「アスカ行日記」九月分



9月1日
今日は月曜日。二学期の始まり。ヒカリ達にも久しぶりに再開し、お互い疲れるまで話し合った。受験生に夏はない、なんて言うけど、それでも夏は万人に訪れる。それぞれの夏が・・・・
アタシにはアタシの夏、シンジにはシンジの夏があるように、ヒカリにも夏があった。去年は夏休み中でも頻繁にヒカリと会ってたけど、今年は少し違う。ヒカリはそんな事ないって言ってたけど・・・
そこをアタシが追求すると、ヒカリは笑ってアタシに気を利かせたからだと小さく言った。でも、アタシは知ってる。それはヒカリの口実にしか過ぎないことを・・・図書館でもそうだった。きっとヒカリも頑張って鈴原と一緒に過ごす時間を作っていたんだと思う。好きな人と一緒に勉強するなんて、全然手につかないかもしれないけど、でも、一人でやるよりも好きな人と一緒にした方がずっといい。疲れてもいつもの顔があるし、寂しくなったらすぐ隣を見ればいい。便利だなんて思いたくはないけど、でも、恋する女の子にとって大好きな男の子の存在って、何にでも効く特効薬なの。まあ、ちょっと落ち着きがなくなったり、集中力が低下したりするって言う副作用もあるんだけど、それでもアタシ達は使い続けるの。もう、麻薬中毒みたい。あ、そうそう、これを使うには、必要なものもあるのよ。そう、それは愛情のこもった手作り弁当。料理の上手なヒカリでも、あんまり得意じゃないアタシでも、それは平等なの。愛がこもってるんだから、おいしくないはずないもんね。まあ、愛の力にあぐらをかいて努力を怠るなんてことは絶対にしたくないけど・・・・

9月5日
今日は金曜日。二学期の最初の一週間も、ようやく今日で終わったわね。そんなに違和感感じた訳じゃないんだけど、それでもやっぱり疲れたりするみたい。まあ、こういう疲れもまた心地いいものではあるんだけど・・・
でも、試験続きだったのには参るわね。おかげで眠くて眠くて・・・シンジに付き合って夜遅くまで勉強だから、とにかく寝不足なのよ。もう、シンジにはあんまり無理して欲しくないんだけど・・・でも、こういう頑張るシンジ、好きなのよね。だから、アタシはそっと見守ってるの。
まあ、試験中はこの日記も書けなかったけど、今日で取り敢えず試験は終わりって訳で、ようやく今まで通りの生活に戻ることが出来るわ。どうせしばらくしてすぐにテストがあるんだろうけど、それでもひとときの休息はあるのとないのじゃ大違いだからね。頑張るシンジには、休息も必要なのよ。あいつは強がってるけど、そのうち限界が来ちゃうはずだから、アタシはそうならない様にシンジをリードしてあげるの。それが補佐役たる妻の役割なんだから・・・だからほんとは嫌だけど時には強く強引にでもシンジをベッドに入らせたり、わがまま言ってると見せかけてシンジを外へ連れ出して気分転換させる。あいつは自分の身体や心の様子さえよくわかっていないような、頼りないところがあるから、誰かがしっかり見てあげなくっちゃ駄目なのよ。そしてその誰かは・・・いつもシンジと一緒にいるアタシ。アタシじゃなきゃ、シンジのことはわからない。誰も気付いてくれないかもしれないけど、アタシはシンジの全てを知ってるの。ほんの些細なことから、大事な大事な、こころの奥底まで・・・・シンジは色々見せてくれたの。このアタシにだけね。だからアタシも・・・シンジに色々知ってもらいたいな。アタシはいつでも、シンジにすべてを見せてあげられるんだから・・・・

9月6日
今日は土曜日。ちょっぴりいつもより早く起きて、10時に目覚めの熱い紅茶。もちろん、シンジが入れてくれた奴をね。
そうしてアタシは久しぶりにほのぼのとした休日を迎えるつもりだった。そうなる予定だったのに・・・玄関のチャイムが突然鳴って、二人だけの時は終わりを迎えた。
うちに何の連絡も無しに現れたのはファースト。どういうことかわからないけど、とにかく手土産にケーキを三つ買って来たらしい。あいつらしくもないと思いつつもアタシは紅茶のお供にケーキを食べた。シンジはファーストに紅茶を入れてあげて・・・とにかく三人で落ち着いたお茶の時間を過ごしたの。アタシはこの爆弾娘がいつ何をしでかすかと思ってずっと目を配ってたんだけど、結局何もしなかった。まあ、躊躇することもなく熱っぽい視線でシンジを見つめ続けてはいたんだけどね・・・でも、そのくらいじゃあ鈍感シンジは気がつかない。あいつもそれを知っててそうしてたのかな?何だかシンジは自分をホスト役だと思って場を楽しませようと色々ファーストに話をしてたけど・・・結構空回りしてたわね。まあ、ファーストはシンジに話し掛けられるだけでのーみそ沸騰状態で、受け答えどころじゃなかったのかもしれないけど・・・・でも、こうして見たら、アタシもファーストを意識し過ぎてたみたい。シンジのことを好きなのははっきりしてることだけど、特に害もないし、あまりいじめる必要もないんじゃないかって思ったの。私とシンジの仲は本当に落ち着いてるし、意地悪で嫉妬深いアタシの一面を見せてシンジに嫌われるのも嫌だ。だから・・・少しだけ大目に見てあげる。少しだけ、だけどね・・・・

9月7日
今日は日曜日。昨日はファーストが来ちゃって二人っきりの時間を取れなかったから、今日こそはシンジとずっと一緒にいてやると思ってたら、どういう訳かまたもやファーストがうちに来たのよ。
まったく、馬鹿の一つ覚えみたいに遊びに来て・・・あいつが来ても、面白いことは何にもないのよ。まあ、アタシは面白くなくっても、あいつは面白いのかもしれないけど・・・
ともかくファーストは来た。多分アタシが一緒にいても、害がないと言うことに気付いて堂々とシンジに会いに来たのね、きっと。でもまあ、あいつはどうせシンジを見つめてるだけしか出来ないんだし、手土産だけは忘れないみたいだから、まあ、うちに入れてあげてもいいかもね。ファーストが買ってきたレアチーズケーキはもう、すっごくおいしかったし、シンジのいれてくれたアップルティーはいい香りがした。でも、そっちに夢中になる訳にも行かないのよね。目を離すとやっぱり何をしでかすかわかんないし・・・所詮はアタシの監視下でしか大人しくしてそうもないのよね。まったく、物騒な小娘だわ。シンジもケーキとファーストの顔と視線を行ったり来たりさせてるアタシに気付いて、苦笑いを浮かべてたっけ。もう、アタシにとっては笑い事じゃないのに・・・・でも、鈍感なシンジがアタシの気持ちをわかってくれたんだから、それでもいっかな?わかんないでアタシを傷つけるようなセリフを吐かないとも限らないんだから。シンジには悪気なんてないんだろうけど、人の気持ちを隅から隅まで理解するなんて不可能だし、だからすれ違いも起きるのよ。アタシとシンジの間にも、色々すれ違いは生じてきた。でも、最近は少なくなってきたかな?アタシもシンジも、お互いの気持ちをより理解して・・・だんだんひとつになってきたみたい。ほんと、いい感じよね、アタシ達って!!

9月8日
今日は月曜日。休みが終わると普通の人は悲しむんだけど、今日のアタシはちょっと違う。ようやく学校が始まってくれてうれしいって気持ちなのよね、ほんと。
どういうことかって言うと、この二日間、うちにファーストが通いつめてたから。でも、もう学校が始まったんだから、そんなこともないだろうしね。
でも・・・アタシが甘かったみたい。あの娘、学校が終わるとそのままアタシ達のうちまでついてきちゃったのよ。なにやらシンジに料理を教わりたいとかで・・・でも、あいつに料理が出来るの!?このアタシでさえ上手く出来ないのに、生活能力が皆無と思しきファーストが・・・って、アタシは思ってたんだけど、その包丁捌きを見てびっくり。シンジほどじゃないけど、ぎこちないとこは全然なかったのよ。シンジも思いっきりびっくりしてたっけ。でも、びっくりした後にシンジは喜んで一緒に料理を作ってた。更に制服が汚れると行けないとか言って、自分の愛用のエプロンまで貸しちゃってさぁ・・・あんまり腹が立ったから、滅多に使わなくなってたアタシのエプロンを無理矢理シンジに使わせた。シンジは別にいいって言ってたんだけど、それじゃあアタシがいる意味ってもんがないもんね。でも、それだけじゃアタシの気分がおさまんなくって、どうやら冷蔵庫の中にあったワインを引っ張り出して飲んでたらしいのよ。気がついたら・・・真っ暗な中、ソファーの上に寝かされてた。アタシはひとり酔っ払って邪魔物扱いにされてたんだって思ったその時、アタシの側で何かが動いた。それはシンジ。残念ながら寝ちゃってるみたいだったけど、アタシは暗闇の中、その姿を見て何も言えなくなった。だってシンジの奴、私についていてくれてただけじゃなくって、アタシのエプロンまで着けたままでいてくれたんだから・・・・

9月14日
今日は日曜日。ようやく夏休み気分も完全に抜けて、そろそろ学校生活が板についてきたってところかな?まあ、中学なんて家と学校の境目がそんなに無い社会なんだけどね・・・・
まあ、それはともかく、またいつものようにファーストがうちに遊びに来た。何だかほとんど自分のうちと化してるみたいで、もしかしたらただ寝に帰ってるだけなんじゃないかしら?まあ、そこまではいかないと思うけど、あのファーストのことだからねぇ・・・
でも、アタシは最近ファーストが遊びに来ること、そんなに苦痛じゃ無くなったみたい。ファーストも概ね無害だし、シンジに関することを除けば、十分同情に値する娘だからね・・・・まあ、アタシなんかが同情するのは失礼かもしれないけど、とにかく可哀想な感じがする。これってアタシが余裕かましているせいなのかもしれないけど・・・・とにかくファーストはどこで覚えたのか手土産を欠かさないし、いい奴よね。それに・・・・ファーストが来た日は、シンジの奴がやさしいの。きっとアタシが嫉妬して不安に思っているとでも思ってるのかもしれないけど、とにかく必要以上にアタシに気を遣ってくれるし・・・だからアタシはファーストが帰ってからが楽しみで仕方ないの。シンジの奴がどう振る舞ってくれるかで胸が高鳴っちゃって・・・アタシもそんな気は全然無いにもかかわらず、シンジに向かって怒ってみせたりして・・・・それでシンジの反応を楽しんでるの。今日もちょっとした事でシンジに怒って、そのままお風呂に入っちゃった。そしたらシンジの奴、後でアタシの部屋に入ってきて、冷たいアイスコーヒーを持って来てくれたの。アタシはそんなシンジがかわいくって思わず言っちゃった。どうしてもう一本ストローを持ってこないのかって。シンジの奴、真っ赤な顔しながら慌てて持ってきたっけ。そして後は二人で・・・キスも済ましてるアタシ達なのに、何だか妙に気恥ずかしかった。それがまたいい気分で・・・今晩アタシ、よく眠れないかも・・・・

9月15日
今日は月曜日。でも、敬老の日でお休みなのよね。まあ、アタシにはどっちでもいいことなんだけど、早起きしなくていい分、こっちのほうが少しだけいいかな?
でも、普通の日はシンジに起こされるって言う楽しみもあるのよ。やっぱりアタシを放ってそのまま学校に行くなんて出来るはずも無いから、アタシを起こしにそっと部屋に入ってきて・・・・
シンジの起こし方って、やっぱりその性格を反映しててやさしいの。ほんとにそっと揺さぶってくれて・・・だからアタシはびっくりすることも無く、まどろみの中でシンジの顔を見ることが出来る。毎朝最初に見るものがシンジ。これがアタシの平日の日課。休日は・・・流石に何か用でもない限りはあんまり起こしに来てくれないわね。まあ、シンジも休みなんだからアタシをゆっくり寝かせてあげたいって思うんだろうけど、でも、やっぱりシンジの顔で一日を始めたいな。ファーストの今の状況からすれば贅沢すぎるかもしれないけど、朝起きて孤独を感じるのって、ちょっぴり寂しいもんね。いっそのことシンジが一緒に寝てくれればいいんだけど・・・・でも、そしたらシンジと同じ時間に起きなくちゃいけないわね。それはそれでシンジのお手伝いをしたりして楽しく過ごせるんだろうけど・・・やっぱり少しつらいかな?だってシンジの奴、老人みたいに早起きだし・・・たくさん家事があるから仕方ないんだろうけど、たまにはゆっくり寝ればいいのに。アタシだってシンジに頼まれれば、たまには代わりくらい引き受けてあげるんだから・・・・

9月18日
今日は木曜日。取り立てて書くこともない一日。いつものように学校に行き、いつものようにシンジのお弁当を食べ、いつものように家路に就く・・・
そしていつものようにファーストが遊びに来る。あの娘、ここんとこ毎日のようにうちに押し掛けてくるのよね。最近ちょっと鬱陶しく感じるのも事実かな?やっぱりこう毎日だとね・・・
まあ、あの娘にも同情の余地はあるのよ。友達なんていないし、いっつも家に帰っても独りぼっちだし・・・だからあの娘、最近は遅くなっても帰りたがらない。まあ、泊める訳にも行かないって事で帰してるけど、そのうち絶対に泊まるんだろうな。それとも、シンジに自分を送らせてそのまま連れていっちゃうとか・・・そこまでは流石にないとは思うけど、寂しいのってつらいからね。だからアタシも、あの娘のことはわかる気がするの。そしてシンジも・・・・シンジも昔は独りぼっちだったから。そう、アタシ達のように・・・最近は楽しいことばっかりだし、シンジが独りでいるなんてこのアタシがさせないけど、それでもやっぱり時々は寂しかった昔のことを思い出すのかな?そして今はいいって・・・実際アタシなんかもそうだもんね。普段はおくびにも出さないけど、夜ベッドに入って眠れない時なんかは、時々思い出してつらくなる時もある。でも、アタシはそういう時はシンジを思い出すの。それでも駄目な時は・・・壁を軽く叩いてみる。そうすると、いつでもシンジは応えてくれて・・・アタシは独りじゃないんだな、って思い出すことが出来るの。どうしてあんな夜中でもすぐにアタシの呼び掛けに応えてくれるのかな、って思う時もあるけど・・・シンジがいっつもアタシを陰から見守ってくれてるんだって思いたいな。実際アタシにとってシンジはそういう存在なんだから・・・・

9月23日
今日は火曜日。秋分の日ね。でも、セカンドインパクトで色々あって、今の日本は常夏。秋の風を感じることも出来ないのよね。
蝉の鳴き声、入道雲、夕立、真っ青な空、眩しい太陽・・・すべてが夏を示してる。それはそれでいいんだけど、でもやっぱり秋も感じたいな。贅沢なことなのかもしれないけど。
今のアタシは概ね絶好調で、悩みも何もない。シンジも日を追う毎にアタシに対してやさしくなっていくのがわかるし・・・・ほんと、これは驚きなの。アタシはシンジ以上にやさしい奴なんていないって思ってるし、実際そうだと思うの。だからこれがやさしさの最高の形だと思ってると、次の日には更にその上を行ってる。そしてまた次の日にはそれ以上にやさしくなってて・・・これってアタシの主観も相当入ってると思うけど、でも、それだけでもないとアタシは思ってる。シンジは鈍感なままだけど、昔のシンジとはその鈍感の形が違うように思えてならないの。昔はぶっきらぼうで人のことも気にしてないって言う感じだったけど、今のシンジは何をしてる時でもアタシを見ててくれるような気がする。ほんと、普通の人間でも、たとえ夫婦だとしてもそこまでは行かないだろうって言う自信があるな。アタシもシンジみたいにシンジを見ていたいんだけど、なかなかそうも行かない。シンジをじっと見つめてる時があるのは当然だとしても、何か他のことを真剣にしてる時までシンジに意識をずっと向けられてるかって聞かれると、アタシはちょっと自信がない。でも、シンジは・・・どうしてあんな事が出来るんだろう?これってやさしいとか言う以前の問題よね。まあ、そんなことはどうでもよくって、シンジがアタシを見守ってくれてるって言うこの事実だけが重要なんだけど・・・・

9月24日
今日は水曜日。毎日毎日暑くって、ほんと、やんなっちゃうわ。シンジは大抵暑くても涼しい顔をしてるんだけど、今日は流石のシンジでもちょっときつかったみたい。
学校から家まで、太陽が首筋をじりじり焼いて・・・アタシの珠のお肌も焦げるかと思っちゃったくらいよ。ほんとならシンジがそっと日傘なんかを差し出して・・・って無理無理。わざわざそんなことの為に日傘を常備してるほど、シンジもお人好しじゃないわ。ほんとにもう、こうなるとお人好しの領域だからね・・・
それに、シンジなら小麦色に焼けたアタシも見てみたいって言うかもしれないし・・・実際、綺麗に焼けてると健康的に見えるもんね。でも、アタシはやっぱり白い方がいいな。どうせシンジもアタシのこの抜けるような白い肌が好きなんだろうし・・・それはともかく、家に戻ってクーラーを最強にしても、なんとなく二人とも疲れが取れない。だからアタシは反対に、外に出ることにしたの。おっくうがるシンジを無理矢理引っ張り出して、マンションのガレージに連れて行く。そして・・・洗車の為のホースでシンジに思いっきり水を浴びせる。シンジはびっくりしてたけど、アタシは容赦せずシンジをびしょ濡れにする。しばらくしてシンジも吹っ切れたのか、アタシの手からホースを奪い取って、お返しをしてきた。まあ、本気のアタシならむざむざとシンジに奪われたりはしないんだけど、ハンディキャップってことで・・・とにかく水をかけっこして楽しんだ。どのくらい時間が過ぎたのかわかんなかったけど、辺り一面水浸しになってた。当のアタシ達以上に・・・。疲れてホースの水を止めたのはいいんだけど、その後お互いの格好に・・・特にアタシなんか、その・・・下着が透けちゃって・・・こういう時に限って、淡いピンクのブラだったりしたの。シンジに見られるのは嫌じゃないんだけど・・・ちょっと恥かしかったな。その後まっすぐシンジの顔、見れなかったし・・・

9月27日
今日は土曜日。いつもファーストがうちに遊びに来るけど、今日は何故か招待されたの。昨日、学校帰りにファーストに・・・
で、アタシはシンジと一緒にファーストのうちへ。アタシは行くのが始めてだったから、興味津々。シンジから色々話は聞いてたけど、やっぱりこの目で見てみないとねぇ・・・
でも、行ってみてびっくり。シンジがアタシを脅かしてたのとは全然違うの。むき出しのコンクリートなんかじゃなく、壁にはクリーム色の小奇麗な壁紙。そして如何にも家庭的な匂いのする部屋・・・・アタシが独りで住んだとしても、こんなに綺麗に生活観の溢れた部屋は作れないと思う。アタシは唖然として部屋中を見渡していたんだけど、シンジなんかアタシ以上に驚いてた。ほんと、腰を抜かすって言うか、驚愕って言うか、とにかく魂消してた。アタシは知らないけど、よっぽど以前は凄かったのね。ちょっぴり残念だったけど・・・でも、見なかった方がいいのかも?今のファーストを素直に受け止められるからね。きっとシンジを呼ぶって言うんで、かなり頑張ってこの部屋を飾ったんだろうし、努力する者にはそれなりの報いがないとね。アタシとファーストは犬猿の仲かもしれないけど、それでもこんなファースト、かわいく思っちゃうし・・・・まあ、それよりもアタシとシンジで呆然としていると、ファーストがエプロン姿でお出迎え。お弁当を作ってるのは知ってるけど、こんなファーストを見るのははじめてで、何だかちょっぴり不思議に思った。そしてテーブルの上に並んだごちそうを見てまたびっくり。あいつ、料理も上手だった。何だかちょっぴり悔しい気もする、そんな一日だったな・・・・

9月28日
今日は日曜日。どういう訳か、今日はファーストが遊びに来なかった。別に来て欲しいとか、そう言う訳じゃないんだけど、どうもいつも来るものが来ないと、ちょっと気になるのよね・・・
まあ、昨日はファーストはいつも以上にはしゃいでたし、珍しく得意になってた。まあ、自分の努力が評価されて、嬉しかったんだろうね。そんなファーストの気持ち、わからないでもないし・・・・
だから多分、十分満足するほど楽しんじゃって、昨日の夜はゆっくりと眠れたのかもしれないわね。ファーストの寝起きがいいのか悪いのか、アタシはよく知らないけど、楽しかった時は嫌なことや辛いこと、悲しいことを忘れられるし・・・・アタシも実際そう言う時があった。切なくて眠れない夜が・・・今はそんなこともないけど、シンジを想うと時々眠れなくなることもなるし・・・・。今日のファースト、きっといい顔してたんだろうな。流石のシンジも、少しぐらっと来ちゃうような・・・だからアタシは夕方くらいになって、ちょっと気になってファーストに電話してみたの。そうしたら、あの娘が言うには、昨日は興奮して寝付けなかったんですって。だから朝からお昼過ぎまで寝ちゃったって・・・アタシの予想とは正反対だったけど、でも、結果的には一緒よね。電話越しのファーストの声、何だか輝いているように感じた。ちょっぴり羨ましくなって、それで・・・アタシはシンジに料理の手ほどきを受けることにした。いきなりのことでシンジもびっくりしてたけど、アタシも負けてられないからね。シンジを感動させられるくらいの、おいしいご飯を作ってみせるんだから!!
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