平凡な日常、平凡な人生。
おまけに顔も性格も平凡だと来てる。
平凡だから自分から焦ってどうこうすることもなく、静かに年齢だけ重ねていく。
よく、クラスの悪友からは「情熱のない奴」とか言われてた。
情けなく笑って返すだけだったけど、それはズバリ僕の性質を言い当てており……その度に淡い苦さを感じさせられる。
でも、妙なこともあったもんだ。
現実は全てを裏切り、いつも僕にドラマティックな何かを与え続けている。
その原因は――そう、元凶ははっきりしているんだ。
平凡な僕を平凡なままにさせておかないのは、あの、僕の妹だった。




きえないまぼろし

Written by Eiji Takashima





「ねえねえ、お兄ちゃん」

僕の妹、真菜が肩越しに身を乗り出してくる。
こういう切り出し方は、いつも僕に何かをねだる時のパターンだ。

「んー?」

僕は視線を漫画から離さずに、気のない返事で応対する。
鬱陶しいくらいの真菜には、これくらいで丁度いい。

「もう、ちょっとは真菜の相手もしてよ。お兄ちゃんってば漫画ばっかり見て〜」

見ずともわかる。
どうせほっぺたでも膨らましているんだろう。
いつの間に学習したのか、世間でかわいいと言われている仕種を最近するようになった。
そのことがまた、僕はあまりいい気分になれない。

「相手ってなぁ、お前も友達くらいいるだろうが。別に愛想のない僕に相手してもらわなくってもいいだろ?」
「そういう問題じゃないでしょ。お友達はお友達、お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん」
「だからなー、お兄ちゃんは今、非常に忙しい。だから大人しくお友達と遊んでてくれ。それにお母さんも出掛けてるから、長電話したってうるさく言われないだろ?」

長電話は女の子の趣味といってもいい。
真菜もそこのところは他の女の子達と同じだ。
お母さんがいる時はチェックが入るけど、いない時は好き放題だから真菜にとってもかなりの誘惑に違いなかった。
しかし――

「駄目だよ、お兄ちゃん。お母さんがいないからって安心してるようじゃまだまだだね」
「どうしてだよ?」
「真菜が怒られるのはね、お兄ちゃんのせいでもあるんだよ。お兄ちゃんも電話使ってくれれば別にちょっとくらい真菜が長電話してもわからないかもしれないけど……」
「それもそうだな」
「でしょ? お兄ちゃんが電話使わないから、全部真菜のせいになっちゃうんだから」
「まー、それは事実だからしょうがないだろ」
「って、違うでしょ! お母さんがいなくっても長電話したらすぐばれちゃうの!」
「あ、そっか。それもそうだな」
「もう〜」

真菜はどうしても相手をして欲しいらしい。
僕はあまり気乗りがしないけど、あまり放置し過ぎると手が付けられなくなる。
その前に何とかしようと思って、僕はようやく漫画をテーブルに置いた。

「で、どうしたらいいんだ?」
「やったぁ! やっぱりお兄ちゃん、優しいね」
「って、これのどこが優しいんだよ……」

これは心からの台詞だ。
いやいや付き合って優しいと言われては、みんながみんな優しい奴になってしまうだろう。

「お兄ちゃんは、優しいって言われるの、嫌?」
「嫌だ」
「どうして? ひねくれ者だね」
「うるさい。自分では優しいと思ってないのに優しいなんて言われても、普通はいい気分しないだろ?」
「そう? お世辞を言われたら喜ぶもんだと思うけど……」
「それは気付かない時。お世辞だってわかったらいい気持ちしないの」
「じゃあ、お世辞じゃなかったらいいの?」
「……あ、ああ」

ふと気付くと、真菜のようすが変わっている。
僕が妹に女を感じ始めてから、一体どのくらい経つだろう?
真菜もそんな僕を感じているだけに、尚更質が悪い。

「お兄ちゃんはね、優しいよ。これはお世辞じゃなくって、真菜の本気」
「……理由は?」

虚しい抵抗だと知りつつも、僕は抵抗を試みる。
これからの行く末が明白だから、そして僕は真菜の兄だから、そうしなくてはならなかった。

「優しいって、何かカタチが必要? 真菜はそう思わないけど……」
「へ、屁理屈を言うな。お前が認めても、僕は――」
「わかってる。真菜は悪い女の子だもんね。だからお兄ちゃんは真菜に冷たくしてくれてる。でもね、真菜はお兄ちゃんの考えてることくらいなら、み〜んなわかってるんだよ。だから言うの、お兄ちゃんは優しいって」

真菜の唇は僕の耳にくっつくくらいに接近していた。
まるで愛の言葉を囁くように静かに、しかししっかりとした口調で言う。
真菜は誰に似たのかかなり頑固な性格で、自分がこうと思ったら絶対に退かない。
そして結果として、いつも僕が押し切られることになる。

「でも、お兄ちゃん、今日は言わないんだね」
「……何を?」
「くっつくな、って」
「言ったら余計にくっつくだろ?」
「うん、大正解♪」

そう言って、真菜は僕の背中にぎゅっと抱き着いてきた。
さっきからベタベタと僕にくっついていたけれど、今度は押し付けるようにしてくる。

「……いい加減にしろよ、真菜」

僕は冷たく言う。
調子に乗った真菜を叱責するのは僕の役目だ。
たとえそれが、意味のないものだったとしても。

「真菜はその台詞を待ってたんだよ、お兄ちゃん」
「お前は僕に怒られたいのか?」
「うん」
「って、肯定するなよ」
「だって、お兄ちゃんの優しさの詰まった言葉だもん。うれしいよ」

真菜はニコニコしている。
どうしたらこの笑顔を止めさせることが出来るんだろう?
真菜にはいつも笑っていて欲しいけど、今は大人しくなって欲しい。

「真菜ね……」
「なんだ?」
「もう、痛がらないと思うよ」
「なっ!?」

僕の固く守っていたものが一瞬揺らぐ。
そして真菜はいつも、それを楽しそうに見ているんだ。

「この前はごめんね。真菜、あんなに痛いものだって思ってなかったから……」
「い、いや、悪いのは僕だ。だから――」
「だから、今度は二人で楽しもっ!」
「ち、違うっ!」

真菜は背中から両腕を僕の首に回している。
咄嗟に僕が振り向くと、真菜はその勢いを利用して僕の唇を奪った。

「やったぁ!」
「真菜っ!」
「えへへっ、お兄ちゃんの唇、う〜ばいっ!」
「ふ、ふざけるのもいい加減にしろよ……」

僕は慌てて手の甲でごしごしと唇を拭う。
真菜はそれを見て、唇を尖らせて責めてきた。

「あっ、お兄ちゃんそういうことする訳?」
「当たり前だ」
「どうしてよ?」
「キスはされるもんじゃない。するもんだ」
「ふ〜ん、なるほどね。じゃあ、する方ならいい訳?」
「ダメ」
「真菜の唇見て、キスしたくならない?」
「ならない。いい加減諦めろ。僕はお前を――」
「抱き締めてよ、お兄ちゃん。この前みたいに……」

真菜は僕の言葉を遮って言った。
抱き締めること――それがどういうことだか、二人ともわかっている。
真菜はもう子供じゃない。
既に大人だと言うことは、この僕が一番よく知っていた。

「お兄ちゃんが心配することはないよ。お母さんにもお父さんにも、他の誰にも絶対言わないから」
「……でも、僕が知ってる」
「真菜とそういうことするの、やっぱり許せない?」
「ああ」
「……真菜がお願いしても?」
「駄目だ」
「お兄ちゃんが抱いてくれないなら、他の男の子に抱かれちゃうよ」
「それがいい。それが自然なことだろ?」
「……やっぱりお兄ちゃん、優しい――」

真菜はいきなり僕の耳たぶを軽く噛んだ。
僕は驚いて軽く身体を震わせる。
真菜が感極まった時のスキンシップ的な行動には未だに馴れずにいた。

「ふふっ、か〜わいっ」
「や、やめろって」
「ごめんね、お詫びに舐めてあげる……」

そう言って、先程噛んだ部分をぺろぺろ舐めてくれる。
小動物みたいなノリは如何にも真菜らしい。

「い、いいって。痛かった訳じゃないから」
「ふ〜ん、ってことは感じちゃったんだ」
「違うっ!」
「いいなぁ、お兄ちゃんは耳でも感じられるんだぁ……真菜はまだお兄ちゃんに開発されてな――」
「しないぞ」
「もう、お願いする前に答えないでっ」
「単純すぎるんだよ、真菜は」

呆れて僕はそう言う。
そして油断した真菜の虚を衝いて、さりげなく腕を外すと立ち上がった。

「きゃっ!」
「もうお遊びはこれで終わりだ」
「もう……女の子はデリケートなんだから、もっと優しく扱ってよね」
「こ・れ・が、お前の兄の真の姿だ。わかったな。幻想は捨てて、同い年の彼氏でも見つけろよ」

最後に冷たく言い捨てると、真菜を残して自分の部屋に戻ることにした。
しょんぼりしている真菜を見ると、ちょっぴり申し訳ない気がする。
が、ここで甘やかしたら、絶対につけあがるのが目に見えていた。
僕は兄として、また同じ過ちを繰り返すことだけは、避けなくてはならなかったんだ。



「ったく、真菜の奴……」

自分の部屋のドアに鍵がついていたのは救いだった。
僕はきちんと鍵をかけた後、ベッドの上に仰向けになって独りぶつぶつと呟く。

「まだ中学生だぞ、中学生。それなのに何を血迷ったか妙に色気づいて……」

ただ色気づくだけなら、それはそれでいい。
しかし、真菜の場合は方向性が問題だった。

「畜生、僕だって男なんだよ。これが妹でなかったら……」

そう、妹でなかったらこれほど簡単なことはない。
求められるままに真菜を抱き、自分の全てを与えたかった。
いや、それだけじゃない。
恐らく求められる以前に真菜を激しく求めていただろう。
しかし、実際のところは僕はどこにでもいる高校生で、学校でも女の子にそういう目で見られたことなんてない。
だから女の子との恋愛は、肉体関係も含めた上で、僕の願望と言ってもよかった。

「真菜……」
「お兄ちゃんっ」
「なっ、なにいっ!?」

単なる呟きのはずだった。
しかし、返事のように真菜の声が返してきた。
僕は飛び上がるくらいに驚いて辺りを見回した。
が、当然の如く誰もいない。

「ん、気のせいか……」
「気のせいなんかじゃないよ、お兄ちゃん。壁に耳、当ててみて」
「え、あ、ああ……」

言われるがままに僕は壁に耳を押し当てる。
先程の声は、隣の真菜の部屋かららしい。

「えー、あー、お兄ちゃんお兄ちゃん、聞こえますか?」
「聞こえるよ。ったく、この壁ってこんな薄かったのか?」
「えへへ、そうみたい」
「全然知らなかったよ。造りは立派そうなのに……」

そう言って何気に拳でコンコンと壁を叩いてみる。
すると、向こうからも同じような音が返ってきた。

「返したよ、お兄ちゃん」
「下らない……」

真菜の声はうれしそうだ。
でも真菜はこういう下らない遊びが楽しく感じられるほど、まだ子供でしかないはずだ。

「あーっ、そんなこと言ってていいのかな?」
「どういうことだよ?」
「確かに壁も薄いんだけどね、どうしてこんなに伝わるか、わかる?」
「……お前、まさか……?」
「そっ、そのまさか。色々細工してるんだ、壁に」
「おい、細工ってなぁ……」
「真菜の部屋に小さい絵がかけてあったの、憶えてる?」

言われて僕は頭の中で真菜の部屋を想像してみる。
すると確かに僕の部屋側に絵がかけてあったような気がした。

「確かに……」
「あれ、結構低めにかけてあるんだよね。前におかしいってお母さんにも注意されたし。でも、真菜は平気だって答えたの」
「何が言いたいんだよ、何が?」
「あの絵の裏の壁、穴があいてるの」
「なにっ!?」
「だから壁はお兄ちゃん側しか残ってなくてね。そこにコップを当てて、耳を澄ますと……」
「お、お前……」

我が妹ながら恐ろしいことをしている。
道理でこうも簡単に壁越しで会話が出来る訳だ。

「ゴメンね、お兄ちゃん。でも真菜、お兄ちゃんのことが好きだから……」
「正直あんまりいい気はしないな」
「うん、わかってる。でも、これのおかげで色々お兄ちゃんのこと、知ることが出来たんだよ」
「……お前、だから執拗に僕のこと、優しいって言ってたのか……」
「うん。お兄ちゃん、独り言大臣だもんね」
「よ、余計なお世話だ」

確かに僕は独り言をよくする。
でも、それはちゃんと自覚していて、他に誰かがいる時は意識して独り言を言わないようにしていた。
しかし自分の部屋ともなると……考えるだに恐ろしい。

「それよりお兄ちゃん?」
「な、なんだよ?」
「ひとつだけ、かわいい妹からの忠告があるんだけど……聞いてくれるかな?」
「いいから言ってみろよ」
「うん、じゃあ言うね。これは馬鹿にしてる訳じゃないんだけど……ベッドの上でひとりえっちするの、やめた方がいいと思うよ」
「お、お前っ!!」

その一瞬で、僕の頭の血が沸騰した。
ベッドから飛び降りると部屋を出て、そのまま激しく真菜の部屋のドアを開ける。

「真菜っ、お前、していいことと悪いことがあるんだぞっ! わかってんのか!?」
「うん……ゴメンね、お兄ちゃん。だから、これが真菜のお詫びの印」
「…………」

僕はその時ようやく、これが全て真菜の策略だったことに気がついた。
真菜は自分のベッドの上で下着姿のままで――僕のことをまっすぐに見つめていた。

「もう、これからはひとりえっちなんてしなくていいから。そういう気分になったら真菜に言って。多分自分の手でするより、真菜の中で出した方が気持ちいいと思うよ」
「…………」

僕はもう、何も言えずにいる。
この部屋に入ってしまった時から僕の敗北は決定していて、いくら沸騰するくらいに熱くなっていた頭の血が一気に冷えても現実は何ら変わらなかった。

「それとね、真菜も……やっぱりひとりでするのは寂しいよ。お兄ちゃんが聞いててくれるならいいけど、やっぱりお兄ちゃんでイキたいもん」
「…………」
「ここは真菜の部屋。真菜だけの世界なの。だから何も気にしないで」
「……そ、そうはいかないだろ、真菜」

ようやく言葉を発することが出来た。
そして真菜の半裸から軽く視線を逸らす。
だが、真菜はそんなことは意にも介さず、僕に向かってはっきりと言った。

「後ろの鍵を締めて、お兄ちゃん」
「ま、真菜……」
「音のことなら大丈夫だよ。薄くなってるのは、真菜とお兄ちゃんを隔てる壁だけだから」
「そういう問題じゃないだろ、真菜」
「お兄ちゃんが締めないなら、代わりに真菜が締めるよ。でも、真菜はお兄ちゃんの手で締めて欲しいの。これ……どういうことだかわかる?」
「……ああ」

つまり、僕はもう逃げられないと言うことだ。
自分の意志で真菜を抱くか、それとも自分の意志とは関係なく真菜を抱くか――その二者択一だった。

「どうする、お兄ちゃん?」
「……僕がこのまま逃げるっていう可能性は、考えてないのか?」
「うん、もちろん」
「どうして?」
「逃げたって、何の解決にもならないことくらい、お兄ちゃんにはわかってると思うから」
「……それもそうだな」
「この前とおんなじだね。お兄ちゃん、優しいから……」

この前とおんなじ。
この前真菜を初めて抱いた時も、結局は僕が自ら真菜を抱いた。
求めたのは真菜からだったけど、真菜にイニシアチブを取らせることはなかった。
僕が妹を抱けば、妹は被害者になるだけで済む。
しかしそれが逆だった場合には――真菜は一体どうなるだろうか?

真菜は何度となく、自分を『悪い女の子』だと言う。
でも、妹にはいい子でいてもらいたい。
いい子でなくても、悪い子になって欲しくはなかった。
だから、僕が真菜の代わりに悪い子になる。
全ては真菜のためだった。
しかし、それも半ば自分に対する言い訳のようなもので――やっぱり僕は、全てをかなぐり捨てて真菜を抱きたいんだろう。
真菜はそれがわかっているからこそ、僕の自分に課した些細な枷を無造作に取り払うんだ。

「わかった、僕が鍵を締める」
「ありがと、お兄ちゃん」

僕は振り返ってドアの鍵を締めた。
そして改めて真菜に向き直ろうとする。

「これでいいだろ、ま――」

それ以上、言葉が出なかった。
既に真菜は機先を制して、僕の唇を奪っていた。

「んんっ、お兄ちゃんっっ!」

鍵を締めたと言うことは、許可が下りたと言うことだ。
解き放たれた真菜はもう遠慮などかなぐり捨てて僕の背中にきつく腕を回していた。

「んっ、んんんっ……」

鼻にかかるくぐもった声が聞こえる。
それに混じって水音も。
二人の唾液が混ざり合う音が激しく響いてきた。

「お、お兄ちゃん、すきっ……」

息継ぎの度に忘れず僕への愛の言葉を囁いてくれる。
だが、それも一瞬のことで、真菜は僕の口内に自分の唾液を注ぎ、僕の舌から唾液を吸い取ることに没頭していた。

「お、おいっ、真菜っ、少し落ち着けって」
「いやっ、真菜の好きにするのっ! 真菜はお兄ちゃんにレイプされてなんかないからっ!」

真菜は全てを飲み込んだ上で、激しい口調でそう言った。
やっぱり愛し合うならお互いの合意の上がいい。
それが中身は一応そうだったとしても、表面上では違うというのが、真菜には耐えられなかったに違いない。

「真菜はお兄ちゃんの妹だけどっ、こうしてる時はお兄ちゃんの女になるのっ。優しくされるのはうれしいけど、かばわれるだけの存在になるのは嫌っ!」

そしてまた、唇を重ねて舌を吸う。
僕はただ、真菜の勢いに圧倒されるだけだった。

「もしお母さんとかに見つかったとしても、真菜は絶対にお兄ちゃんのせいにはしないよ。真菜だけがかぶるつもりもないけど、悪いのは二人なんだから……」

真菜は激しいキスを終えると、そのまま唇を下に這わせながら、手では僕の服のボタンを外し始めていた。

「真菜……」

馴れないことで簡単には出来ない様子みたいで、真菜は少し荒っぽい手つきになる。
終いにはじれったくなってそのままボタンを引き千切ろうと思ったのか、強く引っ張りだした。
僕はそんな真菜が痛々しく思えて、そっと手を重ねる。

「お兄ちゃん、じっとしてて!」
「いや、真菜も落ち着けよ」
「真菜は落ち着いてるよっ!」
「それのどこが落ち着いてるんだ。唇を離せば、ボタンくらい簡単に外せるだろ」
「ううっ……」

僕の現実的な指摘に、真菜の熱が一気に冷めていく。
代わりに泣き出しそうになり、僕は慌ててその頬に掌を添えた。

「真菜の気持ち、充分伝わったから。僕が悪かったよ。真菜が僕を愛してくれるなら、僕も同じくらい真菜を愛することにする」
「お、お兄ちゃん……」
「だから落ち着いてゆっくり、な。真菜が脱がしてくれた後は、僕が真菜を脱がすから。それでいいだろ?」
「う、うん……」

僕の言葉でようやく真菜は落ち着きを取り戻した。
顔を上げて涙の滲んだ顔で僕を見上げてから、視線を下ろしてボタンをゆっくりと外し始めた。

「普通にやれば、簡単なことだろ?」
「うん、そうだね……でも、やっぱりお兄ちゃん、優しいよ」
「……真菜は僕の妹だからな。優しさも特別製だ。大事に思えよ」
「わかってる。特別だもんね」
「ああ」

やっといつもの和やかな二人に戻る。
このまま情事が始まるとは思えないような空気が僕達の間に流れた。

「終わったよ、お兄ちゃん」

真菜がボタンを外し終えた。
そのまま僕を見上げて、返事を待っている。

「ありがと、真菜」
「うん、どういたしまして」
「どうする、全部脱ぐ?」
「まだいい。それより――」

真菜はそこで言葉を中断させると、軽く僕の胸元をはだけさせた。

「お兄ちゃんの身体にも、キスしたいな」
「……男は感じないぞ」
「そう?」
「ああ、多分」
「じゃあ試してみようよ。真菜は絶対、お兄ちゃんなら感じると思うな」
「どうして?」
「だって、お兄ちゃん敏感だもん。耳にキスされただけでビクッてしちゃうくらいだし」
「あ、あれはなぁ、いきなりだったし、くすぐったかったんだよ」
「そう……でも、いい顔してたよ、お兄ちゃん。何だかイク時みたいで」

そう言ってクスッと笑ってみせる。
全く実の兄を何だと思っているのか……。

「お前なぁ……」
「まあ、どっちでもいいじゃない。してあげるから、横になって」
「あ、ああ……」

僕は真菜に言われてしぶしぶベッドの上に仰向けになる。
真菜はその上に馬乗りになって、再び僕の胸元を広げた。

「うわぁ……」
「ど、どうした?」
「う、うん。何だかこれって……騎上位みたいだね」
「真菜っ!」

あまり女の子――しかも自分の妹の口から聞きたいような単語じゃない。
僕は真菜にのしかかられた状態で叱責しようとした。

「冗談だって、お兄ちゃん。でも、満更でもないかも……」
「ちょっと前まで処女だった娘が何を言うか。はしたない」
「そう? 普通だと思うけど。真菜、ひとりえっちなら前からしてたし……」
「お前なぁ……その台詞、結構残酷だぞ」
「どうして?」
「男には幻想ってもんがあるんだよ。女の子は何も知らないくらいがいいんだ」

情けないかもしれないけれど、これが本音だ。
でも、真菜は僕の言葉を聞いてぽんと手を叩く。

「あっ、なるほどね」
「わかったか?」
「うん、ゴメンねお兄ちゃん。お兄ちゃんは何も知らない真菜を開発したかったんだよね?」
「ち、違うっ!」
「安心して。真菜もまだ知らないこといっぱいあるから。お尻とかは全然だから、お兄ちゃんがしてみた――」
「しないっ! してみたいとも思わないっ!」
「そう? まあ、それはお兄ちゃんが真菜のあそこに飽き始めてからだね。締まりが悪くなったと思ったら遠慮せずに言ってね」
「……もうお兄ちゃんは呆れて何も言えないよ」

ったく、一体全体どういうつもりなんだ?
別に僕は荒淫に耽るつもりなんて更々ない。
真菜だって、そういうことがしたいから僕が好きって言ってるはずはない。
むしろ好きだからこそ結ばれたいと思うのが普通で……。

「ゴ、ゴメンね。本題に戻るから」

僕の表情でこれ以上の暴走はマイナスだと察知したのか、真菜は照れ臭そうにそう言った。

「あ、ああ」
「じゃ、早速いただきます……」
「なんだかなぁ……」

真菜は呆れる僕の胸に顔を埋める。
そして唇を這わせ始めた。

「あはっ、お兄ちゃんのおっぱい、かわいい♪」
「うるさい。これが普通だ」
「あっ、そういう口きいてていいのかなぁ?」
「お前、お兄ちゃんを脅迫する気か?」
「うんっ!」
「ったく……兄の権威もこれじゃ形無しだな」
「この状態じゃあね。なんなら無理矢理真菜を犯してみる? それなら兄の権威もはっきりすると思うけど」
「お前なぁ……レイプ願望でもあるのか?」
「あるよ。お兄ちゃんになら、滅茶苦茶にされてみたいって思う」
「……もう改善の余地なし、って奴だな」
「うん。お兄ちゃんのことが好きなのは、もうずっと変わらないと思うよ、真菜……」
「真菜……」

改めて好きと言われると、複雑な気持ちにさせられる。
たとえこんな変な姿勢だったとしても、この真菜の目を見れば真剣さは痛いほど伝わる。

「ちょっとひとつだけ聞いていいか?」
「んっ、なに、お兄ちゃん?」
「お前、こんな僕のどこがいいんだ? これはずっと前からの疑問なんだけど……」
「う〜ん、難しいことを聞くね」
「だろ? 自分でも納得行かないんだ。僕よりよさそうな奴はその辺にごろごろしてるだろ」
「まあ、月並みだけど優しいってことかな? あと、すっごくかわいい」
「かわいい?」

僕はさらりと出てきた真菜の言葉に首を捻る。
別に童顔でもないし、かわいいなんてタイプじゃない。

「うん、かわいい。普通の男の人は年下の女の子にこんなことさせとかないよ。下着姿の真菜なんか見たら、そのままガバッと襲い掛かるだろうしね」
「それはお前が僕の妹だからだ。もしそれがお前のクラスメイトなら話は別だよ」
「そうかなぁ? なんなら試してみる?」

真菜は意地悪そうににんまりと笑う。
これが本気なのかどうなのかわからないのが、真菜の食わせ者たるところだ。

「試すって……お前正気か?」
「半分冗談。でも、半分本気だよ。お兄ちゃんのこと話したら、えっちしてみたいって子、何人かいたもん」
「お前、クラスの友達に喋ったのか!?」

僕は瞬時に青褪めて真菜に問い質した。
すると真菜は慌てて否定して答える。

「ち、違うよ。別にお兄ちゃんだって言った訳じゃないから。ただ、やっぱり処女喪失の話とか、してみたかったし……」
「おいおい……頼むぞ、真菜」
「わかってるって。別に真菜は知られてもいいけど、こういう場合っていっつも男の人の方が不利だからね」
「それに僕の方が年上だ」
「うん。だからお兄ちゃんを困らせるようなことはしないよ。あっ、えっちするのは別だけどね」
「へいへい……」

もう真菜とまともにやり合おうとするのが間違いってもんだ。
僕は半分投げやりになって反論するのをやめた。

「でね、話は戻るんだけど……」
「ああ、好きにしてくれ」
「もう、ちゃんと聞いてよ。それでね、お兄ちゃんみたいな優しくて淡白な年上の男の人なら、処女をあげてもいいって」
「おいっ、クラスメイトの初めての相手を僕にさせようってのか!?」
「まあね。真菜はお兄ちゃんが好きだから、その子達の判断は悪くないって思ってる。それにさっきのお兄ちゃんの話だと、荒々しく女の子を抱くお兄ちゃんが見れると思うし」
「生け贄かい、その子は」
「まあ、真菜はお兄ちゃんには絶対無理だと思ってるから言えるんだけどね」
「ったく……」

ちょっと不愉快だけど、恐らく真菜の言う通りなんだろう。
それが自分でもわかるだけに悔しい。
真菜の前でそのクラスメイトを抱くなんて無理な話だし、やっぱりガバッと襲い掛かるのなんて僕には出来ない。

「だからお兄ちゃんはかわいいんだよ。ほら、乳首勃ってる……」
「くっ……」
「やっぱりお兄ちゃん、おっぱい感じるんだよ。ほらっ!」
「んっ!!」

真菜はおもむろに僕の乳首を軽く噛んだ。
僕は不意を衝かれて思わず声を上げてしまう。

「ほらね。すっごくいい声。真菜、お兄ちゃんのその声だけで感じちゃうよ」
「う、うるさい。これはだなぁ……」
「じゃあ、これはなに?」

また真菜は意地悪そうな目で僕を見下ろす。
しかし、僕には何が言いたいのかピンと来なかった。

「これって何だよ、真菜?」
「だから、これっ」
「えっ!?」

真菜はそこで腰を軽く揺さ振った。
さっき真菜が騎上位みたいと評した通り、僕達の腰の位置は随分と危ういことになっている。
そこで腰を動かされたら――どういうことになるかは一目瞭然だった。

「お、おいっ、真菜っ!」
「お兄ちゃんの、はっきりわかるよ。感じてる証拠だよね」
「こ、これはだなぁ……」
「真菜だって感じてることは否定しないよ。お兄ちゃんのズボン、汚しちゃうね」

そう言いながらも真菜は腰の動きを止めない。
固くなった僕自身に擦り付けるように、腰を押し付けていた。

「や、やめろって、真菜」
「だ〜めっ! 真菜、お兄ちゃんがイクまでこうしてよっかな? 先に真菜がイっちゃうかもしれないけど」
「じょ、冗談だろ?」

僕は慌てて確認しようとしたけど、真菜の様子からしてあながち本気と取れなくもない。
実際、真菜の顔は既に紅潮しており、ほとんど僕を使ってひとりえっちしているようなもんだった。

「う、ううん、真菜は本気。心配しないで、汚れても真菜が綺麗に洗濯したげるから」
「そ、そういう問題じゃないだろ」
「真菜の中で出したいお兄ちゃんの気持ちもわかるよ。でもね、たまにはこういうのもいいなって」
「お、おい、真菜っ……」
「汚れたお兄ちゃんのも真菜が綺麗に舐めてあげる。あっ、そのまま真菜のお口の中でイってもいいんだよ。そしたらちゃんと飲んであげるね」
「真菜、ちょっと落ち着けって」

どんどん真菜が高みに昇っていく様子が感じられた。
真菜はもう冷静な僕の言葉を聞こうともしない。
腰の動きも強く小刻みなものになり、軽く前後運動も加わった。

「ブ、ブラを外してくれるとうれしいな、お兄ちゃん。フロントホックだから、お兄ちゃんでも出来るよ」
「お、おい……クッ!」
「は、早くっ、お兄ちゃん! お兄ちゃんに触って欲しいの。ひ、ひとりじゃ……な、なかなかイクまでに……時間が……」
「わ、わかった、真菜。わかったから……」

ほとんど騎上位だった。
僕のモノが真菜を貫いていないだけで、やっていることは変わらない。
僕自身もズボンから解放されることを望み、痛みを感じそうになるまでに大きく、そして固くなっていた。
僕はじれったそうな真菜の要望に応えて手を伸ばすと、ブラのホックを外す。
すると真っ白な胸が僕の眼前に弾け出てきた。

「あっ、ありがとっ、お兄ちゃん。色々……してくれるとうれしいな」
「ああっ、わかってる」

僕ももう真菜の責めで興奮状態にある。
両手で真菜の小ぶりの胸を掴むと、少し激しく揉みだした。

「ああっ、お兄ちゃんっっ!!」
「真菜っ、真菜っっ!!」

真菜の名前を叫ぶ。
ずっとずっと、そうしてきたかったこと。
こういう時にしか、僕の想いは解放されない。
だからこそ、真菜は僕との交わりを求めるのかもしれなかった。

「あっ、う、うれしいよ、お兄ちゃんっ!」
「真菜っ、好きだっ!」

真菜の歓喜の鳴き声に応えながら、僕も快楽を求めて腰を突き上げる。

「お、お兄ちゃんも動いてくれるんだね。い、一緒にイこ、お兄ちゃんっ!」
「あ、ああっ! 僕はもうすぐ……」
「ま、真菜もあとちょっとでイケるみたい。だからっ……ちょ、ちょっとだけ……我慢して」
「わ、わかった」

僕は真菜の胸から手を離すと、そのまま肩に手をかける。
そして手前に引っ張ると、真菜は僕の胸に倒れてきた。

「うっ、うれしい、お兄ちゃん。真菜がこっちの方が好きって……知ってるんだね」
「い、いや、僕も真菜を抱き締めてたいから……」
「ふ、ふふっ、き、気持ちはおんなじ……だねっ」
「ああ、真菜っ!」

僕は真菜を抱き締める。
僕の胸で真菜の膨らみは押し潰されるけど、くっついたことで真菜の動悸が伝わってくる。
真菜は真菜で自分の充血した乳首を僕に押し付け、快感を引き出そうとしていた。

「お、お兄ちゃんっ、もう少し……お、お尻触って……」
「わかった、真菜っ」

真菜に求められて片手をお尻に触った。
既に真菜のパンティは僕のズボンを濡らして、中の様子を如実に表していた。

「あっ、そこっ、いいっ!」

僕は指を伸ばして真菜に触れる。
下着越しだったけど、刺激は充分過ぎる程だった。

「あっ、ああっ、お兄ちゃん、い、イキそうだよっ!」
「い、いつでもいいぞ、真菜っ!」
「お、お兄ちゃんもイケる? ねえっ!?」
「クッ、ああっ!」
「んっ、あっ、ああっ、いいっ、あっ、お兄ちゃんっ、指っ、い、挿れてっ! そしたらっ!」
「わかったっ!」

僕はするりと下着の隙間に指を滑り込ませると、ぐちゃぐちゃになっている真菜を軽く開いてズブリと突き入れた。

「ひあぁっ!! ひっ、イクっ!! お兄ちゃんっっっ!!」

真菜は僕の指を使って自分を掻き回すと、その勢いで一気に昇り詰めた。
僕もその真菜の声で堪えていたものを一気に放出させる。
ズボンを穿いたままで果てるっていうのはあまり気持ちのいいものじゃないけど、僕は何度も激しく精を叩きつけていた。

「……イっちゃったね。お兄ちゃんはちゃんとイケた?」
「あ、ああ……ほとんど真菜と同時に」
「やったね。この前は真菜、痛がっててイケなかったから、これが初めてだね」

真菜は穏やかな表情で僕に言う。
女の子はイった後もふんわりと気持ちよさが持続するなんて言うけど、今の真菜もそんな感じだった。

「やっぱり痛いより気持ちいい方がいいもんな」
「そうだね。だから今日はなんとかなるかも……?」
「ああ。それより……さっきの、痛くなかったか? ちょっと乱雑だったから……」
「さっきの?」
「あ、ああ、だからその……」
「指?」
「そ、そうだよ、それだ」

何だかからかわれているような気もするけど、僕は肯定してうなずいた。
どうも引け目があると気まずい。

「平気だよ。気持ちよすぎて痛みなんて全然わかんなかったから」
「そ、そっか。でも悪かったな。ちょっと僕も……」
「いいんだよ、お兄ちゃん。お互いにイク寸前で優しく触るのなんて無理だと思うし」
「そう言ってくれると助かるよ」

僕はほっと胸をなで下ろす。
未だに真菜を初めて抱いた時の痛がりようが頭の中に残っていて、それが僕を苦しめる。
僕が気持ちよくなるために真菜を苦しめるようなことはあれっきりにしたかった。

「実はね、お兄ちゃん……」
「なんだ?」

真菜が甘えるような声を出す。
僕の肩に頭を乗せたまま、寄り添って指先で軽く僕の胸元を弄んでいた。

「真菜、こういう時が一番幸せなんだ」
「終わった後か?」
「うん。なんだかほんわかしてて。こうして甘えてても、お兄ちゃん嫌な顔しないし」
「……そうだな。今更細かいこと言ってもしょうがないからだろ」
「そうだね。お兄ちゃん、世間体とか細かいこと気にし過ぎだもん」
「お前が気にしてない分、僕が気にしてないと駄目なんだよ」
「だから、お兄ちゃんが好き。いつも真菜のことを考えててくれてて」
「甘えんぼだからな、真菜は」
「うん、妹だもん。甘える権利はあるんだよ」
「精々甘えることだよ、今のうちはな」
「……真菜は、ずっとずっと甘えるつもりだよ、お兄ちゃん……」

そこで、言葉が途切れた。
僕は真菜の顔を見つめたけど、真菜は僕に視線を合わせようとはせずに、自分の指先を見ていた。
僕と真菜の関係はいつまで続くんだろうか?
未だに終わりは見えないけれど、真菜は終着点から目を背けようとしている。
その理由がわかるだけに、僕は何も言うことが出来なかった。

「っと、そろそろ次、しよっか?」

しばらくして、真菜はおもむろにそう言うと、身体を起こした。
僕も真菜に続いて上半身を起こす。

「冷たくなって何だか気持ち悪くなってきちゃった」

そう言いながら立ち上がって無造作にパンティを脱ぐ。
僕はその素っ気無さに、慌てて目を背けた。

「あはっ、ゴメンね、色っぽい脱ぎ方じゃなくって」
「そ、そういう問題じゃない」
「びしょびしょだったから、早く脱ぎたかったの。穿いてない方がすっきりしてるでしょ?」
「そ、そうだな」

僕は完全にどぎまぎしている。
軽く視線を上げると、真菜は楽しそうに自分の下着に指を引っかけてくるくる回していた。

「お兄ちゃん、このパンティ欲しい?」
「ば、馬鹿っ! い、いきなり何を言い出すんだ、お前は!?」
「ただの生下着じゃないんだよ。真菜ので凄いことになってるんだから。ほらっ!」

そう言ったかと思うと、くるくる回っていた下着が僕の方に飛んでくる。
僕はそれを手で受け止めると、なんとなく視線を向けてしまった。
それは濡れていると言うよりは、触ったら糸を引きそうなくらいに真菜の愛液がくっついていた。

「ねっ、凄いでしょ?」
「お、お兄ちゃんをからかうのもいい加減にしろ」
「やだよっ。お兄ちゃんってかわいいから、ついついからかっちゃうんだよね」
「悪質な嫌がらせだ。僕は断固抗議するぞ」

僕は顔を横に向けてその意志を露にする。
真菜も少し行き過ぎを悟ったのか、態度を柔らかくして僕に謝ってきた。

「ごめんね、お兄ちゃん。真菜、反省してます」
「真菜の反省はあてにならない」
「じゃあ、どうすれば許してくれるの?」
「知らん」

僕は完全にそっぽを向く。
すると真菜はぶつぶつ言いながら僕に近付いてきた。

「もう、しょうがないなぁ……」

そして真菜はちゅっと僕のほっぺにキスをしてきた。

「これで許してくれる?」
「お、おい……」
「かわいいキスでしょ? お兄ちゃん、こういう方が好きだと思って」
「ま、まあ、事実だけど……」
「真菜はディープキスの方が好きなんだけどね。してもいい?」
「……駄目って言ってもするんだろ、どうせ?」
「うん、ご名答」

そう言って真菜はそのまま僕の唇を奪った。
挨拶程度に唇を触れ合わせた後は、そのままお互いに口を開け、舌を絡め合わせる。

「んっ、んはっ……」

それまで僕はキスなんて気持ちがいいはずはないと思っていたけど、真菜とこんな風にキスをしてみてそれが間違いだと気付いた。
キスをしながらお互いに抱き締め合い、いつのまにかまたベッドに倒れ込んでいる。
僕は後ろに回した腕で真菜の背中を愛撫し、真菜はそれに応えようと僕に足を絡めた。

「んっ!?」
「ど、どうした、真菜?」

真菜が急に変な声を出してキスを中断させた。

「わ、忘れてた、お兄ちゃん」
「忘れてたって何を?」
「お兄ちゃん、ズボン穿いたままじゃない。ゴメンね」

真菜はひとしきり謝ると、身体を起こしてベッドから降りた。
僕も真菜に続いて降りようとすると、制止の声がかかる。

「あっ、お兄ちゃんはそのままそのまま」
「どうして?」
「真菜が脱がしてあげるから」
「……いいけど」
「うん」

真菜はうれしそうに僕のズボンのベルトに手をかける。
金属の触れ合う音をさせながら、真菜はベルトを外し、ファスナーを下ろした。

「うわぁ……お兄ちゃん、もうおっきくなってるよ」
「べ、別に口に出さなくてもいいだろ」
「だってうれしかったんだもん。真菜のキスで感じてくれたんだよね」
「あ、ああ……」

口ではそう答えたものの、実はもっと前から僕はいきり立っていた。
ズボンを穿いていたおかげでそれが目立たなかったけど、真菜と一緒にイった後でも、僕はほとんど萎えることなく同じ硬度を保っていたんだ。

「ゴメンね、真菜だけさっぱりしちゃってたのに……うわぁ、すっごいぐちょぐちょだよ、お兄ちゃん。さっきの真菜のとじゃ、量が全然違うね」
「は、恥ずかしいからわざわざ口でコメントしてくれるな」

僕は恥ずかしさで顔が熱くなっていた。
ズボンから解放された僕のモノは、さっき放った僕の精でぐちゃぐちゃになっていた。

「ちょっとだけ、腰上げてくれる?」
「ああ」

真菜に言われて腰を上げると、すぽっとズボンが抜き取られた。
真菜はちゃんとそれを最後まで脱がすと、あとは下着だけになる。

「す、凄いね、お兄ちゃん……」
「ノ、ノーコメント」

直接視線に晒されている訳ではないものの、真菜に見られる度にビクビクと動いている。
ここまで自分の欲望の象徴を見られてしまうと、今更綺麗ごとを並べ立てたところで何の効果もないことは目に見えていた。

「も、もう一回、腰上げてくれる?」
「…………」

僕は無言で腰を上げた。
ズボンの次は――何が来るかははっきりしている。
真菜は下着のゴムに手をかけて、ゆっくりと引き降ろそうとした。

「お、お兄ちゃん、引っかかるよ……」
「わ、悪い、真菜。でもこればっかりは自分でもどうしようもならない」
「じゃ、じゃあ先に出してから脱がすね」

真菜はそう言うと、僕のモノを露出させる。
それは下着越しに見えていた以上にグロテスクで、白く濁った精に塗れながら赤黒く脈打っていた。

「わ、わっ!」
「み、見るな、真菜」
「で、でもっ、そういう訳にも……」
「だから自分で脱ぐ。お前がやら――」
「駄目だよ、お兄ちゃん。これは真菜の中に入るものなんだから」

真菜は僕の言葉を遮ってはっきりとそう告げた。
そして無言の僕を尻目に下着も完全に脱がしてしまう。
妙に反り返ったそれだけが現実味を欠いていて滑稽だった。

「真菜、さっき言ったよね。汚れても真菜のお口で綺麗にしてあげるって……」
「や、やめとけ。お前にはまだ早い」
「そんなことないよ。口なんてみんな同じだもん」

僕の制止を振り切って、真菜は膝立ちのまま僕に向かって口を近づけた。

「んむっ……」

真菜は両手で僕のモノを支え、唇を這わせる。
軽く舌を出しながら精液を舐め取っていく。

「に、苦いだろ、真菜? 別に無理しなくってもいいんだぞ」
「お、お薬みたいな苦さじゃないもん。だから平気」

そう言ってどんどん綺麗にして行く。
完全に舐め取った後に自分の手までわざわざ舐めて綺麗にして、精の名残をなくしていた。

「はい、こんなんでどうかな、お兄ちゃん?」
「あ、ありがとうな、真菜。気持ち悪かっただろ」
「ちょっぴりね。でも、そんなに言うほどでもないよ」
「そうなのか?」
「お兄ちゃんも自分の舐めてみればいいんだよ。美味しいとは言わないけど、吐き気を催すほどじゃないから」

真菜はしれっとした顔で言う。
どうも僕を騙してるんでもないらしい。
僕は少し信じながら真菜に訊ねてみる。

「でも、自分のを舐めるのもちょっと異常だろ?」
「まあね。でも、他の男の子の舐めるよりも自分のの方がよくない?」
「そりゃそうだ」
「だから……あ、いいこと思いついた」

真菜は何かひらめいたのか、また僕の下半身に顔を伏せた。

「お、おい、真菜……」
「ちょっとじっとしてて」

僕を止めると真菜は僕のモノに唇をつける。

「うっ……」
「まだ、残ってると思うから……」

そう言うと、真菜は僕のモノをきゅっと握って、それから軽く吸った。
確かに自分でする時も、イった後で中に少しだけ残っていることはわかっている。
真菜にそういう知識があるのには驚きだけど、何をしたいのかは僕にもよくわかった。

「んっ……お兄ちゃん、キス……」
「あ、ああ……」

自分の精液を口移し。
よく考えてみると凄い話だ。
でも、今更拒むことも出来ずに、僕は真菜と唇を重ねた。

「んんっ……ど、どう、お兄ちゃん? そんな苦くないでしょ?」
「うーん、苦いって言うよりも、独特の変な風味があるな」
「そうそう、そんな感じ。この匂いはちょっと好き嫌いあると思うけどね」
「まあ、あんまり好んで嗅ぎたくなるような匂いじゃないのは確かだな」
「だね。真菜はそんなに嫌がるほどでもないよ。だからお兄ちゃんも遠慮なく真菜のお口で出してね」
「あ、ああ……」

面と向かってそんなことを言われると複雑な心境だ。
でも、実際味を見てみて、吐き気を催すようなものじゃないってことがわかっただけでもよかった。

「でも、どうしてそんなにみんな苦い苦いって言うんだろうね?」
「さあ?」
「きっとみんな嫌がってるからそう感じるんだよ。冷静に味わってみれば、そうでもないってわかるのに」
「まあ、僕の場合まだよくわからないな。量がほんの少しだったし、真菜の口移しだったから、その、真菜の味がちょっと……」
「あっ、その言い方うれしいな。真菜の味かぁ……」

何だか真菜は勝手に喜んでいる。
でも、僕自身それ以上の表現方法が見つからない。

「んー、話は戻るけど、やっぱり味ってよりも出し方じゃないか?」
「えっ、出し方?」
「ああ。ほら、やっぱり口でされると気持ちいいから、下でするのと同じようなつもりになっちゃうんだろ」
「なるほどなるほど。それで?」
「何て言うか……やっぱり男はイク時には一番奥で精液を叩きつけるのがいい訳で……って、そういう話らしいけどな」
「へぇ〜、それは初耳。でも、子宮で感じる人もいるらしいしね。そういうことなのかな?」
「まあ、そうだな。だから同じようなつもりで喉の奥に叩き付けると……苦しいし、いい感じはしないだろ?」
「うん。風邪ひいた時につける薬を最悪にしたような感じだね?」
「そうそう、そんな感じ。だから口の中で出すのにはいいイメージないんだよ、きっと」
「わかった。でも……」

そう言って真菜は僕の顔を覗き込むようにじーっと見つめる。

「ど、どうした、真菜?」
「うん。お兄ちゃんとこんな話するなんて、思っても見なかったから」
「……た、確かに。いや、済まない。あんまり女性向けの話題じゃなかったな」
「ううん、いいの。なかなか参考になったし」

真菜は何やらニコニコしている。
責任は僕の迂闊さにあるけれど、それにしても今更ながらにとんでもない話を展開していたものだ。

「ま、まあ、そういうことだから、もうこれっきりな。真菜も辛いのは嫌だろうし」

僕は話をまともな方向に戻そうと、ちょっと笑顔を作って真菜に言った。
しかし、真菜は真っ向から否定して言う。

「やっぱり優しいね、お兄ちゃんは。でもね、真菜の女心は別なんだよ」
「女心?」
「うん。たとえ辛くっても、やっぱり喉の奥に出すのが一番気持ちいいならそうしてあげたいって気持ち」
「……僕は、二人とも気持ちよくなった方がいいと思うけど」
「それはそうだよ。だから、そこではお兄ちゃんだけが気持ちよくなればいいじゃない。お兄ちゃんも、別で真菜を気持ちよくしてくれれば、それでおあいこだから」
「どういうことだ、それ?」
「さっきは精液が苦いって話だったよね。でも、真菜のもそんな美味しいものじゃないと思うから。お兄ちゃんは真菜を気持ちよくするために一生懸命舐めてくれると思うけど、それ自体はお兄ちゃんにとって気持ちいいことじゃないだろうし」
「……別に、僕は真菜のだったら喜んで……」
「だから、真菜もおんなじ。お兄ちゃんのだったら、喜んで飲むよ。ちょっとくらいむせても平気」
「わかったよ。僕の負けだな、真菜。じゃあ、僕はどうしたらいい?」

話し合いでは完全に真菜の勝利だった。
僕は帽子を脱いで、真菜に判断を委ねる。
恐らくとんでもないことを言い出すだろうけど、僕は甘んじて受けようと思った。

「シックスナイン……って奴。わかるでしょ?」
「まあな」
「いい?」
「いいよ、真菜」
「……素直なお兄ちゃんも、好き」

そして、僕達二人はベッドの上に横たわった。
しかしさっきとは正反対。
真菜の目の前には僕が、そして僕の目の前には真菜があった。
実はこうして真菜を間近で見るのは初めてで、少し僕は感動している。
そこは一度イったせいで赤く充血しており、ぬらぬらと濡れていて僕は口をつけたい衝動に駆られた。

「お、お兄ちゃん、真菜の、好きにしていいからね。痛い時は痛いってちゃんと言うから」
「あ、ああ……」

僕は半分上の空だ。
女の子とは違って、男は本能で女性器にむしゃぶりつきたくなる。
確かに味の点で言えば決して美味しいものじゃない。
しかし、性の衝動がそうさせてしまう。
もしかしたらそういうのは、女の子の方にも言えるのかもしれないけれど。

「じゃあお兄ちゃん、行くよ……」

真菜の合図と共に、下半身にぬめりとした独特の感触が伝わってきた。
さっきまで舐めていたのが半分予行演習になっていたのか、真菜はいきなり僕を口に含んできた。

「く……」

僕は思わず声を洩らしてしまう。
それくらいに、真菜の口内は気持ちよかった。

「ま、真菜、気持ちいいよ……」
「ん、んん……」

真菜は鼻で返事をする。
そして嫌らしい湿った音を立てて、小さい唇で僕を前後にしごいた。
僕はそんな真菜に負けじと、目の前に広がる花園に口をつける。

「んっ!」

瞬間、真菜が快感に唇をすぼめた。
僕も予想外の刺激に一瞬腰が動く。
しかしそれに気を取られることなく、真菜の花弁を舌先でねぶって行った。

「んーっ、んふっ!」

真菜は与えられる快感に身体を震わせるけれど、それを誤魔化すように頭を小刻みに揺さ振った。
真菜の舌がいい意味で障害物になり、僕の敏感なところを刺激する。
僕は真菜の頭を太股で挟み込み、無意識のうちに更なる快感を得ようとする。
真菜もそれを真似したのか、愛液を啜る僕の頭を同じように太股で挟んだ。

「んっ、んっ、んっ……」

そしてしばらく、二人の鼻にかかった声と、粘膜の擦れ合う淫猥な音だけが響き続ける。
真菜は唇で僕をしごくだけでなく、空いた手で袋を揉みほぐしていた。
僕は僕で真菜のお尻を揉みしだきながら、時折後ろの穴まで刺激する。
流石に真菜はその時は拒絶の色を見せて首を振ったけれど、それが快感に繋がることを知ると、大胆に僕のお尻にも指を出し入れさせてきた。
それは少し痛みを伴う行為だったけれど、それ以上の快感が真菜の口によって与えられ続け、その微かな痛みはより強い快感へと昇華し、僕は真菜の口中でより大きく、そして固くなっていった。
真菜自身も僕の与える刺激に応えて止めど無く粘度の強い愛液を流していて、僕の口の中はもう真菜の味しかしなくなっていた。

「ま、真菜……ぼ、僕はもうそろそろ……」

男はそんなに持久力の強い方じゃない。
容赦なく与えられ続ける刺激に、僕はすぐに頂点を迎えようとしていた。

「お、お兄ちゃんっ、真菜、まだ……」
「ご、ごめん、今度はちょっと一緒には……ああっ!」
「な、ならお兄ちゃんは2回イって。真菜は2回目の時に一緒にイケればっ!」
「わかった。す、済まない、真菜。もう……」
「き、気にしないで喉の奥で出してね。真菜のこと気にするくらいなら、それ以上の愛を真菜にくれればいいからっ」
「あっ、うああっ、イクっ!」

僕は真菜の優しい言葉に応えることも出来ずに、そのまま真菜の口中で絶頂を迎えた。

「うっ、うっ、うっ……」

僕はもう何も考えられずに、腰を揺さ振って真菜の喉に突き入れていた。
先端が真菜の喉にぶつかり、何度も精を叩き付ける。

「うぐっ、げほっ!!」

真菜はえづいて咳き込む。
しかし僕の太股は真菜の頭をしっかりと捕らえていて、逃げることさえ許さなかった。
真菜は反射的に抵抗しようとしたものの、すぐに我慢し、反対に僕のお尻に手を宛がって自ら僕を喉の奥に押しつけようとさえしていた。

「ま、真菜っ、真菜っっ!」

精と同時に想いも迸る。
僕は真菜の名を叫びながら、口で愛することも忘れてただきつく抱き締めていた。

「ううっ……」

まもなく僕の脈動も終わりを告げる。
大量に吐き出された僕の欲望は、全て真菜の口中に収まっていた。
そして冷めていく興奮と同時に、僕も正気に戻っていく。

「真菜っ、すぐ吐き出すんだっ! 無理して飲むことないからな!」

僕の慌ててかけた言葉も、真菜には無意味な言葉だった。
真菜はようやく半分萎えた僕を口から出すと、精液だけは吐き出さずに口の中に留める。
そして数度に分けて、小さく喉をこくんこくんと鳴らしてそれを飲んでいった。

「真菜……」

僕はそれ以上何も言えなくなる。
こういう時、自分の男としての本性が恨めしい。
しかし、そんな僕に向かって真菜が言った。

「お兄ちゃん、真菜は平気だから……それよりも約束……」
「あ、ああ……」

僕は真菜に促され、今まで以上に愛を込めて真菜を貪った。
小さなクリトリスを唇で吸い上げ、指では襞の一枚一枚を丹念になぞる。

「ひっ、お、お兄ちゃん、そこっ、駄目っ!」

真菜の喘ぎは半分悲鳴に近くなった。
今まで真菜に辛い思いをさせた分、今度は真菜に色々してあげたい。
そんな想いが僕を突き動かしていた。

「お兄ちゃん、そ、そこまでしなくってもいいからっ。ま、真菜っ、感じ過ぎちゃうよっ!」

真菜は半分助けを求める。
しかし僕は責めの手を緩めない。
ここで真菜に余裕を与えてしまえば、また僕のモノを口に含み、結果僕の精が真菜の喉を焼くことになってしまう。
そんなのはもう沢山だった。

「ま、真菜っ、そんなにされちゃうとっ! いいっっ!」

真菜は快感に喘ぎながら、無意識のうちに僕のモノを掴んでいる。
それは愛撫すると呼ぶには程遠いものだったけど、既に真菜の手の中で固さを取り戻していて、次に入り込む先を待っていた。

「ま、真菜っ、ちょっといいか……?」
「な、なに、お兄ちゃん?」
「お前には悪いけど……今からお前の中に入れたい。僕のモノで真菜をイかせたいんだ」
「お、お兄ちゃん……」

真菜は半分放心状態だ。
とろんとした目はもう少しでイきそうな様子を示している。

「勝手な話かもしれないけど、いいか?」
「う、うん……お兄ちゃんがしたいなら……あうっ、そ、それでもいいよ。でも……」
「でも、なんだ?」
「お願いだから、真菜の中で出して欲しいな。それだけ」
「真菜、お前、平気なのか?」
「へ、平気って何が?」
「馬鹿、妊娠したらどうするんだよ?」
「だ、大丈夫なんじゃない? 真菜はよくわかんないけど……」

真菜は快楽に我を忘れかけている。
真菜の中で出して子供でも出来たらえらいことだ。

「なら、僕は外で出す。いいな?」
「だ、駄目だよ、お兄ちゃん。どうしてそんな意地悪言うの?」

僕の動きが止まって真菜は少し落ち着いてきたのか、握っていた僕のモノをしごき始めた。

「うっ、真菜っ、お前の我が侭でもそれだけは聞けないぞっ」
「……真菜はお兄ちゃんの子供、産んでもいいよ」
「おいっ!」

僕は真菜を叱責する。
しかし僕に何も言わせないようにするためか、真菜は手の動きを早めた。

「お兄ちゃんは真菜の子供、産むの嫌?」
「い、嫌とか……うっ、そ、そういう問題じゃない」
「じゃあ、もし真菜がお兄ちゃんの子供を妊娠したとして、下ろせって言う?」
「…………」
「お兄ちゃんならそんなこと、言わないよね。真菜、わかってるもん」
「……い、いや……」
「じゃあ、はっきり言ってよ。下ろすって」
「……言える訳ないだろ、そんなこと」
「真菜だって女だもん。やっぱり産むなら好きな人の子供がいいよ。だから……」
「お前、子供が欲しいからこういうことするのか?」
「そうじゃないよ。お兄ちゃんと愛し合いたいだけ。でも、その結果として子供が産まれるんなら、それは喜んで受け止めたいなって思って」
「……お前の排卵日の管理も、僕にさせる気か、真菜」
「そういうことになるかな。頑張ってね、お兄ちゃん!」

そこで、真菜はようやく僕のモノを解放してくれた。
僕は即座に身体を反転させると、真菜に向き合う。

「お前、ひどい奴だな」
「これもお兄ちゃんを愛するがゆえ。喜んでよね」
「今回だけだぞ、今回だけ。それ以降は安全日がはっきりするまでこういうのは無しだ。いいな?」
「コンドームとかは?」
「って、お前なぁ……」
「ふふっ、無しにするって言うんなら使ってもいいかな、って。二人で触りっこしてるのもいいけど、やっぱりお兄ちゃんに目茶苦茶に掻き回されたいもん」
「……女の子が言う台詞じゃないぞ」
「じゃあ、言わせないようにしてよ、お兄ちゃん」
「はあっ!?」
「もう、鈍いんだからっ。ほら、こうするのっ!」

そして真菜は飛びつくようにして、僕の唇を塞いだ。
僕はようやく真菜の意図を察し、そのキスに応える。
二人でしばし舌を絡めあって、お互いの想いを伝えた。

「お兄ちゃん、そろそろ……」
「あ、ああ。もう入れても平気か?」
「必要以上に濡れてるよ。いつ入れてくれても大丈夫」
「痛く……ないかな?」
「その時はその時だよ。まだ今回痛かったとしても、気持ちいいだけになるまでお兄ちゃんが何度も真菜を抱いてくれればいいだけの話だから」
「……結局、そういうことになるのか?」
「わがまま言わないの。毎日中学生とえっち出来る状態なんて、かなり贅沢だと思うよ」
「だ、誰が毎日するって言った、誰が?」
「誰も言ってないよ。でも、真菜はするつもり。もう二度とひとりえっちはしないんだ」
「その年で無茶苦茶な……」
「あ、お兄ちゃんにもひとりえっちなんてさせないからね。まあ、真菜がそんな元気は残してあげないけど」

真菜はにんまりと笑っている。
やはり僕はこの妹からはもう逃れられないようだ。
僕は観念すると同時に、この小悪魔な妹にちょっとしたお仕置きをすることにした。

「そんなこと言ってると……こうだぞっ!」
「くああっ、お、お兄ちゃんっ……」

僕は油断していた真菜に向かって、軽く先端部分だけをめり込ませた。
既にお互いの唾液と体液でぐちゃぐちゃになっていただけあって、ほとんど抵抗を感じない。

「あんまりこういうことばっかり考えてちゃ駄目なんだぞ、真菜。まだ勉強とかもちゃんとしなくちゃいけない年頃なんだし……」
「お、お兄ちゃん、そういうことしながらお説教しても……説得力ないよ」
「……そ、そうだな。僕も同じ穴のムジナか」
「うん……だから一緒に楽しもっ。このままゆっくり……」
「わかった、真菜」

そして僕はずぶずぶと腰を前にゆっくりと進める。
滑らかに進んでいったけれど、きつさは最初の時と全く変わりはなく、うねりながら僕を強烈に締め付けていく。

「うああっ、お兄ちゃん、は、入って来るよっ……」
「ああ、これで半分……痛くないか?」
「な、何だかいっぱいになる感じ。ちょっと苦しいけど……痛みじゃないかな。気持ちいいしっ」
「ならよかった。じゃあ、奥まで行くぞ」
「うんっ!」

僕はまた、腰を進める。
そして真菜を掻き分けながら、ようやく奥まで到達した。

「こ、これで全部……?」
「ああ。真菜の奥に当たってるの、わかるか?」
「うん……なんとなく。やっぱりこれはひとりでやろうとしても無理だね」
「当たり前だ」
「そ、それに、あの……腰がくっついてるから、その、クリトリスがこすれて……」

真菜はそう言ってから、少し恥ずかしそうに腰をもじもじと動かしている。
僕にクリトリスを擦り付けているんだろうけど、それが同時に真菜の中を掻き回すことになって、余計に刺激を与える結果となった。

「んうっっ……お、お兄ちゃん、これじゃ何をしても……気持ちいいよ……」
「僕も……真菜の中にいるだけで気持ちいいよ」
「これでお兄ちゃんが激しく真菜の中を掻き回したら……どうなるのかなぁ?」
「……そろそろ頃合いかな?」
「うん……痛くないのはわかったんだし……動いて、お兄ちゃん」
「ああ」

そして僕は促されるがままに真菜の中を動き始めた。

「うああっ、お兄ちゃんっ、凄いよっ!」

真菜はすぐに反応してみせる。
しかし、まだゆっくりと前後運動させただけだ。
それだけでも真菜の襞はめくれ、どろりとした愛液を溢れさせていた。

「真菜……少しだけ、速くするぞ……」
「う、うんんっ」

僕は自分の快楽も求めるために、少し動かすスピードを速めた。
がくがくと腰を揺さ振り、真菜の一番奥の子宮を突く。
真菜は僕に揺さ振られながら、懸命に両腕を背中に回してついてこようとしていた。

「ああっ、す、すごっ、こんなのっ、お兄ちゃんっっ!」
「真菜っ、真菜っ……」

僕は更に動きを追加し、前後運動だけでなく上下左右に動かすことで、真菜の中を掻き回した。

「お、お兄ちゃんっ、駄目っ、おかしくなっちゃうよっ!」
「い、イキそうか、真菜っ?」
「ま、まだだけどっ、も、もうすこ……ひいっ!」

真菜を激しく突く。
処女を失ったばかりの少女には辛い責め苦かもしれない。
でも、それを補って余りある愛が、真菜に真っ白になりそうなほどの快感を与えていた。

「ぼ、僕はもう少しで……ま、真菜の中が凄く気持ちいいからっ……」
「あ、ありがとね、お兄ちゃん。真菜も……お兄ちゃんにこうされるのがこんなに気持ちいいなんてっ……ここまでとは思ってなかったよ……」
「す、好きだ、真菜っ! なんだかんだ言ってても、やっぱり僕はお前がっ!」
「お兄ちゃん……真菜もお兄ちゃんが好きだよ。誰よりも、一番一番……」

そして二人とも昇り詰めていく。
お互いに呼び合い、愛を確かめる行為が、それに拍車をかけていた。

「い、イクよっ、お兄ちゃんっ! 真菜、そろそろ来そうっ!」
「ぼ、僕も……そろそろ限界だよ。真菜、今度は一緒に……」
「ああっ、うんっ、いっぱい真菜の中に出してね、お兄ちゃんっ!」
「あ、ああっ、真菜っ、真菜っ!」
「お、お兄ちゃんっ、好きっ、大好きっ!」
「真菜っ、真菜あっ!!」
「お兄ちゃんっ、イクっ、イクぅっっーーー!!」

真菜が絶頂を迎えた瞬間、きゅっと締め付けられる。
僕はそれに耐え切れず、そのまま真菜の最奥に放出した。

「あっ、ああっ……」

断続的に締まる。
真菜は恍惚とした表情で、僕の精を全身で受け止めていた。
僕は真菜の子宮へひたすらに叩き付け、真菜を熱く焦がす。
真菜は僕の全てを絞り取るように脈打ちながら、少しずつ少しずつ、治まっていった。

「真菜……」
「お兄ちゃん……好き……」

僕は中にまだ入ったまま、そっと真菜を抱き寄せていた。
真菜は心地よさそうに目を細めながら、僕の胸に頬を寄せる。

「少しだけ、こうしてような……」
「うんっ……」
「キス、していいか?」
「もう……キスくらい、好きな時にしていいんだよ、お兄ちゃん」
「……そうだな、真菜」

そして僕はついばむようなキスをする。
真菜は静かにそれを受けて、軽く微笑んだ。

「いいね、こういうキス」
「ああ」
「真菜もしていい?」
「いいよ」
「じゃあ……」

真菜も僕と同じようなキスをした。
少しだけ名残惜しそうだったけど、それがまたよかった。

「どう、真菜のキスは?」
「よかったよ、とっても」
「そう言ってくれてうれしいよ、お兄ちゃん」

キスをしていた拍子にぬるりと真菜の中から僕のモノが抜け落ちる。
そして後を追うように僕の放った精がこぼれ出てきた。

「今日は、白いまんまだね、お兄ちゃん」
「ああ……血が出てなくてよかったよ」
「激しかったもんね。裂けてもおかしくないくらいに」
「悪かったな、激しく動いて」
「いいんだよ、お兄ちゃん。激しくしたから、気持ちよかったんだし」
「……優しいな、お前も」
「お兄ちゃんも。でも、えっちする時は真菜の身体のこと、そんなに気を遣わなくていいからね」
「そういう訳にもいかないだろ」
「……お兄ちゃんのそういうとこ、好きだよ」
「ありがとな、真菜」

僕はそう言って真菜をそっと抱き寄せる。
真菜は目を閉じて、僕の抱擁を感じていた。

こうしていると、今までのことが全て幻だったようにさえ思えてくる。
真菜との淫らで情熱的なやりとりも、夢の中のことだったように……。
でも、僕の腕の中に眠る真菜の感触が、僕に穏やかで切ない現実を教えてくれていた。

「真菜、大好きだよ……」

そっと囁いてみる。
真菜は目を開けないけれど、微かに微笑んだようにも見えた。
僕はそんな真菜の寝顔に満足して、一緒に眠ろうと思った。
しかし、しばらくして、何やら不思議な感触を胸に感じる。
僕は目を開けると、そこにはちゃんと目を開けている真菜の姿が。

「お兄ちゃん、もう少し、目を閉じてて……」
「どうして?」
「いいから。ちょっとしたお遊びだよ」

僕は言われるがままに目を閉じる。
すると真菜はまた僕の胸に何かし始めた。

「今から字を書くから……お兄ちゃんは真菜が何を書いたのか、当ててね」
「ん、わかった」

真菜はゆっくりゆっくり、指を動かす。

「ええと……最初は『だ』か?」
「もう、最後まで待って」
「わ、わかった」

そして真菜は再開させる。
最初が『だ』。そして次が『い』のように感じた。

「大体わかる、お兄ちゃん?」
「ああ、心配するなって」
「お兄ちゃん、敏感だからね」

真菜はそう言ってクスクス笑っている。
今更言い返す言葉もない僕は、真菜の書く字に集中していた。

「全部で四文字だからね。間違えないでよ」
「善処するよ、真菜」
「期待してるんだから、お兄ちゃんには」

次の字は恐らく『す』。そして最後は――

「これでおしまいだよ。答えがわかった?」
「ああ、つまりこういうことだろ?」

僕は真菜を引き寄せておもむろにくちづけをする。
そして真菜の瞳を見つめてこう言った。

「僕も、真菜のことが大好きだよ」
「お兄ちゃんっ!」

真菜は思いっきり僕に抱き着く。
それで、答えがなんだったのかは明白だった。

「真菜もねっ、お兄ちゃんのことが大好きっ! だいだいだ〜い好きっ!!」

真菜はうれしそうに言って僕にキスの雨を降らせてくれた。
こんな幻は消えてしまうにはあまりに甘すぎる。
僕は真菜のキスを浴びながら、なんとなくそんなことを思っていた。
そして当の消えない幻は今、僕の胸の中で幸せの絶頂を噛み締めているところだった。



おしまい


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