僕の夢













「先輩、こ、これ見てください。」

「これ本当なの!?………前回を10ポイントも上回ってる。ほぼ完璧だわ。」

「へぇー!凄いわね、シンジ君。これまでも彼には驚かされて来たけれど、こりゃ驚きを通り越して呆れるわ。やっぱり私って、保護者としても優秀なのねン♪」

「レイはいつも通りだけど、シンジ君はエヴァとほとんど同一化してるわ。アスカは………ぎりぎり、ね。ねえ、ミサト、何かシンジ君、このごろ変わった所ない?いくらなんでも最近のシンクロ率の上昇は急激すぎるわ。」

「んー、分からないなぁ。でも前よりもしっかりしてきたんじゃないかしら。もしかすると、少し自分にも自信を持てるようになったのかもね。」

「………もうちょっと何かないの?全く保護者失格だわ。」

「まあまあ、そう言わないの。今度シンジ君に聞いておくわ。ねっ♪」

「頼んだわよ。でも、あんな事故があったのに………。本当に強いのね、あの子は。」









「どうだね、子供たちは。」

「あ、副司令。ええ、シンジ君のシンクロ率が素晴らしい数値を示してますわ。本当に信じられないほどです。」

「どれどれ。………うむ、そのようだな。」

「一体シンジ君に何があったんでしょうか。これだけの上昇ですもの、恐らく彼に何らかの変化があったのではないでしょうか。」

「………シンジ君の変化、か。そうか、シンジ君が変わったか。そうかそうか。そうだ、変わったんだ。フフフ。」

「ど、どうかしましたか?」

「いや、いいんだ。そうか、変わったか。シンジ君が。良かった。」









「シンちゃーん、最近凄いんじゃなーい?何かいいことでもあったのぉ?」

「え、別にそんなのないですよ。いつもと変わんないし。」

「ホントにィー?」

「ええ。本当ですよ。本当に、変わってないですよ。何も、何も………」

夢ができたこと以外はね………









そう。僕には、夢がある。誰にも言った事はないけれど。

それ以来、エヴァに乗るのもそんなに苦にならなくなって来たように思う。

確かに最初はどうして僕が、なんて思ったりもしたけど。

でもきっと、ぼくはこれに乗るべきなんだって、今は思ってる。

何て言ったって、もう僕以外が乗っても拒絶されちゃうんだけどね。

父さんの事も、以前ほど気にはならなくなってきたかな。

好きか、って聞かれればやっぱり嫌いなんだろうって思う。

でもなぜ嫌いなのか、それは良く分からない。

自分の中に、父さんを憎む気持ちがあるのは確かだけど、以前ほどじゃない。きっと嫌いな理由なんて、夢が忘れさせてくれたのかな。

そう。結局僕の夢に比べたら、父さんとの関係なんてそれ程重要じゃないってことさ。

こんなに充実していた事って、いままでなかったよ。

というよりも、これまでの僕の人生には何もなかった。









ミサトさん?うん、いい人だよ。優しいし、美人だし。ずぼらな所もあるけれど、何て言っても明るいもんね。

ある意味、本当の家族ができたのかな、って思った。

でも僕もあの報告書を見た時はちょっと辛かった。

やっぱりミサトさんも、僕の事家族だなんて思ってなかったのかなって。仕事だったんだって。

やっぱりお金いっぱい貰ってたんだろうな。そりゃあ連れ戻すよね。貴重な資金源だし。

あんな好き勝手な暮らししてたらお金もかかるよ。

だけどもうそんな事ちっとも思ってない。本当だよ。もう昔の事だもんね。

それに僕にはやらなければならない仕事がある。

せっかく見つけた夢の為にも、僕はやらなくちゃいけないんだ。









アスカはやっぱり苦手かな。

すぐに怒るからっていうのも確かに理由の一つではあるんだけどね。

それよりも、何か僕と似ている気がするからかも知れないな。

あんなに張り切って見せているけどあの子がエヴァに乗るのは見ていて辛い。

自分一人で何でも背負い込もうとしているのかな。ホントは出来もしないのに。

無理しているのが手に取るように分かるんだ。

なぜって、実際僕がそうだったから。

でも、今は違う。アスカだって………

そうなれば吹っ切れるかもしれないし。

そうだ、彼女に話してみようかな。きっとよろこぶよ、きっと。

アスカになら話してもいいような気がするんだ、

僕の夢のこと。









綾波は………うん、気になる。もしかすると好きなのかも。

でも憎んでいたようにも思うな。今はそんなこと、全然無いんだけれど。

来た最初の頃は、やっぱり父さんとも親しげに見えたし………。

嫉妬?もしかするとそうかもね。

きっと僕も、あんな風に父さんと話をしてみたかったんだろうな。

だからって、おじさんたちと楽しく会話する気にはなれなかった。

別に、おじさんたち家族が嫌いだった訳じゃない。

むしろこんな僕を家族同様に世話してくれたってことに、とっても感謝してるくらいなんだ。

でも、そんなおじさんたちの優しさにに僕が応える事はなかった。

だからおじさんの所で、会話が弾むなんてことは一度も無かったよ。

きっと、いつも無愛想な僕は嫌われてたろうね。

でも、おじさんたちは毎月結構いっぱいお金を父さんから貰ってたみたいだから、まあいいか。









使徒を倒すのは楽じゃないよ。本当に何度も死にそうにもなった。

でも不思議と死ぬ気がしないんだ。

なぜだかは良く分からないけれど、もしかすると僕の気持ちのせいかな。

以前の僕は、自分の事を悲劇の主人公であるかのように、僕の運命を恨んだりもしていた。

確かにトウジのような事もあったしね。

さすがにあの時はショックだったよ。僕ももう乗りたくないなって思った。

でもよくよく考えれば他に方法なんて無かったし、トウジも死ななかったし。

酷いようだけど、あの程度ですんで良かったんじゃないかなぁ。

でも、今はエヴァに乗れる事に感謝する事の方が多いな。

だって、この時代やるべき事がわからない人がほとんどなのに、僕には明確にやるべき事が分かっている。

しかも非常に意義深い仕事だ。

あ、別にそのほかの仕事がそうじゃないってわけじゃないよ。

それぞれにもちろん大切な役割をになっている。

でも、人類を使徒から守る。これ以上ないスケール。

やらなきゃ、って気持ちにさせられる。

何ていったって、自分以外にそれが出来る人はいないんだから。

地球の平和は僕が守る、なんてね。

なんだかアスカみたいなこと言っちゃったけど、でもほんとにそう思ってるんだ。




『緊急招集、緊急招集!総員直ちに第一種戦闘配置に!緊急招集、緊急招集!総員直ちに第一種戦闘配置に!』




やって来たな。僕が絶対に倒してやる!使徒になんか好き勝手はさせない。









『エヴァ全機、発射準備』

「頼んだわよ、みんな。」

「任せて下さい、ミサトさん。絶対に僕が倒してやりますよ!」

『エヴァ全機、射出口へ』

倒してやる………倒してやるぞ。

『エヴァ発進準備完了』

「発進だ。」

「ウォォオオオ!!」









「碇、どうやら賭けに勝ったようだな。」

「………なら、いいのだがな。」

「一時はどうなる事かと思ったぞ。長い間離れていても親子はやはり親子だな。自分の子にあれだけ自信を持てるお前が羨ましいよ。私だったら耐えられなかったろう。」

「しかし、多くも失った。いくら大計の為とはいえ、自分の子供にあのような仕打ちをするのは、いくら私でも辛かったな。何度も思い悩んだものだ。」

「フフ、お前でもか。………でも大丈夫だよ、シンジ君は分かってくれる。お前たちは親子なんだ。すべてが終わってからでも、いくらでも埋め合わせは出来る。大丈夫、大丈夫さ………。」

「全ては終わったら………か、そうだな。今まで父親らしいことを何一つしてこなかった。この私も一度くらい父親のまねごとをしてみたいものだ。そんな事で許されるとも思ってはいないが、な。」

「………そうか。そんな日が早く来て欲しいものだ。いや、きっと来る。来るさ。」

「シンジ、生きて、生きて帰って来てくれ………」













絶対に絶対に、お前の好きなようにはさせないぞ。

人間を滅ぼすなんてことは僕が絶対ゆるさない。絶対に。

それは僕のやるべき事だから。









僕の夢だから………






記念コメント(アスカとシンジ編)

シンジ:よし、頑張るぞ!! アスカ:アンタってほーんと、乗りやすい性格ね。あきれてものも言えないわ。 シンジ:い、いいじゃないか。 アスカ:アンタはもう、エヴァには乗らなくていいのよ。使徒ももう来ないし・・・・ シンジ:そ、そうだった!!う、うう・・・・ アスカ:でもまあ、頑張るってのはいいことよ。アンタにはこれまで覇気ってものがな かったんだから、いい薬になるかもね。 シンジ:で、でも・・・エヴァ無しで何に頑張ったらいいんだろう・・・・? アスカ:そ、そんなこと自分で考えなさいよ!! シンジ:で、でも・・・・うーん、アスカ、何か思い浮かばない? アスカ:ア、アタシの口からそれを言わせる気!? シンジ:お願いだよ。 アスカ:そ、そうねえ・・・た、例えば、どうやってアタシの気を引くとか、どうやっ たら不自然じゃなくアタシに自分からキスできるかとか、ど、どうやったらア タシと・・・って、そんなことを努力すんのよ。 シンジ:・・・・・ アスカ:あ、あくまで「例えば」何だから!!べ、別にシンジにそうして欲しいとか、 そんなんじゃないのよ!! シンジ:・・・・・ アスカ:な、何とか言いなさいよ!!そ、その目は何なの!? シンジ:・・・・アスカってば、大胆・・・・ アスカ:ア、アンタが悪いんだからね!!アンタがいつまで経ってもアタシに何もして くれないんだから!!(アスカ、走り去る) シンジ:ア、アスカ!!・・・・・あーあ、行っちゃたよ。僕が何もしないって、隙さ えあればいつも自分からしてくるんじゃないか。もう、こっちの身にもなって よ・・・・・
さてさてさて!!記念投稿第九弾はTakeさんの読み物です!!本当にありがとう!! 私はとってもうれしいです!!いやー、それにしてもめでたい。ぱちぱちぱち・・・・ で、私の感想ですが、私はてっきりTakeさんの投稿ということで、ギャグものかと ばかり思ってました。でも、実際は・・・・こういうのも書けるんですね。さすがです。 Takeさんはこの投稿作品について、シンジ君の別の補完の形、と言ってました。な るほどですね。こういう風に、自分自身から補完できるというのは、なかなか爽やかで いいと思います。それに比べてかくしEVAは・・・・って止め止め。どろどろが嫌い な癖に、やたらと濃い話ばかり書く私は、何なんでしょう?まったく・・・ さて、Takeさんですが、皆さんご存知「新日本エヴァンゲリオン」で活躍なされて います。しかし、最近ちょっと更新が鈍っていて寂しいです。皆さんで応援メールを出 して、元気付けてあげましょう。(って、私がそうすべきなんですがね・・・・)

Takeさんへのお便りはこちら:stake@dtc.co.jp
で、Takeさんのページはここ: 新日本エヴァンゲリオン
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