第X話:心の病、身体の病
「おいケンスケ。首尾の方はどうや?」
「完璧だよ。今日の為に3ヶ月掛けて準備したんだ。失敗は許されない」
「ぬしも悪よのぅ」
「いぇいぇ、お代官様こそ」
「「げへげへげへ」」
校舎の隅の草陰で気味悪く笑う2人。
−−−−−−
「あ〜ぁ」
「どうしたの?ヒカリ」
「アスカはいいわよねぇ。スタイルいいし・・」
「何言ってんのよ。ヒカリは料理が料理が上手じゃない。アタシにはそっちの
方がうらやましいわ」
否定しない所がアスカらしい。
「中止にならないかなぁ。今日の健康診断。」
今日は私立第三新東京中学校健康診断の日。
男子は昨日の内にすませており、今日学校にいるのは女子ばかりだ。
−−−−−−
パシュッ!
青空の下に缶ビールを開ける音がする。
「あ〜ら、偶然ねぇ。こんな所で会うなんて」
「「ミ、ミサト先生・・」」
エビチュを飲みつつ挨拶をするミサト。
挨拶の相手はトウジとケンスケ。
「ところで、こんな所で何をしているのかしらぁ?教えてくれる?」
妙に優しい声で話し掛ける所がより恐怖感をあおる。
「先生、ど、どうしてここが・・・」
「元ネルフ作戦部長を甘く見ないでちょうだい」
こうしてトウジとケンスケの3ヶ月の計画は水泡と化す。
「ところでせんせ。昼間っからビールなんか飲んでてええんですか?」
「最近こうしないと調子出ないのよね」
健康診断受けた方がいいぞ。ミサト。
−−−−−−
「今日は久しぶりに静かだな〜」
「クェ〜」
シンジとペンペンは今日は留守番をしている。
リビングの日のあたる場所でゴロリと横になるシンジ。
(今日は時間があるから、いろいろと考えなくちゃ。アスカと綾波の事を・・
でも、たまには何もしないでゆっくりするのもいいな・・)
「ふぁぁぁ〜〜。気持ちいいなぁ」
「クーー」
いつしかシンジは暖かい光に包まれて眠っていた。
・・・・・・
「ただいまーー」
アスカと綾波が帰ってきたのかな。
綾波のただいまも微かに聞こえたし・・。
「ふぁ〜〜〜。お帰り。ずいぶん早かったんだね」
「アンタ何言ってんのよ。もう夕方よ」
もうそんな時間?外を見ると太陽がかなり低い位置にある。
「碇君。寝てたの?」
「ごめん。つい気持ちよくて・・・」
「ならもう少し寝ていて。夕食の支度は私がするから」
「いいよ。僕は今日ずっと休んでいたんだし、綾波こそ学校に行って疲れてい
るんだから休んでてよ」
「私は大丈夫。碇君はこれからずっとゆっくりしてていいのよ」
綾波はニコリと僕に笑顔をくれる。そして「じゃ、支度するから」と自分の部
屋へ戻っていく。
アスカはつまらなさそうな顔をして僕の方を見ている。
「アスカ・・・」
「まぁ、今日は特別にシンジはお休みでいいわよ。夕食の支度はアタシも手伝
うから」
「でも・・・」
「いいからシンジは黙って言う事を聞いていればいいのよ。わかった?」
「・・うん、じゃぁ今日は甘えさせてもらうよ。」
僕の返事を聞くと、アスカも着替えに自室へと戻っていく。
「毎日こうでもいいかな]
−−−−−−
数日後
「皆席についてー。これから健康診断の結果を返すわよ」
健康診断の結果が配られていく。クラスの皆は身長が何センチ伸びたとか視力
が落ちたとかいった話題でガヤガヤしている。
既にミサトさんの手元の診断結果は配り終ったのに、アスカのだけが無い。
「あれ、アスカのは?」
「そうよミサト。アタシのはどうしたのよ!」
「ミサト先生でしょ。アスカは再検査の必要があるから今週中にでも病院に行っ
てちょうだい」
「なによそれ。なんでアタシだけ2回もしなくちゃいけないのよ」
「アスカ、どっか具合悪いの?」
「そんな事ある訳ないじゃん」
「アスカが健康かどうかは診断の結果によるけど、その診断書をなくしちゃった
のよ。病院が」
「なんや。そんな事かいな。心配して損したわ」
「鈴原。なんて事いうのよ!」
「残念だったわね〜アスカ。シンちゃんにナイスバディの証拠が見せられなくて」
「「そんな事ないわよ(よ)」」
なぜか一緒に否定するシンジ。その後ろではトウジがヒカリに耳をつねられている
。
「いや〜。平和だね〜」
ケンスケがつぶやく。
−−−−−−
その日の夜。葛城家で4人そろっての夕食が始まっている。
「ねぇ、シンジ」
「なに?」
「明日早速健康診断に行くんだけど、シンジも一緒に来てよ」
「ええっ。どうして?」
当然の質問に驚くシンジ。アスカを睨むレイ。エビチュを飲むミサト。
「あったりまえでしょ。このアタシを一人で行かせようって〜の。アンタは」
「べ、別にそういう訳じゃ・・・」
「ならいいでしょ?」
「ダメ!」
「なによレイ。アンタには聞いてないわよ」
「碇君が困っているわ。碇君を困らせる人は私が許さない」
「ぬわんですってーーー」
ギャーギャーと騒ぎはじめる。
その時、ガンッ!とエビチュをテーブルの上に乱暴に置く。
「3人とも、いいかげんにしなさい!」
「さ、3人って僕も?」
そんなシンジの訴えは無言で却下するミサト。
「アスカも我慢なさい。シンジ君は明日も学校があるのよ。それに病院は遊び
場ではないわ。騒いで病院の人に迷惑かける訳にいかないでしょ」
「でぇもぉっ」
「でももストライキも無いわ」
結局、アスカは1人で病院へ行く事になった。
僕はアスカの寂しそうな顔を見て心配になった。
アスカは病院が嫌いだと思う。病院が好きという人はあまりいないと思うけど
アスカの場合は特に嫌いなのではないだろうか?
夜、僕はアスカの部屋をたずねる。
「アスカ。入るよ」
「なに、シンジ」
「あの、明日の事なんだけど、やっぱり僕も一緒に行くよ」
アスカの顔が明るくなる。
「ありがと。でもどうして急に?」
「その、それは・・・、アスカが心配だから・・・」
つい声が小さくなってしまう。やっぱり恥ずかしいな。こういう事いうのは。
「ありがと、シンジ。でも大丈夫よ。明日は1人で行ってくるわ」
「えっ。どうして?」
「心配してくれるのは嬉しいけど、病院ぐらい1人でもいけるわ。それよりも
シンジは授業を受けなきゃだめよ。これ以上成績悪くなったらどうするの」
「そんなに悪くはない・・・と・・思う・・・・」
「あ〜ぁ、アタシにはそれが心配だわ」
「アスカ〜」
アスカは楽しそうな顔をしている。
でも、なにもそんな話題に振らなくてもいいのに・・・。
僕がそんな事を考えていると、突然アスカがおでこにキスをしてきた。
「ア、アスカ。なに?」
「お礼よ」
「お礼?」
「そ。シンジがアタシの事を心配してくれたんだからね」
「そ、そう」
「そうよ。まぁねぇ。これからはもっとしょっちゅうアタシの部屋に来てくれ
ると嬉しいんだけどねぇ」
「そんなぁ。本当に心配して来たのに」
「冗談よ。さぁ、もう遅いから寝ましょ」
「うん。そうだね。それじゃおやすみ。アスカ」
「おやすみ。シンジ」
−−−−−−
翌朝
「それじゃ、行ってくるわね。」
「うん。行ってらっしゃい。アスカ。気を付けてね」
「大丈夫よ。あっ、レイ。行ってくるわね」
「いってらっしゃい」
いつもの学校へ行く時間よりも少し早い時間に出発するアスカ。
やっぱり、少し心配だな。
「碇君。私達もそろそろ学校へいきましょ」
「そうだね。あっ、ミサトさんを起こさないと」
それから間も無くトウジ達が迎えに来る。
いつもと変わらない朝。アスカがいない事を除けば・・・。
−−−−−−
数日後
僕とアスカと綾波は学校に向かって走っていた。
「まったく、何だって寝過ごすのよ」
「しかたないだろ。昨日は3人であんな事してたんだから」
器用に走りながら会話をしている。
「レイも起きてたんだったら、起こしてくれてもいいじゃない」
「碇君が気持ちよさそうに寝てたから」
「それでシンジの布団に潜り込んでたってわけぇ。あんたわぁ」
3人寄らば文殊の知恵というが、この3人の場合、3人よればそこは修羅場。
教室に駆け込む3人。ギリギリで遅刻にならずにすんだ。
「「「ハァハァハァ」」」
「おはよう、碇」
「はぁはぁ、おはよう。ケンスケ」
「せんせは今日も両手に花やなぁ」
「はぁはぁ、そんなんじゃ、はぁはぁ」
今は反論している余裕はない。
とりあえず席につく。
「あれ?ねぇトウジ。ミサトさんはまだ来てないの?」
「まだ来てへんでぇ。おまえらが家を出る時にどこにおったんや?」
「えっ。一応声を掛けたけど・・・。返事もしてたし」
「さよか。そらおかしいなぁ」
もしかして又寝ちゃったのかな?
どうしよう。
とりあえずアスカに相談しようとアスカの方を見る。
アスカは何やら封筒の様な物をカバンから取り出していた。
「アスカ、なにそれ?」
「これ。健康診断の結果が送られてきたのよ。アンタ昨日郵便受け確認しな
かったでしょ」
「うっ、ごめん」
「別にいいわよ。それより、アタシのナイスバディの証拠。見たい?」
「いいよ。そんなの」
「そんなのですってぇ!」
「なんや。なに騒いどんのや?」
僕らの騒ぎを聞きつけてトウジがやってくる。
ケンスケや洞木さんもやってきた。
よく見るとクラス中がワイワイやっている。
ミサトさん。本当に寝ちゃったのかな?
「健康診断の結果よ。アンタ達には見せてあげないわ」
「なんでや。減るもんやなしに」
「減るのよ。アンタ達が見るとね」
「そうだ。碇ぃ、後で教えてくれよ」
「えっ。教えてどうするの?」
「アスカの身体情報付きプロマイドなら高く売れるに違いないからね」
「ところで相田。アンタ健康診断の日。なにしてた?」
「(ギクッ)な、なんの事だ」
「とぼけても無駄よ。ミサトにちゃ〜んと聞いてるんですからね」
「うっ」
「鈴原。アンタもよ!」
「うぅっ」
「ばらされたくなければ、おとなしくしている事ね」
「「うぅぅぅぅっ」」
なぜか2人とも静かになってしまう。
なにしてたんだろう?
「さぁて、覚悟しなさいよぉ。シンジ」
「か、覚悟って・・・」
アスカは封筒の中の書類を机の上に広げる。
「あれ、アスカ。この紙はなに?」
「なにかしらね。どれどれ、『HIV検査結果通知書』?」
「アスカ。わざわざその検査も受けて来たの?」
「アンタバカ〜。そんなの受ける訳ないじゃん」
そこに洞木さんがやってくる。
「アスカ。検査の時に血を抜かれなかった?」
「そういえば、少し抜かれたわね」
「やっぱり。最近の病院では一般の健康診断にHIVの検査も入っているのよ」
「へぇ〜。洞木さん、よく知ってるね。さすが委員長だ」
「アンタバカ〜。それと委員長とは関係ないじゃん」
「そうかな?」
「そうよ。まったく。どれどれ〜、アタシは陽性なのね。ということは・・・」
アスカは急に黙ってしまった。
そして聞こえてきたクラスの皆はアスカから距離を取る。
トウジやケンスケや洞木さんまでもが・・・・。
「みんな。どうしたんだよ」
僕には皆の行動が理解できなかった。
アスカの紙に書いてある事が何を意味するのかは理解できる。
でも、急にそんな態度をとるなんて・・・。
「いいのよ。シンジ」
アスカは下を向いたままつぶやく。
「アスカ・・・」
アスカは急に立ち上がり、そして叫ぶ。
「どうせ誰もアタシの事なんか必要としてないのよ。邪魔者なのよ」
アスカは教室の出口に向かって走り出す。
しかし、アスカの進路をレイがふさぐ。
「なによレイ。どいてよ!」
「あなたが出て行く必要はないわ。私達と一緒にいて」
アスカの目から大粒の涙がこぼれる。
アスカはそれを見せまいと顔を伏せ、レイを突き飛ばして出ていってしまう。
レイはその場に倒れる。
「綾波。大丈夫?」
「私は平気よ。それよりアスカを追って」
「ありがとう。綾波」
僕はそういいながら全力で走り出していた。
僕が教室から出た時、アスカは丁度階段を降りはじめる所だった。
「アスカッ!」
アスカは振り向きもせず全力で走っていく。
そういえば以前にもこんな事があったな。
今回も絶対に追いついて見せる。
僕も階段を降りはじめる。
アスカは既にかなり下の方まで行ってしまっている。
(絶対に見失っちゃだめだ。僕がアスカを守ってあげなくちゃ)
僕は余計な事を考えるのを止め、全力で走る。
校舎を出るとアスカは既に校門に差し掛かっている。
「何とかしなきゃ」
校門の外に出ると姿が確認しずらくなる。
速く、早く追いつかなきゃ。
僕は校門を出てさらに勢いをつける。
すると先の交差点でアスカが座っているのが見える。
どうやら誰かとぶつかったらしい。
今を逃したら又アスカに追いつけなくなる。
僕は既に思いっきり走っていたが、さらに速く走る様に力を入れる。
「アスカッ!」
アスカに駆け寄ると、どうやら膝をすりむいているらしい事が解った。
なかなか立てない所から足をひねっているかもしれない。
「アスカッ」
僕はアスカの腕を強くつかむ。
もう2度と放さないように。
「なによ。なにしに来たのよ」
「アスカ」
「痛いわね。手放しなさいよ」
「いやだっ」
「アタシに触るとエイズがうつるわよ」
アスカの言葉に周りに居た人たちがスッと離れる。
それを見たアスカは悲しそうに話す。
「ほら、アンタも離れなさいよ。無理して来てくれなく・・・」
「違うよっ!」
僕はアスカの言葉をさえぎって叫ぶ。
「僕はアスカを大切に思っている。アスカが必要なんだよ」
「シンジ・・・」
ようやく、アスカは少しだけ落ち着いてきた。
きっとアスカは今、1人になりたい気分なのだろう。
さっきの通知を見れば誰だってショックを受ける。それに皆の反応も・・・
でも僕は今アスカを1人にすると、又どこかへいってしまう気がして、アスカ
の側を離れたくなかった。
「シンジ。ありがとう。でも、もういいの」
「あすか・・・」
「アタシの命はあと何年持つかわからない。だから、これからはレイの事だけ
見つめてあげて」
「なに言ってんだよ、アスカ。止めてよ」
「いいの、もう本当にいいの・・・」
僕は悲しくてしょうがなかった。アスカがこんな事を言うなんて・・・。
とても弱々しく見える。いつものアスカじゃない。
僕が守ってあげなくちゃ。
「シンジ。これでもうひっぱたかれる事も無くなるのよ。それに・・・」
アスカは喋る事を止めなかった。
でも、僕はアスカの口からそんな言葉は聞きたくなかった。
これ以上アスカに悲しい思いをさせたくなかった。
「・・・!!」
僕はアスカを強く抱きしめると、口付けをした。
もう2度と離れないように強く・・・。
もう2度と悲しまないように長く・・・。
「シンジ・・・」
「アスカ・・・」
「シンジは恐くないの?その・・・あたしが・・・」
「恐くなんかないよ」
「私はさっき人とぶつかっているのよ。もし口が切れていたらどうするの?」
「そんなの関係ないよ。それより僕はアスカにこれ以上悲しい思いはさせたく
ないんだ」
「でも、もし感染していたらシンジも死んでしまうかもしれないのよ?」
「構わないよ。僕にはアスカの心の方が・・・・」
「バカッ!」
バシィ!
僕はこれまででもっとも強烈なアスカのビンタをくらっていた。
「そんな事言わないで。シンジはこれからもずっと生きるのよ。そうすれば
アタシはシンジの心の中で生きて行けるわ」
「アスカ・・・」
「アタシの幸せはシンジが幸せになる事なの。だから生きて、幸せになって・・」
そこまで言うとアスカは泣き出してしまった。
僕はもう一度アスカにキスをした。
さっきよりも優しく。
「アスカ・・・」
「シンジ・・・」
「一緒に病院へ行こう。2人で」
「シンジ・・・」
「すぐに入院する訳じゃないし、もし入院しても毎日会いに行くよ。僕はいつ
でもアスカの側にいるよ。」
「シンジ。ありがとう。でも・・・」
「でも?」
「もし入院して前の時みたいな姿になったらそんなのシンジに見られたくない・・
」
「どうして?」
「シンジは奇麗なアタシだけを知っていてほしいの。痩せて醜くなったら・・」
「アスカは醜くなんてならないよ」
「え?」
「アスカの外見がどうなろうともアスカはアスカさ。奇麗なままだよ」
「シンジ・・・」
「さあ、一緒に行こう」
「うん」
こうして2人は身を寄せ合って去っていった。
もう、周りの目は気にならない。
お互いが側にいればそれですべてがよかった。
−−おしまい−−
のつもりが続き
「ぬぁんですって〜〜〜〜!」
アスカの叫び声が病院中に響く。
「ア、アスカ。ここは病院だよ。もうちょっと静かに・・・」
「うるさい!シンジはだまってて。間違いってどういうこと〜」
「いや〜。すまんすまん。惣流君の学校での健康診断の結果をパソコンに入力
しててね」
「そ〜れ〜で〜」
「で、その時にパソコンが急にクラッシュしたのだよ。そのごたごたでカルテ
をなくしてしまってね。再検査となったのだ」
「それとこれとどういう関係があるのよ!」
「アスカ。もっと小さい声で・・・」
「うるさい!」
「いや、それでね。データを復旧して惣流君の再検査の結果を入力したのだが
復旧が完全でなくデータの1ビットだけ反転したままだったのだよ」
「それがっ」
「そ、それが、HIV検査の陰陽の部分だった・・・」
「じょ〜だんじゃないわよ。キーーーーーー」
「ア、アスカ。落ち着いて。暴れちゃだめだよ」
「ひぇ〜〜〜〜。お助け〜〜〜〜」
−−−−−−
一通り暴れたアスカは多少すっきりしたのか落ち着いていた。
すりむいた膝の手当てをしてもらい帰宅する途中である。
「ねぇ。シンジ」
「なんだい。アスカ」
「今日はアリガト」
「いや、僕は別に・・・そんな・・・」
うぅ、真っ正面から言われると照れちゃうな。
それになんだかアスカが奇麗に見える。
「シンジだけがアタシに優しくしてくれたわよね」
「僕は別に・・意識してやっていた訳では・・・」
「そこがいいのよ」
「そうだ。綾波もアスカの事、止めようとしてたよね」
「そういえばそうだったわね。それなのに突き飛ばしたりして・・・」
「大丈夫だよ。アスカ。ちゃんと誤れば許してくれるよ」
「そうよね。よ〜し、これからはレイにも優しくしてあげなくちゃ」
「そうだね」
2人は手をつないで帰ってくる。
玄関を開けようとすると、勝手に開いてしまう。
そこに居たのはミサトだった。
「あら、2人ともお帰りなさい。仲良くどこいってたの?」
「べ、別にどこだっていいじゃない」
「ふ〜ん、そう。ところでアスカ健康診断の結果についてだけど・・・」
「知ってるのミサト。そうよね。知ってるわよね」
(きっとクラスの皆から聞いたんだわ。クラスの皆とは最悪の別れかたをして
しまった。明日どんな顔して会えばいいんだろう。)
(いや。別に気にする必要はないわね。だって、皆あんな態度をとったんだし)
アスカは少々クラスの皆に不信感を抱いてしまっている。
シンジだけがいればいい。そう思っている。
「もちろんしってるわよ。アスカが健康だって事」
「えっ。なんでそうなるのよ」
「今朝ねぇ、病院から電話があったのよ。あなた達が家を出た直後にね。アス
カに間違えた書類を送ってしまった。開封せずに返してくれってね。まったく
あの病院の管理体制には問題があるわね。変えなくちゃ」
「それで今朝は遅刻したんですね。てっきり起こし忘れたかと思いましたよ」
「えっ。そうよ(本当は電話のおかげで目が覚めたとは言えないわね)」
「ふ〜ん。そうだったんだ」
「でね、教室にいったらクラス全員がアスカを探しに行こうとしてたのよ」
「みんなが・・・」
「そうよ。叫んでる子もいたわ。『取り返しのつかない事をしてしまった〜』
ってね」
「そう・・・」
アスカの目が少し潤んでる。
「だから、本当の事はアタシから皆に話しておいたわ。そしたら皆アスカに誤
るって家に押しかけてきそうになったのよ。だから、代表者だけ連れて来てる
わ。いまごろ中で待ってるわよ」
「本当?」
「ええ」
「アスカ。早く皆の所に行ってきなよ」
「シンジ。ありがと。ミサトもありがとう」
「はいはい。いいから早く行きなさい。皆待ってるわよ」
「うん」
アスカは走って家の中へと入っていく。
「ところでミサトさん。どこに行くんですか?」
「ちょっち、飲み物を買いにね」
ガッシャ〜ン。
キーーーーーーー。
(どうしたんだろう?なんだか家の中が騒がしいな・・・」
「それよりシンちゃん。ずいぶん大胆になったわねぇ」
「(ギクゥ)な、何の事ですか?」
「とぼけたって無駄よぉ。天下の往来で抱き合ってキスしたっていうじゃなぁ
い。しかも2回も」
「ど、どうしてそれを・・・」
「鈴原君と相田君と洞木さんもアスカを追っかけて行ってたのよ。そしたら2
人がキスしてたって」
「そんなぁ、見てたのかぁ」
「あとねぇ・・・」
「はい?なんですか?」
「相田君が2人のキスシーンを録画してたみたいでね。今、それを皆で見てた
みたいよ」
「えぇ〜〜〜」
「だいぶ中が騒がしいのは、アスカが暴れているのね」
「そんなぁ〜〜」
「じゃ、私は買い物に行ってくるからね。遅くなるから先に寝ててちょうだい」
タッタッタッタッ
「ミサトさ〜ん。コンビニはすぐそこにありますよ〜〜」
ミサトは走って行ってしまった。
(さてはミサトさん。逃げたな)
ガラガラガッシャ〜〜ン!
うぅぅ、中に入りたくない・・・。
そしてシンジは夜の闇へと消えていった。
翌日のミサトの一言:無理もないわね。
本当におしまい。
作者あとがき
高嶋さん。100話突破おめでとうございます。マジでアヤカリタイっす。
で、このお話なんすけど、大体100話前後のサブストーリーのつもりです。
アスカがレイの事を「レイ」と呼び、レイがアスカの事を「アスカ」と呼ぶ所。
カヲルさんはたまたま学校をお休みしてたってことで・・。
ストーリーは結構先読み出来てしまいますね。許して下さい。
HIVについては、最近ではこの小説のような勘違いはほとんど無くなりましたよ
ね。
病気になると(たとえ軽い風邪でも)心細くなる物です。みんな優しくしてね。
私は年末年始を咳と高熱ですごしました。歩けなかったもんな。
そんな時、お見舞いとかは非常にありがたいっす。
みんなもインフルエンザに注意して下さい。
で、一応HIV関連について補足説明させて下さい。
※実際には検査結果を電話や郵便で知らせる事はありません。
※HIV = 人(Human)・免疫不全(Immuno-deficiency)・ウイルス(Virus)
※検査はHIVを調べるのではなく血液中のHIV抗体を調べます。
※HIV抗体とは、HIVをやっつける為の物です。感染すると出来ます。
※HIV抗体が出来るのには感染から約3ヶ月です。
※HIVに感染していてもエイズである訳ではなく、可能性があるだけです。
※蚊による感染の可能性はありません。
記念コメント(特ダネ編)
アスカ:シンジ、知ってる知ってる!?
シンジ:何、アスカ?もしかして、かくしEVAにペンペンが全然出てこない
ってこと?
アスカ:そ、それも気になる話だけど、違うわよ。
シンジ:じゃあ、何?もしかして、トウジが走れないのに走っちゃったってい
う話?
アスカ:そ、それはもうばれてるし、高嶋の苦しい言い訳で解決したはずでし
ょ!?
シンジ:じゃあじゃあ、かくしEVAも昔はよかったけど、今はだらだらして
て詰まんないって言う話?
アスカ:あぁ〜っ!!それは禁句でしょ!?いつもは温和な高嶋も、気にして
ることを指摘されるとキレるわよ。
シンジ:うそ・・・あの高嶋さんが?
アスカ:あいつは狂犬よ。気をつけた方がいいわ。ってそういう話じゃないで
しょ?
シンジ:何の話だったっけ?
アスカ:それは・・・そうそう、HIVウィルスの特ダネよ。
シンジ:特ダネ!?何だか胡散臭いなあ・・・・
アスカ:いいから、ききなさいよっ!!
シンジ:はいはい・・・聞きますよ。
アスカ:じゃあ、言うわよ・・・・
シンジ:・・・・・
アスカ:実はね・・・・キスじゃうつらないんだって!!
シンジ:・・・それが?
アスカ:だ・か・ら!!アタシ達はキスしてもいいってことよ!!
シンジ:うつるも何も、僕達は別に感染してる訳じゃないだろ?関係ないじゃ
ないか。
アスカ:あ・・・・それもそうね。
シンジ:気は済んだかい?じゃあ、僕は夕食の支度をするけど・・・
アスカ:あ、待ちなさい!!問題はキスをしてもいいっていう事実なんだから!!
シンジ:僕は遠慮しておくよ。じゃあ・・・・
アスカ:こら〜!!アタシの唇は、そんなに価値の無い物な訳!?もう勘弁し
ないわよ!!
さて、記念投稿第三十六弾は、力丸さんのお話です!!
ありがとうございました!!そして掲載が遅れてごめんなさい!!お詫び申し
上げます!!
で、内容ですが・・・・エイズねえ・・・・まあ、それよりもらぶらぶでしょ
うね。かくしEVAの、というよりEVA小説HPの読者層は大学生が中心で
すから、皆さん私なんかよりずっとこういうことには造詣が深いでしょうし・・・・
という訳で、らぶらぶで見ますと、うん、典型的ならぶらぶで、楽しめました。
シンジ君も頑張ってるみたいだし、すべてよし!!ですね。今度力丸さんはH
Pを作るみたいですから、今度の作品に期待しましょう。
では、今日もこの辺で。ありがとうございました!!
力丸さんへのお便りはこちら:
rikimaru@t3.rim.or.jp
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