「アカ一行日記」七月分


7月1日
今日は火曜日。そして新しい月の始まりね。まあ、すぐに夏休みになっちゃうから、そんなに重要じゃない気もするけど、期末テストもあるからね・・・・
でも、その話は昨日したし、あんまり勉強のことばかり考えてると頭痛くなってきちゃうからね。アタシは勉強嫌いって言う訳じゃないけど、意味ないことはやっててもつまんないし・・・・
ともかく今日は気分転換に包丁を握ってみる。包丁を握るって言っても、誰かを刺しに行くとかそういう訳じゃなくって、単に料理をしてみただけなんだけどね。まあ、最近ずっとご無沙汰だったし、人に見られたらそう思われてもおかしくないかもしれないけど。でも、アタシだって一応女の子なんだし、それにアタシの周りにはシンジとヒカリって言うかなりの料理好きが二人もいるから、何かと料理って言うのは気になることなのよね。それにシンジはアタシの代わりにいろんな物を作ってくれるけど、やっぱり自分と一緒にキッチンに立てない女の子なんて、一段格下に見ることだろうし。シンジほどには出来なくとも、せめて何かお手伝い出来るくらいの腕前にはなっておかなくっちゃ・・・・だから、包丁の腕を磨くために、ジャガイモやらにんじんやらの皮ををひたすらむいてた。そして気がついたら、膨大な量になっちゃって・・・仕方ないから、鍋いっぱいのカレーを作ることにしたの。何だか行き当たりばったりだったけど、シンジはおいしいって言っておかわりまでしてくれたし、これも結果オーライってやつかな?今日のことに味をしめた訳じゃないけど、またちょくちょく練習してみよーっと。
7月8日
今日は火曜日。昨日は七夕で、アタシも結構期待してたんだけど、何だか肩透かしを食っちゃった。シンジもあんまり乗り気じゃなかったし、短冊に願い事を書くなんて、今にして思うと子供っぽいことだもんね。
まあ、そうは言ってもやりたかったのも事実。でも仕方ないわよね、昨日の夜はずっと雨が降ってたんだから・・・・
そんな訳でシンジの気持ちも汲んであげて、七夕は一日延期。今日は昨日とは打って変わっていいお天気だから、今晩実行ね。でも、単なる七夕飾りじゃ趣がなさ過ぎるから、ちょっとしたアイデアを出した。イメチェンして髪をポニーテールにして、アタシは綺麗な星空の下にシンジを連れ出した。シンジも昨日雨で七夕が出来なくて残念に思っていたアタシの気持ちを察してくれたのか、アタシの誘いに応じて一緒に外に出てくれたの。そして星明かりの下でもよく目立つ真っ白なリボン。シンジにそれを気付かせるようにして、それをほどくように言う。シンジはいぶかしげに思いながらも、アタシの言う通りにリボンに手をかけて・・・・そしてアタシはシンジに言う。「昨日は七夕よね。アタシも願い事、書いちゃった・・・」シンジはアタシの言葉の意味に気付かない。でも、アタシの髪を結んだリボンをほどいてみて、すぐに気がついた。幅広いそのリボンは、七夕の短冊みたいなものだったの。そして書いてあった願い事は・・・・「シンジのお嫁さんになれますように」って。口では言えないけど、こうしてリボンに託してなら言える。シンジはアタシの願い事を読んで驚いてたけど、そのまま黙ってリボンを結び直してくれた。そして背中からアタシを抱き締めて・・・・。一日遅れの七夕様。きっとアタシの願い、届けてくれるだろうな。アタシにはそれがはっきりとわかるような、そんな気がするから・・・・
7月9日
今日は水曜日。シンジの奴、昨日はちょっとやりすぎだと思ったみたいで、何だか恥ずかしそうにしてた。確かにこうしてシンジに背中から抱き締められるなんてこと、そうはないからシンジがそう思っても無理無いかもね・・・・
アタシは全然平気だし、こういうこと、よくあることだと思ってるから恥ずかしいなんて感じなかったけど、こうしてシンジに意識されると何だかこっちまで変な気分になっちゃうのよね。
で、そういう時に限って、鈍感鈴原なんかがアタシ達の様子がおかしいことに気付いたりするのよ。ヒカリの異変には全く気付かないくせにね。やっぱり他人事となると、よくものが見えるようになるのかしら?アタシは人より察しのいい方だから、そういう風に思ったことはないんだけど・・・・ともかく、馬鹿二人にからかわれるのは、まあ我慢出来るとしても、問題はファーストなのよね・・・・ここんとこ、アタシとシンジとの仲が急に進展してること、あの娘も気付いてるみたいで、こういうことには敏感になってんのよ。だから、アタシにはいつも以上のとげとげしい視線で、そしてシンジにはいつも以上にべたべたひっつくし・・・・まあ、シンジは笑いながらもなかなか持て余してるようだから、アタシも取り敢えずは傍観していたんだけど、やっぱり寛大にしているのはアタシの性には合わないみたいで、だんだんいらいらしてきちゃった。ヒカリはそんなアタシの気持ちを察して慰めてくれたんだけど・・・・ほら、アタシには慰めて欲しい奴がいるじゃない。なのに全然知らない顔しちゃって・・・・学校でも家でもアタシを慰めてくれなかったけど・・・・そろそろかな、ここにシンジが来てくれるのは・・・・
7月11日
今日は金曜日。折角の週末だってのに、しとしと雨が降ってる。まあ、天気予報では明日になれば晴れるって言ってたんだけど、いまいち信用置けないもんね。
まあ、そんな訳で寄り道もせずアタシとシンジは二人で揃って家に帰ったの。残念なことにこの雨は朝からずっと降ってたから、シンジと一つの傘に入ることは出来なかったんだけど、それでも余計な邪魔者なしで夫婦水入らずで帰れたから、文句もないかもね。
だからそういう風に考えると、雨の日っていうのは結構チャンスかも?なあなあで一緒に帰ることも少ないし、傘で隔てられてるからなかなかお話も出来ないもんね。えっ、シンジと話せないじゃないかって?いいのよ、別に。アタシ達は会話の時間くらいいくらでもあるんだから。反対にこういう二人で黙ってままでいるってことの方が珍しいのよ。シンジはだんまりしてることも珍しくないんだけど、アタシはやっぱりうるさい口だからね。そんな意味で、こういう今日みたいなシチュエーションは新鮮でよかったな。まるでヒカリの家で沢山読んだ少女漫画みたいに・・・・あれって結構燃えるのよね。特にアタシの場合、実体験が伴っちゃってるから、見事にはまっちゃってはまっちゃって・・・・シンジと一緒に居たい手前、わざわざ読むためだけにヒカリのうちにはあんまり行かなくなっちゃったけど、ヒカリはそんなアタシの気持ち、誰よりも知ってて応援してくれるから、喜んで漫画を貸してくれるの。そしてこの日記を書き終わった後なんかに読んだりしてね・・・・妙にシンクロしてて楽しいの。まあ、アタシも時々、漫画に似せて行動してるところもあるんだけどね・・・・
7月13日
今日は日曜日。昨日まで続いた雨も今日でおしまい。明日からの英気を養うために、色々楽しまなくっちゃね。
だから、アタシはいつものようにシンジとどこかに出かけようとしたんだけど、朝起きて家の中を見まわしてもシンジの姿がない。アタシが起きた時はお昼近くなってたんだけど、シンジは大抵アタシを置いてどこかに行ったりしないから・・・・
そしてアタシはテーブルの上に置いてあったアタシへの食事と書き置きを見つけた。簡単に言うとちょっと出かけるって事なんだけど、わざわざ書き置きをする以上、夕方くらいまでは帰らないんじゃないかと思った。それで、片っ端から心当たりのありそうな男子どもに電話して聞いてみた。だけど・・・・シンジは誰とも出かけてない。これは怪しい、ってことであまり使わない自転車を引っ張り出してシンジの捜索をする事にしたの。まあ、サイクリングがてらのお遊びみたいなもんだったんだけどね・・・・。でも、駅前までたどり着いてアタシは見つけた。シンジと、そしてファーストの姿を・・・・幸いにも手をつないだりはしてなかった。でも、ファーストに預けておくとシンジが何されるかわかんなかったから、アタシはシンジを連れ帰ろうと近寄って行こうとする。でもその時、ファーストがアタシの存在に気付く。そして、いきなりシンジの手を取った。視線はこっちに向けたまま・・・・。シンジはいきなりの事にかなり狼狽してたみたいだけど、アタシはそれ以上にショックを受けた。そして気がついたら、アタシは自分の部屋のベッドの中にいた。シンジは部屋にこもってるアタシを心配して見に来てくれると思う。だからアタシは心の整理をつけるために、いつもより少しだけ早く日記を書いてるの。言いたい事が言えなくて、泣いちゃうと困るから・・・・
7月16日
今日は水曜日。色々誤解もあったけど、ようやく今日、シンジと仲直りが出来たの。アタシはもう、シンジがファーストと二人っきりでいる事自体が許せなかったんだけど、改めて考え直してみると、そんな事ばっかり言ってられないもんね・・・・
とにかくかいつまんで説明すると、事の発端はやっぱりファーストなのよ。何だかシンジに買い物に付き合って欲しいとか言って・・・・
ほら、ファーストって何にも知らないから、それを口実にシンジに同行を求めたのよね。無論、ファーストには他に目的も色々あったんだろうけど・・・・とにかくシンジはあのファーストに手を握られてから、それ以上の事は何にもさせなかったみたい。シンジはファーストと違ってアタシの存在には気付いてなかったみたいだけど、それでも結構早くに帰ってきたし、シンジの言うこともあながち嘘じゃないみたい。第一、シンジは嘘のつけない奴だから、嘘をついたらすぐにわかっちゃうもんね。事がはっきりすれば、シンジの行動は実にあっぱれだったんだけど、アタシの目が随分と曇ってたみたい。シンジに相当冷たくしちゃったのよね・・・・まあ、今はもうシンジのことも理解出来たし、アタシを思ってファーストの魔の手から潜り抜けてきたんだから、本来ならお褒めの言葉も掛けてやるべきなのかもしれないわね。でも・・・それじゃあ面白くもなんともないし、アタシをそういう気分にさせたのはやっぱりシンジの責任よね。だから今晩はシンジにお仕置きをした。ご飯を食べる時左手で箸を持てって命じて・・・・よく考えると意味がないけど、アタシは真面目に苦戦してたシンジを見かねて手を貸してあげる。シンジの後ろに立って二人羽織みたいな体勢で・・・・結構遊んじゃったわ。シンジも今日だけはアタシのおもちゃになるのは諦めてたみたいで何にも言わなかった。シンジには可哀想だったけど、まあいいわよね。そうでもしないと罰にならないんだから・・・・
7月19日
今日は土曜日。今週は疲れたから、昨日の夜は思いっきり熟睡して、今朝起きたのはお昼近くになってたわ。
まあ、実のところを言うと「起きたのが」じゃなくって「起こされたのが」なんだけどね・・・もちろんミサトに起こされたんじゃないわよ。早起きのシンジに決まってんじゃない。あいつしか、アタシを起こしてくれる奴なんていないんだから・・・・
でも、これってシンジにとっては結構な冒険だったみたい。やっぱりアタシは女の子なんだし、シンジだってレディーの寝室に無断で入ればどういうことになるかということくらい、わかってるみたいだからね。まあ、そうは言ってもシンジだってアタシの部屋には結構出入りしてんだから、そう気を遣わなくてもいいんじゃないかってアタシは思うんだけど、やっぱりシンジってば細かいところにこだわるのよね。アタシは全然、寝てる間にシンジに変なことされるなんて微塵も思ったことないのに・・・・でも、シンジがそう意識してるってことは、もしかして・・・・あのシンジがアタシを女の子としてみてくれてるってこと?アタシの寝顔を見たら、襲いたくなっちゃうとか?まあ、そこまでは行かないと思うけど、アタシを女としてみてなかったら、シンジだって意識しないだろうし、実際シンジはミサトを起こすのなんかは全然気にしてないみたいだからね。やっぱりシンジはアタシのことを・・・・うふっ、こういうこと考えるのって、いつまで考えてても飽きないな。楽しくってうれしくって、時間が経つのも忘れちゃう。今日は結構早めにこれを書き始めたつもりだったんだけど、もう日付は明日になっちゃってるわね。いい加減にしないと明日シンジと出掛ける元気が出ないから、さっさと寝て明日の英気を貯えよーっと!!
7月21日
今日は月曜日。今日は海の日。一応祝日なんだけど、もう夏休みに入っちゃったから、あんまりうれしいって言う気持ちはしないわね。もっと学校のある時に合わせて欲しいって言う気持ちだけで・・・・
でも、何でだかよくわかんないけど、海の日だってことでみんなでプールに行くことにしたの。本来なら本当の海に行きたかったんだけど、大袈裟になりすぎちゃうからプールになったのよね。アタシは泊りで海に行きたいくらいだったんだけど・・・
まあ、みんな受験生なんだし、あんまり連れまわすのも悪いからアタシも我慢したの。だって、プールでも勉強に忙しいから付き合ってくれなかったかもしれないんだからね。とにかく夏休みに入ったばっかりだし、みんなも今のところは夏休みを楽しんでおこうってとこかしら?そんなことよりプールと言えば水着よね。アタシは洋服持ちだから、一応水着も沢山持ってるの。でも、成長期にあるから、色んな所がきつくなるのよ。丈だけじゃなく、胸とかお尻とか・・・・いいことなんだけどね。でも、現実問題として水着を買っても買ってもすぐにきつくなるってのは辛いわね。まあ、水着の方は何とかなって、いつものメンバーで楽しくやった。でも、楽しくやりながらもなんとなく雰囲気がちょっと違うのよ。やっぱり水着が気になると言うか何というか・・・・シンジもちらちらアタシの方、見てたっけ。別に嫌とかそう言うんじゃないんだけど、もう少し堂々と見て欲しかったな。アタシ達、そういう後ろめたい関係じゃないんだし、アタシもシンジに見られるの、拒んだりはしないんだからね・・・・まあ、みんなの前でじろじろ見るのは問題ありだと思ったのかな?だったらこれから見せてあげようかしら?水着を着て、一緒にお風呂に入ったりして・・・・ふふっ、いいかも知んないわね!!
7月22日
今日は火曜日。休みの初日とも言える日だけど、早速ごろごろしちゃった。まあ、ごろごろしてるってのが、学生の休みを満喫する基本だけどね。
実際夏休みの宿題を寸前にやろうとしているの、馬鹿らしいといえば馬鹿らしいから始めようって気も起こらないし、だから当然ごろごろすることになっちゃうんだけどね。
だから昼間に睡眠時間は沢山取っておいたはずなんだけど、それでもやっぱり眠いのよね。どうしてかって考えたら・・・アタシ、お昼寝してなかったのよね。ごろっと風通しのいい畳の部屋でシンジと二人でお昼寝しようと思ったんだけど、シンジの寝顔が気になっちゃって・・・・だって寝顔はかわいいんだもん、シンジって・・・・一体どれくらい見ていたのかわかんないけど、それでもアタシは全然飽きなかった。こういうシンジって、滅多に見れるもんじゃないからね。そしてちょっとしたちょっかいを・・・・さすがに油性のマジックで髭を書くなんて言う真似は出来なかったけど、キス・・・・ならね。まあ、実際したのはシンジをそろそろ起こそっかな?って時にね。だってまだ寝てるシンジにそういう迷惑かけたくないから・・・・細かいことかもしれないけど、そういうのって大事にしたいじゃない。シンジはキスして起こしたアタシに何も言わなかったけど、夕食後に出たデザートのスイカは、アタシのところだけやたらと種がいっぱいあった。さりげない罰かな?調子に乗りすぎちゃったアタシに対する・・・・
7月25日
今日は金曜日。本来なら週末で喜ぶべきなんだろうけど、アタシ達には全然感慨が無い。だって、もう夏休みに入っちゃってるんだもんね!!
ここ数日でぼけぼけだらだらした生活が身についてしまったアタシは、例のごとくお昼近くまでベッドの中。シンジは一人で起きて、一人で寂しく朝ご飯を食べてたりする・・・みたい。もちろんアタシは寝てるから、シンジの口から聞いた話なんだけどね。
ミサトも一応教師だから、アタシ達と同じスケジュールの夏休みがある。だから、ミサトもアタシ以上に遅くまで寝てるせいで、シンジはいっつも一人ぼっちみたい。アタシから言わせれば、シンジももっと寝てればいいのにって感じなんだけど、どうも駄目みたいね、シンジの奴は。アタシからすれば不思議でしょうがないことなんだけど、シンジは朝になると勝手に目が覚めて眠れなくなっちゃうらしいのよ。そんな訳で朝は一人のシンジなの。だからアタシは今日、早起きをしてみることにした。まあ、アタシは早起きのつもりだったんだけど、その時はもう既にシンジは起きてて、キッチンで朝食の準備をしてた。アタシは滅多に早起きなんてしないから、フライパンの音でアタシがすぐ後ろにいるのにシンジは気付く様子もない。アタシはそれに気付くと、いたずら心が出てきて・・・火を使ってると危ないからフライパンの中身を作り終えたその時、アタシはいきなりシンジの後ろから抱き付いたの。シンジの奴、かなり仰天しちゃって、真っ赤な顔が結構かわいかったな。取り敢えずその後はシンジお手製の朝食と共に、楽しい朝のひとときを過ごしたの。こうして考えて見ると、早起きも悪くないわね。だってシンジの手料理がもう一食食べられるし、色んな楽しみもあるだろうから・・・・
7月26日
今日は土曜日。普段だったら遊びに行きたくなる曜日だけど、夏休みを満喫してるアタシ達は極力平日に出掛けようって思うから、土日は大概は家に篭ってる。
でも、今日はヒカリに誘われて図書館に行くことにしたの。何だか調べものついでに勉強もするとかで・・・・どうしてわざわざアタシを誘ったのかって思っちゃったんだけど、ヒカリの奴、鈴原も誘ったみたい。口実として、みんなも来るからって・・・・
アタシはいっつもヒカリにお世話になってるから、喜んでシンジを引き連れて図書館へと赴いた。着いてみると、ヒカリと鈴原の姿があって・・・・ファーストを呼ばなかったってのは救いだったわね。多分、カップルとしてアタシとシンジだけに来て欲しかったんだと思うから、せいぜいヒカリに協力してやらなくっちゃね。だもんだから、中に入って少しすると、アタシはシンジを引きずってヒカリ達から離れた。でも、それだけじゃあ面白くないから、陰であの二人を観察。シンジもアタシの意図に気付いてやめようって言ってたけど、ヒカリに協力するためにはやむを得ないことだから、仕方ないわよね。そんな訳で、アタシとシンジは本棚の陰に隠れて二人を観察してた。でも、ヒカリも鈴原も照れるだけで何にも始めなくって・・・・飽きてきたアタシは、他のことが気になってきちゃった。そう、シンジとぴったりはりつきながら、長時間ここにいることを・・・・シンジは全然気付いた様子もなく、じっとヒカリ達を見てる。でもアタシは・・・・シンジのことを見てた。ずっとずっと・・・・。いつまでもそうしていたいなって思ったけど、やっぱりそうも行かずに、アタシとシンジは二人を観察するのをやめた。最後にはシンジもアタシの視線に気付いてたみたい。だって顔が真っ赤だったから・・・・アタシは意地悪してどうして顔が赤いのか訊ねてやろうかとも思ったけど、実行するのはやめた。あの時はちょっと、シンジをいじめる気分じゃなかったからね・・・・
7月27日
今日は日曜日。雨降りの一日だったわね。でも、学校に行く必要がないとなると、雨ってのもあんまり気にならないみたい。今までは雨なんて鬱陶しいだけだったのに・・・・
シンジもアタシと同じで、洗濯物のことをとやかく言うこともなかった。でも、時間は余ると言うもので、アタシもシンジも一日中詰まらなくしていた。もっとすることもあっただろうにね。
特にシンジの場合、勉強しなくちゃいけなかったんだけど、今日は何故か気合いが入らなかったみたい。でも、アタシはとやかく言わなかった。シンジには少し休んでもらいたかったし、アタシの相手をするって言う、大事なお役目があるんだからね・・・・。まあ、そうは言っても外に出れないとすることもない。昼間のテレビなんてたかが知れてるし、二人ですることも・・・・キスくらいしかないから。だからアタシとシンジは、二人並んで膝を抱えて、雨の降る様子をずっと眺めてた。何が面白いって言う訳でもないんだけど、何だか見てたのよね。今にして思うと不可解でならないんだけど、その時はそういう気分だったの。シンジも何も言わずにただ黙って外を見てた。でも、雨の降る景色って、何だか寂しいのよね。だからアタシも少しだけ寒くなって、シンジにそっと寄り添っちゃった。シンジは・・・シンジもアタシと同じく、ちょっとだけこっちに体重をかけてる。その時はあんまり実感が湧かなかったんだけど、今にして思うとすっごくいい雰囲気だったんだろうな。シンジの奴、アタシに腕の一つでも回してくれればよかったのに・・・・
7月28日
今日は月曜日。昨日一日降り続いた雨も、今朝になったらきれいさっぱりやんでた。まだ雨は乾ききってない。朝日にきらきら光って、まるでアタシの一日を祝福してくれてるみたいだった。
でも、現実問題としてあまりいいことはない。道路はびしょ濡れだから外に出るのもおっくうだし、それ以上に靴を汚したくなんてない。シンジもアタシと同じで、あんまりいい顔してなかったわね。全く、わからないでもないけど綺麗な景色と綺麗な彼女がこんなにすぐ近くにいるって言うのに・・・・
とにかくアタシもシンジも一日家にこもりっきり。でも、二日続けて家にいると、さすがに苦痛なのよね。外に出ても何をするって訳でもないんだけど、それでもやっぱり外に出たい。アタシはそう思うと、シンジを引きずって外に行こうとした。でも、やっぱりシンジは靴が汚れるからとかなんとか言って、アタシに抵抗するの。だからアタシは、靴下を脱いで裸足になるとそのまま外に出た。さすがのシンジも呆れてたけど、裸足なら靴が汚れると言う言い訳も出来ないので、しぶしぶ外に出た。ガラスの破片とかがあったら危ないから、結構注意しながら歩いたんだけど、それでもいつもと雰囲気が違ってやたらと面白く感じた。お気に入りの河原は昨日の雨で増水していて危ないから行けなかったけど、代わりに加持さんが新しく地上に作ったって言う畑を見に行った。お馴染みのスイカに付け加えてキュウリやナスなんかも作ってるみたい。でも、やっぱり一番はスイカ!!アタシは足の裏で土の感触を楽しみながら、スイカ泥棒を決行!!大きい奴を選んではシンジに渡し、結局一人二個ずつの計四個を盗んだ。シンジはかなり渋ってたけど、夜みんなで切り分けて食べたら、そのおいしさにシンジも何も言わなくなった。ほんと、いい場所を見つけたって感じで、ちょくちょく盗みに来るのもいいわね。加持さんには悪いけど、スイカ泥棒、案外面白かったし・・・・
7月31日
今日は木曜日。月の最後の日よね。でも・・・・やっぱり感慨らしきものは皆無。当然かもしれないけどね。
シンジもミサトもそのことには全然触れなかった。まあ、サラリーマンみたいに月単位でも動いてる人間ならともかく、アタシ達にはあんまり縁のない話だから・・・・
あ、でもアタシもミサトも女だから、月で考えなきゃ行けないものもあんのよね。ミサトは平然としてるみたいだけど、アタシって何だかきついみたいだから、ほんと困っちゃうのよ。だからやたらと気が立っちゃって、シンジに対してはいつも元気で優しいアスカでいたいのに、つい無意味に辛く当たっちゃうの。もちろんシンジはまだまだお子様だから、アタシの機嫌が悪い原因なんて分かんないと思うけど、シンジはわかんないながらもアタシを受け止めてくれる。だからその時は気付かなくっても、あとになってものすごく後悔すんのよね。でも、見え見えでシンジにやさしくしたくもないし・・・・この辺が難しいとこよね。でも、色々嫌なことだらけだけど、アタシはこれがあって、そして女であること、もう嫌だなんて思ってないな。アタシはもう、恋を知った女だからね。以前加持さんに恋してると思ってたけど、やっぱりあれはアタシの思い込みだったみたいね。アタシが今シンジに向ける穏かな気持ちとは全然違うんだもん。それに、加持さんとの子供なんて考えてみたこともなかったし・・・・でも、今はシンジと・・・・ううん、これからよね、これから。アタシ達にはまだまだ時間がたっぷりあるんだし、もっと恋を楽しまなくちゃ!!この年頃、人生で恋をする季節だもんね!!
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