うな」 その場の勢いに任せて口にしてしまった。 でも、頼は必死に顔を隠したまま、ただ繰り返す。 「…………言うな、拓登。その………わかってる、から」 「……うん、僕も」 頼が僕を選んでくれた。 それは真実。 そして今、僕も頼を選んだ。 頼に求められるだけじゃなく、頼に与える存在へと。 「より、もしかして、よりが言いたかったのって……」 気付いた僕。 でも、頼は無言で、ただ顔を隠し続ける。 そして誤魔化すように、ぬるぬるを僕にこすりつけていた。 「んっ、んうぅっ……よ、より?」 「…………い、言うな。言わないで……」 頼は必死に僕をこすり続ける。 今、僕に余裕を与えて、全てを引き出されてしまうのを恐れるかのように。 そんな頼に合わせて、僕も頼の敏感な部分を探るように腰を動かしてみた。 「あっ、あああっっ!」 角度を変え、少し斜め上へ。 そこに、頼が蜜を漏らしている熱い部分があった。 「より、こ、ここなんだ……」 見たことはない。 でも、知ってはいた。 僕の入るべき場所、その入り口が、確かに感じられていた。 「くうっ、うっ……ま、まだ、はいらないで……」 「う、うん、この角度じゃ、入らないと思うから……」 このまま後ろに倒せば、あたたかい頼の中に入ることも出来るだろう。 でも、頼はまだ求めていない。 だから僕は、さっきまで頼にされていたように、僕の硬い部分で頼のやわらかく濡れた部分をこすった。 「んんっ、んうううっ、んっ、あっ、やっ、そんなこするな……ああっ!」 「で、でもっ、こうしないと、よりっ……」 「あっ、ああっ、つ、つよいっっ、もっとゆっくり……」 僕の視界には入らない隠されたマントの中で、お互いの性器がいやらしくこすれ合い、ぐちゅぐちゅと音を出していた。 頼は堪えかねて余裕のない声をあげながら、僕の胸に顔を押し付けている。 「ふうっ、ふっ、くっ、くうううぅぅ……」 さっきまで僕を抱き締めていた頼の腕は、いつのまにか僕の両肩に乗り、立っていられるように支えている。 それも、力が入らないのか頼りなく、崩れ落ちそうなその身体を、今度は僕が抱き寄せていた。 「うううっ、た、拓登、ま、まだ……なのかっっ?」 僕が頼をこするように、頼も僕に押し付け、ぬめぬめした部分をより熱くさせている。 お互いにひとつになったことのない僕達。 中に入ることも既に忘れ、身体は果てを求めていた。 「んっ、んうっ、も、もう少し……」 「わ、私も……もう……」 「でも、出しちゃったら……んっ、か、かかっちゃうよ……」 マントの中で重なり合う身体。 僕がこのまま放てば、頼愛用のマントはべとべとした白い精に汚されてしまうだろう。 「ああっ、あんっ、あっ……そ、それなら……っっ」 ふっと僕にかかっていた力が外れる。 頼は、僕の肩にかけていた手を動かしたようだ。 そのために、頼が崩れ落ちそうになる。 僕は慌てて頼を引き寄せ、それが更にお互いを密着させる形となった。 「よ、よりっ、どういう……」 「わたしがっっ……マントを、めくるからっっ……」 見下ろすと、確かに頼が両手でマントの裾を持ち、からげていた。 すると、汚されるのを回避する代わりに、今までマントで隠されていた部分が見え隠れする。 肩越しに見える、頼の小さくて白いおしり。 その間から、僕の赤黒いものが突き出ていた。 「よ、より……見えるよ……」 「ば、ばかぁ……みるなぁ……」 流石に隠しきれなくなったのか、頼が顔を上げて、真っ赤に頬を染めてこっちを睨んだ。 でも、僕は今まで見たことのない光景に、目を奪われる。 「でも、よりのおしり、かわいい……」 「くうぅっ、言うな言うな言うなぁっ!」 頼が怒ってそう言う度、ぷりぷりとその可愛いおしりが揺れる。 するとおしりの隙間から、溢れるようにとろりと透明な液体がこぼれ、僕のものを伝って下のコンクリートに飛び散った。 「より、ぴゅぴゅって飛んでるよ、よりのぬるぬる……」 「そ、それ以上言ったら、あ、あとでげんこつだからなぁっ!」 頼が拳を振り上げて僕を脅す。 マントの方は、えっちなおしりを見られることよりも汚される方がいやなのか、器用に片手で裾を持ち上げたままだ。 一方、僕はこれまでずっと受け身だった反動なのか、更に腰を動かして頼のおしりから見え隠れする自分のものを楽しむ。 「うああぁぁっっ、た、拓登っ、そんなっ、あっ、あくぅ、くっ、くうぅっ、や、やめろぉ!」 「ああっ、より……よりぃっっ!」 「くぅっ、うっ、ううっ、あっ、も、もうだめ……くる……きちゃうきちゃうきちゃうぅっっ!」 絶頂寸前の声をあげる頼。 僕も、擬似的に頼の中に入れさせてもらっている感覚を味わい続けて、もう限界に届いていた。 「あうううぅっ、たくとぉっ、たくとぉっ!!」 握り拳だった手は、いつの間にか僕の後頭部に当てられ、そのまま引き寄せられる。 僕の唇は頼のそれに押し当てられ、ファーストキスを済ませてからすぐ、激しいセカンドキスを味わうことになった。 「ちゅっ、ちゅうぅぅっ、んちゅっ、んっ、んううっ……」 まるで僕の精液を吸い出す時のように、頼は音を立てて僕の唇を吸った。 そして僕は応えるように、頼を抱き寄せ、激しく腰を動かしてゆく。 「んふあっ、あっ、うああっ、あっ、あぁんっ、あっ、だめ、だめだめだめぇーーーっ!!」 「よりっ、よりぃっ、でるっ、でるよぉっ!」 「だめっ、だめぇっ、わたしもっ、わたしもでちゃうっっ、あっ、ああっ、ああぁぁーーーっっっ!!」 最後に、ぐうっと頼に腰を押し付けて、僕は限界を迎えた。 頼もほぼ同時だったのか、僕の腕の中でがくがくと震えながら、全身を突っ張らせていた。 「ああっ、あふっ、あふうぅ……」 激しい息をつきながら、肩を震わせる頼。 頼のおしりから突き出たものは、大きく脈打ちながら白いどろどろを灰色の地面に向かって何度も撒き散らしていた。 頼は自分の肩越しに繰り広げられる光景を見ることも出来ず、ただ目を閉じてぐったりしている。 そんな頼を、僕はただ抱えるように抱き締めていた。 「よ、より、その、えーと……」 事が終わり、熱が一気に引いて、僕は改めて自分のしたことに気付かされた。 乱した黒髪もそのままに、疲れた顔をしている頼。 幸いにもマントは汚れずに済んだが、それ以外はもう、惨憺たる有様だった。 「……より?」 頼は黙っている。 黒マントは中途半端に合わされたまま、コンクリートの上に転がったとんがり帽子を拾い上げていた。 その拍子に、頼のマントの中が見えてしまう。 膝上まで下ろされたブルマとぱんつは、頼のぬるぬるがそれこそ撒き散らされて、すごいことになっていた。 そしてその源はというと、僕に散々こすりたてられたせいで半分開いた状態で真っ赤な中を覗かせている。 「より、その……」 「……くやしい」 「えっ?」 「何となく、くやしい」 「そ、そう、なんだ……」 どうやら、怒ってはいないらしい。 だが、微妙に不満げな色を覗かせている頼だった。 「もう、これは駄目みたい」 そう言うと、頼は僕がじっと見ていたぱんつとブルマを脚から抜き取る。 そして、それを手に持ったまま、こっちに視線を向けた。 「拓登、だらしないぞ」 「えっ?」 頼に指摘されて、ようやく自分のことに思い至る。 ズボンは足首まで落ちていて、頼がぐちゃぐちゃになっているのと同じように、僕のものも頼のぬるぬるにまみれていた。 「仕方ないな、これで拭いてやろう」 そう言うと、頼は屈んで僕のものを手にする。 僕の返事も待たずに、持っていたぱんつとブルマの被害を受けていない部分で、自分のぬるぬるを拭き取り始めた。 「ちょ、ちょっとより!」 「静かにしろ。拭けない」 「で、でもぉ……」 「……くやしい、からな」 「えっ?」 「がまん、して欲しい」 「え、あ……うん」 頼は丁寧に拭いてくれる。 それ以上はもう何も言わなかったけど、何を言いたいのかはよくわかった。 これで、お互い様ということなんだろう。 「くっ……」 「こら、声を出すな」 「ご、ごめん、でも、そんな風にこすられると……」 「仕方ないだろう? こら、大きくするな、拓登」 「無理言うなよ、そんな……」 頼に拭き取られながら、僕はまた大きくしていた。 困った顔をして怒る頼だったけど、あまり強く口にはしない。 ただ、全てきれいになった後は、頼と交わる前の、はちきれそうな僕に戻っていた。 「よ、より……」 「小さくしてくれ、拓登」 「むり……だよ……」 「しかし、朝と合わせると、もう二度精を放っているんだぞ、お前は」 「じゃあ、どうしよう?」 求めるように、頼を見つめる。 頼は僕の言外の想いを察したのか、慌てて視線を逸らした。 「わ、私抜きで、何とかして欲しい」 「……う、うん、ごめん」 「それと、辛くても、ひとりで出すのとかは、なしだからな」 「えっ、どうして?」 訊き返す。 すると、頼はマントを翻し、僕に背を向けた。 「…………よる」 「え?」 「夜、お前のところに、行くから」 「それって……」 「儀式の練習は、夜、これから毎日……」 「う、うん、わかった」 「だ、だから……そのために、今はがまんして。おねがい」 背を向けたまま、頼は小さく振り返ってそう言った。 そして別れを告げるべく、軽く手を上げて僕に合図する。 「じゃあ、拓登、また後で……」 「う、うん」 僅かに手を振って、頼は出口に向かって歩き出す。 くるりとひねるような仕種は、どことなくあの朝の頼を思い出させた。 そう思った瞬間、風が巻き、頼のマントの裾を乱す。 「あ……」 いや、乱したというレベルじゃない。 不自然な風は、マントを大きくめくり上げ、僕の眼前にそのぷりっとした小さいおしりを晒した。 「…………見た?」 振り返った頼が、気まずそうに確認する。 「う、うん、ごめん。でも、今のって、魔法?」 「そうだけど、でも……しっぱい」 気まずそうに、そして不機嫌そうに頼が答える。 「えっ、でも、おしりは見えたよ。ちゃんと」 「言うなあっ! そ、そういうつもりじゃなかったんだ、わたしは」 拳を振り上げて怒る頼。 恥ずかしさで、顔は真っ赤になっていた。 「わ、わたしは、ただ、拓登に魔法を見せてあげようと思って、それでっっ」 「でも、加減を間違えちゃったの?」 「だ、だから、失敗だって……」 「うん、でも、ありがとう、より」 真面目に、頼にありがとうと言ってみた。 そんなシチュエーションじゃないけれど、でも、そうしたいと、今は思えた。 「拓登……」 「僕はよりと進む道を選んだんだ。だから、僕はうれしい」 「…………うん」 僕の選んだ道。 それは、頼と歩み、進んでいく道。 その先が闇であろうと、僕の決意は変わらない。 僕が頼を好きで、頼が僕を求めてくれるのであれば。 だから―― 「だから、一緒に戻ろう」 「え?」 「もう、僕達はひとつだよ。だから、ね?」 「う、うん」 頼に歩み寄る。 僕の定位置は、頼の隣だ。 そして、頼を隠し、護る黒のマントから、そっと小さく白い手が差し出される。 「行こう、より。先生に怒られるのも、二人一緒ならきっと平気だよ」 「うんっ」 きゅっと握り締めて。 やわらかい掌は、僕にあの頃を思い出させる。 でも、僕はもう戻れない。いや、戻らないんだ。 かつての想い出はあまりに眩しく、僕の目をくらませる。 そして、その眩しさ故に、頼の影はより濃く僕の目に焼きつく。 そんな、白と黒のコントラスト。 僕は、黒を選んだ。 頼の選んだ、この黒を。 |