かくしEVAルーム3周年記念

 

Voyager To Dream Quest

 

 

 

                                  BY:K−U

 

 

 

 

 

 

「・・・はあ・・・」

 

放課後の図書室。

がらんとした静かな空間に僕はその日1人でいた。

 

僕はその図書室で、雑然と机に積まれていた本を前に作業を黙々と続けていた。

先生達が寄贈してくれた本の整理。それがここでの僕の仕事だった。

 

と、言っても僕は図書委員に選ばれてた訳じゃない。

それが何故かというと、前に僕たちと使徒との戦闘が行われていた時、学校は何度も休校

になったり、生徒が疎開したりしたけど、その時、運悪く一緒に持ち出した学校の備品の

一部・・・中でも図書の大半が焼失してしまったことが落ち着いてから解った。

 

まあ普通に考えれば、それなら必要な分だけ買えばそれで充分だったし、実際そうなる筈

だったんだけど、何でもお金で解決するばかりじゃダメだと強固に主張した先生がいて、

それで職員会議の結果、不足分はやっぱり買うとして、出来るだけ先生達が本を持ち寄る

ことでそういう態度を僕たち生徒に示そうってことに決まったらしい。

 

・・・と言うことを僕たちはこの前ホームルームでミサトさんに聞いた。

 

そして集まった本の整理は・・・まあ数も少ないし、そんなにふさわしくない本は持って

こないだろうと言うことで各学級の図書委員が交代で行うことになっていたけど、僕たち

のクラスの図書委員は未だ入院中、代理の洞木さんも今日風邪で休み。そして代理を申し

出たアスカ・・・本当はお見舞いに行きたいだろうし、トウジ達や綾波もお見舞いに行く

とはいってもやっぱり女の子が綾波1人じゃ色々困ることもあるだろうと思ってアスカの

代わりに僕が最終的に代理を申し出た。

だから今の僕は代理の代理の代理のそのまた代理というわけだ。

まあ作業自体は元々図書委員が交代で一人で出来る程度の仕事に相応しく、そんな分量が

集まってる訳でも無かったから思ったより楽だったし、それに先生達・・・特に個人的に

僕が知っているネルフの人達がどんな本を持ち寄ったかを見てると、その人の性格みたい

な物が見えてきて結構面白くもあった。

たとえば副司・・・冬月校長は日本史に出てくる人物の伝記と将棋の本だし、日向さんが

コンピュータ関係に青葉さんが音楽関係の本と、やはり趣味に関する本が中心だった。

 

まあ大体の先生はマヤさんみたいに、直接授業に関する本を持ってきてくれてたんだけど、

でもマヤさんが、比較的僕たちが理解出来る程度の本を持ってきてくれてたのに対して、

リツコさんのはほとんど全てが僕たちのような中学生にはどう見ても高度過ぎる専門書、

しかも何冊かは洋書まで含まれているのには・・・『ちょっとこれは』って正直思った。

これじゃ多分誰も読まない・・・ひょっとしたらリツコさんは図書室を自分の本棚として

利用するつもりなんじゃ無いだろうかとその時疑ってしまった。

 

でも以外なのが加持さんだった。

僕は多分持ってこないだろうと予想していたのだが、それははずれでリツコさんとは逆に

比較的僕たちにも解り易そうな英語で書かれたペーパバックを持って来てくれてた。

やっぱり加持さんは格好良いなと感じたけど、それとは対照的にミサトさんは・・・

全く、ゴミの日と勘違いしているのかと思うほどに紐で縛られた雑誌の束が置かれていた

のには呆れたというか情けないというか・・・僕は思わずさっき溜息をついてしまった。

 

ちなみに父さんの本は・・・

新品の本が詰まった段ボールにその名前を見つけただけだった・・・

 

 

 

「誰かいますか。」

 

そんな風に考えながら僕が作業を続けていたその時、不意にそんな声が聞こえて来た。

・・・恥ずかしい話だけど、その声はいつも良く聞いている筈なのに、その声のした方を

向くまで正直誰だか解らなかった。

 

「は、はい。」

 

それで僕はその声の方向を向くと、そこに立っていたのは・・・

何時もセカンドインパクトの話で僕たちを寝かせていたあの数学の先生だった。

 

「ええと・・・君は・・・」

「先生・・・碇です。」

「・・・ああ、碇君ですか・・・君が図書委員だったんですか?」

「いえ、そうじゃないんですけど今日はちょっと代理で。」

「そうですか・・・大変ですね。」

「いえ、大したことでもないですから・・・それより何かご用ですか?」

「いや・・・実を言うと私も本を寄贈しに来たんです。・・・もう不要ですか?」

 

その言葉どおり、その時先生は片手に何冊かの本が入った紙袋を持っていた。

 

「いいえ。丁度今それを整理している所でしたから。」

「それは丁度良かった。じゃあこれもお願いします。」

 

・・・えっ?

 

そう言って先生が机の上に置いた紙袋に入っていた本を見たとき・・・僕はその以外さに

内心驚いてしまった。

僕は先生のいつものイメージから多分何かの数学に関する本か、誰も知らない人が書いた、

難しいだけで誰も読まない「文学」と呼ばれる類の本かと思っていた。

でも今、僕が先生から手渡された紙袋から取り出した数十冊の本は全て・・・

 

「えっ・・・これって・・・一体?」

 

僕は思わず先生にそう尋ねると、先生は机の上に置かれた本を手に取って、いつもの口調

で淡々と僕に説明してくれた。

 

「これは実を言いますとですね、セカンドインパクト前にテレビとかで放送していたある

SFドラマのノベライズなんですよ。」

「へえ、そんな番組があったんですか?」

「ええ。でも君たちの年代では知らないのも無理はありませんね・・・確か聞いた所では

今はフィルムやビデオの大半が失われて見ることはもう出来ないそうですから。」

 

そう、あの大異変で失われた物の1つにそれまでの『娯楽』に属する映像や書籍といった

記録物が含まれていた。

確かにあんな凄い大異変では持ち出す順序としては最下位に属した筈だったから、それは

仕方の無かったことなんだろう。

でも、先生の話は更に意外なことにその様な物に対する・・・郷愁だけでも無かった。

 

「じゃあこれって・・・結構貴重な・・・」

「ああ、別に良いんですよ。もう私は覚えるほど読んでますし、それにこういった物語は

君達のような若い人達に知ってくれたらと思いましてね。」

「どんな内容なんですか?」

「これはですね・・・」

 

幾分興味を覚えた僕がそう訪ねると先生はいつもの口調でその物語について話し出した。

でもそれは確かにいつもと同じ口調だったけど、退屈さを感じるものじゃなかった。

話の内容も確かに珍しい物だったけど、それよりも・・うーん何て言うか・・・

多分それは・・・いつもの昔を懐かしむような、どちらかと言えば後ろ向きの話じゃなく、

『未来に対する希望』を今も持ち続けている様な話だったからだと思う。

 

・・・今から何百年も先の未来で人類や宇宙人が当たり前に付き合ってて、そんな世界を

宇宙船で旅しながら色々な出来事や冒険に遭遇する物語・・・

 

先生が立ち去った後も、僕は何だか不思議な気分で図書室にいた・・・

 

 

 

 

 

 

「・・・へえ、あの先生が・・・珍しいこともあんのね。」

「うん、何だか不思議だったな。」

 

その時、時計は11時を廻っていた。

夕食を終えてから僕たちはいつものように自分の部屋に戻り、それから僕は勉強していた

んだけど、何となく気晴らしにベランダに出てたら、いつの間にかアスカも起きてたのか

やって来ていた。

 

「希望を忘れないっか・・・なんか良いわね。」

「そうだね。」

 

その夜は何故かいつもより星が沢山見えて、満天の星空といった言葉相応しいような夜で

僕たち2人は最初いつものようにたわいもないおしゃべりをしていたけど、やがて話題も

尽きた後は静かに星空を見ていた。

 

「今まであんまり未来なんて考えたこと無かったけど、何となく想像しちゃうわね。」

「へえ・・・アスカはどんな未来を想像したの?」

「は、恥ずかしいから言わせないでよ・・・アンタこそどんな未来を想像する?」

 

部屋の明かりを背にした僕にはその時アスカの顔が真っ赤だったことに気付かなかった。

でも未来か・・・そういや僕もあんまり考えたこと無かったな・・・

 

 

 

「・・・ねえシンジ。」

「何?」

「私達、今何処に向かってると思う?」

「どこって・・・ベランダに立ってるだけで・・・」

「バカシンジィ〜」

 

僕の答えを呆れた様子でアスカが遮った。

 

「ほらあ、こうして過ごしてるだけでも時間てのは必ず未来に向かって流れてるのよね。

てことはアタシ達も今こうしている間にも未来に向かって進んでるんじゃない?」

「あ・・・そうか・・・」

 

言われてみれば確かにそうとも言えた。

僕たちは先生から聞いた物語みたいに『未来』という未知の世界を突き進む冒険者・・・

ほとんど妄想みたいだけどそう考えるとなんだか楽しい気分になってきた。

 

「ったくシンジは想像力が欠如してるのね・・・」

「ゴ、ゴメン」

「だからさ・・・」

 

そう言うとアスカは僕の腕にいきなり自分の腕を通して来た。

 

「えっ!?」

「しっかりアタシを導いてよね!未来への旅に。」

 

 

 

「・・・うん!」

 

その言葉を合図に僕達は腕を組んだまま部屋の中へと入っていった。

そして満天の星空を背に・・・まだ見ぬ『未来』に向かって・・・

 

 

 

 

 

 

                                     END

 

 

 

 

 

 

...The Human Adventure is Just Beginning


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