スカ一行日記」二月分


2月2日
今日は二月最初の日曜日。だけど、残念ながら今日は雨なの。だからお出かけも無し。さすがのアタシも、無理矢理雨の中、外には出ないからね・・・・
でも、ここのところずっといいお天気で、雨なんて降らなかったから、たとえ外に出かけられなくても、たまにはいいな、なんてアタシは思ってた。アタシはのんびりくつろぎながら小さな雨の音を楽しんでいたんだけど、シンジはそんな気分じゃないのよね。洗濯物が乾かないって愚痴ばっかりこぼしてたわ。
洗濯物くらい、乾燥機を使って乾かせば済むことなのに、シンジはいつも外に洗濯物を干すのよね。アタシは昔、そんな手間を掛けるシンジのことを馬鹿らしいって思ってたんだけど、でも今は違うの。太陽の光を浴びた服は、乾燥機で干した服に比べてとっても気持ちがいいのよね。何だか太陽の匂いがするというか・・・生命の力強さみたいなものを感じるの。シンジはこういう昔からのことにこだわるタイプなんだけど、アタシはこれで結構新鮮な思いをさせられてるのよね。そして、アタシも結構シンジに影響受けてるみたい。料理も最近では手作りの方が当然だと思い込んでるし・・・・まあ、こっちには幾分、というか大分、シンジへの気持ちが混じってるんだけどね。

2月3日
今日は月曜日。そして更に節分の日よ。アタシは節分って話にしか聞いたことなかったんだけど、一度ぜひやってみたいと思ってたのよね。
どうせシンジがみんなのまく豆を買ってきてくれるんだろうけど、アタシは自分専用の豆を買って戦闘準備よ。シンジやミサトにしこたまぶつけてやろうと思ってたのよね。でも、アタシがこうして張り切っているのに、シンジはあんまり豆まきに乗り気じゃないの。一応豆は買ってくるとは言ってたんだけど・・・・
で、蓋を開けてみると、シンジの買ってきた豆は殻付きの落花生!!シンジに言わせると掃除が楽だからとか!!シンジって古風なところがあるくせに、意外と手抜きするところもあるのね。アタシは完全に頭に来て、自分用に買ってきたちゃんとした豆まき用の豆を取り出すと、思いっきりシンジめがけて投げつけてやったわ。シンジはアタシに豆をぶつけられたってことよりも、アタシがちゃんとした豆を買ってきておいたっていうことに驚いてたわね。とにかくシンジも、これで痛い目を見るといいわ!!アタシの気持ちに応えないで、ぼけぼけしてる罰よ!!いい加減目を覚まして、アタシの方を向きなさい!!いいわね!!

2月4日
今日は火曜日。でも、曜日なんてどうでもいいわね。それより、今日はこれを書く前に、今までの日記をちょっと読み返してみたの。
だけど・・・・アタシも相当恥ずかしいわね。だって、シンジのことしか書いてないのよ。アタシはそんな女じゃなかったはずなのに・・・・きっと誰かさんに変えられちゃったのかな?その誰かさんって言うのは・・・・わざわざ書かなくてもわかるわよね?
でも、シンジはアタシの日記のこと、知ってるのかな?この日記帳をくれたのはシンジだけど、それ以降日記のことはひとことも聞いてこないし・・・・忘れちゃってるのかな?もしそうだとしたら、これをさりげなくシンジの目の届くところに置いておこうかしら?そうすれば、シンジも日記のことを思いだし、更にアタシのこの熱い想いを知らせてやることが出来て、まさに一石二鳥よね。でも・・・シンジがこれを見て、どう思うか・・・却ってアタシのことをわずらわしく思って、避けるようになるかも・・・?やっぱりやめ。アタシはシンジが自分から気付いてくれるのを待つ事にするわ。シンジは鈍感だから時間がかかるかもしれないけど、アタシから言うなんて、ちょっと負けるみたいでしゃくだからね!!

2月5日
今日は水曜日ね。今日のシンジは・・・・ってやめやめ。シンジのことを書き始めると、アタシもきりがなくなるからね。それに、たまには違うことも書かなくちゃ、おかしいだろうし。っていう訳で、今日はアタシの親友、ヒカリについて書くわよ。
ヒカリは・・・アタシがシンジにぞっこんなように、鈴原の奴にいれあげてるのよね。アタシから見れば、あんな奴のどこがいいのかって思うんだけど、まあ、人の嗜好なんてそれぞれ違うからね。でも、ヒカリの場合、アタシとは違って、全然積極的になれないの。アタシの経験から、男が告白してくれるのを待っていても、埒が明かないって言い続けてるのに・・・・
でも、ヒカリはじっと待って、ただ鈴原にお弁当を作り続けてるのよね。毎日鈴原は本当においしそうにヒカリの作った弁当を食べてるから、ヒカリはうれしくて仕方ないだろうけど、アタシはそれだけじゃ満足出来ないな。好きなら無理矢理キスでもして、自分の気持ちをはっきりと知らせればいいのに・・・・でも、ヒカリのそういうところが、ヒカリらしいところなのよね。ヒカリって、ほんとにまれに見る女の子らしい女の子だから・・・・だからこそ、アタシはそんなヒカリのことを、応援したくなっちゃうのよね。頑張れ、ヒカリ!!

2月6日
今日は木曜日ね。全く、日記に書くこともないくらい、何事もない一日だったわ。別にアタシは波瀾万丈を求める女って言う訳じゃないけど、なにかこう、刺激が欲しいわね。まあ、アタシも大人しくしてるのが悪いんだろうけど・・・・
大人しいといえば、ファーストよね。アタシも最近学校ではシンジに迫ったりしないから、ファーストの奴も最近はめっきり大人しいのよね。まあ、心の中では何を考えてるのかわからないけど、きっと間違いなくシンジのことを考えているわね。大体あの目を見れば、一目瞭然ってもんよね。
でも、大人しいって言っても、時たまアタシがシンジにちょっかいを出すと、ものすごい目で睨み付けんのよね。全く、いくらアタシがにっくき恋敵だからって、そこまで嫌わなくてもいいと思うのに・・・・あいつ、そこまでシンジにはまってるのかなあ?まあ、そういう気持ちも、解らないでもないんだけど、シンジがそういうのについてどう思うのかって言うと、結構辟易してんのよね。このアタシくらいでもうんざりしてるのに、ファーストの様子からすると、きっとシンジも困ってるわね。でも、アタシはそういうことを、わざわざファーストに教えてあげるほど、甘ちゃんじゃないんだけどね。

2月7日
今日は金曜日。週末ともなると、どこもせわしなくなるわね。まあ、アタシの周りだけは、週末とかそういうのは関係なく、いつも何も変わりないんだけど・・・・こういうのを、幸せって言うのかな?
でも、幸せな日常を感じていても、どこか心の中では刺激を求めていたりするの。スリルとか、そういうのじゃないと思うんだけど・・・何て言ったらいいのかな?そう、停滞よりも前進を求めているのよ。日常においても、アタシは進歩したいのよね。料理や勉強、そして、シンジとの恋愛も・・・・
シンジはこういうの、どう思ってるのかな?シンジはいつも、今が一番幸せって言う顔をしてるけど、今のままでいいのかしら?アタシとしては、まだ中学生のシンジにそういう考えは持ってもらいたくはないけど、シンジは人一倍苦労してるもんね・・・・だから、時間が進むにつれて、どんどん物事が悪化していくって思ってるのかもしれない。でも、そうだとアタシは悲しいな。アタシはこれから、シンジをアタシの手で、幸せにしてあげたいのに・・・・

2月8日
今日は土曜日。でも、今は何だか曜日よりも日にちよりも、2月って言う月について考えてみたいな。1月でもなく、3月でもなく、この2月という月について・・・・
何を言いたいかって言うと、2月って中途半端な時期なのよね。まあ、世の中の受験生からすれば、大事な月なんだろうけど、アタシにとっては何だか宙ぶらりん。1月のお正月気分も抜け、かといって緊迫感がある訳ではないの。だから、何だかほんわかのんびりとした気分なのよね。
でも、2月は何にもないかって言うと、そうじゃないのよね。ひとつだけ・・・バレンタインデーがあるの。これってアタシだけじゃなく、日本中の恋する女の子にとって、一番重要な日よね。だからこそ、こののんびりとしてて何にもない2月にあるのかな?この日にだけ、全てをかけられるように・・・・。でも、アタシはちょっと心配事があるの。まずひとつは、アタシはチョコなんて作れないってこと。こればっかりはシンジに手伝ってもらう訳にはいかないもんね。まあ、こっちはヒカリに協力してもらうとして・・・問題は次。シンジの奴、かなり人気があるのよね。何でか知らないけど、話によるとアタシ以外にシンジのことが好きなのは、ファーストの奴だけじゃないのよ。ライバルが多くて嫌になっちゃうわよね。アタシもチョコ作り、気合い入れなくっちゃ!!

2月9日
今日は日曜日。今日はいい天気だから、どこかシンジと一緒に行きたいわね!!って思ってたら、なんと珍しいことにシンジの方からアタシを誘ってきたの。驚きよね。いつもだったらアタシが無理矢理シンジを引きずり出して、シンジはいやいやそれについて行くって言うパターンがほとんどだったのに・・・・
で、シンジは何にアタシを誘ったかって言うと、新聞屋さんから映画のただ券をもらったんだって。話によると、鈴原も相田も忙しいとかでアタシを誘ったって言うことなんだけど・・・・どうしてこのアタシが後回しなの!?普通だったらこのアタシから誘うべきなのに!!それも、今日になっていきなりよ!!昨日のうちにアタシを誘って、都合を聞いておくべきなのに!!
でも、アタシはそう思って、ひとつの事に気がついた。もしかしたらシンジ、はじめっからアタシを誘うつもりだったのかも・・・?だって、シンジにしては珍しく唐突だし、やけに動揺してたもの・・・・アタシはそう思い始めたら、映画どころじゃなかったのよね。せっかくシンジがアタシを映画に誘ってくれたのに・・・・でも、終わった後に喫茶店に入ったりして・・・やっぱりこれは、シンジがアタシをデートに誘ったって言うことなのよね!!今日のことはしっかりと覚えておかなくっちゃ!!

2月10日
今日は月曜日。そろそろ学校全体が、バレンタインムードに包まれてきたわね。一応アタシ達の学校はチョコを学校に持ってくるのを禁止するとか、そんなのはないみたいだけど、まあ、禁止したところでみんな持ってくるのよね。先生達も、そう思って諦めてるのかもしれないけど・・・・
で、男子達はって言うと、やけに愛想が良くなるのよね。まあ、そうなってないのはシンジと鈴原くらいだけど、ヒカリは結構それがうれしいみたい。ヒカリも真面目だから、そういう鈴原の硬派ぶったところが好きなんだろうけどね。そして、肝心のシンジなんだけど・・・・どう思ってるのかしら?まさかいくら鈍感だって言っても、この雰囲気に気付かない訳ないのに・・・・・
もしかして、アタシからチョコをもらえると思って、シンジの奴、安心しきってるのかな?まあ、アタシはしょっちゅうシンジのことを好きだっていってるから、そういう気持ちもわかるんだけど、問題は他の奴よね。シンジ、自分が人気があるって、気付いてるのかしら?シンジに本命チョコをあげたいのは、アタシとファーストだけじゃないのに・・・・。全く、アタシ以外の奴から受け取ったら、承知しないわよ!!たとえ義理だろうとなんだろうと、アタシがチョコを見つけたら、片っ端から没収してやるんだから!!

2月11日
今日は火曜日。でも、建国記念日で学校はお休みなの。普段休みじゃない平日に休める。こういうのって、なんだかちょっぴり得した気分よね。
そんな訳で、アタシはこの祝日を生かして、ヒカリにチョコ作りを教わる事にしたの。ほんと、都合のいい日を休みにしてくれたもんよね。感謝しちゃうわ。
で、今日一日ヒカリにみっちりチョコ作りを仕込まれたんだけど・・・・やっぱり難しいわね。果たしてアタシにちゃんとしたチョコが作れるかしら?頭ではわかってるんだけど、どうも手が付いていかなくって・・・・こういうことなら、もっと前から料理の特訓をしておくべきだったわね。ほんと、情けない話だけど、しょうがないわ。アタシはアタシにできる限りの事をするだけ。それに、チョコにアタシの想いを込めれば、きっとシンジもわかってくれるはず。アタシが精いっぱい頑張ったって事を・・・・

2月12日
今日は12日。バレンタインデーまで、あと二日ね。チョコは明日の夜に作るとして・・・今日はちょっとした空白期間になるわね。一応チョコ作りはみっちりヒカリに昨日仕込まれたし、今更する事もない。
今日試しに作ってみて、予行演習をするのもいいかもしれないけど、あんまり派手な動きをすると、シンジに悟られちゃうからね。シンジもきっとアタシがチョコを作ろうとしてる事くらいは気付いてると思うけど、はっきり見られちゃうと、あのバカのことだから、きっとアタシの事、手伝おうとするに決まってるわよ。
まあ、シンジがアタシよりずっとこういう事に長けてるって言うのはわかるんだけど、それはちょっと乙女心を傷つける事だもんね。でも、シンジはそういうとこ、全然わかんないからなぁ・・・・まあ、アタシとしては変に気が回る奴よりも、そっちの方がずっと好ましく感じるのは事実だけど、それにしても限度ってものがあるわよね。全くシンジのバカは、底抜けに鈍感で、アタシを困らせてばっかりいるんだから・・・・そのかわりに、もっとアタシだけにやさしくしてくれればいいんだけど!!

2月13日
今日は木曜日。それ以前に、バレンタインデー前日よね。でも、実を言うと、これを書いてるの、もう12時を過ぎてるの。つまり、もうバレンタインデー当日になっちゃってるって事なのよね。
どういうことかって言うと、やっぱりチョコを作ってるところ、シンジには知られてるとしても、見られたくはないじゃない。だから、シンジを早く寝かしつけて、夜中こっそりチョコを作ったって言う訳なの。シンジはアタシの事を察してか、アタシの求めにすんなり応じてくれたけど・・・・結局のところ、気付いているのかな?でも、アイツの鈍感さはアタシでもはかりきれないところがあるし・・・・
まあ、それはともかくチョコ作りよ。ヒカリにみっちり仕込まれたつもりなんだけど、やっぱりそううまくは出来ないのよね。いつものアタシだったら、ちょっとくらい汚くなってても、妥協しちゃうんだけど、これだけは妥協したくなかったの。だって、これにはアタシのシンジへの愛が込められているんだから・・・・だから、アタシは満足が行くまで何度も何度も作り直して・・・・気がついてたら、もう明日になってた。アタシは満足したものが出来上がって、この日記を書いてるんだけど、シンジはアタシの気持ち、感じてくれるといいんだけどな。あともう一つ・・・夜更かしして、アタシの美貌が損なわれてなければいいんだけど!!

2月14日
今日は待ちに待った、バレンタインデー当日。アタシは昨日寝るのが遅かったから、ちょっと眠いんだけど、今日だけはぼんやりしていられないわよね。だって今日はアタシにとって、大事な大事な日になりそうだから・・・・
普通、みんなは学校でチョコを渡すんだけど、アタシは誰も見ていないところで、二人だけでシンジに手渡したかった。だから、チョコの事はおくびにも出さずに学校に行ったんだけど・・・・まず下駄箱でびっくり。シンジの下駄箱にいくつか入っているのはまあ、予測がついたんだけど・・・なんと、アタシのところにもひとつ、入ってたのよ、かわいいチョコが・・・・
仰天よね。でも、シンジはそれを見て、アタシをからかうの。あったまに来ちゃった!!だから、むっつりしたままシンジのチョコをことごとく没収していったの。でも・・・・やっぱり出たわね、ファースト!!アイツ、シンジに教室でチョコを手渡して・・・・アタシはもちろん他と同じように没収しようとしたんだけど、シンジの奴、これだけはアタシに渡さなかったの。アタシはそんなシンジの頑なさを見て、シンジの奴、やっぱりファーストの事、好きなんだなーって、思っちゃった。その時はアタシ、平気だったんだけど・・・・後で一人になると、何だか涙が出てきちゃった。そして、それからはシンジに顔を合わせる事が出来なかったの。もちろんチョコも、渡せずじまい。アタシ・・・・どうしたらいいんだろう?なんだかもう、嫌になっちゃったな・・・・・

2月15日
アタシ、夜中に一人でチョコを食べてたの。もちろん、アタシがシンジにあげようと思った奴を・・・・でも、アタシが晩御飯も食べないで部屋に閉じこもっていたから、シンジが心配してアタシを見に来てくれたの。それで、シンジに見られちゃった。アタシの涙を・・・・
そしたらシンジ、アタシの手からチョコをもぎ取って、食べちゃったの。アタシは泣きはらした顔でシンジに怒ったんだけど、シンジはアタシのチョコを返さなかった。そしてシンジはひとこと言ったの。「とってもおいしいよ、アスカ」って。アタシはうれしかったんだけど、なんて言ったらいいのかわからなかった。だって、シンジはファーストのチョコを大事に受け取ったのだろうから・・・
アタシがそう思ってると、シンジはアタシに差し出したの。包みを解いていない、ファーストからもらったチョコを・・・・そして、シンジはいろいろ話してくれた。自分の事、ファーストの事、そしてアタシの事・・・・アタシはそれで、シンジとのわだかまりが氷解したような気がした。そして、アタシとシンジは、一緒にアタシの手作りのチョコを食べたの。とっても甘くしたはずなのに、口に入れたチョコの味は何だかちょっと苦かった。その理由、その時はわからなかったけど、今のアタシにはわかる気がする。それってきっと、恋の涙の味なんだって・・・・

2月16日
今日は日曜日。シンジとも万事うまく行って何も問題が無くなったところで、アタシはようやくある大事な事を思い出した。そう言えばアタシも、何故かバレンタインデーのチョコをもらってたのよね。アタシは正真正銘の、女の子だって言うのに・・・・・
アタシはそれを鞄の中に入れっぱなしで忘れてたんだけど、今日それを出して、包みを開けてみたの。だって、これは下駄箱に入ってたから、誰かが間違えてアタシのところに入れちゃったかもしれないもんね。で、中身はというと・・・・大きなハート型のチョコに、「I LOVE YOU」の文字。まあ、これは定番なので、アタシは何かメッセージらしきものでもないかと思ったの。
そしたら案の定、かわいい便箋が入ってて・・・「あなただけをずっと見てました。好きです。アスカさんが好きです。」なんて書いてあった。アタシはそういう趣味はないから、うげーっと思って差出人をみると・・・「霧島マナ」だって。知らない娘よね。でも、誤解されたり付きまとわれたりすると厄介だから、ちゃんと断っておかなくっちゃ。でも、何だか憂鬱よね。シンジに知られるのは目茶苦茶恥ずかしいから、相談する訳にも行かないし・・・・全くこいつ、アタシがシンジに惚れてるって知らないのかしら!?まあ、こういう事を考えるのは、常人じゃないから仕方ないのかもしれないけど、お説教しておく必要があるわね。全くもう・・・・

2月17日
アタシは学校に来るなり「霧島マナ」について聞き込みを開始した。すると、奴を知らないのはアタシとシンジくらいで、結構目立つ、かわいい女の子っていう話なのよ。でも、いくらかわいくっても、アタシにとっては関係のない話よね。はっきり言って、却って迷惑!!
で、そいつのクラスも聞いたから、ちょっと偵察。すると背後から・・・・「アスカさん!!」って、声をかけられちゃった。振り向くと・・・アタシに向かってかわいくにこっと笑って言うの。「私が霧島マナです!!」って。まあ、確かに美人だしかわいい女の子なんだけど・・・・困るわね。それに、いきなりだったからアタシも何も言えなくなって・・・・
アタシが黙ってると、「私に会いに来てくれたんですね?」なんて言うのよ。アタシは違うって言ったんだけど、この娘を見に来たのは事実なんだから、あんまり強くは否定出来なかったのよね。すると、こっちへ来て話をしよう、みたいなことを言うのよ。アタシは振り切って自分のクラスに帰っちゃったんだけど・・・・しばらくしたら、すぐ噂になっちゃった。アタシが女に惚れられた!!って。まあ、事実なんだけど・・・シンジにだけは、シンジにだけは知られたくないわね。シンジはアタシのことを信じてくれると思うけど、アタシの方が恥ずかしいから・・・・こういう時は、シンジの鈍感さがうれしいわね。ほんと、助かるわ。

2月18日
今日は火曜日っ!!全く・・・あの女、とんでもない女だわ・・・・ああっ、今でも背筋がぞくっとする。何でこのアタシが、こんな思いをしなくちゃなんないのよっ!!
別に何をされたって言う訳じゃないんだけどね・・・・あの女の、アタシを見る目が嫌なのよ。クラスが違うくせに、いつのまにかアタシの近くにいて・・・・アタシが振り向くと、にこっと笑うのよ。ほんと、花が咲いたみたいに。普通だったら別に何ともなく、却ってアタシも好感が持てるんだろうけど、あいつの微笑みの裏にある感情を知っちゃったからね・・・・耐えらんないわよ、やっぱし。
それに、あいつの笑顔、どこかで見たことあると思ったら・・・ファーストがシンジにだけ見せる笑顔、あれなのよ、あれ!!まあ、ファーストは男に対してだから、おかしくはないんだけど、アタシは女なのよ!!女!!アタシはファーストのシンジへのものすごい想いを知ってるだけに、それと同じのがアタシに寄せられてるなんて・・・・怖い怖い!!顔はかなりかわいくて、邪気がないだけに、一層怖いのよね。そう言えば、ファーストも顔だけは整ってるし・・・・そういう奴って、どっかおかしいのかしら?とにかくアタシにはわかんないわね!!

2月19日
今日は水曜日。はぁ・・・とうとうシンジの奴も、あの女の存在に気付いちゃった。いつまでも隠し通せる訳ないとは思ってはいたんだけど、それでもやっぱりショックよね・・・・女に好かれてるなんてさ・・・・
こうなったのはどうしてかって言うと、あいつがアタシ達のクラスに頻繁に通いつめていたのが原因なのよね・・・・で、知らない、それもかわいい女の子がいるって事で、シンジも気がついたのよ。で、アタシがいつものように振る舞えばよかったんだけど、その事に触れられたくはなかったのよ。だから、適当にごまかしてたんだけど・・・
シンジの奴、自分が他の女に注意を向けたのに、アタシがうるさく文句を言わないのに疑問を持っちゃったみたいで・・・・アタシにじゃなく、本人に話し掛けちゃったのよ。そうしたら・・・・しっかり自己紹介した上に、アタシの事が好きだって、みんなに聞こえるような声で宣言しちゃって・・・・シンジは呆気に取られてたけど、アタシはそんなシンジに何も言えなかった。あの娘の言った事は、全部真実なんだから。だから、アタシはついても仕方のない嘘はつかない事にしたの。でも、今日は一日、まともにシンジの目、見る事が出来なかったな・・・・明日のアタシは、一体どうなってるんだろう?また今までと同じように楽しく、シンジと話が出来ればいいんだけど・・・・

2月20日
今日は木曜日。アタシはシンジを誤解してたみたい。シンジは他の奴等みたいにアタシの事をからかうはずがないってわかっていたのに、アタシはシンジの目を避けてたんだから・・・
でも、シンジはそんなアタシに、真剣に助言してくれたの。人の想いには、きちんと返事をした方がいいって・・・・。アタシの胸にこたえちゃったな、シンジの言葉。だって、アタシはずっと、あの女のことを避け続けていたんだから・・・・
だから、もう、人の目を怖がってごまかし続けるのはやめることにするわ。はっきりとお断りすべきだもんね。アタシがシンジを好きなのは、ずっと変わらないものなんだし・・・・。でも、他人事だからかもしれないけど、そういう風にはっきりと言えるシンジって、やっぱりすごいな。これがシンジがいつも言ってる「逃げない」ってことなのかしら?だとすると、立派な事よね。アタシもシンジを見習って、逃げない女の子になりたいな。アタシの大好きな、シンジみたいになれるように・・・・

2月21日
今日は金曜日ね。アタシは学校に着くなり、マナの奴を呼び出して言ったの。アタシが好きなのはシンジだから、アンタの気持ちには応える事が出来ない!!ってね。色々シンジにも迷惑かけたけど、これですっきりしたわね。
で、そんなアタシに対して、あの女はこう答えたの。「私が好きなのは、そんな碇君を想っているアスカさんなんです。」ってね。何を考えているんだかよく分からないまま終わっちゃったけど・・・・あの娘も変な意味でアタシに近付いたんじゃないみたい。まあ、だからってバレンタインにチョコって言うのはあれだけど、そう考えると案外かわいい奴かもしれないわね。これから友達になってあげても、構わないんじゃないかな?
でも、シンジの事を想ってるアタシが好きって言うのを聞いて、何だかとってもうれしくなっちゃった。やっぱりアタシは、シンジに想いを注いでいるときが、一番綺麗に見えるのかしらね。シンジの奴も、そんなアタシを綺麗だと思ってくれると、うれしいんだけど・・・・でも、アタシは元々美人なんだから、そんな心配しなくてもいいかもしれないわね。まあ、シンジもおかしなとこがあって、アタシやレイみたいな美人が側にいても、何にも感じないんだけど、でも、心の美しさなら、きっとわかってくれるわよね。シンジ!!恋する乙女のハート、しっかり見なさいよね!!とっても綺麗なものなんだから!!

2月22日
今日は土曜日。学校も半日で終わりだから、アタシとシンジは早々に家に帰って・・・・二人っきりよね。何だかここのところいろいろあって、普段と同じようにシンジと話が出来なかったけど・・・・これがいい機会。アタシはシンジと話をする事にした。
でも、話って言っても、大した話じゃない。友達の事とか、学校での事、それから一緒に見てるテレビ番組の事とか・・・・つまんないことかもしれないけど、こういうどうでもいい話をするのって、ほんとに落着くのよね。そしてその相手がシンジだったから・・・・何も言う事ないわね。心の底から、ゆったりとした気分に浸れたわ。
だけど、そうそう長く話もしてられない。そのうち話題も尽きて・・・いつのまにか、アタシとシンジ、二人は黙って見つめあってた。アタシはそんなつもりじゃなかったし、きっとシンジもそうだと思う。だからアタシは、こうして自然にお互いが見つめあえることが、とってもうれしく感じた。アタシもシンジも、お互いを見つめる事に関して、全く違和感を覚えていないって言う事だもんね。アタシはだんだんシンジにキスをしたい雰囲気になってきちゃったけど・・・・その前に、呪縛は破れてシンジは立ち上がった。ちょっぴり残念だったけど、まあ、贅沢は言えないわよね。見つめ合うことだけでも、十分すぎるくらいうれしいんだから・・・・

2月23日
今日は日曜日。きっといつもみたいにミサトは加持さんのところに行くんだと思ってたら、今日は反対に加持さんがうちに遊びに来た。別に嫌なことはなくて、ほんとにうれしいんだけど、何だか変な気分なのよね、こういうのって・・・・
だって、アタシは以前、自分が好きなのは加持さんだって公言してはばからなかったでしょ?でも、今は加持さんはミサトの事が好きで、アタシはシンジの事が好きなんだから・・・・加持さんは大人だからそうじゃないかもしれないけど、アタシにとっては、結構複雑な問題だったりするのよね。
でも、シンジは加持さんの事を尊敬してるみたいで、アタシが加持さんの事を好きだった事を知ってても、嫉妬の一つもしないのよね。それはそれでありがたい事なんだろうけど、シンジだってもう少しアタシの気持ちを考えてくれればいいのに・・・・アタシは、シンジに嫉妬するくらい、愛されたいと思ってるんだから・・・・本当は加持さんの目の前でアタシの唇でも奪って、アタシは自分のものなんだ!!って証明してくれればうれしいのに。でも・・・・あのシンジじゃ、そんな事はとても出来ないだろうな。せめて今晩、アタシを慰めるために、キスをしに来てくれたらうれしいんだけど・・・・

2月24日
今日は月曜日。昨日はシンジがアタシのことを慰めに来てくれなかったもんだから、ちょっとすねてたの。まあ、シンジがそんな気の利いたことの出来る奴だとは思っていなかったけど、アタシがこうやって寂しくしてたのに、遅くまで呑気に加持さんとミサトと三人で話をしてて・・・・あったまにきちゃった!!
だから、しばらくシンジとも口を利いてやんなかったんだけど、その事を後でヒカリに話したら、シンジよりもアタシの方が悪いって言うのよ。確かに客観的に見ればアタシのは身勝手な言い分かもしれないけど、シンジがアタシのことを想ってくれてるんだったら、もうちょっとアタシの気持ちをいろいろ考えてくれても、いいはずなのよね・・・・
結局アタシはふてくされたまま、学校が終わるまでシンジとひとことも口を利かなかった。シンジもようやくアタシの異変がただならぬものだと感じたみたいで(遅すぎるのよ!!)アタシに恐る恐る声を掛けてきた。アタシがシンジにはっきり言ってやったら、シンジは慌てて弁解したの。何でも、三人で話をしてたのは、アタシとシンジの関係についてで、シンジはミサトに冷やかされてたんだって・・・・アタシが詳しく話をするように迫ったら、シンジは真っ赤な顔をしながら、アタシに教えてくれて・・・アタシもいつのまにか、顔が真っ赤になっちゃった。まさかミサトにアタシ達のことをそんな風に見られてたなんて・・・・恥ずかしいけど、何だかうれしいな。だって、それってアタシとシンジが、恋人同士に見られてるっていうことだもんね!!

2月25日
今日は火曜日。マナの問題が一応解決して、アタシとシンジの中もこれまで通りに戻ったと思ったら、また問題が転がり込んできた。ほんと、アタシもシンジも、問題の絶えない連中よね・・・・
で、何が起こったかって言うと、今度はファーストの奴が原因なのよ。どういう訳か、いきなりシンジにお弁当を作ってきて、食べろって言うのよ。シンジはちゃんとアタシと自分のお弁当を作ってきてるっていうのに!!それで、シンジもお人好しだから、せっかく作ってきてくれたからとか言って、自分のお弁当は食べずにファーストのお弁当を食べたりして・・・・ほんと、あったまにきちゃう!!シンジの奴も、ファーストも!!
でも、こうなると、アタシもうかうかしてらんないわね。いくらシンジのお弁当がおいしいからって、いつまでも作ってもらってたらファーストに負けちゃうからね!!でも、アタシって、料理ほとんど出来ないのよね。まあ、ちょっとくらいは出来ると思うんだけど、シンジにおいしいって言われるようなお弁当となるとねぇ・・・・それに、見た感じファーストのお弁当って、ほんとにおいしそうなのよね。悔しいけど、今のアタシにはあんなにおいしそうには作れそうもないわ。もうこうなったら、ヒカリにみっちり仕込んでもらわなくっちゃね。バレンタインの時みたいに。よし、アタシも頑張るぞ!!

2月26日
今日は水曜日。シンジのためにお弁当作りの練習をするんだから、シンジに見られる訳にはいかない。だから、特訓はヒカリの家以外には、深夜にやるしかないのよね。だからなんだか眠くて眠くて・・・・
やっぱりアタシもまだ中学生だから、夜更かしはきついのよね。それに、最近は夜更かしなんてすることもなかったし・・・・ほんと、ミサトはともかく、シンジはほんとに早寝早起きなのよね。じじいじゃあるまいし、そんなに規則正しい生活しなくても、ってアタシなんかは思っちゃうんだけどね。
でも、アタシにはないところだからなかなか理解しにくいけど、そういうところもシンジの美徳のうちのひとつなのよね。アタシがその事をヒカリに話したら、シンジのことを偉いって言ってたし・・・よく考えてみると、ヒカリとシンジって、精神的な波長が合いそうな気もするのよね。まあ、アタシはヒカリが鈴原の奴のことを好きっていうのを知ってるから平気なんだけど・・・それでも考えちゃったりするのは、アタシが嫉妬深いって言う証拠なのかな?なんだか嫌な気分だけど・・・・

2月27日
今日は木曜日。昨日と同じ寝不足で、この日記を書くのもおっくうになってきたわね。まあ、取り敢えず欠かさず書いてるつもりなんだけど、よくよく考えてみると、こんなに長続きするなんて、我ながら凄いことよね。
でも、シンジはどうなんだろう?アタシはシンジにこの日記帳をもらったから毎日日記をつけてるんだけど、シンジも日記とか、そういうのをしてるのかな?アタシに日記帳をくれるくらいだから、もしかしたら隠れて日記の一つや二つ、つけていてもおかしくないわよね。
よし、今度シンジのいない時に、シンジの部屋をあさってやろう。何かいい掘り出し物が見つかるかも?第一、アタシのこの部屋も、シンジが掃除してんのよね。だから、シンジもアタシの知らないところでアタシのものを物色してるかもしれないし・・・・だから、おあいこなのよ、おあいこ。でも、えっちな本とか見つけちゃったらどうしよっか?何だかすごく気まずいわよね、そういうのって。アタシはヒカリじゃないから、不潔よ!!なんて言ったりはしないんだけど、あのシンジからは想像出来ないだけにね・・・・やっぱやめやめ!!何だかシンジがかわいそうだもんね!!

2月28日
今日は金曜日。そして2月の終わりの日よね。2月って他の月より2、3日少ないだけなのに、何だかやけに短く感じるのよ。ほんと、不思議よね。
でも、明日からいよいよ三月かぁ・・・・そして、ちょっとすればすぐに春休み。春休みなんて、進級する時のつなぎの休みにしかすぎないんだけど、冬休みよりは長いし、ちょっと特別に感じるのは確かなのよね。
そして、4月からはアタシも中学三年生。中学最後の年になるのよね・・・・なんだかここに来てからはあっという間だったな・・・・やっぱり大人達に混じってるよりも、アタシの年齢に合った中学生として過ごす方がずっと楽しいから、こんなにも時間が経つのが早く感じるのかも知れないわね?それ以上に、シンジの存在があるだろうけど・・・・でも、シンジの奴、勉強もしないでまともな高校に入れるのかな?アタシはシンジの入る高校について行くつもりだけど、あんまり程度の低い高校じゃあアタシの沽券に関わるし、男子校にでも入られちゃったら・・・・もうお手上げね。やっぱり今のうちに、シンジをいろんな意味で教育しておかなくっちゃ。そして、アタシと同じ高校に入学させてやるのよ!!
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