かくしEVA/私立第三新東京中学校 あらすじ?
第四部 第91話〜第137話
アスカの、シンジ君調教日記
登校(91話〜92話)
日本には据え膳喰わぬは男の罪という言葉があるというのに、いったいバカシンジの奴は何を考えているのかしら。あたしはもうオトナよ。それを・・・うきーっ、超失礼な奴う。あたしの百万人の下僕どもも、きっとモニターの向こうで拳を握りしめて「おのれ、シンジ!!」とお怒りだわ。
ん・・でも、ファーストほどでは無いにしても、シンジも人付き合いが苦手みたいだから、あんまり猛烈にプッシュしすぎると逆効果かもね。
そうよ、とりあえず、絶えず軽いスキンシップをとりつづけることでシンジを徐々に慣らしていかなければならないわ。どうぶつの調教と一緒ね。
ということで、あたしは登校の際に、そっとシンジの腕に自分の腕を触れ合わせてみることにした。
ところが、またしてもファーストがペッパー警部のように邪魔をしてくる。いきなり公衆の面前で「碇君・・・好き」ですってえ? 何考えてるのよ!! 一度二人きりになって、シメておかなくちゃ。ほんっと、邪魔っけねえ。ん、でも、こういう時こそチャンスよ。ここでガミガミとシンジを怒鳴りつけるとまた萎縮させちゃうし・・・
「そんなに心配しないで。ファーストのことも、アタシが協力するから・・・」
「アスカ・・・・」
「シンジはもう、一人じゃないんだから・・・・アタシがいるんだから・・・・」
あぅ、シンジを泣かせちゃった。そんなにファーストのことが重荷になってるのかしら? そんなにファーストのこと気に掛けてるのかな・・・
まあ、シンジは、誰にでも優しいから、当然なんだろうけど。でも・・・
教室につくと、ファーストが今度はシンジの机にぴったりと自分の机をくっつけて女房面をしはじめた。あーもう、シンジが甘やかすからいけないのよ!! でも、人付き合い能力皆無のファーストが初めて?人間関係築こうとしてるんだから、滅茶苦茶な行動に出てしまうのも仕方がないのかもしれないわね。フッ・・・寛大なあたしは、ファーストを暖かい目で見守ってあげることにした。余裕ね。無論、シンジを襲ったりしたら、許さないけどね!! うう、でも、やっぱりイヤ、イヤ、イヤー。ストレスは美容の大敵なのにい。シンジのバカ、バカ、へっぽこ!!
ナルシスな転校生(93話〜94話)
「渚カヲルです。よろしく・・・・」
なーんか河童みたいな面構えのヘンな女が転校してきた。何故か男子の制服を着ている。もしかしてヘンタイ? 瞳が赤いところだけ、ファーストに似て無くもないけど、そんなことはどうでもいいのよ。問題は、シンジが渚カヲルをみて狼狽えまくってるということ。過去にこの女と何かあったのかしら? 幼なじみとか、元恋人とか・・・(もんもんもん)。
「嘘だ!!カヲル君はもう死んだんだ!!」
??シンジ、大丈夫かしら・・・? どうやらシンジの人違いみたいね。ちょっと安心。
「フフ・・・君のそういうところも、好意に値するよ・・・・」
「え!?」
「つまり・・・・好きってことさ・・・・・」
ええーーーーーっ!?!?
何よこの展開はあ!? 何よ、こいつう?! ファーストよりさらに怪しいわっ!! 渚カヲル、あたしの第二のライバル出現ねっ!!
ファーストも、渚のことを使徒がどうとか言ってるし、シンジはショックを受けて狼狽えてるし、ここは一時ファーストとは休戦協定を結んで、シンジをこの男装のナルシス娘から守らなくてはならないわ。
うう、でも、渚はあたしとシンジのお弁当タイムに割り込んできて巧みにシンジを口説こうとする。ダメよダメダメ、邪魔しないでちょうだい。
「愛してるんだね、シンジ君を・・・・・」
むかーっ、何よこいつう、信じられなあい。
「そ、そうよ!!悪い!?それがどうかしたっていうの!?」
あっ、売り言葉に買い言葉で、つい・・・やだ・・。かああっ。
とっとにかく、この女は危険よっ!! 邪魔してやる、邪魔してやるうっ!
悪夢、ファーストの襲来(95話〜97話)
渚カヲルの正体についてミサトとリツコの元で一度話し合うことになった。ファーストとシンジは何かあたしには判らない話をしてるし、リツコはあたしのこと部外者を見るような目で見てるし、なんだかつまんなぁい・・・あたしは、ネルフ本部で一人で浮いていた頃のことや、独りぼっちで壊れた家のお風呂に入っていた頃のことを思い出しちゃう・・・ふるふる。ダメダメ、今はこうしてシンジがあたしのこと見てくれるんだから、元気出さなくちゃ。
「・・・碇君は私が守ります。私の命に代えても、碇君に傷一つ付けません
から・・・・」
「じゃあ、レイにはシンジ君と一緒のところに住んでもらわないと駄目ね。
つまり、ミサトのマンションっていうことだけど・・・・」
あたしがぼーっと考え事してるうちに、話はおかしな方向に進んでいた。ちょ、ちょっとお!? 何よそれえ!? ファーストが、使徒並みの力を持っているっていうの・・・!? そんな・・・
うっ、うらやましいっ・・・!! 何よ、どうせあたしは、へっぽこで、シンジを守るどころか、守ってもらうばかりよ・・・くすん・・・やっぱりあたしって、部外者なのかな・・・
と落ち込むヒマもなく、ミサトの車に乗せられてファーストの家へ荷物を取りに行くことになった。こんな運転された日にゃ、悩んでいる余裕なんか無いわよ。目の前に死が迫ってるんですもの! くわばらくわばら。うっぷ、酔っちゃった・・・おえっ・・・かっこわるぅい・・・シンジが背中さすってくれるから、いいか・・・
また、シンジに・・・あたしって・・・ファーストはあたしなんか見えてない様子で、シンジにもらった服を嬉しそうに抱いてるし・・・うう。
ゲッ。あたしまだ酔ってるのに、もうマンションに戻るの? やっぱり、あたしにはしおしおとしおれてるヒマなんて無いのね。黙ってるとファーストの偏食につきあわされて、野菜ばかり食べさせられちゃうわ。自己主張しておかないと。
「うーん・・・じゃあ、何かアスカとミサトさんのために、肉料理も手配す
よ。何がいい、アスカ?」
「・・・・はんばーぐ!!」
そうよ、シンジのはんばーぐは天下一品なんだから。ふふ、じゅるじゅる・・・おっとっと。ああ、はんばーぐ、はんばーぐぅ。
「僕たちの家族へようこそ、綾波。もう綾波は独りじゃないんだよ。僕もい
ば、ミサトさんも、アスカもいるんだ。だから、もう寂しくなんてないんだよ。」
むー、あたしは、そんなにいっぱい家族いらないわよお。今まではシンジにねだったら毎晩はんばーぐが食べられたのに、これからは二日に一度は野菜スープとか、にんにくラーメンチャーシュー抜きを食べなきゃならないのかしら? これは、ファーストをも調教して、肉の味を覚えさせる必要があるわね。あ、なんか言い方エッチかも。肉食の習慣を身につけさせる、と言い換えよう。野菜ばかりじゃあ、必須アミノ酸をバランスよく取るのが難しいのよ。肉を食べるのが一番手っ取り早いんだから。ファーストが貧血っぽいのも肉を食べないからに違いないわ、ブツブツ・・・
シンジを襲撃(98話)
さて、ファーストを迎えて、さっそく今夜は歓迎パーティと称した酒盛りね。「アスカ、そのレイをファーストって呼ぶのは止めなさい。これから一緒に
らすんでしょ!?」
「そ、そりゃあ、そうだけど・・・・」
うー、だってぇ、ファーストはファーストじゃん・・・ん、しょうがないわね、シンジに意地悪女だと思われたくないし、一応譲歩してあげようかしら。
レ・イ・・・うっ、なんかジンマシンが出そう。おまけにこの女、いきなりシンジの部屋に住み着こうとするしい。ドラえもんじゃないんだから、全く。こんなストーカー娘をマンションに入れたらどうなるか、ミサトもちゃんと考えてもらいたいわね。ファースト・・・じゃなかった、レイをアジってどーすんのよ。ああ、これはいよいよ、あたしがしっかりガードしておかないと、シンジが危ないわっ!!
あたしは、ミサトがレイを部屋に連れていったスキを見計らって、とりあえずシンジにキスしておいた。そうよ、あんなストーカー娘にシンジを取られてたまるむぉんかっ!!(めらめらめら)とりあえずキスくらいなら大丈夫なんでしょっ、シンジだってえ。
「シンジ?」
「な、何?」
「感じた?」
「な、何言ってんだよ、アスカ!!」
と言いつつ、ふふふ、口では嫌がっててもカラダがだんだんあたしとのキスに順応してきてるに違いないわ。どうせシンジはまたこの後ウダウダと考え込むんだろうけど、最初にキスした時とは全然反応が違うもの。もう一息、もう一息。レイが来た以上、もう悠長なことやってられないのよ!! やっぱ、押しの一手あるのみよっ!
酒宴でレイをノックアウト→シンジ再襲撃作戦(99話〜100話)
ふふ、ふふふ・・・さてと、台所でシンジの手伝いでもしようかな。むっ、レイがいるわ。まあいいか。あたしのほうが五百歩くらいリードしてるもんね。さあ、今日は上手にはんばーぐを焼くわよ! といきりたってたら、シンジに、芋剥きしろと言われた。うう。くすん、しょうがないわね、まだまだシェフへの道は遠いのね。しゃりしゃり・・・おまけに、シンジの隣の席をレイに取られるし。この子、へぼーっとしてるようで、実は結構抜け目無く動いてるのよね。ほんっと、邪魔っけだわ。なんとかシンジから引き離せないかしら。そうだ、ワイン飲ませちゃえ。どう見てもアルコール駄目そうだしい。あたしの肝臓にはゲルマン民族の血が流れてるからアルコール分解はお手の物、ワインなんて水みたいなものよ。ふふふ・・・あたしってば天才。
ん、でも、レイは当然白ワインを飲みたがるのは判るとして・・・赤ワインは血みたいに見えるから嫌がるだろうと思ってたわ・・・シンジが白ワイン飲んだらどうしよ・・・どきどき・・・よかった、赤ワインを選んでくれたわ。あたしの勝ちよ!!ぐびぐびっ。ヒック・・・
「シンジ、アタシたち、おそろいの色ね。」
「う、うん。」
「アタシ、シンジがロゼを選んでくれて、うれしかったんだ。」
「そ、そう・・・」
「アタシの色だもんね。もしシンジが白って言ったら、どうしようかと思っ
ゃった。」
「べ、別に僕は深い意味でそう言った訳じゃないんだけど・・・・」
「って言うことは、深層心理でも、アタシを求めてるってことよね。」
「・・・・・(^_^;)」
ヒック。うふ、うふふ・・・なんらか幸せな気分。んっ、ファーストがへぼへぼっと酔っぱらってきてるわっ。チャーンス。ガンガン飲ませて、潰してやるぅ〜。あうっ、そうだ、シンジも酔っぱらわせとこう。人間、泥酔すると日頃抑圧されてる無意識が顕在化するからぁ、シンジを酔わせれば「あっ、アスカっ・・・スキだあっ」とか言い出してあたしを襲うかもぉ・・・ヒック。うふ、うふふふ・・・
「碇君、好き!!」
「・・・・」
「私のことも好きでしょ!?」
「・・・・」
「キスして、キス!!」
んあー? なんか、ファーストがシンジに躍りかかってブチュブチュとキスしてるような・・・うけけけけ。もっとやれもっとやれ!! なんだか楽しいわあ〜。あっ、ファーストがミサトに殴り殺された。死んじゃったのかしら? ひっひっ。ゲフッ、あたしもこのへんでバカシンジとミサトをビシッとシメておかなくちゃいけないかもね。こらっミサト!! さっさと加持さんと結婚して、ファーストを連れてここを出て行きなさいっ!! このマンションは、明日からあたしとシンジの二人だけの愛の巣にするのよっ!! 毎晩二人ではんばーぐを一緒に食べてぇ、そして、ふふっ、ふふふふふっ・・・
ごちっ!!
あっ、あうあう・・・くらくらっ・・・なにすんのよ、ミサトのぶわかあ〜・・・・がくっ。
二日酔いで遅刻(101話〜102話)
んん・・ううっ・・・頭がいたあい・・・あたし、二日酔いで眠り込んでしまってたのね・・・レイとシンジに飲ませるために、自分も無理して飲み過ぎたのかしら・・・ああもう、気分わるうい・・・
とりあえず、シャワー浴びようっと・・・うう・・・
(しゃわーーーー)
フウ、やっと目が覚めたわ。あたしとしたことが、夕べは、なんか恥ずかしいことを口走ったりしなかったでしょうね? ま、まあ、誰も覚えてないだろうから、いいか。あっ、バカシンジが口実作って覗きに来たわ。からかってやろうっと。
『一緒にシャワー、浴びる?』
「な、何言ってんだよ、朝っぱらから!?」
『えっちねえ・・・何想像してるの?別に何も変なことしやしないわよ。』
「あ、当たり前だろ!?そういう問題じゃないの!!」
『あ、シンジはアタシの裸、見たことないんだっけ!?なら今見せてあげよ
か!?』
「い、いいよ!!もう、僕をからかうのは止めてよ!!」
さすがバカシンジ、からかいがいがあるわね。ホントは見たいくせに、無理しちゃってえ。いったいどうすればこのダメシンジが、暴走モードに入るのかしら? バカもいいとこだわ、あたしが見せてあげるって言ってるのに。やっぱり、これって超失礼じゃん。むかむか。
で、あたしはもう今日は学校さぼろうと思ってたんだけど、またまたミサトの車に乗せられて学校に連行された。ああ、もう・・・いやあああ〜。
シンジはシンジで、遅刻したくらいで落ち込んでるし。暗いったらありゃしない。ほんっとバカよね。
「碇君は馬鹿じゃないわ。碇君に失礼な事言わないで。」
「シンジはバカよ。それも大バカじゃない。アンタ、そんな事も気がつかな
の!?」
あーもう、レイもシンジも大バカだわっ!! なんでこんなトーヘンボクみたいな奴しかいないのよお。
そうよ、あたしが何をやっても、シンジはぬぼーとしてるだけで・・・ううっ、つまんなぁい。あたしの何が不満なわけえ。いらいらいらいら。
「・・・ごめん、アスカ、綾波・・・・僕が馬鹿で・・・・」
ふん、その通りよ。土下座して謝ってほしいわね。あっ、レイが自分だけいい子になろうとして、碇君は悪くないわ、なーんて大甘なこと言ってるわっ。ちくしょう、ここで稼がれたらあたし一人嫌われちゃうじゃないの。一応、しおらしいところ見せておこうっと・・・うう、でも、こんなのあたしの本心じゃないわよ。シンジはバカだから、あたしの本当の気持ちなんてくみ取ってくれないのよね、どうせ・・・バカ・・・バカバカバカ! あっレイがまたあたしのマネして・・・くっそー。少しは自分で考えて行動しなさいよっ。
「アタシから逃げようと思っても、そうは行かないわよ。シンジ!!」
そうよ、こうなりゃ意地でも、レイには負けられないわっ。
教室で再びレイ暴走(103話〜106話)
あんまりレイが教室でシンジにベタベタとまとわりつくので、とうとう寛大なあたしも堪忍袋の鼻緒が切れてレイの頭を殴って怒鳴りつけてしまった。
ったく、シンジが甘やかすからいけないのよ。今日こそピシッとシメておかなくちゃ。幼児じゃないんだから。がみがみ。あっ、レイが逃げたっ!?
ちっ、またシンジに追いかけてもらおうとしてるに違いないわっ。そうは問屋が開かない。ここは、当然、このあたしがレイを追いかけて説教しなくちゃね。だーっしゅ!! ナルシス娘渚とシンジを残しておくのはちょっと心配だけど、まさか、レイじゃあるまいし教室でシンジを襲ったりしないでしょ。
あっ、いたいた。全く、いいこと、シンジは一時的接触を極端に嫌うんだからね、あんたのやってることはセクハラなのよ、まるきりストーカーだわ、本当の愛というのはね、相手を支配しようとか監視しようとかすることじゃないのよ、シンジを理解しようと努力することこそが・・・ガミガミガミ・・・グダグダグダ・・・
「しゅん」
あれ、ちょっと言い過ぎたかな? ま、まあいいや。どうせシンジの顔を見たらまたすぐに復活するんだから。そうよ、今までだってそうだったじゃなーい。こう見えても超ガンコなのよこの娘は。
こうしてあたしはレイをちょっぴりシメて、教室に戻った。ちょ、ちょっとかわいそうだから、シンジと仲直りの握手させてあげようかな。ほら、握手握手。
そのとたん。
「キスの回数も、あの人に負けないから・・・・・」
ほうらね、こういう女なのよ、こいつはっ!! ムカフーン!! あたしの言ったこと、全部聞き流してるじゃなーい!! もう許せない、言葉でシメてもムダなら、この拳でシメるしかないわっ!! ちょっとバカシンジ、何をニコニコしてるのよっ!? あたしは、本気で怒ってるんだから!!
あーもう許せない、あたしが説教すればするだけ、レイはずるがしこくなっていくだけじゃなーい。こうなりゃ、実力行使よ。全員の前で、既成事実を宣言しておくわ。ふっ・・・シンジ、もうあんたは逃げられないのよ。
「アタシとシンジは特別な関係なのよ。そう、男と女のね・・・・」
ま、ちょっぴり誇張があるけどお。大騒ぎの教室。うろたえるバカシンジ。ざまーみなさいって。しかし、肝心のレイは全然動じない。むっかー!!ああいえばこういう!!かわいくなーい!!
お弁当タイム(107話〜108話)
お弁当の時間にまた渚が割り込んできた。なんだか、レイと渚って、犬猿の仲というか、超険悪ってカンジ? レイって渚のこと「あれ」とか言ってるしい。人間あつかいしてないわね・・・レイって恐い子よねえ。シンジはシンジで渚さんを信じるよ、死んでもいいやあ、みたいな大甘なこと言ってるしい。どっちもどっちよね。やっぱり、ネルフ唯一の常識人のあたしがしっかりしていないと、この二人って頼りなくて見てられないわ。
「私は碇君のおかげで、他のみんなと同じようになれたの。私の人としての生は、碇君から始まった。だから私にとって、碇君は特別な存在であり、かけがえの無い存在なの。碇君の生命が危険にさらされるなんて、私には耐えらない。でも、碇君の命を守るために、碇君が碇君らしくなくなってしまうの嫌。碇君はずっと、私の好きな今の碇君であり続けて欲しいから・・・・」
れ、レイ、アンタ・・・もしや・・・
電波者・・・!?
レイって一体、何なのよ。シンジも教えてくれないし・・・それどころか、なんだかシンジも嬉しそうだし・・・ふ、ふんっ、どうせあたしは仲間外れよ。勝手に浸ってればいいんだわ・・・
シンジ・・・教えてくれても、いいのに・・・バカ・・
う、寂しい・・・寂しいよぉ・・・
はっ、ヒカリに心配かけちゃいけないわ。こっ、こういう時は、シンジをからかって遊ぶのよ!! ほうら、つねつね!! あーもうスッキリするー。あっ・・レイが、またいい所で邪魔してくる!! ううーっ、ストレスが、ストレスがあ〜。
放課後(109話〜110話)
学校の帰り、シンジはなんだか元気が無かった。いたぶりすぎて気力を消耗させてしまったのかしら。倒れられちゃうといじめがいが無くなるから、ちょっと優しくしてあげようかな。と思ってたら、また渚がシンジに弁当を作ってくれとか訳の分からないことを言い出した。なんなのよ、こいつはー。トンボに油揚げ浚われる気分だわっ。ヒカリもヒカリよ、こんな女仲間に入れちゃダメよお、あっあたしは別にかまわないのよ、でもレイが渚は怪しいって言うしい・・・
あーもう、なんであたしが渚と握手しなきゃいけないわけえ。ふんふんふーんだ。いいこと、シンジの手前和解してあげるだけだからねっ!!
エッ、シンジの家に行く、ですって?! ぐわあーっ、やっぱ、こんな奴と和解なんか、しない!! 戦争開始、皆々開始よ!!
「そんな事は絶対にないわ!!アタシはシンジと離れない!!たとえどんな事があっても!!」
「これから先、どんな事があるかわからないよ。それでも君は、シンジ君の側を一生離れないつもりかい?」
「そうよ!!悪い!?」
「悪くはないよ。それが君の選んだ道なんだから。ただ、僕はそれが君のためになるとはとても思えない。」
超むかつくー!! うきー!! だいたい女のくせに「僕」ってなにごとよお。あたしとシンジは結婚するんだから、一生一緒にいて当然ジャン!! うっ、でも・・・
もし、シンジがレイとか渚とか、なんだかよくわかんない奴と結婚しちゃったら・・・あたしは・・・
「・・・・シンジ?」
「何、アスカ?」
「アタシを捨てないでね。」
チッ、これで終わればらぶらぶなんだけど、横にキッチリ、レイがいるのよね・・・いつもいつも、あたしと同じものを欲しがって・・・あーもう、邪魔っけだわ。このままじゃあたし、そのうち爆発しちゃうかも・・・いらいら。永遠にこの三角関係が続くなんて、あたしは絶対にイヤよ!!
なよっちいシンジを看病(111話〜113話)
渚は、途中で何故か引き返してくれた。ふう。一安心だわ。
シンジは、家に着くなり、へたりこんじゃった。男のくせに、ダメねえ。使徒の渚カヲルのことで、悩んでるのかな・・? とりあえずシンジを休ませて、そして、このへぼ娘を調教しておかないと。こいつが四六時中シンジにべったりと雛鳥みたいにくっついてるのが良くないのよお。
「バカ。それが分別の無い証なのよ。いい、シンジを特別扱いするのはいいんだけど、これは二人っきりの時とかにこっそりやるか、さりげなく誰にもわからないようにやるのもんなのよ。」
「・・・・どうして?私はいつどこででも、私が碇君を一番に想っている事を碇君に示してあげたい。」
「それもいいけど、シンジはそういうのを嫌がるし、第一さりげなくやる方が、よっぽど効果的なのよ。」
「・・・・そういうものなの?」
「そうよ。いいから、今度試してみるといいわ。」
しまった、あたしって、大馬鹿・・・?! レイに、こんなこと教えてどーすんのよっ!? あまりにレイがアレなんで、つい調子にのってペラペラと・・・ちぇっ。
おまけに、レイに寝ているシンジにキスさせちゃうし・・・あたしこそ、どうかしてるわ。疲れてるのかしら・・・?
あっ、シンジが寝ている時だけって約束だったのに、早速破ろうとしている!? くおの、くそアマぁ〜!! シンジがいなかったら、この場で人間ミンチよ!! やっぱりあたしがバカだったわ、レイなんかを一瞬でも信用するなんて。ん・・・もしかして、レイって、あたしの行動を逐一コピーして真似してるんじゃあ・・? ということは、あたしがシンジにべたべたする毎に、レイもシンジに・・・なっ、なんてことっ。今のあたしの立場は、まさに二律背反的状況だわっ。
とりあえずシンジにおじやを食べさせようっと。なんだかたまにはいいわね、こういうのも。さ、レイに作らせて、あたしは脇でテレビ見ながら適当に・・・ふんふんふん。
「ちょっと熱いかもしれないけど、あーんして。」
「・・・あーん。」
「はい・・・・」
これよこれ。あたしばっかり食べさせてもらってた病院でのこっ恥ずかしい過去を、寝ているシンジにあたしがおじやを食べさせることで帳消しにするのよ。一方的に面倒みてもらってるばかりじゃ、やっぱり、納得いかないもの。一度立場を逆にしてみたかったのよ。う、またレイがベソかきそうになってる・・・ううっ・・・ずるいわよこの子、いつもこの手で・・・ああもう、しょうがないわね、ちょっとだけシンジ貸してあげればいいんでしょ。
いら。いらいら。むか。むかむか。
うう・・・なんであたし、こんな・・・バカみたい・・・
シンジの奴、この三角関係状況が異常だということに、全然気づいてないのかしら? 何よ、バカにして・・・ぐしっ・・・
なんであたし・・こんな奴に・・・
加持さんがマンションに遊びに来たけどお(114話〜116話)
レイと二人でシンジに餌を与えていると、ミサトが加持さんを連れて帰ってきた。ふっふっ、シンジに鍛えてもらった料理の腕を見せる時よ!! あたしは、レイを引き連れてキッチンでさっそく加持さんに料理を作ることにした。(といっても、作るのはほとんどレイで、あたしは遊んでるだけだけどお)シンジ、加持さんになんかしょーもないことペラペラ話さないでしょうね? もしかして、加持さんに嫉妬して、「アスカはもう、僕のものなんだっ!!」なんてタンカきってたりして・・・ああ、あたしのためにケンカなんてやめてっ二人とも・・・ハア。そんな訳ないか。
で、また食事の時間にミサトが「今日は加持が来てることだし飲むわよ」ってこの女、昨日もレイの引っ越し祝いとか言って飲んだじゃないのよ。日本全国酒飲み音頭みたいな女ね。あたしは今日はミルクでいいや、また泥酔したら何するかわかんないし・・・シンジも疲れてるみたいだしね。一日くらいおとなしくしてよっと。
「いただきまーす!!」
はぐはぐはぐ、もぐもぐもぐ、むしゃむしゃむしゃ・・・
ん、何これ、味無いじゃなーい!! んもう、レイの奴、あたしもシンジももっとコテコテな味が好きなのに、こんな薄塩で添加物ゼロ、動物タンパクゼロみたいなヘルシーなおかず食べててもお腹ふとらないわね。
しかし、あんまり味付けのこと言うと、シンジがまたレイにだけ料理教えてますますあたしがへっぽこになってしまうから、ここは我慢よ。もぐもぐ。・・・・なんかセコいかな・・・
「どうしたの、アスカ?」
「・・・・なんでもない。」
「ほんと?何だか急に元気なくなったけど・・・・」
「・・・・アタシが頑張れるのは、シンジのためだからね。」
「え!?」
「アタシはずっと人の目を気にして頑張って来たけど、今は違うから。今はシンジのために、頑張ってるんだから・・・・」
結局・・・EVAを失ったから、今度はシンジに依存してるだけなのかしら、あたしって。ううん、パイロットやっていた時とは違うわ、あの頃は自分のためだけに生きてたけど、それは結局周囲の評価のために虚しくあがいているだけだった。・・・今は違うもの。全然違うわ。
違う・・けど・・やっぱり、レイが邪魔よね。あたしからシンジを奪うつもり400%のあの子が、このマンションに来たということは・・・もしシンジがレイのこと好きになっちゃったら・・・
「・・・・辛いわよ・・・・・・」
「・・・・・ごめん。」
「いいのよ。シンジも頑張ってるんだし、アタシもこのくらい我慢しなくちゃ。」
「でも・・・・」
「いいんだってば。アタシは何とか平気だから。」
平気なわけ無いじゃないの、ほんっっっとにバカなんだから。ああもう、胃がきりきりするう。
加持さんがいつもの調子で「あんまり考え込むな」って言ってくれたけど、加持さんはミサトと相思相愛だからそんな気楽でいられるのよお。ま、シンジの前で落ち込んでたらイヤな女だと思われるかもしれないし、加持さんにも心配かけたくないから、ここは元気モノでいようっと。
あたしはそそくさとお風呂に逃げ込んだ。さっきまでシンジが入ってたお湯・・・シンジの入ったお湯になんか絶対入りたくないって思って、バスタブのお湯を全部抜いたこともあったのに、今は・・・こうしてシンジの後から入るのが・・・
・・・やばっ、何考えてるのあたし。ごぼごぼ・・・(お湯の中に沈む音)
そうよ、悩んでても意味無いじゃなーい。
やっぱ、シンジが疲れていようが、怖がろうが、ここは押しの一手あるのみよ。
シンジの部屋へ特攻、そして大勝利(117話)
お風呂からあがったあたしは、髪を乾かしてきれいに縛ってから、シンジの部屋へ突撃した。シンジは、ベッドでゴロゴロとへたばってた。チャーンス。さっそく隣に座る。まあねえ、ベッドの上で一緒に座ったからって襲ってこないのがシンジなのよね。なんだかこっちも変に意識してビクビクしないで済むし、これはこれで信用できるといえば信用できるのかなあ。さて、本題本題。え、シンジがあたしに話があるって? えっ何? またレイのこと・・・?
「・・・・僕・・・・この家を出て行こうかと思うんだ・・・・」
えっ・・・・えええええええええええええっ!?
何それっ!?(@_@;)
どうして? レイがここに来たばかりなのに? やっぱり、あたしとレイが一日中いがみあってるのを見るのが辛いから・・・? うう、全部レイが悪いんだわ!! いや、もしかして、あたしに襲われるのが恐いの、バカシンジは・・・?
「・・・・・ほら・・・この前の僕とアスカみたいに・・・・」
「この前?」
「う、うん。またいつ、ああいう事が起きかねないだろ?」
「・・・・いいじゃない。アタシはいいって言ってるんだから。」
や、やっぱりそうなのね。ああ・・・暴走しすぎたかしら・・・覆水が盆と正月にいっぺんにきちゃったわ。
「でも、そんな無責任な事は出来ないよ。だから・・・・」
「だから?」
「だから、僕は完全に父さんを捨てて、アスカと一緒になるって決めてからでないと・・・・」
「・・・・それってもしかして・・・・」
「・・・・け、結婚する相手とでないと、やっぱりそういう事は・・・・」
「・・・アタシと・・・・結婚?」
ちゅどーーーーーん。
ぴよぴよぴよぴよ。
おめでとー、おめでとー、おめでとー。
きゃああああああああああっ!! シンジが、シンジがあたしと結婚・・・これってプロポーズ!?
シンジとの3LDKの団地生活の妄想が走馬燈のようにあたしの頭の中を駆けめぐった。子供は・・・男の子と女の子と一人ずつかな・・・縁側に犬を飼って・・・団地に縁側は無いか・・・日本の住宅事情って最悪だしい。
フッ・・・レイに勝ったわ・・・あたしは、突如余裕しゃくしゃくな気分になって、今夜シンジを襲う計画はやめることにした。もう急がなくてもいいじゃん、ふふっ、ふふふふっ・・・ま、軽くキス一回でいいわ。
あたしが年に一度あるかないかというくらい上機嫌でいると、なんだかシンジも言うこと聴いてくれそうな雰囲気になってきた。今のうちに命令しておこうっと。
「じゃあ・・・明日はシンジが来て。アタシ、部屋でシンジが来るのを待ってるから。」
「うん。わかった。」
「絶対に忘れるんじゃないわよ!!忘れたら、冗談抜きでシンジを襲いに行くからねっ!!」
よしよし。さらに・・・もっと過激なこと言わせてみようかな・・・あたしの悪のりして暴走するという悪癖がまた出てきてしまった。
「・・・明日は、僕がアスカの唇を奪いに行くから。」
ぷちん。くるくるっ。
あたしは、結局またシンジを襲ってしまったのだった。
まるでパブロフの犬のように・・・
で、でも、今夜はシンジもあたしのこと怖がらなかったし。明日はシンジがあたしの部屋に来るしい・・・何より・・・結婚・・・かああああ。
かくしてあたしは、難攻不落の旅順を陥落させた。長い犠牲の多い戦いだったわ・・・ついにあたしはシンジを・・・かああああ。じゅわ〜。あちちち!!
今夜はいい夢が見れそうね。
夜討ちの次は、朝駆けよ!!(118話〜120話)
うーん、いい朝。ふふ、ふふふっ・・・まだ朝の5時だけど、気力充実で目が血走って眠っていられないわ。
早速、シンジの部屋にいこーっと。まだシンジ寝てるだろうから、ふふふ・・・あんなことやこんなことを・・・まずキスして、それから・・・かああっ・・・ガチャ・・・
「あっレイ、あんた、どうしてここにいるのよ!!」
「あなたのせいで、碇君が起きちゃったじゃない・・・」
うきーっ、信じられない!! この痴漢娘!! なんていやらしいの、寝てるシンジに無理矢理キスしようとしてたに違いないわ。あるいはさらに・・・ゆっ許せない!!
「・・・・あなたも碇君を起こしに来たのね?」
ああいえばこういう女ね。まずいわ、完全にあたしの考えてることを見透かされている・・・というか、あたしの行動をこいつは学習してるんだから、すなわち、二人はシンジに対して同じ動機で同じ行動を・・・うう。なんとか言い逃れしないと・・・シンジに、あたしがシンジの寝込みを襲いにきたことがばれちゃう!
「そ、そう!!髪よ、髪!!」
「髪?」
「そう。アタシは毎朝シンジに髪の手入れをしてもらってるのよ。昨日は寝坊しちゃってやってもらう暇が無かったけど、毎朝欠かさずしてもらってるんだから。」
ふう、助かった・・・完璧な口実だわ。毎日欠かさずったって、ホントはおととい一回させただけだけどお。
「・・・・碇君・・・・私も、あの人と同じように・・・・」
またマネされた・・・
・・・やっぱ、あたしって、バカ・・・・!?
ふん。何よ、夕べの結婚の話は何だったのよお。あーあ、どうしてあたしって一言多くて自ら墓穴を掘っちゃうのかしら・・・とりあえずここで暴れるとあたし一人が悪者にされそうな雰囲気なので、あたしはまた胃にこみ上げてくる怒りの衝動をぐっと飲み込んだ。そうそう、結婚結婚。我慢できるわ。
あたしは当然レイの雑なウルフヘヤーのほうを先にシンジに手入れさせて、レイを追い出した。シンジはなんかまたオドオドし始めてる。当たり前よね。あたしの気持ちが全然判らないほどバカじゃないでしょ。
「ありがと、シンジ。でも、アタシの髪をやるのはシンジには無理だから、
の気持ちだけありがたく受け取っておいて、後はアタシがやるわ。」
「そ、そう?」
「そういう事なのよ。レイはショートカットだから、シンジでも出来なくはないけど、アタシはロングヘアだからちょっとシンジに任せるには心配なの。
「じゃ、じゃあ、それならはじめから僕が手を出さないで、アスカが全部や
た方が良かったんじゃない?その方が、効率がいいし・・・・」
ぐさっ!!痛・・・っ・・・酷い・・・
やっぱ、こいつ、バカよおお!! 何言ってんのよ!! くぉの、バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ!!
あたしは、クレイジー・ライトのように瞬間沸騰して、あとはもうなんだかよくわかんなくなってしまった。
気がつくと、シンジが、あたしのおでこにキスしていた。
おでこ・・子供みたいだけど、とりあえず、これでもいいかな・・・
バカシンジにしてみたら、大進歩よね・・・
やっぱり、夕べの結婚がどうとかいう話を、あたしは妄想を先走らせて拡大解釈してたのね。つまんない・・・
ふう。またシンジに、エキセントリックな奴だと思われちゃったかな・・・やだな・・・でも全部シンジのせいよ、あいつが煮え切らないから・・・
どうすればこの朴念仁シンジに、好きだって言わせることができるのかしら? 超難問だわ。
今朝はちゃんと朝食を(121話〜122話)
キッチンに行くと、加持さんが起きてた。早起きねえ。夕べはミサトと忙しかったでしょうに・・・きっと加持さんって激しいに違いないわ・・・かあああ・・・あ、何考えてるのかしら。最近、あたし、どうかしてるかも。ん、なんだかレイはさっきからずっとヘンよねえ。どうしたのかしら? 加持さんによると、レイはシンジを疑ったりした自分を恥じてるみたいね。シンジは全然的外れなこと言ってるけど・・・まあこいつはどうでもいいところばっかり気を使って、肝心なことから目をそらしてるクチだから、しょうがないか。
「結局アンタは自分のうちに帰らずに、ここに泊まっていった訳ね?」
あれ、ミサトと一緒に寝なかったのね、加持さん。なあんだ。あたしバカみたいじゃん。そっか、あたしたち三人がいるんだから、ここじゃあね。
「いや、俺も今日から第三新東京中学の教師だから・・・・」
えっ、加持さんが先生にっ!? ウッソー? なんで夕べ言わなかったのかしら。ん、でも、ネルフの主なスタッフって、ほとんど教職についてるから、当然といえば当然かな。
ま、加持さんはミサトと結婚するんだろうし、以前みたいに加持さーんごろごろ、と甘えたい気分でもないわね。やっぱり、あれは、オトナに憧れてたってことなのかな・・・
うう、でもシンジはいくらなんでもお子さますぎるわよ。あーあ、加持さんの十分の一でいいから、オトナになってくれないかしらね。そうなれば、今の状況にちゃんとカタをつけてくれる筈よ。勿論その時に選ばれるのは・・・ふふふ・・・
出た!! ナルシス娘!!(122話〜123話)
玄関にヒカリたちに紛れて、渚が現れた。出たわねっ!!
おまけに、あたしの手まで握ってくるしい。うきー、触らないでよ、気持ち悪いわね!! こいつ、男装してるし、両方イケるんじゃないのお? ま、渚に関しては、レイが超〜敵視してるからあ、あたしは黙ってても問題ないわよね。ったく、朝っぱらから雰囲気悪くなっちゃったわね・・・
登校中に、三バカトリオが鈴原とヒカリのうわさ話を始めた。バカじゃないのお、あたしとヒカリが聞き耳立ててるのわかんないのかしら。ホントに、男の子が三人集まると姦しいとはよく言ったものよね。ほんとにこの二人、いつまでぬるま湯みたいな関係続けてるのかしら。ヒカリの親友として、このアスカ様がなんとかしてあげないといけないわ。
「鈴原の奴、未だに素直になれないようね。」
「アスカはどうなのよ?碇君を放っておいていいの?綾波さんと渚さんが両脇をしっかりと固めているみたいだけど・・・」
「平気よ。アタシはシンジを信じてるから・・・・」
「・・・・変わったわね、アスカも・・・・」
うーん、あたしは何も変わらないけど・・・信じないと、やっていけないのかもしれないし・・・弱くなっちゃったのかなあ。そんなことないよね。自分の好きな相手を信じないで、誰を信じろっていうのよ。確かに、以前のあたしは、自分以外の誰も信じていなかったかもしれない。シンジはシンジで、自分のことしか愛さない人間だったし。でも、今は、二人ともお互いのことを必要としてもちつもたれつ、なのかなあ? 一方的にあたしがシンジにもたれかかってるだけなんじゃあ・・・
「・・・・鈴原、もしかしたら綾波さんのことが好きなんじゃないかって思って・・・・」
「まさか!?そんなことは有り得ないわよ。」
なっ????
ヒカリ、いったいどーしたのアンタっ?! 恋する乙女というものは、冷静な判断力を失うものなのね。そういえば前にも同じようなこと言ってたけど・・・ま、ヤキモチってやつよね。ヒカリったら、だいたい、いつまでもウジウジ照れ照れやってるから、エネルギーが鬱屈してそーゆー邪念が湧いてくるのよお。好きなら行動あるのみよ。このままじゃやっぱり、ヒカリのためによくないわっ。
「告白して、男を縛るのよ。シンジはなかなか屈しなかったけど、鈴原ならヒカリに対して満更でもないようだから、きっと受け入れてくれるわ。そうしてしっかりと結論を出してしまえば、公然と難詰も出来るじゃないの。」
そうそう、男をシメるには、まず言葉で縛っちゃうのよ、ふっふっ。まーったく、最近の男って、ほんっとダメよねえ。なんで鈴原、ヒカリをいつまでも放っておくのかしら。
加持さんのスイカ話と、マッチョ思想を語る鈴原(124話)
朝礼ってかったるい。なんで日本の学校にはこんな刑務所みたいなルーチンワークがあるのかしら? ふわあ、眠いよぅ。うー、早くお風呂に入りたいわ。ぽりぽり。(ほっぺたかいてるのよっ!)
むっ、鈴原のバカザルが、ヒカリの前でミサトはーん!!と鼻の下を伸ばしてヨダレを垂らしてるわ。全く、シンジといい鈴原といい、なんでこう男ってドンカンなのかしらっ!? あたしは、ヒカリのために鈴原をシメてやることにした。がみがみ、ぺらぺら。むー、このあたしに口答えするつもりい? むかーっ!!
「じゃあ、もっとヒカリにやさしくしてやんなさいよ!!ヒカリはアンタがレイや他の女のことが好きなんじゃないかって心配してんのよ!!」
あっ、言っちゃったっ・・・あうあう、あたしって、どうしてこう一言も二言も多いのかしら? ごめんっ、ヒカリ!! ほっ、聞こえてなかったみたい・・・って、鈴原にバラしちゃったことはもう取り返しがつかないじゃないの。ふ、ふん、まあいいわ、これで少しは応えたでしょ、こいつもっ。
あっ、加持さんが挨拶を始めたわっ。加持さーん!! ぴーすぴーす!!
なんか後ろのほうでは、シンジと鈴原が「男とは!!」とか何とか熱い話を語っていたけど、加持さんの話に聞き入っていたので、そっちはほとんど聞き流してしまった。
「みんな、ものを育てるというのはいいぞ、いろんなことが見えてくる。とくにスイカだな! スイカという字は、西の瓜と書くんだ。西の瓜。ちなみにキュウリは胡瓜だな。これは胡の瓜という意味だ。この胡という名称の由来はだな・・・いやいや、スイカの話だった。スイカを育てるときに大切なことは、化学肥料に頼りすぎないことだ。あまりに化学肥料ばかりを与えて土を弱くしたり農薬を巻きすぎて害虫を全て殺してしまうと、スイカの生命力が弱ってしまうんだな。やはり、一番いい肥料はコヤシさ。そうそう、ウンコだ。ははは。スイカというものは、ただ美しく清潔にしてやればいいというものじゃないんだな、汚濁の中からこそ本当に力強いスイカの花が、実が・・・」
ひたすら続く加持さんのスイカ話。うーん、さすが加持さんだわ、とっても感動しちゃう。きっと、これは例え話なのよね。あたしも、一時は自分の身体も他人の身体も汚いモノに思えて、お風呂のお湯を抜いたり、便座に座れなくなったり、もう息すらできなくなったり・・・潔癖すぎたのよ。人間、いくら無理したって完璧な存在になれる筈なんて無かったんだわ。そうよ。自分の汚い部分を切り捨てるなんて、そんなこと出来ない。誰だって身体を捨てて心だけで生きていける筈が無いんだから。そもそも心だけで生きてちゃ、相手に触れることが出来無くなっちゃうじゃない。そんなのイヤよ。だから・・・今はシンジの唇にキスしても、前みたいに汚いとは思わなくなった。シンジも早く、慣れてくれればいいんだけど・・・
「ところでこのスイカの種だけどな、茶碗二杯分まとめて食べれば、中毒死できると言われているが、俺は一度試してみたけど腹をこわしただけで済んだから、ありゃデマだな。ははは。さて、次はスイカの雄花と雌花の話だが・・・ああっスイカ、スイカッ!!」
あ、あれっ・・・も、もしかして加持さん、単にスイカの話がしたくてしてるだけなんじゃあ・・・
ところが。
ん・・・鈴原って声がでかいから、イヤでも聞こえちゃうわね。なーにが「一人前の男」よ、自分のこと慕ってくれてる女の子一人幸せにできないでさ。いいわけよね、いいわけ。男とか女とか、シンジにそんな旧態依然なマッチョ思想吹き込まないでほしいわね。やっぱ、こいつはさっさとヒカリとくっつけないと、独身同盟みたいなものを築かれたらタイヘンだわ。
マッチョなシンジに逆洗脳。お茶の子ね(125話〜126話)
教室に戻ったあたしは、シンジを廊下に連れ出して説教をしておくことにした。さっきの鈴原のマッチョ思想を真に受けてそうな顔だったから。「おー、オレは男らしく生きるぞー」と細い柳眉がピクピク動いてるから丸分かりよ。こんな女の子みたいな顔して、何を似合わないこと考えてるんだか。レイがまた不機嫌そうにあたしを睨んできたけど、それどころじゃないので適当に流しておいた。ったく、視野が狭いんだから、この子ったら。いちいち怒ってちゃダメよね。
「・・・・つまり、僕もトウジも、男として自分を認められる存在にならなければ、女性の想いに応えるなんて出来ないっていうことなんだよ。」
「・・・・」
「自分が一人前だと思えないのに、人を幸せにしてあげることなんて出来ないだろ?」
全く、もう洗脳されてるわ。目が据わってるもの。バカねえ。ここは逆洗脳しておかないとまずいわね。ほんっとに、何考えてるのかしら。あたしはね、今のままのシンジが一番好きなのに・・・なーんて言ってあげる訳、無いジャン!! そこまで甘やかしたら頭に乗るもの。
「・・・・そんなこと、無いわよ・・・・」
「どうして?」
「・・・・一人前になんて、いつなれるかわかんないじゃない。それよりも、半人前の男と女で、お互いを磨きあいながら成長して行けばいいじゃない。」ま、こんなところかしら? プラトンも、人間はもともと雌雄同体だったのに、その完全さを嫉妬された神様に男と女とに引き裂かれたんだ、って言ってるわ。だから半人前同志でいいのよぉ。あれ、ソクラテスが言ったんだっけ? ま、まあいいわ。
「・・・それもそうだね・・・・」
ぷぷっ。ほーんと、扱いやすいわね。さてと、仕上げに怒濤の洗脳攻撃よ。ぺらぺらぺらぺらぺらっ。ほーら、シンジの目の色が変わってきたわ。さあさあシンジ、あたしの洗脳を受け入れて、このあたしと一緒になるのよ!! ん・・・ヘンね。乗ってこないわ。どうしたのかしらシンジ? その通りだよアスカ、って言ってあたしにキスしてこなきゃダメじゃない。どうしてそんな辛そうな顔するの、シンジ。
「僕はどうやらそれ以前の問題だったみたい。だって、僕の心には穴が開いているのだから・・・・」
??
何? 何言ってるの? わかんない、シンジが言ってることが、わかんない・・・
・・・あたしじゃダメなの・・・? どうして・・・あたしの何処がいけないの。シンジ・・・
やっぱり、あたしより、レイのほうが好きなの・・・?
「ア、アスカっ、とにかく、トウジに今みたいな事を話してみてよ。そうすれば、きっとあの二人のことはうまく行くだろうし・・・・」
・・・・・
なによ、バカ。途中で話をそらすなら最初から言わなきゃいいじゃない。
・・シンジ、もしかしてノイローゼなのかしら。昔、ベトナム戦争症候群というものがあったって聴いたけど、EVAでの長期間に渡る戦闘でトラウマを植え付けられたりストレスを溜めた後遺症が残っているのかもしれないわ。シンジはあたしやレイのことに心を砕いて、自分のメンタルケアのことは放置してきたから・・・大丈夫かなあ・・・ネルフがいーかんげだから良くないのよね。カウンセラーくらいつけてくれて当然なのに。
あっそうだ、鈴原とヒカリの話をつけておくつもりだったんだ。忘れてたわ。あせあせ。そうそう、あたしはヒカリのほうに話つけとくから、シンジは鈴原の間違ったマッチョイズムを矯正しておきなさいよ、今のあたしの説教を参考にね。
あたしは、用件を済ませると、シンジを解放した。なんだか、シンジが心配だわ。あたしみたいなうるさい子とずっと一緒にいると、やっぱり、気疲れするのかしら・・・? レイみたいに物静かに微笑んでいるほうが、内気なシンジは心が安らぐのかも・・・
そんなこと、無いわよね。うん。シンジは消極的で自分では何もしないから、あたしが引っ張ってあげなくちゃいけないのよ。そうそう。消極的通り越して破滅的な性格のレイなんかと一緒にいたら四畳半の下宿で昭和枯れススキみたいになっちゃうに決まってるわ。そうよ、あたしがしっかりしなくちゃ・・・落ち込んでる場合じゃないわ。
我が闘争、その勝利の瞬間(127話〜130話)
ううう、お腹すいたぁ。はやくシンジのお弁当食べたぁい!!ぐううう・・・
今日はちゃんと、シンジがお弁当作ってきてくれてるもんね。これこれ、うぅー、しょーもない学校生活唯一の楽しみなのよ。すりすり。あたしは赤いお弁当箱に頬ずりして中のおかずについてあれこれ空想にふけった。
卵焼きは当然入ってるとして、はんばーぐは今日はビーフ100%かしら、それとも牛とブタの逢い引き? あっ、合い挽きだっけ。それから、えびふらいと、ハッシュドポテトと・・・サラダは、やっぱりトマトが大きいのかな・・・わくわく。
あれ、ヒカリったら、渚なんかのお弁当まで作ってきてあげたの? ハアー、流石ね。あたしには考えられないけど、これでこそヒカリよね。相田が一人だけお弁当をゲット出来ずにいじけているけど、まあねえ、とりあえず所構わずビデオカメラ回すのやめないと彼女は出来ないでしょうね。あれって勝手に撮られるとホント、気分悪いんだからぁ。
「トウジに誤解されるからかい、委員長?」
あっ相田の奴っ!! いくらモテないからって、そんな、ヒカリに当たらなくたって・・・まったくもう、なんで男ってこう・・・
「貴様、なんちゅうこと言っとるんじゃ!?いいんちょーに向かって謝れ!!」
きゃっ!?
す、鈴原が怒鳴った!? やだもう、恐いじゃないの・・・うん、これはもしや? そうよ、これをきっかけにヒカリと鈴原をくっつけるチャ〜ンス。ニヤリ。雨降って自家溜まるというしね。ふふふ。
バキッ!!
きゃああっ!? いやあああっ、恐いっ、殴ってるっ・・・(@_@;)
ま、まあ、あたしに殴りかかってきた訳じゃないから、いいかっ。あたしはこう見えても格闘技の訓練受けてるしぃ。防御くらいできるわよ。とっとにかくヒカリ、鈴原の理性が吹っ飛んでいる今がチャンスよ!! あれ?
「済まなかったな、トウジ。ついあんな事を口にしちゃって・・・・」
「いや、わいもケンスケの気持ち、わかってやれんで済まんかった。」
あれれ。なんでこうなるわけえ。そうじゃなくって、鈴原が飛び出していってヒカリが後を追うとかあ、その逆とかあ、なんかヤマがあるでしょう? んもー、こいつらこんなあっさり仲直りするなんて、ホモォ?
しょーもないわねえ全く。ぐぎゅるううううー。あっ、またお腹が。はっ早く食べないと。いただきまーす!!
ぱかっ。フタを空けると、あーん、今日はおかずがしょぼいじゃなーい。お豆と、キンピラゴボウと、ひじきと、タクアン・・・肉が圧倒的に少ないわ。もしやレイの好みに合わせてあたしのおかずまでヘルシーにしたんじゃないでしょうね? しくしく・・・もぐもぐ・・ん、このきんぴら、おいしーい。ぱくぱく。誰かに取られないうちに食べちゃおうっと。
さてと、いよいよ卵焼きを食べようかな。あっ、なによお、いつもより一切れ少ないじゃなーい。うー、ぼけぼけっとしてるシンジから調達しなきゃ。レイが作ったらしいけど、まあいいわ。
「もーらい!!ぼさっとしてるアンタが悪いのよ!!」
さっ。ぱくっ。むしゃむしゃっ。ん、まあまあイケルわね、レイが作ったにしちゃ。シンジの弁当からぶんどった訳だから、毒も入ってないだろうし。
ん、レイがまたあたしを親の敵のように睨んでるわ。からかってやろっと。はいシンジ、レイの卵焼きよ!! ぐいぐい。くっくっく。
あうっ・・・こっ、恐いっ、レイの目が恐いわっ!! やばい。あたしは身の危険を感じて、レイに自分の卵焼きを一個分けてやることにした。ちぇっ。仕方ないわ、ここは戦略的撤退ってやつよ。
「・・・・碇君、あーんして・・・・・」
ったく・・・教室で何してんのよ、この女は。羞恥心ゼロよね。
シンジがあたしに目で助けを求めてきたけど、あたしは無視した。イヤなら、自分の口からそう言えばいいじゃない。自分だけいい顔し続けようったって、そうはいかないわ。ここであたしが止めたら、レイにまたあたしだけが嫌われるじゃないのよ。結構シンジってズルイわよね。
という訳でイヤイヤながらあたしはレイがシンジにベタベタするのを放置しておいたんだけど、シンジの表情はどんどん落ち込んでいってしまった。や、やっぱり、まずかったかしら。
ま、またシンジ・・・何か考え込んで・・・大丈夫・・・じゃないみたいね。
「シンジ!!シンジったら!!」
やだ、もしシンジが壊れたりして、ふいに姿を消しちゃったり、閉じこもって病院に入院、なんてことになったら・・・そ、そんなのやだ。
「何か心配事があるんだったらアタシに相談して。お願いよ。アンタがアタシに相談してくれないんじゃ、アタシがいる意味がないってもんじゃない。」
「碇君。碇君には私がいるから。だから私に相談して。碇君のことなら、何でも力になるから。」
ぶちっ。オウム返しするなあっ!!
何この女っ、あたしの真似ばっかりしてさあ、パーマンのコピーロボットじゃないんだから!! やっぱり卵焼きなんかあげるんじゃなかったわ。あたしがいくらレイに譲歩してあげても、レイはまるきりあたしに感謝もしないし、ずっとあたしのことジャマに思って・・・そんなことはいいのよ。シンジが・・・シンジ、あたしをかばってくれないの? あたしがこんな思いしてるのに・・・うう、うう、何よお、結局シンジにとって、あたしは・・・レイと同じなの? もうこんなのイヤっ・・・!!
あたしは、人形じゃないのよ!! やっぱり、イヤッ! こんな扱いガマンできない・・・!!
あたしは完全に頭に血が上って、教室の風景がじわーっと歪んで・・お、落ち着かないと。ヒカリたちが観てるんだから・・・すーは、すーは。ああだめ、もう心が・・・あたしが半分壊れていると、シンジがやっと声をかけてきてくれた。ったく、遅いのよっ・・・グズなんだから。最初からあたしを不安にさせるようなこと、しなきゃいいのよ。
「アタシってやたらと嫉妬深くて、すぐ我慢出来なくなっちゃうでしょ?」
「仕方ないよ。アスカだって人間なんだから・・・・」
ったく、うまいこと言って、あんたがあたし一筋になってくれればそれで解決するのに。ま、まあ、いいかぁ。こうして人目も気にせず教室であたしを優しい目で観てくれるようになっただけでも。ふふ、ちょっとあたしがべそかいてみせたら、すぐにあわてるんだから。ふふ・・・にやにや・・・やっぱりシンジは・・・あたしは、満足してシンジに甘えて・・・って・・・ん・・・やばっ、みんなが観てるんだった!? きゃああっ!?
まずいわ、教室の空気が凍り付いてるっ。れ、レイの顔が・・・恐いっ!! 今度こそ、何かされるかも・・・し、シンジ・・・こそこそ。あたしは、シンジの背中に隠れた。
「・・・・碇君はこの人、赤い髪の女を一番思ってるのね。この私よりも・・・」
何いってるの、あたしの髪は金髪よ。そりゃ、光線のかげんで、教室みたいな暗い場所じゃ、赤っぽく見えるかもしれないけど・・・
い、いや、そんなこと言ってる場合じゃないわね。なんだかレイの様子が凄くヘンだわ。やはり、さすがの鈍感娘も、シンジが好きな子はこのあたしだって、気づいてしまったみたいね・・・いつかは訪れる瞬間が今やってきたってことなんだろうけど・・・あたし、何を言えばいいのかしら・・・
あたしも・・・加持さんがミサトと再びよりを戻した時・・・加持さんがあたしを観てくれなかった時・・・酷く傷ついたけど・・・あたしが今何を言っても、それは・・・
違うわ。ここでヘンな同情みせてたら、それこそレイをバカにしてることになるじゃない。もう憎まれてもいい、ハッキリしておかなきゃ・・・
「アタシも、シンジを想う気持ちは誰にも負けてるつもりはないわ。」
まさに修羅場ね・・・い、いざとなったら、シンジが助け船出してくれる筈だから大丈夫よね。そうよ、絶対に負けないわ、中途半端な遠慮なんて誰のためにもならないのよ。
あとはもう、日頃抑えていた本心を衝動のままに叫ぶだけだった・・・レイも一歩も引かずに応戦してきた。ちくしょう、シンジは、シンジは誰にも渡さないわよ!! ううっ・・・でも、もうタジタジ。負けそう・・シンジ、何、レイなんかに話しかけてるのよ。あたしを観てよ。みんなの前で、ここまでプライドも何もかも捨ててるのに・・・シンジ。
「・・・僕はアスカが好きだ。」
えっ・・・・?!
ええええええええええええっ!?
どかーん、どかーん、どかーん。
シンジ・・・っ・・・・!?
教室がさらに凍り付き、レイが絶望して顔を伏せて泣き出したけど、そんなことはまるで彼岸の世界での出来事みたいに現実感が無かった。
シンジが・・・とうとう言ってくれた・・・やった・・・
やった!! 夢じゃないのねっ!! ああ、もうダメ・・・あたしの頭の中で、フルオーケストラの「歓喜の歌」が鳴り響くのだった。
我が闘争、その終わり無き道程(131話)
しかし、あたしの甘美な至高体験も、つかの間の夢だった。
「シンジはあないなこと言っとるけどな、気にする事あらへんで。」
「・・・・・」
「そもそもシンジは惣流にだって大して気はあらへんのや。まあ、どっちかって言うと惣流寄りっちゅうだけで、綾波と大差はないと、わいは思うけどな・・・・」
「・・・・ほんと?」
コラア、ジャージ男っ!!(-_-X) 何言ってるのよっ!! あんた、あたしに何の恨みがあるわけえ!? ああっ、馬鹿正直なレイが、みるみる復活してっ・・・
「ほんまや。シンジはおかしいとこがあって、女には興味を示さんからな。せやから綾波も絶望する事なんてないで。」
たしかにシンジは、いくらあたしが挑発しても乗ってこないしぃ、もしかしてホモォ?とか疑っちゃうこともあるけど、でもねえっ!! 畜生、こいつ、後ろからタコ殴りにして黙らせないとっ・・・
「・・・・碇君の心を・・・・・あの人から奪う・・・?」
ああっもうその気になってるっ!?
「なに、惣流は野蛮な女や。わいはあないな女よりも、おしとやかな綾波の方が、ずっと魅力的に見えるけどな。」
こっ、コロスわよ!! しんじらんないっ!! 何よ何よ!! あんたの女の趣味なんかどーでもいいのよっ!!
考えられないことに、案の定レイはアッという間に元に戻って、あたしに宣戦を布告してきた。ちっ・・・シンジ、ちょっと、何にこにこ笑ってるわけ? あたしのこと好きだって言ってくれたんじゃないのっ?
・・・シンジっ!!
「なに、顔をほのぼのさせてんのよ?」
「だって、今が一番幸せだから・・・・」
・・・・バカ・・・・?
あたしはそれ以上、何も言えなかった。呆れ果てて・・・
そりゃアンタは、二人の女の子に愛されてて、嬉しいかも知れないわよ。でも、あたしやレイの気持ちはどうなるの? 信じられないわ。こんな状況が幸せだなんて思える女の子がいるとでも思ってるわけ!?
まあ、なにやら心に穴が空いててどうのこうのと言って悩んでるシンジよりは、まだいいかな・・・以前だったら、「二人ともやめてくれよ! もうこんなのたくさんだ!!」とか言って逃げ出してたよーな男なんだし・・・
やっぱり、もっと調教、もとい、教育が必要のね。
・・・結局、好きったって、レイよりはちょっと好き、って程度ってことなのね・・・何よ・・・あたし一人で大喜びして、バッカみたい・・・
あーもう!! 暴れてやるー!!
ヒカリ、暴走(132話〜133話)
お弁当タイムは終わらない。あーあ、もう終わってくれないかしらね。
今度は、最低ジャージ男が、今度はレイの弁当に手を出そうとした。このごろレイと鈴原の仲を勝手にジェラしってたヒカリがこれで切れてしまった。
「どうせ鈴原はあたしのことなんてどうでもいいんでしょ!!あたしのことよりも綾波さんの方が気になるみたいだし!!あたしは綾波さんみたいに美人じゃないし、やさしくもおとなしくもない、ただ料理がうまいだけの女なのよ!!」
ひっヒカリっ、どおしたの一体!?(@_@;)やっぱり、さっきの修羅場が、ヒカリの闘争本能に火を付けた・・・じゃなくって、冷静なヒカリまでがアドレナリン過多になっていたのかも。うう、じゃあ、あたしのせい?
にしても、そーゆーこと考えてるのね、ヒカリってば。能面女より全然かわいいと思うけど・・・そりゃあ、あたしほどの美人ではないけど、あたしに叶う美貌の持ち主なんていないわけだしぃ。エッ、そんなことヒカリは言ってない、ですって?
うーん、冗談言ってる場合じゃないわ。何か言わないと・・・このままじゃあ・・・
「あたしは鈴原のことが好きなの!!」
あちゃーっ、間に合わなかったわっ。
ヒカリは、そのまま走り去ってしまった。
あっちょっとヒカリっ、待ちなさいよ!!追いかけなきゃ。あせあせ。
そこで逃げてどーすんのよっ、もうカムアウトしちゃったんだから今こそプッシュしなきゃダメじゃないっ!!
ヒカリは、実は意外とすばしこくて脚が速いのよ。ネルフで鍛えぬかれたこのあたしの快足をもってしても追いつくのは困難だった。廊下から校舎を抜けて、学校の裏山へと走っていくヒカリをあたしは必死で追いかけた。どうもバカシンジは追ってこないみたい。こうしてる間にもレイが・・・ふるふる。そんなこと言ってる場合じゃ・・・
走るヒカリ。さすがっ、時速200キロの異名を持つヒカリだわ、でも負けないわっ!! 努力と根性で追い抜いてみせる!! そして、裏山の山頂ちかくまで走ったところで遂に、あたしはヒカリを抜いた!!
「やったあああー!! 勝った!! 勝ったわ!! ぜえぜえぜえぜえ」
「か、勝ったって、アスカ・・・?」
「はあ〜っ、はあ〜っ、ぜえぜえ・・ついにヒカリを抜いたのよっ・・・」
「アスカ・・・ホントに負けず嫌いね、あなたって。ぷぷっ」
うう、ヒカリは全然息が切れていないわ。あたしはもう動けないくらい筋肉疲労しきってるのに・・・って、あれ、なんであたし、ヒカリを追いかけてたんだっけ。
「はあはあ・・・もうダメ〜」
「大丈夫アスカ、ごめんね。ちょっとそこの樹の下で休んでいきましょう」
「そっそうねっ・・・はあはあはあ・・・」
木陰で休憩しながら、ヒカリのジャージバカへの想いを延々と聴いてあげた。フウ、だからぁ、あたしに言ってもしょうがないってば。本人に言いなさいよっ。
「でね、鈴原ってね・・・」
「ヒカリ、いいから戻って鈴原とちゃんと話しなさいよ。このままじゃお互いスッキリしないでしょ?」
「うん・・・でも・・・」
「こんな足場の悪いところまで、鈴原が登ってくる筈ないじゃない。アンタもしかして鈴原が追いかけてくるのを待ってるのお? だったら、平地のみつかりやすい所にいなきゃあ」
「そ、そうね。アスカをまこうと思ってつい難所を走ってしまったの」
「じゃあ、戻ろうか」
とか言ってると、なんと、ジャージ男が顔中暑苦しくも汗みどろになって山頂まで登ってきた。えーっ、信じられない。
「す、鈴原?!」
「はあはあはあ、い、委員長、すまんっ・・・」
と土下座を始めるジャージ男。関西人ってすぐこれなんだから。
それにしても、こんなに短時間でよく登ってこられたわね・・・こんな足場の悪い山道を。これはもう、愛よね、愛。
という訳で後はまあ、二人の世界というやつよ。あーあ、いいわねえ。
あれ? 別にあたしが追いかける必要無かったんじゃない。あーもう、疲れた〜。
「いつまでくっちゃべってんの二人とも! もう授業はじまってるわよ!! 帰るのよ!!」
なんであたしが謝らなきゃならないわけえ(第133話〜134話)
教室に戻ると、授業中にも関わらず、レイがシンジにベタベタしていた。マンネリもいいところよね。畜生、この女許せないわ。何が、教室でキスする、よ!? おかしいんじゃないのぉ? シンジが優柔不断だから、どんどん増長するのよっ。あーもう同じことの繰り返しだけど、何度でも説教してこの女の深層意識から改造しなきゃだめよね。ガミガミガミ・・・これじゃまた、シンジにうるさい女だなあって思われちゃうけど、仕方がないのよ。
その後で、やっとバカシンジは「あの二人はどうなったのかな」と言い出した。遅い!! どうもこうも見りゃ判るジャン!! 二人で仲良く、視線を向けたり逸らしたり、いちゃいちゃいちゃいちゃ。あーあ、うらやましい・・・じゃなかった。シンジがぼーっと二人のらぶらぶぶりを眺めている今がチャンスよ。
「素敵ね、こういうのって・・・・」
あたしは、音も立てずにシンジの横にすすっと移動すると、こっそりシンジの手を握った。あたしの読み通り、シンジもあたしの手をこっそり握り返してきた。う・・・どきどき。
これも、まっとうな恋愛の姿をシンジに見せてくれているヒカリのお陰ね。ありがとうヒカリ、後で何かおごるわ。
・・・ん・・・まっ、またレイが邪魔を・・・自分の手も握れ、ですって?! ったく、どうしてくれよう。とにかく、あたしは絶対シンジの手は離さないし、レイにはシンジの手なんか握らせないわよ。
三人仲良くお手々繋いで・・・なんてこと、教室で出来ると思う?
あたしはレイと、延々シンジの手を奪い合った・・・すると、
「もういい加減にしてよ!!二人とも喧嘩するなら僕の手を離して!! 僕が二人の喧嘩する原因になるなら、僕はもうどっちとも手なんかつないだりしないからね!!」
うう、結局こうなるのね・・・
ふん。要するに、シンジにとってあたしもレイも、その程度の存在ってことでしょ? 言葉の上だけで言ってるだけだってことは判るけど、あたしがレイと同じ扱いを受けるなんて、許せないわ。ここは怒りの鉄拳を・・・あっ、レイがしょぼんとうつむいて、一人だけいい子になろうとしているっ!!
くっそー、なんて媚び媚びな女なの? あ、あたしもマネしとこうかな。しおしお・・・
「喧嘩するなんて、よくないことだよ。二人とも同じ屋根の下に暮らしているんだから、もっと仲良くしなくちゃ。」
それって、三角関係をこれからも維持しましょう、ってこと? こんなに縺れた以上、どちらかが去るまでケンカするしか無いじゃない!! ああ、このシンジにして、このレイね。二対一じゃあ、あたしの常識論は通用しないのね。
蚊帳の外だったメガネがボソッと呟いた。
「・・・苦労するよな、シンジも・・・・・」
コロスわよ!!
シンジの引っ越し計画発動(第135話〜第137話)
下校時間になった。今日も一日がやけに長いわねえ。一日80時間くらいあるような気がするのは何故かしら。くたびれたから、さっさと帰ってお風呂に入らなきゃ。さっきヒカリと競争した時に汗びっしょりになっちゃったし。
ところがシンジは、これから司令に会って一緒に暮らそうなどと頼むんだ、と言い出した。あっそういえばそんなこと言ってたわね・・・ダメよダメダメ。どうしてもって言うなら、あたしも着いていくわよ!!
うっ、レイもまた同じことを・・・予想通りというかワンパターンね。だいたいこの女、あの司令とデキてたんじゃなかったわけえ? ネルフじゃもっぱらの噂だったけど。うーん、このシンジへの傾倒ぶりを見ていると、あれはどうもガセだったみたいね・・・
ふん。ちょっと脅かしてやろうっと。
「ぎ、義理のお父さん?そ、それってどういう事?」
「嫌ねぇ・・・・アタシとシンジが、そのうち結婚するって言うことでしょ!?そんなことアタシに言われなくてもすぐに気付いてよね!!」
「け、結婚!?」
「そうよ、結婚。シンジ、昨日言ってくれたじゃない。」
あわてるシンジ。ふっふっ、教室中が蜂の巣をつついたような大騒ぎ。こーなったら、無い既成事実をデっちあげて、意志薄弱なシンジを雁字搦めに・・・身動きとれなくしてやろうっと。ぺらぺらぺら・・・あー楽しい。
「でも、僕がそう思ったからって、僕がアスカにまだ恋をしていないって言う事実は変わらないんだ。だから、僕は恋もしていない相手と結婚するなんていうことは出来ない。つまり、僕の結婚相手として今一番近くにいるのがアスカだって言うだけで・・・・」
・・・
なっ・・・
「僕がアスカに軽率に言ったのは悪かったけど、僕はまだ、そんな気分じゃないから。」
ぐさっ。
そっそんなことは判ってるけどっ・・どうしてみんなの前で真顔でそんなこと言うのよっ・・・酷い・・・
・・・
う・・・
うう・・・
はっ、今ヒカリの前で泣いたりしたら、せっかくヒカリとジャージバカがいい雰囲気になってるところに目薬をさすことになってしまうわ。ここは、笑顔笑顔。
「がんばんなさいよ!!アタシはアンタのこと、応援してるからね!!」
それは・・・ウソじゃないけどね・・・
確かにこれって、穴の空いた壺に水をそそぎ込むようなもので・・・いったいいつになれば満杯にすることができるのかしら。
あの司令とシンジが同居かあ・・・司令、断ってくれないかな・・・シンジだけ来い、なんてことになったらあたし・・・あっ、何考えてるの。ダメダメ。シンジを応援しないと・・・
レイは、この大事な時にまたシンジにへばりついていこうとしたけど、あたしが止めてあげた。ほら、帰るわよ!! 全く、子供じゃないんだから、いい加減にしなさいよねガミガミガミ・・・
ヒカリたちと途中で別れて、レイと二人きりになった。
また沈黙が続くのかなあと思ってたら、意外にもレイのほうから話しかけてきた。
「あれが・・・」
「ん、何?」
「碇君から目を離しちゃいけないのに・・・あれが碇君を狙ってるわ、きっと・・・」
「あれって、あーあのヘンな女あ? まっさかあ、大丈夫でしょ? 司令や副司令と会うんだし」
「あなたも安心できないけど、あれはあなたよりずっと危険だもの」
よく、クラスメイトのこと「あれ」なんて言えるわね、この子。目も座ってるし、やっぱり恐い子ね・・・目的のためなら手段を選ばない性格は、EVAに乗ってたころと変わってないみたいね。
ふう・・・シンジを教育する筈が、なんだかレイの教育係にされちゃってるみたい。あうっ、脚がつった・・・ああ、やっぱりヒカリとの競争は無謀だったのね・・・あたしって一体。
「いっ、いったーいっ・・・」
「どうしたの」
「脚がつって・・・いたたっ・・・」
「・・・肩貸すわ。つかまって」
「いっ、いいわよ! 誰があんたなんかの世話に」
「あなたを置いて帰ったら、碇君がきっと怒ると思うし・・・それに・・・」
それに、何よ? 無口な子と話すのは疲れるわね。いててて。
「・・・ふ、ふん。そうしたいんなら、肩を借りてあげてもいいわよ」
「そう。それじゃ・・・」
「・・・いたたっ・・・」
こうして、あたしはレイと肩を組んで帰ってあげた。多分、この光景をバカシンジが見たら「二人とも、仲良くなってくれて・・・うれしいよボクは」とか言い出すんだろうけどぉ。
まっ、時間はたっぷりあるわ。最後に勝つのはこのあたしよ。まあ、みてなさいって!! はーっはっはっは!!
「あいたたたた!!」
「大丈夫?」
「うっ、うるさいわね!!」
第五部ダイジェストに続く
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