無人島シンちゃん
その日はとてもよく晴れていて、日差しがとても強く、何もしなくてもじわっと汗がで
てきそうな日を迎えていた。
少し、昔の話をしておきましょう。最後の使徒を倒した後、ネルフは崩壊した第3新東
京市を復興させるために、零号機、初号機を使い、壊れた建物や、埋まった武装具などの
撤去及び修復作業を行ってきた。しかし、不慮の事故によりレイ(3人目)は零号機に吸
収されてしまったが、サルベージされ、なんとか助かったが、肉体及び精神が推定年齢7
歳になってしまい、シンジとミサトは小さくなったレイを引き取り、精神崩壊を起こした
アスカを看病しながら毎日を暮らしていた。これが、ちょうど1年前の話である。
最近は、アスカも完全復活し、レイも元気に走り回っている。アスカは弐号機には乗れ
なかったが、そのかわりパワーロック(人型作業用ショベル)の操縦を器用にこなすため
作業は順調に進んでいった。彼女曰く、「ゲームみたいで面白いわよ」だそうで、本人は
楽しんでいるようだ。
そんな訳で、作業も順調にすすみ、おおかた片づいてきたため、現在僕と、アスカとレ
イはペンペンを連れて、野外キャンプ(ネルフ私有島いわゆる無人島)に長期休暇をとっ
て来ている。
「ふぅ・・・やっと家が出来上がったよ・・・リツコさんがくれたパワーグラブのおかげ
かな?思っていたより早くできあがったなぁ・・・」
「やっと出来たの?まったく・・・あんたはいつもいつもトロイのよ」
「しょうがないだろ!!アスカが壁で仕切れだのなんだの色々注文するから材料が多くな
っちゃって、時間がかかっちゃったんだよ」
「あんたバカ?私のせいだとでも言うわけ?・・・男と女が一つ屋根の下で寝起きするの
よ!壁ぐらい当たり前じゃない!」
悪態をつきながらさっさとシンジお手製(制作時間3時間)の家に入っていく。
中は、4畳半ぐらいの広さで、床にはゴザがしいてある。天井は一番苦労していただけ
あってシュロの葉が何重にも重ねてあり、少々の雨ならしのげるぐらいの仕上がりになっ
ている。壁にはカーテンみたいな布が仕切として真ん中につりかけられている。
「ふぅーん・・・まぁまぁね・・・」
「どう?アスカ気に入ったかな?」
「ま、シンジにしてはよくできているわ」
「そう?屋根には結構苦労したんだよ。シュロの木をかなり切り倒したからね・・・」
「わぁー!!家がきれいに出来上がってる!!うわー!!すごぉーい!!」
レイがペンペンと一緒に入ってくる。
「あ!レイ!今までどこに行ってたのよ?」
「ペンペンと遊んでいたんだよ、ね!ペンペン」
「クゥェ!」
ペンペンが元気よく返事をする。
「まぁまぁ、レイはよく遊ぶことが仕事みたいなものだからね・・・しょうがないよ」
「あんたは、いつもそうやってレイを甘やかすんだから・・・もう!しつけはきっちりし
ておいた方がいいのよ!」
「わかってるよ、そんなに怒ること無いだろ?」
「まったく!シンジってばレイにはやさしいんだから・・・」
悪態をつくアスカのお腹の虫が鳴いた。顔を赤く染めるアスカ。
「なによ・・・もうこんな時間なのよ!お腹ぐらいすくわよ!」
「そうだね・・・そろそろお昼ご飯にしようか」
「でも、ご飯家に忘れて来ちゃったよ・・・」
食料類をレイのリュックサックに入れておいたのだが、レイがその肝心のリュックサッ
クを家に忘れてきてしまったのである。
「・・・そうだったね・・・仕方ない、森に何か食べれるものを探しに行こうか」
すくっと立ち上がるシンジ。
「それじゃ、私は火を起こしておくわ」
「レイはシンジお兄ちゃんと一緒に行く!」
「クゥエ!クゥエ!(僕も行く!)」
「だめだよ、森の中は危険がいっぱいだから、レイはついて来ちゃだめだよ。ここで留守
番していなさい。お兄ちゃんが沢山食べ物をとってくるからね・・・・」
シンジはニコリとレイに笑いかけると頭をなでながらそう言った。
「やだやだやだ!!レイもお兄ちゃんと一緒に行く!!」
「連れていったら?シンジお兄ちゃん」
「からかうなよ!アスカ・・・あのね、レイちゃんお願いだからお留守番していてね、あ!
そうだ!レイちゃんアスカお姉ちゃんを監視していてよそうしないといつまたサボるか分
からないから」
どうしても言うことを聞かないレイにシンジはレイの目線にあわせるようにしゃがむと
そう言って聞かせた。レイは少しの間、指をくわえて考えていたが。
「わかった!」
と元気よく返事をすると、アスカを見て、
「お姉ちゃん、さぼったらシンジお兄ちゃんにいうからね!」
と、言った。
「ちょっとシンジ、どうして私がさぼるのよ?そんな事する分けないでしょ?」
「そうでも言わないと、森に付いて来ちゃうだろ?森の中で迷子になったりしたら、僕責
任とれないよ・・・」
「それもそうね・・・アンタにしては上出来かしら、それじゃシンジとっとと食料調達し
に行って来てちょうだい」
「分かったよ!じゃ、行って来ます」
「「いってらっしゃーい!!」」
みごとにユニゾンした2人が手を振って見送る。遅れて、ペンペンが手を振る。シンジ
はとぼとぼと少し寂しそうに森の中に入っていく。
「少し、怖いけど・・・腹減っているし・・・しょうがないな・・・」
シンジは、周りに気を配りながらゆっくり食料を探した。とりあえず、リンゴのような
果物を見つけて、それを籠の中に入れた。
「これだけじゃ、さすがにたりないだろう・・・まだ何かないかな?・・・あれ?こんな
ところに洞窟があるぞ・・・」
とてつもなく妖しげな洞窟がポッカリと口を開いている。奥の方は、暗くてよく分から
ない。しかしシンジは何となく入ってみたくなった。
「ちょっと入ってみようかな?キノコとかあるかもしれないし・・・」
そして、洞窟に入っていくシンジ。その後、3時間経ってもシンジは帰ってこなかった。
「遅いわね・・・シンジ」
「遅いねシンジお兄ちゃん・・・」
「迎えに行ってみましょうかしら・・・でもどこ行ったとか分からなくなるとこっちが遭
難しそうだしね・・・」
「クエ!クゥエークェ!」
「え?シンジお兄ちゃん洞窟にいるって?」
「あんた!ペンペンの言っていることが分かるの?」
目を丸くしてレイに聞くアスカ。
「分かるのよ、だって相思相愛の仲だもん!ね!ペンペン!」
「クェ!クエ!」
「それで?その洞窟はどこにあるの?」
「キューエ!クエクエ!!」
「森の中の山の麓だって」
「じゃ、早速そこに行くわよ!!」
すくっと立ち上がる2人と1匹。先頭に立ってズンズン森の中を進んでいくアスカ。や
がて目的地の洞窟にたどり着く。
「この足跡は、たしかにシンジのものだわ・・・ここに入ったのは確かみたいね・・・」
ポッカリと口を開けているその洞窟はシンジが入ったときと変わらず薄暗くジメジメし
ている。
「入るわよ・・・」
「うん・・・(ゴクリ)・・・」
「クエ!」
「ペンペンが道案内するって!」
「それじゃ、ペンペンが先頭ね!」
今度はペンペンが先頭に立って歩いていく。
「うわぁ・・・辞典にも載っていないようなキノコが沢山生えてるよ・・・このポケコン
にも載っていない・・・これは大発見だ!」
その見慣れないキノコを手にとってみる。その瞬間、キノコの傘の部分から胞子がふわ
っと出てきて、シンジの体の周りを取り巻く。
「うわぁ・・・・」
そして、そのまま胞子に抱かれるように倒れるシンジ。
「!!どっかで、何か物音がしなかった?」
「え?聞こえなかったよ、アスカお姉ちゃん」
「いいえ、聞こえたわ・・・たしかこっち・・・!!!!シンジ!!!」
ついに、倒れているシンジを見つける。駆け寄る2人と1匹。
「ん?なんだ・・・・おぉ!!これはまたおいしそうな食べ物が並んできたなぁ・・今日
の夕食は、フルコースですか?」
しかし、シンジの目は完全に逝っちゃっているし、顔色も蒼白色から青紫色に変わって
いる。
「どうしたのよシンジ・・・あんた・・・そのキノコ食べたんじゃないの?」
「シンジお兄ちゃん目が逝ってるぅ!!!!!」
「クゥエェェェェェ!!!!」
ヨダレを少し垂らしながら、迫ってくるシンジ。後ずさる3人。
「ちょっと、シンジ?しっかりしなさいよ!」
「うるさいオードブルだなぁ・・・」
ついに、アスカが捕まってしまう。その力はいつものシンジの数倍で、握られた腕が痛
くなる。
「痛い!痛い!ちょっとバカシンジはなしなさいよ!!これも、キノコの効果ね?」
シンジの顔色が赤い色に変わっていく。
「ふふふふふふふ・・・・あすかぁ・・・いつもいつも、わがままばっかり言いやがって!
俺がどれだけ我慢していると思っているんだ?」
急に日頃の愚痴を言い出すシンジ。
「何言っているのよシンジ。もう!!帰るわよ!あ!これリンゴみたいだけどこれね!さ!
はやく帰るわよ!!」
「蛙が鳴くから帰る・・・」
「あはははははは・・・・シンジお兄ちゃんおかしぃー!!」
「馬鹿なこと言ってないで、はやく帰るわよ!」
「蠅ははえー」
「きゃはははははははは・・・」
「・・・・・・・」
駄洒落を連発するシンジを引きずりながら浜辺まで戻ってきた3人と1匹。
「ほぇーん・・・・」
「今度は、ラリってるわ・・・」
「きゃはははははははは・・・シンジお兄ちゃんバカみたい」
「バカなのよ!まったく・・・お昼ご飯どうしようかしら・・・」
「リンゴならあるよ?」
リンゴらしき果実をアスカの前に差し出すレイ。
「ちょっとまちなさい!」
ピッとポケットコンピューターを起動させるアスカ。
「シンジが調べていればいいんだけど・・・えっと・・・あったあった、えーっとベニリ
ンゴ?一応リンゴなのね?・・・ん!?んん??これ、毒性があるんじゃない!まったく、
シンジのしそうなことだわ・・・これじゃ、食べられないじゃない・・こうなったら・・
最後の手段ってヤツ?」
そう言って、ペンペンをしげしげと見つめるアスカ。
「ギュョェ?」
「はっはっはっはっは・・・・冗談よ、冗談・・・それじゃ、どうしようかな?」
「私、食べ物探しに行ってくるぅ!!」
「え?あなた食べれるもの分かるの?」
「砂浜だから、きっとアサリとか、ハマグリとかがあると思うの」
「ナイスアイディアね!早速、探してみましょ?」
砂浜に出て、そこら辺を掘ってみる2人と1匹。レイは、すぐアサリやらハマグリを掘
り出すが、アスカは掘っても掘っても何にも出てこない。
「むっっきーーーーーーー!!!どうして、何も出てこないのよ!!」
「アスカお姉ちゃん、アサリがいる所は、少し膨らんでいるんだよ。それと、ハマグリは
よく見ると、2個穴があいているんだよ、それに1メートルも掘らなくてもいいのよ、せ
いぜい30センチぐらいね・・・」
急に大人になったような口調でアスカに説明する。
「っっっ・・・悪かったわね!初めてなのよ!貝掘りなんて、もう!ぜーんぶシンジが悪
いのよ!」
「シンジお兄ちゃん大丈夫かな?そろそろ様子を見に行った方がいいんじゃないかな?」
「いいのよ、まったく・・・それより今は食べるものを集める事よ夕御飯も食べられなく
なるからね」
「そうだね!アスカお姉ちゃん。もうレイお腹空いたぁ・・・」
「そういえば、私もお腹ペコペコ・・・とりあえず、レイが捕った貝を食べることにしま
しょ?」
「うん!それで?アスカお姉ちゃんがお料理するんでしょ?」
「え!?・・・・・出来るわけ無いじゃない・・・貝自体あんまり食べたこと無いんだか
ら・・・シンジは目が覚めたかしら・・・シンジじゃないと料理が出来ないわ・・・」
「それじゃ、シンジお兄ちゃんの様子を見に行くのね?」
「そうね・・・」
「それじゃ、早速行こうよ!アスカお姉ちゃん!!」
「そうね!」
2人と1匹はシンジが寝ている小屋に入った。スゥスゥと心地よい寝息をたてて眠って
いるシンジ。
「なんだ・・・やっとキノコの効力が無くなったのかしら?まったく、はやく目覚めてく
れないと腹が減りすぎて死んじゃうかもしれないじゃない・・・」
「こんな時は、おはようのキスをするんだよ!」
「え!?キ・・・キス?」
いきなり突拍子もないことを言うレイ。
「そうよ、森で寝ていた女の人はね、王子様のキスで目覚めたのよ」
「・・・・・・・・それは、おとぎ話かなんかでしょ?」
「そうだった?でも、こんな時は、キスすると目が覚めるというのは、よくあることよ」
「・・・・・・」
「分かった!レイが居るとやりにくいって言うんでしょ?つまり、おじゃまなのね?」
「え?・・・いや・・・別にそうじゃないんだけど・・・」
「じゃ、レイはお外で待ってるからね!」
そう言って、レイはシンジの額に手を当てた後、スタスタと出ていってしまった。レイ
に連れられて、ペンペンも一緒に出ていく。
アスカは手をぎゅっと握って、シンジをじっと見つめる。沈黙の空気が辺り一面に広が
る。そしてついにアスカは、意を決して、シンジの顔に自分の顔を近づける。
少しずつ、しかし確実に近づいてくるシンジの唇。
「ん・・・・・・・」
2つの影が一つになり、再び、沈黙の空気が広がる。
「・・・・・・ん?」
異様に冷たくなっているシンジの唇。アスカの顔が見る見る青くなっていく。
「え?・・・まさか?まさかよね・・・シンジ?起きなさいよ、こらバカシンジ起きなさ
い!!このアスカ様が命令しているのよ!!
しかし、ピクリとも動かない。さっきまで聞こえていた寝息も今は聞こえてこない。
「シンジ・・・シンジ・・・」
ポロポロとアスカの瞳から涙が流れてくる。アスカの目の前が涙でぼやけてくる。
頬から流れ落ちたアスカの涙がシンジの顔にポトリと落ちる。
「・・・・・・んぅ・・・・アスカ・・・アスカ?」
いきなり、目を覚ますシンジ。
「??シンジ、シンジ?」
「あれ?僕はどうしてここに?」
「シンジ!よかった!!」
涙を拭きもせずにシンジに抱きつくアスカ。
「アスカ・・・アスカ?」
急に我に戻ったシンジは自分の置かれている状況を把握した。
「アスカ、僕は?僕はどうしてここに?」
「よかった・・・よかった・・・死んだかと思った。シンジ、よかった」
「死んだかと思った?僕、死んでたの?・・・(またか・・・とほほどうもこの作者は僕
を殺したいみたいだな・・・)」
「よかった・・・」
「それで?僕はどうして、こんなところに?」
アスカは今までシンジがキノコのせいでこうなっていたことを簡潔に話した。
「そうだったんだ・・・ありがとう、アスカ」
「いいのよ、それよりシンジ、私お腹空いたからご飯作って」
「え?そうなの?えーっと材料は・・・」
「材料は、貝があるわよ」
「え?貝?」
「そ!貝よ、私たちが集めた貝があるからそれで作ってよ」
「ごめん、僕は何も役に立たなかったみたいだね・・・」
「いいのいいの、こうやって生きていればそれでいいのよ」
照れ隠しか、アスカは小走りで小屋を飛び出していく。
「・・・さて、ご飯を作ろう・・・」
続いて、シンジが小屋から出ていく。
「レイお腹すいたぁ・・・ねぇ、シンジお兄ちゃんまだぁ?」
「もうちょっと待ってね!レイちゃん、もうすぐ出来るから・・・」
「まだぁ?シンジ、私もうお腹ペッコペコなのよ、はやくして」
「分かってるって、アスカ・・・」
お昼ご飯、いやほとんど夕御飯に近いそのご飯は、アサリ(と言っても殻長15センチ)
とハマグリ(といっても殻長20センチ平たく言えばチョウセンハマグリ)を海水で味付
けして焼いたものであった。
「調味料も何にもないの?シンジ?」
「仕方ないよ、全部レイちゃんのリュックに入れちゃったんだから・・」
「でも、おいしいよ。アスカお姉ちゃんもはやく食べなよ」
「そう?それじゃ、いっただっきまーっす」
ぱくっと一口目を食べるアスカ。その様子を心配そうに見つめるシンジ。
「どう?アスカ?いける?」
「きわめてグーよ!見た目よりいけるわねこれ・・・」
「よかった・・・」
ほっと胸をなで下ろすシンジ。
3人と1匹は、よほど腹が減っていたのだろうか、そのご飯をものの数分で平らげてし
まう。
その日は結局、夕御飯も貝を食べて過ごすことになった。
「なによ、また貝なの?もう・・・魚とか捕れなかったの?」
「しょうがないよ・・・釣りをしてみたんだけど、1匹もかからなかったんだから・・」
「ペンペン!あんたペンギンなんだから魚ぐらい捕ってきなさいよ!」
「クゥェ?・・・クェクェ!」
「無理だって言ってるよ」
「どうして無理なのよ!!やって出来ないことはないのよ!!」
「クェクェクェ!!」
「怒ってるよ、ペンペン」
「アスカ、ペンペンは温泉ペンギンだから海水には馴染めないんだよ・・溺れちゃうじゃ
ないか・・・」
「だって・・・」
「明日は僕が潜って捕ってきてみるからさ・・・今日は貝で我慢しようよ」
「・・・・シンジがそう言うならそれでいいわよ・・・でも、味付け塩味はもう嫌だから
ね!」
「それじゃ、えーっとそのまま煮てみようかな・・・」
「えーーーー・・・・ただ煮るだけ?芸のない料理ね・・・」
「しょうがいよ・・・何にも無いんだから・・・文句は食べてから言ってよ」
「・・・分かったわよ、そのかわりおいしいの期待しているからね!」
「分かったよ、腕によりをかけて作るよ!」
早速料理を始めるシンジ。とりあえず、貝の貝殻を取り除く作業から始めた。ナイフを
貝殻の間から差し込んで貝柱を切る。2つに開いて中身を出して鍋に入れていく。ついで
にそこら辺で捕まえてきた蟹も一緒に入れる。一瞬にして蟹が赤くなるそれを確認して次
々と貝を入れていった。あっと言う間に貝蟹鍋が完成した。とりあえずシンジは味見をし
てみる。
「少し苦いな・・・でも、アスカは塩味は嫌だっていうしな・・・どうしようかな・・煮
込んだら味が濃くなるかもしれないし・・・それに、蟹のミソが出るかもしれないな・・」
シンジは仕方なくというか取り敢えず煮込んで見ることにする。
グツグツと音を立てて水が無くなっていく。どことなくカレールーのような色、と形を
形成しつつそのスープは完成した。
「うわぁ・・・なんかおいしそうじゃないな・・でも、まぁさっきのもおいしかったから
これもきっと・・・」
シンジは恐る恐るそのドロリとしたスープを味見してみる。
「フーフー・・・・・ごく・・・ん!おいしい!何というか、こう舌にまとわりつくこの
まったりと・・・って誰に説明しているんだろう?」
そこにひょっこりと現れるアスカ。
「できたの?シンジ・・・って、あんた!これ何よ!!こんなドロッとした物食べられる
わけ?もう見るからにおいしそうじゃないじゃない!!!」
「そう思うでしょ?でも、これが結構おいしいんだよ。アスカも味見してみなよ」
「え・・・そう?でも、この色何とかならないの?」
「森で何か探してもいいけど暗いし、時間かかるからね。また明日ポケットコンピュータ
で調べながら探そうよ・・・」
「うーん・・・ま、いいわ・・・でも本当においしいの?」
「大丈夫だって!!」
何とかアスカをなだめて夕食を食べる3人と1匹。
「おいしいよ、シンジお兄ちゃん!!」
「ありがとう、レイちゃん」
「これも、結構いけるのね・・・自分の舌を疑いたくなるわ・・・」
このときシンジはミサトが作ったカレーの事を思い出していた。
「ミサトさんのカレーみたくなくてよかったね?あれは最悪だったよ・・・」
「そう?ミサトのカレーもあれはあれでおいしい物だと思うけど・・・」
「やっぱり、アスカの舌はどうかしているかもね・・・ははははは・・・」
「なんですって?」
楽しい笑いがあたりを包み込む。
その日の夜、アスカは悪夢を見ていた。あの時の悪夢を見ていた。あの壮絶な使徒との
戦いが時々アスカを襲っていた。アスカは目を覚ました。前は一人で我慢できていたのだ
が、今日の昼はあんな事(もちろんシンジとのキス)があったためアスカは我慢しきれず
に、カーテンを開けてシンジを見つめた。シンジは心地よさそうな寝息を立てていた。
「起こすのは悪いわね・・・でも・・・」
アスカはギュッと手に拳を作ると、意を決して(今日2度目)シンジにそろりそろりと
近づいていく。その気配に気が付いたシンジが目を覚ます。
「あれ?アスカ・・・どうしたの・・」
「シンジ・・・眠れないの、眠ったらあいつが出てくるの・・・お願い隣で一緒に寝かせ
て・・」
「え・・急にそんなこと言われても・・・」
「おねがい・・・」
アスカのお願い攻撃に弱いシンジ。
「分かったよアスカ。それじゃ、おいで・・・」
「うん・・・」
シンジが毛布を開くとアスカはゆっくり入っていく。
「お休みなさい・・・シンジ」
「お休み・・・アスカ」
季節は巡る。心も巡る。一緒に眠るアスカとシンジの心に去来するモノは何なのか。答
えは次の日の朝、昇る太陽とともにやってくる。
そんな2人のその日の夜は長く・・・長く・・・いつもより長く流れていった・・・
終わり
後書きのようなもの
どうもーーー!!OHCHANでーっす!!いやぁ・・・前作を最後にしようかと思っ
てたんですけども、ふしぎの海のナディア見てたら何となく書きたくなっちゃって・・・
書きましたーーー!って・・今回は疲れた・・・ような気がする・・実はこれ沖縄で書い
ているんですよ。出来たのが1月1日で、夜中とかずっと書いていました。
そのかいあって、今回送ることが出来たわけですね・・・1月いっぱいと言っていたの
で、もう一つ送るかもしれません。その時は、ふたたびよろしくね!
ではまた・・・
記念コメント(狂いシンジ編)
シンジ:レイ、レイはどこだ?
レイ :碇君?私の事、レイって名前で呼んでくれるの?
シンジ:ここにいたのか。この野郎!!
ごち!!
レイ :きゃっ!!碇君、どうしたの?私の知ってる碇君は、こんなことをし
ないのに・・・・
シンジ:うるさい!!料理人たるこの俺の大切な食料を置き去りにしおって・・・・
レイ :なに?碇君の言ってる事、よく分からない・・・・
シンジ:しらばっくれる気か、このガキっ!!
ごちっ!!ごちっ!!
レイ :やめて、碇君っ!!正気に戻って、お願い!!
シンジ:うるさい!!成敗してくれる!!(そう言って愛用の刺身包丁を抜く。)
レイ :・・・・碇君が私を殺して満足するなら・・・・
シンジ:ふふふふ・・・・
アスカ:バカ!!何言ってんのよ!!そういう時はこうするのよ!!(アスカ、
シンジに向かってマサカリ一閃。)
シンジ:ぐえっ・・・・
アスカ:これでよし・・・・起きたら元に戻ってると思うから。
レイ :でも、もし元にに戻らなかったら・・・?
アスカ:そしたら直るまでどつくのよ!!ほら、これを持ってこう!!わかっ
た!?
レイ :・・・・・もしかして、私だけを見てくれる碇君になってくれるかも・・・
そして、次の朝、目覚めたシンジ君の頭には、たくさんのこぶがあったとさ。
それが誰の手によるものかは・・・と、とにかくめでたしめでたし!!
さて・・・記念投稿第二十八弾もOHCHANさんの投稿です。
ぱちぱちぱち・・・・・
はあ・・・貝を煮ただけのものなんて、食いたくないですねえ。私、貝ってあ
んまり得意ではないので・・・・それに毒リンゴ。なんでそんな物騒なものが
あるんでせう。ま、それはともかく、ちびレイはいいですね。って、前もそん
な事を言いましたっけ?私も、かのすさんのFREEDOMを好きといってはばからぬ
人間ですからねえ・・・・ろりじゃあないんですが・・・・・
OHCHANさんもありがとうございました。ご自分のページの載せるものが
なくなったりしませんか?お気を付け下さいませ。でわ・・・・
OHCHANさんへのお便りはこちら:
ohchan@po.synapse.or.jp
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