Sketching to morning park















朝。




日曜日の朝。




青い空の朝。




ベッドで目覚めた私の目が昇り立ての朝日を感じる。

だから私はそのままベッドから出て、朝の支度を行った。

そして私の部屋で朝食の後、私は着替えて出かけていった。








私は公園を歩いていた。

最近、休みの日は大体ここに来ているの。




天気の良い日ばかりだけど。




時々、私の姿を見つけて声をかけてくれる人もいる。

今日は走っていた女の人。

その女の人は、すれ違い際に「おはよう」って私に挨拶してくれた。

何となくいい気分。

だから私も「おはよう」ってその人の背中に声を返したの。




私はそうして朝の気分を感じながら、公園を歩き続けていた。

そしていつも何か目に留まった物を見つけたらそこに立ち止まるの。

朝露に光っている草木、花。朝日に照らされた公園のモニュメントとか。

そうしたら、私は持っていたスケッチブックを広げるの。

私の目に写った物をその真っ白い紙に私の手で写して行くために。








それにしても絵って不思議。

描いているのは本物じゃ無くて、見たままを描いているだけなのに。

前に本部で見た記録写真なんかよりずっと情報量は少ないのに。

私は本物をそのまま感じることが出来たりする。




何故?




多分、見たままじゃなくて、感じたままを描いてるからじゃないかって思うから。

そして、そう思うようになって私は前よりも絵を描きたくなったの。




何故?




だって・・・それは私の心が描いているってことだもの。

私に心がちゃんとあるってことを私に教えてくれてるものだもの。

だからいつも感じたままを描くためにここに来ているの。








でも今日は目じゃなくて、まず耳に感じたわ。

微かだけど誰かが楽器を奏でてるのが聞こえたの。

だから私はその音色の方へ歩いていった。

でも・・・正直驚いたわ。

だって・・・そこにいたのはあの人だったもの。




あの人。

紅い髪と蒼い目の人。

学校で同じクラスにいる人。

前に一緒に戦ったことがある人。

何時も碇君と一緒に暮らしている人。

私のことを名前じゃなくて「ファースト」と呼ぶ人。




私が見たのはそんなあの人が1人で楽器を奏でている姿だった。




私は少し慌てて辺りを見渡してみた。

ひょっとしたらと思って、碇君の姿を探してみたの。

けど何処にも見えなかった。

多分あの人は1人でここに来ていたのね。

時々止まったり、同じ所を繰り返しているから練習をしているのだろう。

すごく一生懸命みたい。




・・・私は前にあの人は私が欲しいと思っている物を何でも持っていると思ってた。




けど・・・そうじゃないのね。




誰でも最初から何でも持っているんじゃない・・・今の私と少し似ているみたい。




私が絵を描き始めるちょっと前に思ったの。

どうして私には何も無いのかって。

私は名前のとおり零の存在だからかもと思った。




でも多分・・・そうじゃ無いの。

ある日、思った・・・ううん、気付いたの。

私に何も無かったのは・・・何もしなかったからじゃないかって。

だから私は何かしなくちゃと思った。

そうしたら不思議と絵を描きたくなったの。




何故?




・・・ごめんなさい・・・上手く言えない。

今みたいに私が絵を描き始めたのはちょっと前からだけど、その時自分でも驚くほど綺麗

に描けたし、それに油絵なんかについても詳しかったの。

だって・・・お店にいってちゃんと色々な道具を選べたもの。

学校の授業で習ったよりずっと詳しく・・・

だから・・・多分、前の私がやってたんじゃないかって思う。




でも、今の私にはそのことの記憶が無い。

だからこの前、博士なら知ってるって思って聞いてみたの。

どうして前の私がそんなことをしてたのかって。

けど、知らないって答えるだけだった。

それどころか私が絵を描いていることに驚いていたわ。

私が絵を描くことって・・・そんなに変なことなのかしら。

その時、少し嫌な気分になった。

でも博士は私のそんな感情に気付いたのか、少し笑ってあやまってくれた。

それで博士が言うには多分前の私もしたくなったから始めたんじゃないかって。

前に博士が言っていた「人の感情はロジックじゃない」ってこういうことかしら。




だとしても変。




そう・・・私には前の私の記憶はほとんど受け継がれない筈。

でも博士は、多分記憶じゃなくて「思い」が残っているんじゃないのって言ってた。

「証拠も証明も出来無いけどね。」って付け加えながら。




だったら、これは私が自分の意志で始めたこと。

誰に与えられたのでも、誰に命令されたものでもないこと。

人である私の意志で始めたこと。








でも・・・そう思ってもまだ心に引っかかる。

じゃあ私は・・・前の私を反復しているだけなのかしら?

絵のことだけでなく・・・碇君への思いも・・・

だとしたら・・・悲しい。




でも多分・・・それは違うと思うの。




ごめんなさい・・・これも上手くは言えない。

けど、もし前の私がそう思っていたのなら、私もそう思って当然じゃないかしら。

だから・・・たとえ前の私が何もやって無くても、私は何かを始めていたわ。

そう・・・前の私がそうだった様に。

だって・・・私は私だもの。




だからこの前の・・・部屋の模様替えについてもそう。

あれはふと、こういう風にした方が良いと思うようになってたの。

と言うより、これじゃいけないって思った。

でも今度はどうしたらよいか全然解らなかったわ。

だから、色んな本を読んで、一生懸命頑張った。

そして結果は・・・遊びに来た碇君やあの人の表情で解った。

ふふ、2人ともびっくりしてたわ。

こういうのを「大成功」って言うのね。




それにお料理とかも研究しだしたの。

時々食べに行ったり、本を読んで自分で作ってみてる。

でも・・・やっぱり肉や魚は苦手ね。

克服出来ればもう少しレパートリーも増やせられるのに・・・

こちらはもう少し訓練が必要ね。








そんなことを考えているとさっきから聞こえていた音色が止まったの。

あの人の演奏が終わったのね。

その時不意に周りで聞いていた人かしら・・・その人達の拍手が聞こえたの。

私も思わずその人たちとと同じように私も拍手をしたの。

とても綺麗な音色だったもの。

でも気付かれないように小さく・・・

あの人は少し照れながらも嬉しそうにしていたのが見えた。




何だかすごく良い光景。

描いてみれば良かったかしら?・・・ちょっと残念。




そして楽器をしまおうとするあの人に何人かが声をかけてる。

私も声をかけようかと思ったけど・・・止めることにしたわ。

やっぱり上手くは言えないけど・・・その方が良いと思ったの。

1人で練習しているってことは碇君にさえ内緒みたいだもの。

だから・・・見てないことにしようと思うし、誰にも言うつもりも無いわ。




あの人は楽器をしまってもそのまま誰かと話している。

だから私は気付かれないようにそっと立ち去ることにしたの。

やっぱり・・・その方が良い気がするから。




だから今日は私のスケッチブックは真っ白。




でもちゃんと描けてるわ。

形の無いものが。

形で表せないものが。



そう・・・今日、私が描いたのは・・・

私自身の・・・「心」








                                                                          end












後書き




お久しぶりです。K−Uです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

高嶋さん、アスカ1行日記1周年、並びに80万hit突破おめでとうございます。




人が自分の好きなことを始める動機って何なんでしょうね?

人によって色々理由はあるとは思いますが、結局、自分自身が「やりたくなったから」の

一言じゃないかなと私は思います。

そして、それが何か良いことのきっかけになれば楽しいですね。




そんなことを考えながら書いてみました。




では、失礼します。



K−Uさんへの御感想はこちらへ:kazuo-u@mail.netwave.or.jp
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