私は…一体、何をしているのだろうか?
仕事で一緒になった赤木君と寝て…
ユイによく似た「綾波レイ」を引きとって…

ユイが死んで、誰もいなくなってしまった。
私のことを理解してくれる人は、誰もいなくなってしまった。

「うそつき。」
「本当は、誰にも理解されたくないくせに。」


見えない




世界のかたすみで、アイをつぶやいたもの


ホントは、誰にも理解されたくないくせに、
誰にも理解できないという優越感に浸りたいくせに。
(誰も僕を愛してくれない。)
…あなたが、誰も愛さなかったくせに。
(誰も僕を救ってくれなかったんだ!)
…あなたは、誰も救わなかったくせに。
(生きてる価値が欲しいんだ。)
…あなたは、誰にも与えなかったくせに。
(そんな、じゃあ一体、僕はどうすればよかったって言うんだ!)

不安なのね。

最初の他人は…母親。

要するに、マザコンなのよ。

…甘えたいのよ…他人の甘えは許さないくせに。

(人はさみしさを永遠になくすことはできない。人は一人だからね。)

…人は常に「二人」で、できているのではなかったの?
(ハッ)
…僕を捨てて逃げたくせに…
…僕を捨てないで…私を殺さないで…僕を忘れないで!…

君?誰?

イカリゲンドウ

「バカな、お前はシンジだ。」

…イカリゲンドウ…
イカリゲンドウの中のイカリゲンドウ。
あなたが捨てた、

人間らしい心


…ボクヲステナイデ…

誰もが心の空白を持っている。
…僕を捨てないで…
誰もが失われた部分を持っている。
…私を殺さないで…
人は忘れることで生きてゆける。
…僕を忘れないで!…

全ての男は消耗品だ。
女は子供を残せる、しかし、
男は「何か」を成さないかぎり、何も残せないじゃないか!

うそつき

(アンタが死んでも、EVAは残るわ。)

…何も残そうと、しなかったくせに。
…誰にも、伝えなかったくせに。
…誰にも、期待も希望も持たなかったくせに!

世界で一人、僕だけが!
そう、思い込んどるだけやで。

…そうやって、逃げるのね。
…私達から、逃げるのね。
じゃあ、どうすれば?
僕に、どうしろと?

「僕達を、色メガネで見るのは、やめて下さい。」

この閉じた世界があなたの世界。
あなたの望んだ「この世の終り」
あなたが「誰も救わなかった」世界。

「あなたがさみしいからと言って、僕達を、あなたの悪夢にひきずり込まないで下さい。」
「お前は自分が救われることだけを求め、誰も救わなかった。これは、その当然の帰結に過ぎない。」

「あなたは、結局、誰も愛さなかった。」
「ユイさえも。」

「愛していた!」

しかし、伝えなかった。伝えなかったから、伝わらなかった。

「そんなバカな。」

ユイさんも、所詮人である以上、心に空白をもっていた。

「嘘だ!」

…そうやって、逃げるのね。…自分自身から…

「逃げてはいない、逃げてはいない、私は、」

自分から逃げることなど出来ないわ。

ただ、忘れることができるだけだ。

ううう…では、私は…私は…。

「忘れることで、逃げてただけだ。」
「自分自身から。」

ううううう…「助けて…誰か助けてくれ!」

うん?光?
月の光だ…。
ユイ。
何故、そんな悲しそうな顔をしている?
(…もう、許して…)
お前に許しを乞うのは、私の方だ、ユイ。
(…もう、許してあげて下さい…)
誰を?
ユイは、静かに私の背中を指した。
振り返ると、シンジがいた。
(…もう、許してあげて下さい。あなた自身を…)
私を?
(大切なものを守れなかったあなたを。まだ、弱かった頃のあなたを。)
そうか、私は…
(あなたは、だから力が欲しかったのでしょう?)
ユイ…。そうか、私は、さみしかったんだ。私は…私は…
(もう、過ぎたことです。)
ユイ…お前を…愛していたよ。

目の前に、シンジがいる。そう、私は、私自身に、決着をつけねばならない。

「シンジ…お前は、私の最大の失敗作だ…。」

私は、メガネを外し、大きく息を吸った。奇麗な月が浮かんでいた。

「だからこそ…愛しているよ。」


we found "angels' wings"on our back.
episode 6."don't take care of yourself. please take care of your [self]."
次回予告
そして日常がくりかえされる。昔に良く似た風景、でも同じではない。過ちは、二度と繰り返してはならない。
次回:第6話Bパート
世界のかたすみで、アイをささやいたもの。