綾波へ・・・
ぼくは、前にミサトさんと第三東京市を見おろしたあの高台にいる。
あの頃と様子はぜんぜん変わってしまったけど、ぼくの心の中には今でもはっき
りとかつて見た景色が描き出されている。
三人で暮らしたマンションはあの辺かな?
もう全部つぶれてしまってるから、よく分からないけど・・・。
綾波・・・、ぼくは元気にやってるよ。
綾波やミサトさん、それに父さん・・・
大切な人はあの最後の戦いでたくさんいなくなってしまったけど、ぼくはがんば
って生きてゆくよ。
みんながくれた命をぼくはもう無駄にはしない。
アスカはどうかって?・・・アスカはぼくの隣にいるよ。
これからはアスカと一緒に生きてゆくつもりなんだ。
それがせめてものぼくのつぐないかな?
・・・そろそろ行くよ、綾波。
いつか、また来るからね。
ぼくはアスカを車椅子に乗せると、離れて待っていてくれたマヤさんの方に歩
き出した。
「・・・シンジ君、もういいの?」
「ええ、ありがとうございます。
すみませんね、ここは本当はもう封鎖されてるんでしょう?」
ぼくの言葉にマヤさんはかすかに微笑みを浮かべてかぶりを振った。
「いいのよ、あなた達にはいくら感謝してもしきれないから・・・、これぐら
いなんでもないわよ。」
ぼくとマヤさんはアスカを車に乗せてから自分たちも乗り込む。
マヤさんは車を第二東京市の方に向けると、後部座席に座っているぼくに話しか
けた。
「シンジ君。本当にいいの?
第二東京の方に行けば、あなた達は英雄として扱われるのよ。」
「いいんですよ。ぼくはこれからはアスカと2人だけで暮らすつもりです。
お金もミサトさんが自分の貯金をかなりの額残してくれましたから、2人で暮ら
す分には十分すぎるほどありますし。」
「・・・アスカは、いつ治るか分からないのよ。
いいえ、治るかどうかも分からない。
それでも、いいの?」
その言葉にぼくはきっぱりと頷く。
「それが、ぼくのやりたいことですから。」
「シンジ君・・・、強くなったのね。
私も見習いたい・・・。」
「いいえ、逃げなくなっただけですよ。
それに今のぼくには、守るべきものがありますから。」
ぼくは隣のアスカの手をぎゅっと握った。
ぼくが憶病で逃げ出したためにアスカをこんなにしてしまったんだ。
ぼくはその責任をとらなくちゃいけない。
アスカの世話がつらくなかったと言えば嘘になる。
なにかにおびえたように突然泣き叫ぶアスカ。
それは昼夜を問わなかった。
だけど、アスカの怒った顔、泣いていた悲しい顔、それに笑った顔を思い出せ
ば、そんなつらさも自然に消えていった。
そして、第三東京市を離れてから4年ほどたったある日、夜遅くまでアスカの
相手をしていたぼくはそのまま眠ってしまったらしかった。
ぼくはなにかがぼくの髪をさわっている感触で目が覚める。
「・・・アスカ?」
アスカが微笑みながらぼくの髪を手でとかしていた。
「あ、アスカ!」
突然のことに呆然としていたぼくだけど、アスカが完全に治ったと思って、ア
スカに抱きついた。
「アスカ、アスカ!治ったんだね。ぼくのことが分かるんだね!」
喜んでアスカの顔をふと見ると少しおびえたような顔をしている。
治った訳じゃなかったんだ・・・。
「あ、ご、ごめん・・・。」
ぼくは慌ててアスカを抱きしめていた手を離す。
かわりにアスカの両手をぎゅっと握る。
「アスカ、がんばって良くなってね。
ぼくがいつもそばにいるから・・・。
またアスカにバカシンジって言ってほしい・・・。
アスカはぼくのことを嫌いだって言ってたけど、ぼくは、ぼくは・・・。」
アスカはそれを聞いているのか聞いてないのか、無表情にぼくの顔をじっと見
つめていた。
あの微笑みはやはり回復の兆候だったのか、それからはアスカは見る見るうち
に良くなった。
「シンジ、シンジ・・・。」
ぼくの名前を呼ぶようになって、ぼくのことがはっきりと分かるようになった
。
なにかにおびえることも少なくなった。
普通に話が出来るようになるとアスカはしきりと自分のことを話すようになっ
た。
アスカの昔のことを聞いたときはアスカをぎゅっと抱きしめて放さなかった。
アスカはぼくのことを根ほり葉ほり聞きたがる。
ぼくはアスカがしてくれたみたいに残らず全てぼくのことを話した。
父さんのこと、先生のこと、ミサトさんの所に来たときのこと、綾波のこと、
アスカのこと、そして、アスカが病院にいたときのこと、カヲル君のこと・・・
。
その長い話を何日もかけて話した。
アスカはぼくと共に笑い、泣き、怒ってくれた。
そして、アスカが完全に良くなったと思ったとき、ぼくらはまたみんなが眠る
第三新東京市へとやってきた。
「シンジー、ほら、はやくはやくー!」
アスカがスカートを翻して走ってゆく。
「すみません、マヤさん。
またご迷惑かけて。」
「そんなこと言わないで、シンジ君。
私に出来ることなら何でもするから。」
「こら、シンジ、なにしてんのよ!はやく来なさい!」
「あ、ごめんごめん、今行くよ!」
マヤは走ってゆくシンジとアスカを見ながらゆっくりと微笑む。
なぜか本当に笑ったのは久しぶりのような気がした。
「シンジ、マヤと何話してたのよ!」
「べつに、何でもないよ。」
「何でもないって、何よ!はっきり言いなさいよ!」
アスカは前と同じように、いやそれ以上に元気になったような気がする。
ぼくの一言一言にいろいろ文句を付けてくる。
ぼくたちは廃虚となったかつての第三東京市を見おろした。
しばらく2人とも無言で見ていた。
「アスカ・・・。」
「何、シンジ?」
「アスカはもう元気になったよね。
アスカがもし・・・・・・。」
アスカはぼくの口を手で押さえて言葉を遮った。
「シンジが言いたいことは分かるわ。
バカシンジの行動パターンなんてもう見切ってるのよ。
あたしがドイツに帰りたかったら・・・とか言うんでしょう?
ホントバカね。
あんた、責任もとらないつもり?」
「え?」
「あたしの世話をしてるときにあたしのあーんな所やこーんな所も全部見たん
でしょう?
あたしもうお嫁にいけないじゃない!
どうしてくれんのよ!」
「いや、あの、その・・・。」
うろたえるぼくにアスカは微笑んでぴったりと寄り添ってきた。
ぼくは顔が赤くなるのを感じた。
「バカね、あたしはあんたから離れたくないって言ってんのよ。」
「ア、アスカ・・・」
ぼくはそんなアスカがたまらなく愛しくなってアスカを力一杯抱きしめた。
「ぼくだってアスカと離れたくないよ。
ぼくはアスカを一生離したくない・・・。」
「・・・・・バカ、プロポーズだったらもっと気の利いた言葉にしなさいよ・
・。」
そういうアスカは少し涙ぐんでいた。
「あたし、シンジが責任感だけであたしを世話していたんじゃないかと心配だ
ったの・・・。
あたしが元気になったらシンジが離れて行くんじゃないかって・・・。」
「アスカ・・・。」
ぼくはさらに強くアスカを抱きしめる。
綾波、ぼくは大切なものをたくさん失ったけど一番大切なものを何とか取り返
せたんだ。
ぼくがまた逃げていたらアスカは戻ってこなかった。
綾波、本当は君のことも取り戻したかったんだけど、君は空のかなたに消えて
しまった。
綾波・・・・・・。
「こら、シンジ。今、他の女の事を考えてたでしょ!」
「い、痛いよ、アスカ!」
アスカがぼくの腕を思いっきりつねる。
手加減無しだ。
「や、やめてよー!。」
「あたしのこと以外考えないって誓うなら許してやるわよ!」
逃げ回るぼくをアスカが追い回す。
綾波、君のことをちょっと考えただけでこんなに怒るんだから、もしぼくのセ
カンドキスの相手が君だとアスカに知られたら・・・。
・・・そう思うとぼくは思わず怖い考えになってしまった。
アスカには絶対知られないようにしないと、アスカは察しがいいから・・・
「シンジ、また何か考えてるわね!」
「ご、ごめんよ、アスカー・・・」
綾波、ぼくは幸せに生きていけそうだ。
こんにちは、ジオです。
タイトルとは違ってシンジ君とアスカ様の話です。
元ネタは私が昔見たドラマか映画かで、誰かに呼びかけながら進行するものがあ
ったんですが(名前などは忘れた)、それをなぜか書いてる途中に思い出してそ
の呼びかける部分をもらいました。
なんかくだらない上によくある展開ですが、読んで頂いて感謝感謝です。
記念コメント(シンジ君と綾波編)
レイ :私・・・いないの・・・?
シンジ:いるっているって。これはお話なんだから、ね!!
レイ :そして、碇君はあの人と・・・・
シンジ:だからお話なんだってば!!
レイ :でも、やけに現実的な話・・・・・
シンジ:そ、それはジオさんのうまいところだよ。
レイ :や、やっぱりそういう可能性があるということなのね?
シンジ:って、それは・・・・
レイ :私は碇君にとって、必要の無い存在なのね・・・・
シンジ:違うって!!ほら、僕と綾波が結婚するって言う話だって、世間には出
回っているんだしさあ・・・・
レイ :結婚!?
シンジ:そ、そうだよ・・・・(まずいこと言っちゃったかなあ?)
レイ :私は碇レイになるの?
シンジ:う、うん。そうだよ。
レイ :碇君は私が好き?
シンジ:う、うん。まあ。
レイ :私と結婚してくれる?
シンジ:だ、駄目だよ。
レイ :どうして・・・?
シンジ:そ、それは・・・ほら、まだ早いから。僕たち中学生だろ?
レイ :それもそうね・・・
シンジ:わかってくれたね?
レイ :わかったわ。でも・・・・
ってこれでやめ!!おー危ない。何だか過激すぎるんだよねー。
続き?そんなものはありません。妄想を膨らませてください。
うをうをうを、記念投稿第十六弾はジオさんのお話です。
ようやくコメントつけも終わりが見えてきました。うむ。
ま、それはともかくとして、恒例の拍手、行きます。ぱちぱちぱち・・・・
ということで、私の感想ですが・・・・はあ・・・いいなあ・・・・・
ジオさんも言ってますが、この綾波に呼びかける形っていうのがいいんですよね。
ほんわかしていて、シンジ君とアスカの関係も爽やかに感じます。私、こういう感
じの話って大好きなので、ジオさんのページにはこれから期待ですね。楽しみにし
ております。
ほんとをいうと、きちんとメールのお返事をして、リンク許可を取るべきなんです
が、あいにくメールを凍結させておりますので、まだ致しておりません。はうう・・・
せっかく投稿していただいたのに、申し訳ないことです。これも私が忙しいという
ことで、お見逃しいただきたいと思います。
本当に、投稿をありがとうございました。これからもお違い頑張りましょう!!
ジオさんへのお便りはこちら:
scs20179@bkc.ritsumei.ac.jp
そしてジオさんのページはここ:
ジオの小説ページ
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