萩尾憂、12歳。
どこからどう見ても、明るく元気な小学六年生だ。
その名前とは裏腹に、悩み事などひとかけらも感じさせない。
振り返るとふわっと揺れるツインテールは、ふたつある彼女の自慢のひとつ。
そしてもうひとつの自慢は――たったひとりの、だいすきなやさしい姉だった。




ユーウツな関係

Written by Eiji Takashima





「おねーちゃん、あそぼーよ!」

憂が肩越しににゅっと顔を出す。
読書を妨げられた彼女の姉は、嫌そうな顔ひとつせずにぱたんと本を閉じると妹に応えた。

「憂、宿題は終わったの? この前の実力テストでお母さんに怒られてたじゃない」
「うー、それはそれ、これはこれだもん」

憂は苦虫を噛み潰したような顔をする。
出来のいい姉がいるせいか、比較されることが少なくない。
まだまだ勉強よりも遊ぶのが楽しい憂は、テストの答案が返って来る度に母親に説教をされていた。

「ダメよ、そんなこと言っちゃ。私、ちゃんと横で聞いてたのよ」
「聞いてたって?」
「ゲームソフト。欲しいんでしょ? お母さんと約束してたじゃない」
「うー……」

思い出す。
確かに、憂は欲しいゲームソフトがあった。
そして、今度のテストで90点以上取ったら、買ってもらうという約束をしていた。

「わからないところがあったらお姉ちゃんが教えてあげるから。ねっ?」
「う、うん……」
「ちゃんと宿題終わったら、一緒に遊んであげる。それならいいでしょ?」
「……わかった。ありがと、おねーちゃん」
「いい子ね、憂は」

憂がしぶしぶと姉の言葉に納得する。
そのご褒美として、彼女は優しく頭を撫でられた。
二人の両親は決して厳しすぎる訳でもなく、親としては充分過ぎるほどいい親だった。
でも、憂はあまり親に頭を撫でられたことがない。
それを知ってか、彼女の姉はことある毎に妹の頭を撫でたし、その延長で彼女の髪も愛し、よく手入れをしてやっていた。

とかく比較対象にされてしまう姉。
しかし、妹はそれによって受けるストレス以上に、姉から愛情を注がれていた。
穏やかで賢く、そして強い姉。
そんな姉の庇護を受けてのびのびと明るく元気に育った妹。
この二人の絆は、周囲から見ても強く確かなものだった。



「さあ、始めましょうか」
「うん!」

憂の部屋に入った二人は、ゆっくりする間もなく宿題に取りかかる。
最初は真剣にノートと向き合っていた憂だったが、基本的に飽きっぽい性格なのか、すぐによそ見をし始めるようになった。

「……おねーちゃん」

よそ見の対象は姉の横顔だ。
隣で静かに本を読む様子を見つめながら、憂はふと姉に呼びかけた。

「なに、憂? どこかわからないところでもあった?」
「ううん、そうじゃないんだけど……」

憂は不思議そうにする姉の顔を眺める。
整った顔立ちと大きな黒い瞳。
くもりひとつない真っ白な肌に、うなじのところでふっつりと切り揃えられた黒髪がよく似合っていた。

「じゃあ、どうしたの? もう宿題するのに飽きちゃった?」
「おねーちゃんってさ、コンタクトにしないの?」

それが、憂の唯一気になっていた点だった。

「えっ……?」

縁なしの眼鏡。
中学でも優等生の域に入る彼女にその眼鏡はよく似合っていた。
しかし憂にとって、姉の学校での成績よりも、その大人びた美貌の方がずっと大きな価値を持っていた。

「おねーちゃんはコンタクトにした方が絶対いいって。美人なんだから、そんな眼鏡外した方がずっといいと思うけどな」
「でも、コンタクトって何だか恐くって……」

恥ずかしそうに呟く。
でも、恐いものなしの憂にはそんな姉の気持ちが理解できない。
ただ、不甲斐なく思えるだけだった。

「その眼鏡がきっとおねーちゃんをウツにさせるんだよ。おねーちゃんは笑ってればすっごくかわいいのに」
「憂……その話はもういいから」

嫌そうに首を左右に振る。
はらりと黒髪が揺れ、音もなく頬をなぞった。

「よくないよ。おねーちゃんはあたしの自慢なんだもん。みんながおねーちゃんのことウツだウツだって言うかもしれないけど、あたしにはそんなことないんだからっ」
「でも、私が鬱なのは事実じゃない……」

憤慨する妹から逃げるように静かに目を伏せる。
憂の姉は14歳。中学二年生。
そして不幸なことに、彼女の名前は鬱。萩尾鬱だった……。

「知らないもんっ! おねーちゃんはおねーちゃんでしょ? あたし、そんな難しい字、書けないし」
「悲しいこと言わないで。せめてお姉ちゃんの名前くらい漢字で――」
「いや。ウツなんて字、覚えたくない。おねーちゃんはおねーちゃんでいいじゃない。あんな名前で呼ぶつもり、あたしは少しもないからね」

姉としての立場が染み付いている鬱は何とか妹をなだめようとしたが、気にもとめずに憂はぷいっとそっぽを向く。
たとえ現実がそうだったとしても、憂には受け入れたくないものも当然あった。

「そもそもお父さん達はヒドイよ。学校の友達もご近所さんも、それからパン屋さんのおじさんもみんな陰で言ってる。あたし達のこと、萩尾さんとこのユーウツ姉妹だ、って。どうして大事な娘にこんな名前つけたの?」

憂は日頃の不満を爆発させた。
しかし、いくら爆発しようとこの名前はもう十年以上も使い続けていた名前だ。今更変えることも出来ない。
変えられないからこそ、憂はただ爆発する。
こんな光景は、彼女が物心ついた時から何度となく繰り返されていた。

「お父さんたちのこと、そんな風に言わないで。ちゃんと考えて、私達の名前をつけてくれたのよ」
「あたしにはそうは思えない。ユーウツになって欲しくてつけたんだったら話は別だけど」

なだめる姉。
そしてふてくされる妹。
でも、解決の糸口はどこにもない。
だから、諦めるしかない。
少なくとも、姉の鬱はそうやってこの14年間を過ごしてきた。

「あなたの名前、憂って私はいい名前だと思うけど」
「どこが?」
「人は独りじゃ生きられない。だから、憂が人とくっつくと……どうなる?」
「……わかんないよ、そんなの」
「憂が人とくっつくとね、優になるの。わかった?」
「…………」
「お父さんとお母さんはね、憂には沢山の人と触れ合って、そしてとっても優しい人になって欲しいと思って、あなたにこの名前をつけたのよ」

それはとてももっともらしい説明だった。
でも、憂は知っている。
それはただ、都合のいいように解釈しただけのことだということを。

「……そんなのもう聞き飽きたよ、おねーちゃん」
「憂……」
「あたしのはそれで説明がつくよ。でも、それじゃおねーちゃんはどうなの? ウツって字に、ちゃんと説明がつけられる?」
「それは……」

鬱はずっと考え続けてきた。
でも、答えはどこにもない。
答えを見つけ出せないことが、憂鬱姉妹の片方として憂を位置付けてしまう。
そのことが鬱にとって、自らの名が鬱であること以上に悔しく、悲しかった。

「ん……別にいいんだよ、おねーちゃん。また怒っちゃってゴメンね」
「うん……」

鬱の中に悲しみの色を見出すと、憂はすぐに穏やかになった。
別に姉を責めるつもりなんて微塵もない。
こうなったのは鬱の責任ではないし、一番傷ついているのは当の鬱なのだということを、憂はよく知っていた。

「あたしはね、おねーちゃんのこと、すっごく自慢に思ってるんだよ。頭はいいしキレイだし、大人っぽいし……」
「……ありがと、憂」

ストレートに妹に誉められて、鬱は穏やかに微笑んだ。
途端に姉妹の間にあたたかいものが流れ始める。

「あたしには名前のことなんてどーでもいいんだよ。お姉ちゃんの名前がウツでも、あたしはおねーちゃんが好き。それじゃダメかな……」

――誰にでも好かれるはずの少女だった。
涼しげでありながら愛らしさを多分に感じさせてくれる容姿。
そして成績優秀でありながら、おごることなく誰に対しても穏やかに優しさを振り撒いていた。
しかし、少女の名は鬱であり、それが彼女を苛む。
妹の前では絶対にその片鱗すら見せない鬱だったが、独りでいる時にはその名の通り、やはり彼女は鬱だった。

「おねーちゃんはあたしのおねーちゃんだから。だからあたしのことを気にしてくれてるけど、あたしはちゃーんと知ってるんだよ」
「知ってるって?」
「……おねーちゃんがウツになってること」
「憂……」

妹は姉を愛していた。
姉は妹より強く正しかったが、それは決して妹の弱さの証明にはならない。
同じ苦しみを背負い、同じ血を引き継ぐ者として妹は強く、そして姉の悲しみをきちんと見抜いていた。

「おねーちゃんはさ、イジメられてたりしない? あたしはね、それが心配なんだ」
「そ、そんなこと……ないわよ」

否定する。
しかし、既に鬱であることを見抜かれてしまっている以上、鬱はもう裸になっていたと言ってもいい。
鬱の声の震えが憂の優しさを加速させる。
そして、憂が鬱と交差する。
そこから生まれたものは憂鬱ではなく、もっとあたたかなものだった。

「うそ。あたしがイジメられてるんだもん。おねーちゃんがイジメられてないはずないよ」
「憂、あなた、学校でイジメを……?」

妹の言葉に表情を強張らせる。
自分のことよりも妹のことを大切に思う、鬱らしい反応だった。
姉を不安がらせてしまったことに気付いた憂は、軽く笑顔を見せながらその不安を吹き飛ばそうとする。

「……うん。でもちょっとだけ。やっぱりこんな名前だしね」
「そう……知らなかった」
「だからおねーちゃんも隠さないで。きっとあたし以上に、名前では苦労してるんでしょ?」

こうなることを望んで、姉妹の両親は二人に憂鬱の二文字を与えたのだろうか?
少なくとも彼女達は、名前のおかげで誰よりも強くあることが出来た。
そしてまた、常に打たれ続けるが故に唯一許し合える自らの半身を愛し守った。
得たものは強い心と姉妹の絆。
その代償として、常に憂いが漂っていた。

「イジメ……っていうほどのことじゃないわよ。確かに今まで数え切れないほど馬鹿にされてきたけど……でも、優しくしてくれた人も、たくさんいるから」
「うん……」
「みんなはちゃんと、私のことは萩尾さんって呼んでくれる。名前で呼ぶのは、私を馬鹿にしたい時だけだから」
「うん……うん……」
「私には友達もいっぱいいるから。だから心配しないでね。憂が思っているほど、私は鬱じゃないから……」

証明するかのように、鬱は微笑んで見せた。
それは意図した微笑みだったかもしれない。
でも、その微笑みは真実で……彼女にとって、妹に見せる微笑みは常に本物の喜びに溢れていた。

「おねーちゃん……」
「それよりもね、私は憂の方が心配なの。さっきイジメられてるって言ってたけど……」

年相応の少女から、すぐに憂の保護者に戻る。
が、姉の心配性はいつものことと割り切っているのか、憂は彼女の発言を軽く受け流した。

「あっ、ううん、別におねーちゃんが気にするほどのことじゃないよ」
「本当に? 強がってるんじゃなくて?」
「もっちろん! 時たま男子が馬鹿にしたりするけど、そんな奴はけっ飛ばしてやるんだから!」

念を押してくる姉に対して憂は明るく蹴るポーズをして見せる。
鬱の目に映った妹の姿はやっぱりいつもの憂のままで、それが彼女の笑顔を誘った。

「ふふっ、いつもながら元気ね。でも、憂だって女の子なんだから、そんなことしちゃダメよ。いい?」
「えー? あたしはおねーちゃんみたいにおしとやかには出来ないよ。けっちゃダメなの?」
「そうよ。これはお姉ちゃんからのお願い。憂はちゃんと聞いてくれる?」
「うーん……」

憂は考え込む。
姉に言われたくらいでいつもの自分を変えることなど出来なかったが、彼女にとってそう滅多にない姉のお願いと言うのは非常に神聖で重いものだった。

「あっ、そうだ、じゃあ、おねーちゃんのお願いを聞く代わりに、あたしのお願いも聞いてくれる?」
「いいわよ、なんでも」
「えへへ、おねーちゃんならそう言ってくれると思った」

頬を緩ませて喜ぶ。
その様子が鬱の警戒心を煽ったのか、軽く妹に釘を刺した。

「あっ、だけど私に無理なお願いはダメよ。出来ないものは聞けないんだから」
「わかってるって。ただ……」
「なに?」
「ただ、眼鏡、外して欲しいな、って」
「眼鏡? またコンタクトにして欲しいって言うの?」
「そうじゃないよ。ただ、今ここで、素顔のおねーちゃんが見たいの。いい?」
「そんなことならお安いご用よ」

そう応えて、鬱はそっと眼鏡を外す。
そして妹に証明するために、外した眼鏡を差し出した。

「やっぱりおねーちゃん、キレイ……」

憂は上の空で眼鏡を受け取ると小さくうっとりと呟いた。
彼女ももうすぐ中学生。思春期を迎えている。
大人の女性に対する憧れは強く、それは最も間近にいる彼女の姉に対して向けられていた。

「も、もう……そんなこと言わないの。憂だって充分綺麗よ」

鬱は照れながら妹をたしなめる。
彼女にとって、妹の存在は女の子として理想的な姿だった。
内に塞ぎこみがちな鬱は快活な妹の姿に憧れを抱いていたし、わがままばかりの中にもきちんと人を思いやる心を持つ憂を、八方美人な自分とは異なる純粋さを持っている少女だと考えていた。

「ううん、おねーちゃんの方がずっとキレイ。あたしなんてまだ……」

憂は自分の胸元に手を当てる。
彼女の不安はまだ殆ど成長の兆しを見せないそのふくらみにあった。

「そんな、憂はまだ小学生じゃない。すぐに大きくなるわよ」
「でも、それだけじゃないもん。みんな5年生くらいにはとっくに始まってるのに、あたしはお赤飯まだだし……」
「憂……」

確かに周囲と比べて小柄な憂の成長は遅かった。
大人の女の証でもある初潮をまだ迎えていなかったし、それを証明するように肉付きも悪く、胸もぺったんこだった。

「おねーちゃんはいいよね。美人なだけじゃなく、おっぱいもおっきいでしょ。高校生って言われても通用するんじゃないかな?」
「そんな……いくらなんでもそこまでは行かないわよ」
「まあ、お向かいのおねーさんほどぼぼーんって感じじゃないけどね。でも、あたしと比べたら全然違うよ。おねーちゃん、大人のオンナに見えるもん」
「もう、憂ったら……」

憂にとっては憧れの鬱の胸も、実際のところは人並程度でしかない。
ブラジャーを着け始めたのもつい最近で、ようやく正しく収まるサイズになってきたばかりというところだ。
しかし、限りなくゼロに近いふくらみの憂にとっては羨望の的でしかなく、憧れと興味が尽きることはなかった。

「だからおねーちゃん……また、さわらせてもらっても、いい?」
「……また?」
「うん。おっぱいに興味があるんだもん」

瞳をキラキラと輝かせて憂が言う。
こう身を乗り出して断言されると拒絶することも出来ない。
鬱は困りながら妹に聞いてみた。

「ねえ、お母さんのじゃダメなの?」
「あたしはおねーちゃんのがいいの。ダメ?」

上目遣いで懇願される。
こんな憂のお願い攻撃に正面から逆らえる鬱ではなかった。

「ダメじゃ……ないけど……」
「うれしっ。やっぱりあたしのおねーちゃんだ」
「もう、あまえんぼなんだから、憂は……」

困ったような口調でありながら、表情は少し嬉しそうにして、鬱は自らの上着に手をかけた。
ぷちぷちとブラウスのボタンを外して行く。
興味津々の妹の目の前で上半身をブラジャーだけにすると、几帳面な彼女は丁寧に服を畳み始めた。

「ねっ、おねーちゃん。ぷるん♪ってやってみてよ。あたし、あれがみたいな」

待ちきれなさそうに憂がおねだりする。
たとえ妹の前だろうと下着姿になるのは恥ずかしい行為に他ならないのだが、無垢な憂のお願いの前には鬱も無力な存在だった。

「はいはい、わかったから」
「わーい」

憂は手放しで喜んでいる。
彼女にとって、姉のふくらみは自分にはないおもちゃでしかない。
悪意もなく、加えてその意味を理解してないと承知する鬱は、妹をたしなめる気にもならずに、喜んでくれる憂に素直に応えようとした。

「じゃあ、するからよく見てて……」
「う、うん……」

まるで儀式。
他人から見れば下らないことであったとしても、憂は真剣に姉の胸元を凝視する。

――ぷるん♪

ブラジャーからこぼれた可愛らしい胸が、憂の目の前で揺れた。
それは本当に微かな揺れ。
しかし、ブラジャーすらまだの憂とは雲泥の差だった。

「うわぁ……」

感嘆の声が漏れる。
しかし、憂にとっては感動の一瞬でも、鬱にとっては恥ずかしいだけでしかない。
慌てて手で胸元を隠すと、憂に向かって言った。

「も、もうこれでいいでしょ?」
「う、うん、ぷるん♪はこれでいいや。ありがと、おねーちゃん」
「じゃ、じゃあ……」

これ幸いとばかりに余った左手で畳んだブラウスを取ろうとする。
が、そんな鬱を見咎めて憂が言った。

「あ、待ってよおねーちゃん。まだ触らせてもらってないよ」
「……やっぱり触らないとダメ?」
「もっちろん!」

憂は胸を張って答える。
ぷるん♪を見ただけで満足して、次のことは忘れてしまっただろうという鬱の儚い願いは、木っ端微塵に打ち砕かれた。

「そう……触られるとちょっと痛いんだけど……」
「えっ、ホントなの?」
「うん。膨らみ始めは痛いって、先生に習わなかった?」
「うー、おっぱい出てきた子は、たまにそーゆー話をする」

さも悔しそうに唇を噛みながら憂は答えた。
同じクラスの女の子と比較して自分の発育が劣っていることを知らされるのは、負けん気の強い憂には結構堪える。
しかも自分の努力ではどうしようもない問題なだけに尚更だった。

「ごめんね、憂……。でもね、憂だってきっとすぐおっきくなるわよ」
「……そうかなぁ?」
「そうそう。ほら、憂のお姉ちゃんの私だって、ちゃんと膨らんできてるんだから」

そう言って鬱は胸を隠していた腕を下ろし、更に上にずり上げられていたブラジャーを完全に取り去った。
そして憂に向かって見せつけるようにする。

「おねーちゃんのおっぱいだ……」

そのままむしゃぶりつかんばかりに顔を近づけて、憂は食い入るように見ていた。
見られているのが恥ずかしいのか顔を真っ赤にしながらも、鬱は冷静さを装って妹に訊ねる。

「ちゃんと膨らんでるでしょ?」
「うん……」
「憂のおっぱいも、お姉ちゃんに見せてみて。確認してあげるから」
「うん、わかった」

憂は姉に言われるがままに、少々無造作にタンクトップを脱ぎ捨てた。
まだ幼さを拭いきれない上半身が鬱の前に晒される。

「ほら、脱いだらちゃんと畳んで」
「あ、うん」

几帳面な姉との違いがこんなところにも現れている。
憂は注意されるとすぐにタンクトップを拾い上げて畳んだ。

「はい、これでいいでしょ?」
「よくできました」

とても丁寧とは言い難かったが、言いつけ通り服を畳んだ憂に対して、鬱はその頭を撫でてあげる。
憂は姉の手を、まるで子犬のように嬉しそうに受け止めていた。

「じゃあ、ちょっと見せてみてくれる?」
「うん」

そう言われて、憂は恥ずかしげもなく姉の前に自分の胸を晒した。
鬱はそんな妹の可愛い胸を、暫しじっと見つめる。

「……ど、どうかな、おねーちゃん?」

恐る恐る訊ねる。
そんな憂に、鬱は笑顔で答えた。

「うん、ちゃんと膨らんできてる」
「えっ、ホント!?」
「本当よ。ほら、ここ……」

鬱は手を伸ばし、指先を憂の桜色の先端にそっと宛がう。

「あ……」

触れた指先の感触に小さく声をあげる。
そんな妹の可愛らしい反応を微笑ましく見ながら、鬱は優しい声で憂に教えてあげた。

「ほら見て。先っぽのとこ、尖ってるでしょ?」
「そ、そおかなぁ?」

自分の成長に自信の持てない憂は、姉の言葉にも半信半疑なリアクションを返す。
鬱はそんな上目遣いの憂を笑って教え諭した。

「横から見たら一目瞭然よ。憂のおっぱい、真っ平らじゃないから」
「うー、自分じゃよくわからないよお」
「じゃあ、鏡で見てみる?」

鬱の言葉に一瞬だけ考える様子を見せた憂だったが、すぐに首を左右に振って断った。

「……ううん、別にいい」
「そう……でもどうして?」
「鏡っておかーさんの鏡台の鏡でしょ?」
「うん、そうだけど……」

うなずいて答える鬱に対して、憂は悲しそうな顔をして言った。

「だったらいい。おかーさんの部屋、嫌いだもん」
「憂……」

鬱は妹がそう言う理由を知っている。
表面的には少しだけ厳しすぎるごく普通の母親で、テストの点が悪いと娘のことを叱るくらいだった。
しかし、まるで鬱が自分の母親であるかのように、憂は両親に甘えない。
憂が親に甘えるのは、中学生の鬱にはどうしようもならない、金銭的な問題についてだけだった。

「あたしはおねーちゃんが好き。いちばん好き」
「……うん」

このまま黙っていれば、きっと鬱は憂をたしなめただろう。
そんなこと言うんじゃない、と。
それを知ってか、憂は先んじてそう言った。
鬱はそんな妹の言葉を拒めない。
憂が心から両親を愛せずにいる理由を、彼女はよく知っていたから。

妹は演技が上手だった。
だから姉の鬱以外、誰も彼女が両親を嫌っていることを知らない。
むしろ鬱よりも憂の方が、両親に甘えているように周囲には映るだろう。
一方、姉は演技が下手だった。
いや、下手と言うよりも出来ないと言う方が正しい。
だから彼女は出来のいい娘になる。
非の打ちどころのない子供になるということは、親に立ち入る余地を与えないと言うこと。
結果、彼女は孤独になったが、彼女にとっては孤独である方がまだマシだった。

憂鬱の名を冠せられた姉妹は、一見正反対のように見え、実は非常に似通っている。
二人とも言葉で語る以上にこの名前に傷つけられ、憎んでいた。
忌まわしい名がつけられた原因は、彼女達の両親以外にはない。
だから、恨んで然るべきだった。

「おねーちゃんが見てくれたんだもん。あたしはそれを信じるよ。だから鏡で見なくってもいい」

両親は信じられない。
たとえ生活が優しさに満ちていたとしても、根底で姉妹を裏切っていた。
だから両親に溶け込んでいる振りをしながらも、結局家族の中で頼れるのは姉であり、妹でしかない。
それが二人にとっての、暗黙の了解だった。

「……うん、わかった」

口に出しては説明しない。
しかし、この『わかった』には沢山の想いが詰まっている。
こんな『わかった』を繰り返す度、姉妹の絆は深まって行った。

「じゃあ、もっと説明して。あたしのおっぱいについて」
「うんうん。ほんの少しだけど、ちょんってとんがってるでしょ? これが、おっぱいの種みたいなものなの」
「ふうん……こんなのが?」

半信半疑の声。
しかし、さっきとは違い、信じる気持ちが膨らんでいる。

「だから、おっぱいの種、なの。種はちっちゃいでしょう?」
「うん。そう言えばそうだね」
「おっぱいって言うには全然だけど、これが少しずつ少しずつおっきくなって、そしておっぱいになるの。わかった?」
「わかった」

ようやく笑みを見せる。
鬱の説明はなんとか憂に受け入れてもらえた。

「あと1年もすれば、このかわいいおっぱいの赤ちゃんも、私のと同じくらいになるわよ」
「えーっ、ホントに!?」
「本当に。凄いじゃない、憂。お姉ちゃんよりも成長が早いわよ」
「えっへん♪」

憂は姉の誉め言葉を鵜呑みにすると、誇らしげに大きく胸を張る。
胸の大きさなどに全く価値を見出していない鬱は、ただ妹の笑顔に喜びを感じていた。

「もしかしたらお向かいのお姉さんよりもおっきくなるかもしれないわね」
「えへへー、そうかな?」
「うんうん」
「あたし、キョニュウになる?」
「巨乳巨乳」

鬱は更に憂を調子づかせる。
調子に乗るのはあまりいいことだとは言えないが、彼女は元気な妹が一番好きだった。
笑っていれば、辛いことを考えずに済む。
鬱が笑えるのは唯一、憂がはしゃいでいる姿を見る時だけだった。

「じゃあ、おねーちゃんもキョニュウだ。ぼぼーんってなるんだね」
「そうかな? きっと憂の方が凄いわよ。それに、私はおっぱいなんておっきくなくてもいいんだし……」

鬱が勢いに任せてそう言うと、憂はいきなり顔をしかめてたしなめた。

「ダメだよ、おねーちゃん。おねーちゃんはあたしのおねーちゃんなんだからっ」
「えっ?」
「あたしにとっておねーちゃんは理想のオンナなんだよ。やさしいし美人だし……だからおっぱいもおっきくなくちゃダメ!」

憂は腕組みして言い張る。
上半身が裸なせいか、そのか細さが妙に強調されて滑稽な仕草になっていた。
しかし憂の眼差しは真剣そのもので、鬱は軽く笑い飛ばすことも出来ない。

「うーん……でも、こればっかりはお姉ちゃんにはどうしようもないことだから。あと何年かしたら、結果がわかると思うけど」
「ちぇっ、なんだかもどかしいなー」
「我慢して。憂の気持ちもよくわかるけど」
「……そだね。我慢する」

憂は諭されてしぶしぶと引き下がった。
その元気のない様子が鬱には気になったのか、彼女は妹に向かってこう申し出ることにした。

「……憂、ちょっと……」
「ん、なに、おねーちゃん?」
「よかったら……お姉ちゃんのおっぱい、触ってくれる?」

そう言って、鬱はそっと胸を突き出す。
恥ずかしさを押し殺して、憂にお願いした。

「えっ、でも、触ると痛いんじゃ……?」
「ちょっとだったら平気。それに、憂は聞いたことない?」
「何を?」

憂は小首を傾げる。
そんな彼女に鬱は優しく微笑みながら教えた。

「おっぱいはね、触ってもらうと早くおっきくなるって」
「えー、そんなの聞いたことないよ」
「なら、覚えておくといいわね。そういうことらしいの」
「へえ……」
「だから、ね。お姉ちゃんのおっぱいにおっきくなって欲しかったら……」
「あたしがいっぱい触ってあげる!」

憂が元気に申し出る。
鬱はそんな妹の姿をにこにこしながら見守っていた。

「ありがと。じゃあ、憂にお願いしちゃおうかな」
「うん、お願いされちゃうね。おねーちゃんのおっぱいはあたしに任せてよ!」
「頼んだわね」
「よーし、がんばるぞー!」

意気揚々と拳をあげる。
そして憂は目の前にある姉の膨らみに両手を近付けた。

「……優しく……お願いね……」
「わかってるって」

憂は膨らみ始めの胸の繊細さを知らない。
そのことが鬱を不安にさせ、彼女は身体を強張らせながら妹の手を待った。

「……くっ」

おずおずと憂の手が触れる。
優しくとは言ってもどのくらい優しくしたらいいのかわかっていない憂の指先が鬱の小さな膨らみに沈む瞬間、彼女は軽く声をあげた。

「あっ、い、痛かった?」
「ううん、全然。もう少しちゃんと触っても平気よ」

笑ってそう答える。
結局、鬱の不安は杞憂に終わった。
まだ硬さが残っているものの、痛みと呼べるほどの痛みを感じるほどではない。
鬱はほっとして、少しだけ身体の緊張を解いた。

「じゃ、じゃあもうちょっと強くするね」
「うん、お願い……」

鬱に促されて、憂は両の掌に膨らみを包み込んだ。
そして軽くやわやわと揉んでみる。
鬱は顔を真っ赤にしながら、妹の行為を黙って見守っていた。

「こ、こんなんでいいかな?」

少しして、憂が手の動きを止めて顔を上げた。
鬱の緊張が膨らみを通して憂にも伝わったのか、僅かに声が震えている。
しかし今の鬱には姉としての余裕を見せることなど出来ない。
妹以上に震えながら、鬱は小さくうなずいて答えた。

「う、うん……」
「じゃあ、もうちょっと続けるね」

憂が行為を再開する。
これが愛撫に相当する行為であるとは知らないながらも、密やかな空気が部屋を包み始めていた。

「んっ……」

鬱が小さく声をあげる。
が、先程のような不安による声と同じではない。
鬱は妹と違い中学生だ。
保健体育の授業で女の先生に色々聞いているし、恋愛に絡んだ女の子だけの下世話な噂話も耳に入って来たりする。
だから、彼女はこれが何なのか知識として知っている。
が、身体で知るのは、これが初めての経験だった。

「おねーちゃん?」

また、憂が顔を上げる。
鬱は顔を真っ赤に染めたまま、首を左右に振った。

「……続けて」
「う、うん……」

決して快楽を求めてのものではない。
少なくとも、鬱の倫理観は快楽を否定している。
ただ、妹を喜ばせるため。
それだけのはずだった。
しかし、憂は戸惑いを感じている。
憂は何も知らない。
本能が違和感を感じさせながらも、憂は姉の言葉に従って指先を動かし始めた。

「…………」
「……お、おねーちゃん?」
「……なに、憂?」
「なんだかね、ここ……」

そう言って憂は手を離す。
そしておもむろに鬱の桜色の先端を指先で突ついた。

「んっっ!」
「えっ、あ、あの……何だかおっきくなってきたなーって思ったんだけど……」

憂は思わぬ姉の反応に驚きながらもそう告げる。
鬱は妹の言葉の中に不安を感じ取って、慌てて説明した。

「ちょ、ちょっとびっくりしただけ。平気だから」
「うん、それならいいんだけど……」

そう言って、憂は何気に指先でつんつんと弄ぶ。
その度に鬱の膨らみを小さく揺らしたが、彼女は手をきゅっと握り締めて堪えた。
そんな姉の様子に気付かない憂は、ただ胸の動きにだけ気付いて楽しそうな声をあげる。

「あは、ぷるぷるしてる。おもしろーい」
「こ、こら、憂……」

自分の敏感な先端を弄ぶ憂をたしなめた鬱だったが、妹が喜んでいる以上、厳しく言うことが出来ない。
彼女に出来ることは、ただ声をあげないように我慢することだけだった。

「やっぱりおねーちゃんの言う通りだったね。ほら、ぷるぷる〜」

硬くなり始めた鬱の乳首を指ではじく憂。
それに合わせてぷるぷるする様に興じていた。

「先っぽもオトナのおっぱいになってきてるよ。あたしのとは色が違うもん」
「…………」

鬱は声が出せずにいる。
充血した先端は色だけではなく、大きさも変えていた。
憂はそれこそが大人のおっぱいの証だと思い込んだのか、思い切り顔を近付けてきた。

「これ、吸ってみたらミルクが出たりして」
「ちょ、ちょっと憂!」

おもむろに先端を口に含むと、憂は軽く吸い上げた。
無論、彼女にとってはほんの冗談でしかない。
いくら知識がなくとも赤ちゃんのいる女性しか母乳が出せないことくらい、憂だって知っている。
しかし、憂の知識はその程度のものしかなかった。

「あっ、ああんっ!」

結果、鬱は妹の前で、女の声を上げてしまった。
鬱ももちろん初めてのことだ。
それだけに、彼女に言葉に出来ない不安が襲い掛かる。

「えっ、あ、あの……おねーちゃん? どうしたの?」
「なっ、なんでもないから。ちょっとびっくりしただけ。もう、いきなりそんなことしないでよね」
「ごめーん。冗談のつもりだったんだけど……」

軽くぺろっと舌を出して見せる。
憂は女の喘ぎ声など聞いたことがない。
だから当然その意味を知らない。
鬱はそれを妹に気付かれぬよう、熱い吐息をしながら心と身体を落ち着けようとした。

「じゃあ、もうこれくらいでいいわね……」

そう言って逃げるように脱いだ下着に手を伸ばす。
鬱はこれ以上何かされたら、自分が自分でなくなるような気がして不安だったのだ。
が、憂はそんな姉の押し隠した不安など知らない。
そんな彼女の無知は、意図しない残酷さを生み出そうとしていた。

「あ、ちょっと待って、おねーちゃん」
「えっ? まだ何かあるの、憂?」

鬱はブラジャーに触れる直前に、その手を止めた。
珍しく恥ずかしそうにしながら、憂がおずおずと姉に申し出る。

「あ、あのね、その……」
「いいわよ、何を言っても怒らないから」
「う、うん……その、あのね、バカにしちゃイヤだよ」
「馬鹿になんてしないから。言ってみて」
「……おねーちゃんのおっぱい、少しだけちゅっちゅさせてもらっても、いい?」

上目遣いのお願い。
それは憂が姉に甘える時の、いつもの仕種だった。

「ちゅっちゅって……吸ったって、お姉ちゃんのおっぱいはミルクなんて出ないわよ」
「あ、あたしだってそれくらいしってるよお」
「ならどうして……」
「おねーちゃんにね、甘えたいの」
「憂……」

鬱は言葉を飲んだ。
妹の言葉が何を意味しているのか、彼女にはよくわかっていたからだ。

憂は母親に甘えたことがない。
姉の鬱に対する甘え方は、母親と父親、そして姉の全てを内包していたが、鬱の身体は結局姉としてのものでしかない。
飛びついて頬擦りしたり、髪の毛を梳かしてもらったりはするけれど、それ以上のものは求めても無意味だった。
が、憂は姉の中に大人の女性を見出す。
それは彼女にとって、母親の姿に他ならなかった。

「えへへ、やっぱりダメだよね。おかしいってわかってるし――」
「いいわよ、甘えても……」

現実を考え自ら否定しようとした憂の言葉を遮って、鬱が妹を受け入れた。
今ここで妹に真に母親としての自分を求められて、それに応えられることを知った彼女に、憂のお願いを拒めるはずがなかった。

「おねーちゃん……」
「はい、ちゅっちゅして。そのくらい、お姉ちゃん気にしないから」
「う、うん……ありがと、おねーちゃん」

そう言って、憂は自分に向けられた大人に近い姉の膨らみにゆっくりと顔を近付ける。

「おねーちゃんのおっぱいだあ……」

ふわっと頬を寄せる。
憂のツインテールが鬱の素肌をくすぐったが、彼女は気にせず妹をそっと抱き寄せた。

「いくらでも、甘えていいのよ、憂……」
「うん」

憂が姉に応えるように両腕を背中に回す。
そして感触を確かめるように撫で回した。

「うわあ、おねーちゃんの背中、すべすべだあ……」
「憂のもすべすべよ」

同じように妹の背中を掌で撫でる。
憂は背中をさすられて頬を綻ばせると、近くにあった鬱の膨らみを舐めてみた。

「うふふ、おねーちゃんのおっぱい、ぷにぷに……」
「いくらでも、ぷにぷにしていいからね」

動物のようにぺろぺろと鬱の真っ白な膨らみを舐めて行く。

「おねーちゃあん……」

甘える声を出しながら、舐めたり頬擦りしたり。
鬱もそれに応えるように妹の頭に顔を埋め、頬擦りしていた。
しばらく二人ともそんな行為を繰り返していたが、憂はそれにも飽きたのか、柔らかくなっていた鬱の先端を唇に挟んだ。

「あっ……」

驚いて声をあげる。
が、それ以上は飲み込んだ。
憂も姉の驚きが治まるのを待ってから、ゆっくりとちゅっちゅし始めた。

「ん……」

膨らみ自体を舐められていた時にはさして感じていなかった鬱だが、優しく乳首を吸われると感じてふるふると震えてしまう。
鬱は気を紛らわせようと妹の背中を撫で回し、声を出さないように我慢していた。

「憂……憂……」

愛しい妹の名を呼ぶ。
本人は信じていない憂という名の由来だったが、鬱は密かにそれに憧れていた。
自分の名前はともかく、鬱は妹の名前をいい名前だと思っている。
妹には沢山の人と交わって、優しい女の子になって欲しい。
それが姉の自分には決して真似が出来ないからこその、鬱の強い願望だった。

「んふっ……ちゅっ……ちゅぱ……」

憂は熱心に鬱の乳首を吸い上げている。
抱き締めながら熱心に背中を撫でてくれる姉の様子を肌で感じながら、精一杯甘えさせてくれようとする鬱に応えようとしていた。

「ふっ……おねーちゃんの……ちゅっ、おっぱいが……ちゅうっ、おっきくなあれ……」

すっかり硬さを取り戻した先端を吸い上げながら、憂は合間合間におまじないのように唱えていた。
それは彼女に出来る精一杯の優しさ。
誰よりも憂の優しさを感じられる鬱は、漏れ聞こえる妹の呟きに合わせて唱え始めた。

「憂が……大きくなったら……あんっ! 今よりもっと……優しくなあれっっ……」

母親の喜び。
この喜びをよくないものだと考えることなど、今の鬱には無理な話だった。
未成熟な乳首からストレートに伝わる愛情は、彼女の知らなかった不思議な快感を与えて行く。

「ちゅううっ……おねーちゃんん……ちゅぷっ……だいすきだよお……」

憂は硬くなった鬱の乳首に応えるかのように、無意識のうちに吸い上げる力を強める。
そしてぷにっとした唇で時折しごきあげながら、舌先で癒すように転がした。

「ああっ、だめっ、憂……」

ぐっと力が入る。
鬱は太ももをすり合わせながら、妹の責めを凌ごうとしていた。

「おねーちゃんっ、おねーちゃん……」

想いが溢れて、憂はそのまま鬱の身体を後ろに押し倒す。
そして上にのしかかりながら、胸全体にむしゃぶりついた。

「やっ、だめ、あうっっ! お、落ち着いて……んふっ、ゆうっ……」

しかし、憂は冷静さを欠いている。
自分の行為が姉に与えている影響などに気が回るはずもなかった。

「ちゅっ、ちゅぱっ、んんっ、おねーちゃあん……」
「ゆう……すき……んあっ!」

鬱も無意識のうちに両脚を憂に絡めていた。
本能が求めるままに身体を刺激してもっと高めようとする。

「ゆう……ゆうっっ……」
「んっ、んんんっ……」

妹の背中を撫で回していた鬱の手が行き場を失い、そのまま下に降ろされて小さなお尻を揉みしだく。
憂はおろか鬱もその偶然の行為自体に意味を感じていなかったが、憂の興奮を更に煽ったことは事実で、鼻にかかった幼い喘ぎを漏らしていた。

「んっ、おねーちゃん……んあっ……」

憂は不思議な感覚に囚われながら、姉にも同じことを返そうと鬱のスカートの中に手を差し入れる。
既に鬱は憂の細い腰に両脚を回しながら、熱を帯びて疼く秘所を憂にすりつけていた。
そんなところに憂の指が与えられる。
鬱は思わず快感に打ち震えた。

「んんんっっ!!」

憂の指に鬱が押し付けられる。
鬱は左手を憂の間に滑り込ませながら、右手では一心不乱にお尻を揉んだ。

「やっ、あん! おねーちゃ……んうっっ!!」

強引に憂の幼い性感が引き出される。
同じ音色をした姉妹の声が、狭い部屋いっぱいに響き渡った。

「ああっ、ゆうっ、すき、だいすき……ああん……」

既に憂の指先は鬱の熱いところを慰めている。
鬱も下着越しに憂の形をはっきりと感じていた。
二人ともまだ、自分の女を慰めることを知らない。
それ故に相手の行為がもどかしく、助けるように自然と自分の腰を動かしていた。

「あんっ! おねー……うあっっ……やっ……へ、へん……あついよお……っっ」

憂はこれが何なのかわからぬままに腰を小刻みに動かし、熱病に駆られたように喘ぎを漏らした。

「あっ……ご……ごめんね……ゆうぅ……あんんっ! わたしっ……あうっっ!!」

鬱はこれが何なのか、知識では知っている。
しかし身体で感じるのは初めてだった。
彼女は妹が訳もわからぬままに幼い喘ぎを漏らしていることを申し訳なく思っていたが、それでも身体は言うことを聞かず、刺激をより求めていた。

「んんんっ!! おねーちゃんんっ、おかしいよお……んくっ!」
「あんっ、ごめん、んんっ、ゆうっ……ごめんね……あんっ!」

鬱は繰り返し謝りながら、妹を責め続ける。
そして妹の指をパンティ越しにしっとりと濡らしながら、中では熱く僅かに花開き始めていた。

「やっ、だめっ、もううっ!!」

中途半端な妹の刺激に耐えかね、鬱は指を自分の秘所へと移動させる。
そして下着の隙間から指を差し入れると、最も疼いていた部分をぐいっと押し付けた。

「あっ、ああああっっ!! ああぁぁーーっっ!!」

満たされないものが一気に満たされて、鬱は歓喜の叫びを上げる。
そして激しく打ち震えながら頂点へと昇りつめて行った。

「お、おねーちゃん……?」
「はぁっ、はぁっ……」

不思議そうな妹をよそに、鬱は全身で息をしている。
身体はまだ火がついたままだったが、それでもピークは過ぎ去っている。
驚いた憂が手を離して刺激が与えられなくなったこともあって、呼吸するたびに鬱は冷静さを取り戻して行った。

「おねーちゃん、平気? あたし……」
「へ、平気だから……それよりも……ごめんね、憂。こんな……」
「な、何だかよくわからないけど。でも、すっごく気持ちよかったよ」

鬱の言葉で取り敢えず安堵したのか、憂は屈託ない笑みを浮かべる。
だが、ついさっきまで鬱が与え続けていた性的な刺激によって顔は真っ赤で、息も荒かった。
何も知らなかった妹にこんなことをしてしまったことで、鬱の中に一気に自責の念が湧き起こる。

「ごめん、ごめんね……」
「だからどうしてさっきから謝ってるの? あたしは気持ちよかったって言ってるのに……」
「これはね……この気持ちいいのはいけないことだからなのよ、憂」

鬱は目を伏せてそう言った。
が、知識のない憂には全く伝わらない。

「いけないことって……よくわかんないよ。ちゃんと説明して」
「そ、それは……」
「あたしは気持ちいいの、好きだよ。だからどうしていけないかちゃんと説明してくれないと、あたしはいけなくてもまた気持ちよくなっちゃうんだから」

そう言って憂は自分の下半身に手を伸ばした。
憂のしましまのパンティはそこのところだけ僅かに色が変わり、中が濡れていることを示している。
それに気付いた鬱は、慌てて憂の手首を掴んでやめさせた。

「駄目っ!!」
「……じゃあ、説明してくれるよね?」

憂はにんまりと笑って見せる。
これは全て、彼女の仕掛けた罠だったのだ。
妹の表情を見て鬱はすぐに気がついたがもう既に手遅れ。
どっちみち彼女は妹に説明せざるを得ない状況だった。

「……わかったわ。じゃあ説明してあげる」
「うん」

憂は好奇心いっぱいの瞳で鬱の言葉を待ち構えている。
そんな妹の様子に小さくため息をついてから、鬱は説明を始めた。

「憂は……もちろんどうやって子供が産まれて来るか、知ってるわよね?」
「うん。おかーさんのお腹から産まれて来るの」
「そうね、正解よ」

そう言いながら、思っていた以上に憂が何も知らないことを鬱は心の中で嘆いていた。
実際、鬱だって保健体育の授業で教えてもらったことを除けば、知識の量など憂と大して変わらない。
それなのに、かなりきわどいことに至るまで、一気に妹に性教育を施さねばならないのだ。
これではため息のひとつもつきたくなって当然だった。

「じゃあ、そのもっと前はどうなのか知ってる?」
「うーん……ちょっとだけ」

そう言って憂は可愛く頬を染めた。
憂も全く知らない訳ではない。
そんな妹の反応を見て、鬱は少しだけ安堵した。

「ちょっとってどのくらい? お姉ちゃんに教えてみて」
「え、えーっと……あのね、せっくすっていうのをして、それで出来るの……」

もじもじとしながら、かなり恥ずかしそうに憂は答えた。

「うんうん、それも正解。偉いわね、憂」
「えへへ……」

鬱に誉められて少しだけ照れる憂。
生理の始まった女の子同士だけでこそこそと話されるのを盗み聞きして得た知識なだけにかなり気まずかった憂だが、手放しで姉に誉められて少しだけ気を落ち着かせた。

「じゃあ、その……セックスは、どうやってするのか……知ってる?」
「……ううん、よく知らない。みんなあたしが子供だからって教えてくれないんだ」

憂は正直に告白した。
セックスが大人だけの秘密だという事実が、彼女を悔しがらせていた。

「もしかしておねーちゃん、せっくすってどうやってするのか知ってるの!?」
「え、ええ、まあ……」
「だったら教えて! あたし、すっごく知りたいんだ!」
「う、うん……」

鬱は気まずそうに返事をする。
その恥ずかしさを知る彼女にはあまり細かく説明したいことではない。
無知ゆえの憂の強烈な好奇心には鬱もたじたじだった。
が、恥ずかしいからと言って隠している訳にもいかない。
正しい知識よりも性的な快感だけを先に教えてしまった鬱は、妹にちゃんと教え諭す必要に迫られていた。

「おねーちゃん、早く早くぅ!」

もう、躊躇してなどいられない。
急かす憂に追い立てられるように、鬱は重い口を開いた。

「あのね……えっと、女の子のここ――」

そう言って自分のパンティを指し示す。
薄いピンク色の下着は、さっき散々弄んで絶頂を迎えた結果がありありと見て取れる。
鬱は一気に恥ずかしさでいっぱいになったが、ここで中断させる方が却って不自然だと思ったのか、何も見なかった振りをして続けた。

「ここのおしっこの出る穴に、男の子のおちんちんを入れるの。それがセックス」
「へー。でもそれだけ?」
「取り敢えず、それだけよ」
「なーんだ、つまんないの。期待して損しちゃった」

かなり期待していたのか、憂は肩透かしを食ったようにそう言った。
これで妹の追及は逃れることが出来たのだが、それでは却って憂にとってよくない結果となる。
鬱は憂の姉として、もっと具体的に男女の性について教えてやらねばならなかった。

「そんな風に言わないでちゃんと聞いて、憂」
「う、うん……いいけど」
「憂はさっき気持ちよかったでしょ?」
「うん、気持ちよかった。なんだかよくわかんないけど」
「あれはね、セックスをしたときの気持ちよさなの」
「えー、でもおちんちんなんて入ってないよ」
「そ、そうね……」

鬱は困り果てていた。
実際、彼女自身よく知らないのだ。
いけないことだと極力耳にしないようにしてきたし、そんなことは自分にはまだ早すぎると興味も持っていなかった。
が、妹の憂が大人への第一歩を踏み始めた今、鬱がいつまでも子供でいる訳には行かない。
姉として教え諭す立場にいる以上、もっと自分の身体と男女の性について、正面から向き合う必要があった。
だから意を決して、鬱は自分に出来る限りの説明をしてあげようとする。

「でもね、おちんちんを入れるともっとずっと気持ちよくなるの」
「……ホントに?」
「本当よ」
「うーん……でもよくわかんないよ。おしっこの出る穴ってすっごくちっちゃいよ。あんなところにぷにゃっとしたおちんちんなんて絶対入らないって」
「ええと、それは……」

鬱も知識としては知っている。
男の子のおちんちんは興奮すると大きくなって勃起というものをするのだ、と。
彼女自身、同じクラスの男の子のそこが不自然に膨らんでいるところを目撃したことがある。
見てはいけないものだとその時は慌てて目を逸らした鬱だったが、今になってもっと見ておくべきだったと後悔していた。
が、これも後の祭。
憂に教えるべき鬱が大きく硬くなったおちんちんを詳しく知らない以上、自分に説明出来るところ……即ち女の子の穴の方を説明するしか手がなかった。

「……いいわ、じゃあ実際に、お姉ちゃんので教えてあげる……」
「うん、そうだね。それが一番わかりやすいだろうし」

何も知らない憂は気楽そのものだ。
しかし鬱に妹の無知を責めることなど出来ない。
鬱は仕方がないと腹をくくり、恥ずかしさを押し殺しながら憂に向かって言った。

「じゃあ、見やすいようにパンツを脱ぐから……」

鬱は両手をパンティのゴムに引っ掛け、ゆっくりと下に降ろして行く。
熱く蒸れた秘所が冷たい外気に触れ、ぶるっと小さく身を震わせた。

「あー、おねーちゃん恥ずかしいんだ。あたしと同じ。おもらししちゃってるよ」

突然憂がからかうように言う。
どうやら憂は自分が濡らしていたことを自覚していたらしい。
それをおもらしと称したのだが、ぐちゃぐちゃになっている鬱のパンティに初めて気がついて、同じくおもらしと呼んだ。

「こ、これは……」

鬱も自分が濡れていることなど百も承知だ。
これがセックスをする時のための潤滑液だということも当然知っている。
が、それは知識でしかない。
実際の愛液など、目にするのは生まれて初めてだった。
そしてこれは彼女自身が分泌したものでもある。
鬱は二重の感慨を覚えていた。

「これはね、憂。おしっこじゃないの」
「えっ、そうなの? じゃああたしもおもらしした訳じゃないんだ」
「そうよ。憂はさっきおちんちんなんて入る訳ないって言ったわね? これはおちんちんを入れるために必要なぬるぬるなの」
「へえー……確かになんだかおしっこと違うね」

憂はよく見ようと思って鬱のあそこに顔を近付ける。
先程彼女に絶頂を迎えさせたクリトリスが割れ目の端から小さくぴょこんと顔を覗かせており、そこにちょうど憂の吐く息がかかって、鬱は思わずぷるっと小さく震えた。
しかし憂は件のぬるぬるにしか意識が向いていなかったので、敏感になっている姉の様子にも気付かずにおもむろに指を伸ばした。

「んうっっ!!」
「えっ!? あ、あ……」

憂は訳もわからず慌てて手を引っ込める。
しかし、鬱の割れ目から無造作に掬い取られた愛液は、既にぬるぬると憂の指先にまとわりついていた。

「ご、ごめんなさいっ、おねーちゃん!」

憂がぺこっと頭を下げる。
鬱はそれを咎めるでもなく、赤い顔をしながら妹をなだめた。

「い、いいのよ、憂……ちょっと気持ちよくて声が出ちゃっただけなんだから」
「そ、そうなんだ。よかった。おねーちゃん、すっごい声出すんだもん。びっくりしちゃったよ」
「ごめんね、お姉ちゃん我慢できなかったから」
「じゃあ、これでおあいこだね」

そう言って憂はにこにこしている。
が、鬱はそんな風に笑ってもいられない。
恥ずかしいぬるぬるでいっぱいのピンクのパンティを中途半端に下ろしたままの状態で、憂の指先についた愛液について指摘した。

「ほら憂、ちゃんと指についてる」
「あ、ホントだ。確かにぬるぬるしてるねー」

憂は鬱から掬った愛液をぬるぬるとやってみせる。
鬱も妹と同じでこうして見るのは初めてだ。
しかし今は何でも知っている大人の女性を演じなければならない。
鬱は内心の驚きを隠しながら、憂にそのぬるぬるを説明することにした。

「ね、おしっこじゃないでしょ。セックスする時になると、出てくるものなのよ」
「なるほど……さすがはおねーちゃん、物知りだね」

そう言いながらも、憂はこの物珍しいぬるぬるが面白いのか、いつまでも指先で遊んでいた。
鬱は恥ずかしいから早くやめて欲しいのだが、今の憂にそんなことは言えない。
何とか妹の好奇心を逸らすため、鬱は次に移ろうと下着を完全に脱ぎ捨て、生まれたままの姿になった。

「憂、ぬるぬるはもういいからこっちを見て」
「あ、うん、おねーちゃん」

憂は注意を姉の方に戻す。
大事なところをぬるぬるにした姿を妹に見せるのは恥ずかしくてたまらなかったが、鬱は声を僅かに震わせながら憂に言った。

「さっきは見せてなかったからおしっこの穴って説明したけどね……実はそのぬるぬるもセックスの時におちんちんをいれるところも、おしっこの穴じゃないのよ」
「え、違うの?」
「そうよ。憂は自分のここ、ちゃんと見たことある?」
「ううん、ないよ」
「じゃあ、これがいい機会だから見ておくといいわ。お姉ちゃんと憂は姉妹だから、おんなじだしね」
「うん、わかった」

憂は素直に返事をして、また姉のあそこに顔を近付ける。
するとさっきと同じように憂の息が鬱のクリトリスにかかってぷるっと震えた。
しかし、至って真面目な生徒の憂は、全く気付かずに見たままの感想を述べる。

「……おねーちゃんのここ、ぬるぬるでいっぱいだね」
「そ、そうね。凄く気持ちよかったから」
「あたしのここもぱんつ脱いだらおんなじでぬるぬるかなあ?」
「多分ね。でも、自分のを見るのはお姉ちゃんの説明を受けてからよ」
「うん、わかってる」

憂は口ではそう応えながらも、ぬるぬるになった鬱の秘所を今にも手を出しそうな勢いで凝視している。
鬱は恥ずかしさでまた濡れて行く自分を、真っ赤な顔をしながら感じていた。

「あ、今ぴくって動いたよ」
「そ、そう……憂に見つめられて恥ずかしがってるのかな?」
「ふうん……かわいいね、これ」
「んっ、ありがと、憂」

笑ってお礼を言う鬱。
しかし、憂がしゃべる度にクリトリスに息がかかって、鬱は声をあげるのを堪えるので必死だった。

「どういたしまして。それよりおねーちゃん、ぬるぬるの穴ってどれ?」
「えっとね……」

実は鬱も自分の割れ目を開いて中を覗いたことがない。
無論、生理の時にはここを清潔にしなくてはいけないと教えられて以来、ナプキンを換える度に注意しては来た。
が、その時とは全く勝手が違う。
さっきいじったせいか少し赤く充血していたし、擦れると妙な気持ちにさせられるお豆が外に飛び出て大きくなっていた。
しかし、少しくらいいつもと違うからと言って、妹に説明しない訳にも行かない。
鬱はこの敏感なお豆に触れないように細心の注意を払って、ゆっくりと割れ目を左右に広げて見せた。

「……ど、どう? ちゃんと見えた?」
「う、うーん……よくわかんない。なんかぐちゃぐちゃで」
「そんなこと言わないでよく見て。ほら、おしっこの穴はここでしょ?」

そう言って鬱は反対の手を使っておしっこの穴を指し示す。
割れ目のぷにぷにしたお肉をぐっと押すだけで何だか変な気持ちになる鬱だったが、それを必死に堪えて憂に説明しようとしていた。

「あ、うん……このちっちゃいのがおしっこの穴?」
「そ、そうよ……でも、その少し下が……んっ、窪んでない?」
「言われてみればそうだね。これがおちんちんの入る穴?」
「……だ、大正解」
「でもここ、ふさがってるよ。ホントにこれが穴なの?」

憂は疑わしそうに首を傾げている。
ちょっと見えにくいのか、憂はくっつきそうなくらいに顔を近付けている。
そして鬱がおちんちんの入る穴を見せてあげるために割れ目をぐいっと広げているせいで、中の複雑で敏感なお肉に何度も憂の吐息が浴びせられた。
その度に真っ赤に充血したお肉がびくびくと動く。
鬱はぬるぬるを妹の顔に漏らさないかと気が気ではなかった。

「あ……穴よ、ちゃんとした。おちんちんはね、今ちょうど穴を塞いでるお肉を押し広げて……んんっ、中に入っていくの……」
「ああ、なるほどね」
「ああっ……だ、だから狭いから……んっ、このぬるぬるが必要なのよ……」
「うんうん。確かにこれだけぬるぬるしてれば、あんなおちんちんくらいするっと入っちゃうかもしれないね」

ひとしきり納得した憂は、いきなり指を近付けると、おもむろにひくひくしている鬱のおちんちんの穴にあてがった。

「ひっ、ああああっっ!!」

鬱は驚いて甲高い声をあげると、割れ目から手を滑らせた。
その結果、鬱の割れ目は憂の指先を挟んだ状態になった。

「えっ!?」

慌てて指を引っ込める憂。
が、それが鬱の割れ目をこすり上げ、思わず下半身にぐっと力を込めた。

「んっ、んんっ……」

鬱は妹の指で軽い絶頂を迎えてしまった。
そして力を込めたことで中に溜まったぬるぬるを押し出す結果となり……彼女が恐れていた通り、どろりとしたしぶきを憂の顔に浴びせてしまった。

「おねーちゃん……」

鬱はぷるぷると震えて余韻に浸っている。
しかし妹の声ですぐに現実に立ち返ると、慌てて謝った。

「ごっ、ごめん、憂!!」
「あっ、こんなの平気だよ。大好きなおねーちゃんのぬるぬるだもんね。それにおしっこと違っておねーちゃんのいい匂いがするし……」

そして憂は自分の言葉を裏付けるように、顔にかかったぬるぬるを指先で拭うと、そのまま口元に運んだ。

「待って、憂!」

鬱は慌てて止めようとする。
しかし間に合うはずもなく、憂は自分の指を舐めていた。

「んむ……なんだか不思議な味がするね……でも、あたしはちっともイヤじゃないよ」
「……そう……なの?」
「うん。ちょっと口では言い表せない味かな。おねーちゃんは舐めたことないの?」
「う、うん……そんなの考えたこともなかった」

鬱は心から驚いている。
愛液を見ることすら初めてだというのに、どうして舐めたことがあろうか。
しかしここに見える憂の笑顔は本物で、嫌なのを無理している顔ではない。
鬱はこの状態で、妹になんと言ってよいのかわからず、ぽかんとしていた。

「じゃあおねーちゃんも……って自分のを舐めるんじゃ同じじゃないよね。今度あたしのを舐めてみて」
「う、うん……」

いつのまにか、鬱は憂に圧倒されていた。
そんなぼーっとする姉を尻目に、憂は上目遣いで訊ねる。

「それよりもおねーちゃん……」
「な、なあに、憂?」
「今の、気持ちよかったんでしょ? だからぷしゅってぬるぬるが吹き出たんだよね?」
「え、ええ……」

鬱は認めてよいものか一瞬迷ったが、結局真実を告げることを選んだ。
そして戸惑った表情の姉に向かって、憂は上目遣いで訊ねた。

「だったらおねーちゃん、ぬるぬるの穴におちんちん入れてみたくなったの?」
「えっ?」
「だっておちんちん入れるともっと気持ちよくなるんでしょ?」
「う、うん……だけどおちんちんは男の子についてるものなのよ。憂も知ってるでしょ?」

鬱はそう言ってかわそうとした。
しかし、憂は無邪気に笑って答えた。

「しってるよお。でも、それっておちんちんじゃなきゃダメなのかなあ? あたしの指でもおねーちゃん、すっごく気持ちよさそうだったよ」
「そ、それは……」

鬱は当然まだおちんちんを入れられたことのない、れっきとした処女だ。
セックスでおちんちんを入れられた時の気持ちよさなど知っているはずもない。
しかし、自分や妹の指で初めての絶頂を知ってしまった。
生真面目な鬱だったが、気が狂うほどの快感をいきなり教えられて、興味が湧いて来ないはずがなかった。

「おちんちんの代わりに……あたしの指を入れてみたらどうかなあ?」
「えっ……?」
「多分だけど、すっごく気持ちいいと思うんだ。それに……」

そこまで言って、憂はいきなりもじもじし出す。

「どうしたの、憂?」
「う、うん、あのね……あたしも気持ちよくなりたい。おねーちゃんばっかりずるいよ」
「……わかった。確かにこれじゃ不公平だもんね」

妹の目の前で二度も絶頂を迎えてしまった。
その痴態は憂にどのように映ったのだろうと鬱は考える。
それはあまりに恥ずかしく……ケモノじみて見えた。
ふと、鬱は自分がおかしいのではないかと思ってしまう。
そんな時、比較すべき対象がそこにあった。
実の妹の、憂だ。

鬱にとって、セックスとは大人のすることであって、子供にとってはいけないことだという認識がある。
しかし、おちんちんを入れなければそれはただの気持ちいいじゃれ合いにしか過ぎない。
おちんちんをぬるぬるの穴に入れて、膣の中で射精をして初めてセックスになる。
そして精子が卵子と受精し、赤ちゃんが生まれるのだ。
鬱はまだ、そのことを憂に教えていない。
それを知って初めて、指で気持ちよくなっても許されると思った。

「でも、もうちょっとお勉強してからよ、憂」
「えー、勉強キライだよー」

勉強と聞くだけで拒否反応を示す。
鬱はそんな憂を軽く挑発して見せた。

「あらそう。じゃあ、どうやってセックスして、赤ちゃんが生まれるか、ちゃんと知らなくてもいいの?」
「だからぬるぬるの穴におちんちんを入れれば……」
「それだけじゃないの。おちんちんが入っても、それじゃあ気持ちよくなるだけでおしまい」
「そ、そうなんだ……」
「だからどうやったら赤ちゃんが出来るのか、知りたくない?」
「……知りたい」
「うんうん、じゃあ、教えるわね」

こうしてお勉強モードに入った鬱は、再び解説を始めた。

「おちんちんを入れてからしばらく気持ちよくなってるとね……」
「うん……」
「おちんちんの先っぽからおしっこみたいだけどおしっこじゃないのが出てくるの」
「ふうん……さっきのおねーちゃんのぬるぬるとおんなじ感じかなあ?」
「そうね。それを精子、って呼ぶの。これが赤ちゃんの素になるのよ」
「せいし、ね……うん、それはちょっと耳にしたことがある。らんし、っていうのと合体してどうとか……」

思い出すようにうなずきながら憂が呟く。
鬱はそんな妹を見守りながら、優しく誉めてあげた。

「そうそう、よく知ってるわね。精子が卵子と結びつくと、女の人はお母さんになるのよ」
「ニンシンするんだね?」
「正解。あとは10ヶ月経って、赤ちゃんが生まれてくるって感じかな」
「なるほど……うん、よくわかったよ、おねーちゃん」
「憂がちゃんとわかったなら、これでお勉強はおしまい。次は、ご褒美に憂を気持ちよくしてあげるね」
「わーい!」

憂はもろ手を上げて喜んでいる。
鬱はその様子に一抹の不安を覚えたが、今はこれで精一杯だと思い、気にしないことにした。

「じゃあ、ベッドの上に乗っかって。カーペットの上で寝転ぶと痛いでしょ?」
「はーい」

こうして二人は小さな憂の子供用ベッドの上に寝そべった。
鬱は妹の髪を優しく撫でさすりながら、ひとこと注意をする。

「今日のことは、お姉ちゃんと憂、二人だけの秘密ね」
「そうだね。なんだか恥ずかしいし」
「お姉ちゃんも。憂に見られててずっと恥ずかしかったんだから」
「えー、そうだったの? あたしはおねーちゃんに見られたって全然恥ずかしくないけど」
「ふふっ、ありがと。じゃあ、憂のぬるぬるの穴、ちゃんと確認してあげる……」

鬱はそう言って、体勢を180度入れ替えた。
そしてまずは下着の上からぽんぽんと軽く叩くように触ってみる。

「憂のここ、ちゃーんとぬるぬるで染みになってるわよ」
「えー、そのぱんつ、あたしのお気に入りなのになあ……」
「多分、ちゃんと洗えば落ちるわよ。お姉ちゃんのパンツと一緒に洗えばいいから」
「それもそうだね。洗ってもぬるぬるのままだったら困るけどー」

取り敢えず憂は安心した様子を見せる。
鬱はそんな妹を微笑ましく思いながら、憂に向かって呼びかける。

「じゃあ憂、もうパンツ取っちゃうわよ……」
「う、うん……お願い、おねーちゃん」

鬱は憂の許可を得て、パンティのゴムに手をかけた。
静かに静かに、下に降ろしていく。
憂の全てが鬱の目の前に晒されると、今までの仕返しとばかりにふっと息を吹きかけた。

「んんっ!! も、もお、おねーちゃん、くすぐったいよ」
「お姉ちゃんもずっと憂の息がかかってくすぐったかったんだから。これでおあいこよ」
「ぶー!」

憂は不満を露にする。
が、鬱は気にもとめずに膝の辺りまで下着を降ろした。

「ほらほら。憂のもちゃんとぬるぬるしてるわよ」
「そんなことおねーちゃんに言われなくたってわかってるもん。それよりちゃんと気持ちよくして」
「はいはい、わかったわよ」

そう言って鬱は妹の閉ざされた割れ目に手を近付ける。
実は憂には内緒だったが、鬱は内心ドキドキだった。
間近に割れ目を見ることは初めてだったし、しかもそこは自分と同じくぬるぬるしているのだ。

「んっ……」

鬱の指先が憂の柔らかい肉に触れる。
さっきと同じように、そっと左右に広げてみた。

「ど、どうかな、あたしの穴……おねーちゃんのと同じ?」
「うん……憂の穴、ちっちゃくてかわいいわよ。おちんちんが入りたいって言ってるみたい」
「へえー。おねーちゃんのも同じかな?」

そう言って憂はいきなり姉の割れ目のお肉に指をかけ、無造作に左右に割り開いた。
鬱は突然外気に晒されて、軽く悲鳴を上げる。

「きゃっ! ゆ、憂……いきなりはやめて」
「ごめーん。でもおねーちゃんのもかわいいよ。ひくひく動いておちんちんにおいでおいでしてるみたい」
「も、もう……」

困ったような声を出す。
が、この状態で憂に何を言っても始まらない。
鬱は諦めて、妹のあそこを観察することにした。

「憂のぬるぬるはどこからでてるのかなー♪」
「んっ、おねーちゃん……」

鬱は非難の声を無視して憂のピンク色のお肉を指先でなぞった。
憂の幼い割れ目は姉の攻撃に正しく反応し、じわっとぬるぬるを分泌した。

「うんうん、ここかなー?」
「あっ、んうっ!」

ひとしきりなぞると、今度は穴の周囲をぷにぷにと押してみる。
憂のお肉は弾力を持って鬱の指を押し返し、ぷるぷると震えて見せた。
見る見るうちに鬱の指は憂のぬるぬるでいっぱいになる。
鬱はそのぬるぬるをさっきの憂と同じように指先で弄び、ぬるぬるの度合いを確かめようとするかのように指と指の間に糸の架け橋を作ろうとしていた。

「あんっ、そんなことするなんてひどいよ……ならあたしもっ」

憂は反撃とばかりに鬱の割れ目を左右に押し開くと、おもむろにその中心に唇をつけた。

「ひうっっ!!」

鬱は思わず妙な声を発し、憂から完全に指を離してしまった。
姉の反応を聞いた憂は、調子に乗って舌を穴の入り口に押し込もうとする。

「んんんっっーー!」

鬱は処女膜ごと憂の舌に押し破られそうになって、悲鳴に近い喘ぎを漏らした。
それは痛みもあったが、既に二度も達している鬱はかなり感じやすくなっており、一概に苦しいだけではなくなっていた。

「んぷっ……ちょっとやりすぎちゃったかな? ごめんね、おねーちゃん。もう痛くしないよ」

そう言って憂は癒すようにぺろぺろと舐め回した。

「んあっ、ああん! ゆ、ゆうっ、ちょっと……あん!」
「おねーちゃんも気持ちよくなってばっかりじゃなく、ね。ぬるぬるの味とか、見なくていいの?」
「も、もうっ! んんっ!」

鬱も妹を制止するのは諦め、憂に倣って口をつけた。

「あんっ! おねーちゃん、き、気持ちいいよ……んっ、何だかすごい……」
「んっ……ちゅっ……ずずっ……ぷちゅ……」

鬱は啜るように音を立てて憂の中のお肉を舐めて行く。
憂は両脚をがくがくさせながら、姉が与えてくれる幼い性感に打ち震えていた。

「んん……ゆうのも……嫌じゃない……ちゅうっっ! うん……ゆうの匂いがして……ちゅぱ……」
「おっ、おねえっ……ちゃ……んんんっ!!」

鬱は憂のあそこを吸いながら、手をずらしてお尻を揉み始めた。
憂はもう放心状態で、姉のなすがままになっている。

「ちゃんと……んんっ、約束どおり……んぷっ……気持ちよくしてあげるからね……」

そして鬱は妹には説明しなかった場所に舌先を向ける。
ぴょこっと飛び出していたクリトリスは、かわいく色付いて、鬱の愛撫を待ち焦がれていた。

「ここがねっ……このお豆がね……あんっ、凄いんだからっ……ちゅっ!」
「やあああぁっっ!!」
「お姉ちゃんと憂の……二人だけの秘密……ちゅううっ!」
「おっ、おねえちゃんっ、だめっ、だめだよおっ! あたし、おかしくなっちゃう! んっ、んんんんっっーー!!」

憂は二人だけの秘密のお豆を鬱にきつく吸い上げられ、一気に頂点に昇りつめた。
全身をがくがくとさせながら甲高い声をひとしきりあげると、後はぐったりとして何も出来なくなってしまった。

「はあっ、はあっ……ひ、ひどいよ、おねーちゃん……んっ、やん、もうさわんなくていいからぁ」

憂には刺激が強すぎたのか、激しく息をつきながら鬱のことを責めた。
そんな妹の姿を見、鬱もようやく現実に戻る。

「うん……ごめんね、憂。もうこんなの、嫌よね……?」

実は鬱自身が嫌だと思っていた。
妹とはこんな関係ではいたくない。
今まで通りの姉妹関係でよかったのだ。
今、明らかに鬱は恐れている。
変えてしまった妹と、そして変わってしまった自分に対して……。
しかし、憂はそんな姉の発言を誤解したのか、慌てて否定して言った。

「そ、そんなことないよっ。あたし、ちゃんと気持ちよかったし……ただ思っていたよりずっとすごかったから……」
「憂は……憂は恐くないの?」
「恐いって何が?」
「だからその……気持ちよくなることが」

鬱は恥ずかしそうに告げた。
が、当の憂はあっけらかんとして答える。

「全然。あたしは恐くないよ。おねーちゃんは恐いの?」
「うん、少し……」
「大丈夫、恐くないよ。今のところ、おねーちゃんを気持ちよくさせるのは妹のあたしだけなんだしさ」
「そうだけど……憂はそれでいいの?」

鬱が不安そうに訊ねる。
まるで姉と妹が逆になったような感じだった。

「いいよ、あたしは。でもおねーちゃんがイヤだったら、これっきりにしてもいい」
「どうして?」
「だって、おねーちゃんがイヤなことはあたしもイヤだもん」

憂は笑ってそう言う。
それは鬱の大好きな笑顔。
いつも見ていたいと思った、その笑顔だった。

「憂……」
「笑ってよ、おねーちゃん。おねーちゃんの美人は、笑うと一番キレイなんだから」
「うん、うん……」
「笑ってウツなんてふっ飛ばしちゃえ! メガネを外して、それからいっぱい気持ちよくなれば、きっと人生もっと楽しくなるよ」
「って、それはちょっと違うと思うけど……」

行き過ぎた妹の発言に、困った顔をして笑って見せる。
しかし憂は懲りた様子もなく、にへっと笑って頭をかいた。

「えへへ、そうかなあ?」
「でも、憂の言うことにも一理あるわね」
「そうだよ。気持ちいいのはいいことだよ、おねーちゃん。また今度も舐めっこしようね」
「はいはい……」
「今回はついおちんちんの代わりに指を入れてみるのを忘れちゃったけど、次はちゃんと試してみるからね」
「もうっ、そういうのはいいからっ」

調子に乗る憂に対して、鬱は軽く拳を振り上げて見せる。
憂はそれから逃れるようにベッドの上から飛び降りると、裸のまま部屋を飛び出そうとした。

「やだよー。おねーちゃんので試してから、自分のもやってみるんだ」
「こらっ、裸のままだと風邪ひくわよっ!」

鬱も裸のまま妹を追いかける。
勢いで小さな胸がぷるんと揺れたが、気になるほどでもない。
結局姉の鬱も、妹を裸で追い掛け回すくらいにまだまだ子供だった。
しかし、そのちっちゃな膨らみが、大人になりかけの唯一の証。
鬱が言ったように妹の憂も、そのうち同じようにぷるぷる震わすようになるだろう。

今はただ、笑顔のままで。
姉妹の憂鬱は消えずとも、それは笑顔で覆い隠すことが出来る。
こうして萩尾家のドタバタは今日も尽きることがない。
母親が帰ってくる時間まであと少し。
それまでしばらくは、二人の賑やかな笑い声も消えずに続きそうだった。



おしまい


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