第六話、(Bパート)
世界のかたすみで、アイをささやいたもの
「父さん!」
シンジの声が外から聞こえた。
レイが、ピクリと動く。外の方を向いてる。
「何故、ここにいる。」
低い声。おじさまの声だ。
レイの表情が、少し動いたような気がした。
私も、もう逃げてはいけない。
「レイ。」
レイは、私の方を向いた。
「私達と、一緒に暮らさない?」
「…なぜ?」
「その方が、きっと楽しいから。」
「…。」
「…。」
「…。」
「似てるね。私達って。」
「え?」
「あなたは青のショートヘア。私は赤のロングヘア。
あなたの瞳は赤で、私はの瞳は青。
あなたの肌は病的な白で、私のは健康的な白。
あなたはいつも無口で、私はいつも喋ってばかり。
何から何まで正反対なのに、
二人とも、本当に言いたい事は言えないのね。」
私は話し続けた。
「口を開けば意味の無いことばかり。
私を月へ連れてって、とか、ね。
本当は、私の手を握って。と言いたくて、でも、言えない。
キスしてって言いたいのに、でも、言えない。
誰かに、本当の自分を知ってもらいたいのに。
誰かに、自分を受け入れてもらいたいのに。
嫌われるのが怖くて、逃げまわってるんだ。
ね。これが、わたし。」
外も、いつの間にか静かになっている。
シンジとおじさまの話は、もう、終ったのだろう。
私も、逃げちゃ、ダメだ。
「家族になろう。レイ。」
私はもう一度、言った。
「家族になろう。レイ。私達が力を合わせれば、怖いものなんてないわ。」
「だから、レイ。一緒に暮らそ。」
私は、レイに手をさしのべた。
レイは、迷って、迷って、手を出して、引っ込めて、また差し出して、それから、私の手を握りかえした。
ちょうどその時、シンジとおじさまが入って来た。
なぜだか分からないけど、おじさまは、とてもやさしい目をしていた。
シンジは、なんだか泣きそうな顔をしてる…バカね。
こうして、私達は家族になった。
まだまだ波乱は続くけど、
その話は、また今度。