「碇ゲンドウのなかの碇ゲンドウ」
〜〜シンちゃん上京編〜〜

私の名は碇ゲンドウ。
最近目尻の皺が気になる48歳だ。

私はアルバイトで特務機関ネルフの総司令をしている。 時給はかなりいい方だ。時 には出張と偽って家でごろごろ とゲームをしている。仕事は私の「影武者」冬月に まかせておけば 大丈夫だ。問題はない。

時計をちらりと見る。
「・・・・9時か」
そうだ。今日はシンちゃんが第3新東京市 に上京してくる日だったな。ニヤリ。
ネルフをあげての盛大なパーティをしてやるつもりだ。 そのためのネルフだ。
プレゼントも用意してある。フル稼動超合金 汎用人型決戦兵器エウ゛ァンゲリオン 。
難しい事はよく分からんが、それは人が乗り込み、 シンクロすることによって自由 に動かせるそうだ。 シンちゃんの身長、体型などにオーダーメイドで 合わせてある 。ふっ、きっと涙を流してよろこぶだろう。


私は内面のウキウキ気分を隠しながら、アルバイトへ 出かけた。いつも通り電車で 出勤する。

「・・・・・・?」
ネルフの発令所についた私はそれを見て、眉をひそませた。 私専用の席に国連軍の 軍服を着たヤツラ3人が座っていた。
私は近くにいた冬月に近寄り、
「どういうことだ、冬月?」
「・・・・未確認飛行物体がここへ接近中だそうだ」
「ヤツか?」
「おそらくな・・・・・」
フ、そういうことか。使徒襲来かも知れんということで 慌ててやって来たか。とる に足らん連中だ。
「・・・冬月、例の用意はできているか?」
「例の?・・・・ああ、あれか。それがな、どう勘違いした のか国連軍のお偉いさ ん方が歓迎されたと思ったらしくてな。 用意した料理はなくなってしまったよ」
「そうか、今はいい」
私は心で泣いた。
おのれヤツラめ!私のシンちゃん歓迎計画をつぶすとは!
私は心のなかで国連軍への復讐をかたく誓ったのだった。

そして、使徒襲来。
「・・・・15年ぶりだね」
「ああ、間違いない。使徒だ」
冬月のつぶやきに私は答えた。物物しさのなかに、まばたき をするかわいらしさも 持っている。なかなか私ごのみでは あるな。
さあ、やれ、使徒よ。国連軍のヤツラに目にものみせてやれ!!

全く効かない砲撃。あっさりと撃墜される飛行部隊。 フッ、期待通りの展開だ。
私の専用の席でヤツラがなにやらわめいているが、 その程度だな。
「やはり、A.T.フィールドか・・・・」
冬月は私に確認するように問う。
「ああ、使徒に対して通常兵器は役に立たんよ」
知ってはいたが聞かれもしないのにわざわざヤツラに 教えてやりはしなかった。私 にそんな義務はない。 私を敵に回したことを後悔しているだろう。

ん?ヤツラの1人がどこかへ電話をかけているな。 何か仕掛けるつもりか?
次の瞬間、大きな爆発音が響きわたる。後、発令所の ディスプレイにノイズが走る 。
N2地雷か!
ヤツラめ、いきなり切り札を使ってきたな。あれは結構 痛いからな。国連軍の1人 が狂喜の叫び声を上げている。 おそらく使徒を倒したと思ってでもいるのだろうが 。
むむ、まずい。もしこれで使徒がやられていたら国連軍に 復讐できん!

「モニター回復します」
オペレーターの誰かが言う。1秒後、モニターには爆煙が 漂う光景が映る。これで はよく分からん。
「高エネルギー反応を確認!」
「なにーーーーーーーーー!!!!」
オペレーターの報告を聞いて、驚きの声をあげる国連軍の1人。
「予想通り自己修復か・・・・」
「そうでなければ、単独兵器として役に立たんよ」
そうだ。そうでなければ私の役には立たん。
よくぞ無事だった、使徒。

使徒の目が光ると、再びモニターにノイズが走る。 カメラを壊したようだ。
「ほう。知能増幅まで可能なのか・・・」
冬月は感心した声をもらす。
「おまけに知恵もついたようだ」
「再度進行は時間の問題だな・・・」
国連軍のヤツラに視線を向ける。ふふ、皆がっくりと うなだれている。そうだろう 、切り札が通用しなかったのだからな。


「今から本作戦の指揮権は君に移った。お手並みを見せてもらおう」
国連軍の1人が私にそう言ってきたのは、N2地雷を使ってから わずかに時間を費 やした後だった。ようやく己の未熟さを悟ったとみえる。
「了解です」
内心のふくみ笑いを隠し、簡潔に答える。
「我々の所有兵器では目標に対して有効な手段がないのは認めよう。 だが、君なら 勝てるのかね?」
ひと呼吸し、間をとる。
そして、眼鏡を押し上げながら、
「そのためのネルフです」
「期待しているよ」
言葉通りの感情などほとんどこもっていない捨て台詞をはくと、 ヤツラは去ってい った。
所詮、私の敵ではなかったな。

「国連軍もお手上げか、どうするつもりだ?」
冬月は慌てた様子もなく、私に聞いてくる。
「初号機を起動させる」
「初号機をか!?パイロットがいないぞ」
そう、零号機専属パイロット、我らが綾波レイはさきの起動実験の 失敗で負傷して しまった。赤木博士にはこの失敗の責任をとって お仕置きをしておいた。だが、シ ンちゃんがもうすぐ到着するはずだ。
「心配ない、もう1人の予備が届く」
うう、シンちゃんを予備などと呼ぶのは心が痛む。しかし、アルバイト とは言え、 立場上私情をはさむ訳にはいかん。私の弱みを握ろうと いたるところに隠しカメラ や盗聴機等があるはずだ。私は弱みを みせてはいけない人間なのだ。シンちゃんな らきっと分かってくれる だろう。


「葛城一尉が到着したそうです」
オペレーターはそう報告してきた。
私は待った。いつ来るか、いつ来るかと心待ちにしていたのに、 なかなかシンちゃ んは到着しなかった。やはり葛城一尉にも 月に代わってお仕置きせねばならんな。
「冬月、後を頼む」
私はそう言い残し、シンちゃんがいるはずのケイジに向かった。

ケイジまでは歩いて10分。だが私は駆け足で向かい、2分52秒 で到着した。ハ ア、ハア、ハア、やはり年には勝てん。
「これも父の仕事ですか?」
ちょうどその時だった、シンちゃんの声が聞こえてきたのは。
「そうだ・・・・・・久しぶりだな」
呼吸の乱れを無理矢理に止める。
「と、父さん・・・・・」
ケイジにある初号機の前にいるのは、シンちゃん、葛城一尉、 赤木博士。3年ぶり か。あの時は優しく接したのに、何故か 駆け出していってしまった。今もうつむい て、なんて恥ずかしがり屋 さんなんだ。
よし。早速エウ゛ァに乗せてやろう。
「フ・・・・・出撃・・・・」
「出撃?零号機は凍結中でしょ、まさか初号機を使うつもりなの?」
驚く葛城一尉。
「他に道はないわ」
一方冷静な赤木博士。
「ちょっとレイはまだ動かせないでしょ、パイロットがいないじゃない」
「さっき届いたわ」
葛城一尉と赤木博士の口論は続いている。彼女にはこの喜びは 理解できないのだろ うか?シンちゃんなら分かってくれているはずだ。
「父さん・・・・何故呼んだの?」
「お前の考えているとおりだ」
そうシンちゃんが考えている通り、歓迎してネルフに向かえてやる ためだ。
「じゃあ、僕がこれに乗ってさっきの奴と戦えって言うの?」
「そうだ」
フッ、涙を流す程うれしいだろう?
「嫌だよ。そんなの、何をいまさらなんだよ。父さんはぼくがいらない んじゃなか ったの?」
プチン。な、なんだと!?男なら涙を流して喜ぶべき状況ではないか!? それに私 にはシンちゃんが必要なのだ。
「必要だから呼んだまでだ」
心の動揺を隠し、私は言う。
「何故、僕なの?」
「ほかの人間には無理だからな・・・」
エウ゛ァンゲリオン初号機のエントリープラグはシンちゃんに合わせて オーダーメ イドで作ってあるのだ。他の人間に乗らせることはできん。
「無理だよ、そんなの。見たことも、聞いたこともないのに、できるわけないよ!! 」
ぶちっ!
「説明を受けろ」
「・・・できるわけないよ・・・」
シンちゃんは小さくつぶやく。
「乗るならば早くしろ。でなければ帰れっ!」
何をわがまま言っている!シンちゃんを喜ばせるためにこれを作って国ひとつ 傾け たというのに!!

ドゴオォォン。
大きな衝撃がケイジを襲った。
「きゃ〜〜、助けて〜〜」
どうやら葛城一尉は落ちたらしい。バシャバシャとしぶきをあげて、助けを求めて いる。構わん。
「奴め。ここに気づいたか」
おのれ、使徒め。感動の親子の対面を邪魔しおって!
シンちゃんはわがままを言うし・・・
はっ!シンちゃんの頭上が、今の衝撃で崩れたっ!落ちる!!
「シンジ君っ!」
「・・・え・・・?」
赤木博士の呼びかけで、シンちゃんも頭上の異変に気づいたようだが、 恐怖で足が すくんでしまったらしい。その場に立ち尽くしている。
いかんっ!!
私は懐にしまっておいたある『コントローラー』をすばやく取り出す。
「うわあああああぁぁぁ」
落下物が加速度を増して、シンちゃんに迫る!

「・・・・・・?」
シンちゃんは目を覆っていた手を静かにおろす。そして理解ったようだ。 エウ゛ァ 初号機の左手が自分を助けたことを。
エウ゛ァ初号機が左手を動かした時にできた波で、葛城一尉は流されて しまったよ うだが、問題はない。泳ぎたまえ、葛城一尉。反対する理由はない。
「そんな、エントリープラグも挿入されてないのよ。ありえないわっ」
赤木博士はおおいに驚いているようだ。フッ、それはそうだ。 この『エウ゛ァ初号 機専用遠隔操作コントローラー』は博士にも極秘 で作らせたのだからな。これも日 頃格闘ゲームで腕を鍛えている成果だ。
そうだ、これで・・・・

「・・・うわっ!?・・・」
シンちゃんの頭上にあったエウ゛ァ初号機の左手は、シンちゃんをひょいと つまみ あげる。そして------
「うわあああああ・・・・」
食った。

「あっ!シンジ君っ!?」
「問題はない、赤木博士。エウ゛ァ初号機に搭乗したにすぎん」
「しかし・・・・」
「出撃だっ!!」
驚きの連続で口ごもる赤木博士を制し、私は号令を下した。


「進路クリアー、オールグリーン」
女性オペレーターの声が響く。初号機は地上へ出撃した。 発令所のメインモニター に使徒と初号機が対峙しているのが見える。
「エウ゛ァンゲリオン初号機リフトオフ」
一命をとりとめた葛城一尉の声の後、
ガシャアン!!
初号機は顔面地面にからつっ伏した。
その後はもはや使徒のサンドバックと化した初号機。フッ、 おそらくシンちゃんは 気絶しているはずだ、仕方がないか。

「パルス反転」
「回路断線、パイロットとの連絡とれません」
発令所はパニック状態だった。私と冬月を除いて。
私は例のコントローラーを両手に隠し持つ。これは私のモノだ。 必要以上に知られ たくはない。手袋をしながらだとやりずらいが、 弱音を吐いてはいられない。
いくぞ、ゲンドウ。

「エウ゛ァ、再起動」
信じられないという声で女性オペレータは言う。
ゆらりとエウ゛ァ初号機は立ち上がる。リズミカルに体を揺らしている。
「勝ったな・・・」
冬月は私も方を向かず、モニターを見たまま言う。
「ああ・・・・」
もちろんだ。『ゲームセンター嵐の再来』と言われたこの私の実力、 たっぷりとみ せてやる。

えいっ!このっ!フッ、甘いな。と、なかなかやるではないか。
表情は変えず、声も出しはしなかったが、私の内心は激しく萌えていた。
うおおおっ、炎のコマッ!!!

当然、私は勝った。最後に自爆技を使ってきたが、みごとに耐えきった。 フッ、使 徒とはいえ、所詮私の敵ではなかったな。
この私を敵にまわして勝ったものなど存在しないのだ。

その後、シンちゃんは精神的ダメージのため入院してしまい、歓迎会は 中止になっ た。残念だ。だが、私を怒らせた罪は償ってもらうぞ、シンちゃん。


私の名は、碇ゲンドウ。
敵にまわすと恐ろしい男だ。 くれぐれも私を敵にしようなどとは思わないことだな 。


記念コメント(ゲンドウ?変)

シンジ  :と、父さんって・・・・
ゲンドウ:何だ、シンジ?
シンジ  :あ、父さん!!
ゲンドウ:用が無いなら帰れ。
シンジ  :って、ここに来たのは父さんの方じゃないか!!
ゲンドウ:フッ、そんなことは関係ない。
シンジ  :関係なくなんかないだろ!?いい加減変な事言うのは止めろよ!!
ゲンドウ:冬月、冬月はどうした!?
シンジ  :冬月校長なら、今日は出張だっていってたけど・・・・
ゲンドウ:なんだと!?なぜそれを早く言わん!?
シンジ  :だ、だって父さんは知ってると思ったから・・・・
ゲンドウ:憶測で物を言うのは止めろ。
シンジ  :何も言ってないだろ!?
ゲンドウ:まあ、それもいい。それよりレイ、新しいうちには慣れたか?
レイ    :・・・・あなたには関係ないわ。
ゲンドウ:・・・そうかも知れんな。
シンジ  :あ、綾波、いつのまに・・・・?
レイ    :さ、碇君、これを読んでわかったでしょ?この人は変人なの。だから私と
          一緒に逃げましょ・・・・
シンジ  :あ、綾波!!そんな引っ張らないで・・・・
ゲンドウ:(独り取り残されて)フッ、シナリオとは5%の狂いも無い。


さーて、お待ちかね、記念投稿第十二弾は、みなさんご存知、東洋一さんのSSです。 いやー、とにかく恒例なんで、拍手、行きます。ぱちぱちぱち・・・・何だか寂しい です。 で、私の感想なんですが・・・・がはははは!!さすが東さん。いいです。笑えます。 ゲンちゃんって、お・ちゃ・め!!いいなあ、ほんと、いいです。私もこういうのが 書けると楽しくていいんでしょうねえ。 さて、東さんですが、私も某チャットではお世話になっております。まあ、私はおひ るにんなので、めったに会うことは出来ませんが、お世話になってるといっても差し 支えないでしょう。あ、あと、東さんは池内さんの投稿でもおなじみですよね。ほん と、あちらもとっても読み応えのあるいいお話なので、是非ご一読ください。 最後に東さん、ありがとう!!

東洋一さんへのお便りはこちら: toki@seagull.to.cs.toyo.ac.jp
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